回帰分析入門 経済データ解析 2009年度 このスライドの内容 2変量データの記述 2変量データの記述には、それぞれ1変量データを記述することに 加え、2変量間の関係の記述が含まれる。2変量間の関係を数値で 表す相関係数と、グラフで表す散布図を紹介する。 因果関係と計量経済分析 経済2変量間に因果関係が見られる場合、その定量的な分析をお こなうことが計量経済分析である。 回帰分析 計量経済分析によく用いられる統計分析手法である、回帰分析の 簡単な紹介をおこなう。 2変量データの記述 2変量データ → 2つの対になったデータ (例)あるクラスの英語と数学のテストの点数 ※ A組の英語の点数とB組の数学の点数は2つのデー タであるが、対になっていない。 ※ 2変量データはその組合せを変えることはできない → イチロー君の英語とヒデキ君の数学を組み合わ せても、意味がない。 2変量データの記述 → それぞれ1変量の記述 + 2変量の関係の記述 2変量の関係 (例)英語の点数が高い人は数学の点数も高い (例)数学の点数が高い人は社会の点数が低い ⇒ 1つの変量Xが変化したときに、それにともなってYがど のように変化するか 2変量の関係の表現方法 数値的表現-相関係数 視覚的表現-散布図 この2つの表現には関連性がある 2変量の関係の数値的表現 相関係数 R ( X X )(Y Y ) (定義式) ( X X ) (Y Y ) n X Y ( X )( Y ) {n X ( X ) }{n Y (Y 2 2 2 2 2 (計算式) 2 )} 相関係数Rは-1と1の間の値をとる。 – R>0 正の相関 – R<0 負の相関 – R=0 無相関 2変量の関係の視覚的表現 散布図 正の相関(R>0) 負の相関(R<0) 無相関(R=0) •Xが大きな値を とるほど、Yも大 きな値をとる。 •Xが大きな値を とるほど、Yは小 さな値をとる。 •Xの値とYの値 に一定の傾向が みられない。 相関関係と因果関係 相関関係 – 双方向的な関係 (例)英語の点数が高い⇔数学の点数が高い 因果関係 – 一方が原因となって、もう一方が結果となる関 係。原因と結果を反対にすることはできない。 (例)所得が高い(原因)⇒消費が多い(結果) 所得と消費の関係は相関関係だけではなく、所得を原因、 消費を結果とする因果関係が成り立っている。 – 所得が多くなれば(原因) → 消費も多くなる(結果) – 所得が少なくなれば(原因) → 消費も少なくなる(結果) 相関関係 因果関係 因果関係の例 ※ 風が吹くと桶屋が儲かる 風が吹くと砂ぼこりが立つ → 砂ぼこりで目を痛めて失明する人が増える → 失明した人はよく三味線を弾くのでその需要が増える → 三味線には猫の皮を張るので猫が捕獲されて数が減る → するとねずみが増えるので桶がたくさんかじられる → だから桶屋が儲かる いくつもの因果関係が連鎖したもの。 最終的には 風が吹く(原因) ⇒ 桶屋が儲かる(結果) となる。 経済理論はこのような因果関係の積み重ねである。 (例) 「利子率を下げると消費が拡大し、需要が喚起される」 このような論理の積み重ねによって、経済の現状把握・予測 をおこなうことを定性的分析という。 これから一歩踏み込んで、 「利子率を○%下げると消費が拡大し、○○円程度の需要が喚起される」 というように、数量的な把握をするものが定量的分析である。 このような定量的分析をおこなうために、統計データが用い られる。 (例) 風速○メートルの風が吹けば、失明する人が○人増えて (中略) 桶屋が○○円儲かる。 統計データを用いた定量的分析のことを、計量分析 という。経済分析における計量分析が計量経済分 析である。 計量経済分析をおこなうことによって、経済理論が 現実経済に合致しているかどうかのチェックをおこ なうことができる。 因果関係の定量的分析には回帰分析という統計手 法がよく用いられる。 回帰分析 回帰分析は、因果関係の定量的分析に最適な統計的方法である。 Xが原因で、Yが結果であるという因果関係が成り立っている場合、数 式の形(回帰モデルという)で表し、分析をおこなう。 回帰モデルの例 (どのような式が最適かは、散布図や経済理論などから総合的に判断される) Y=a+bX2 Y=a+bX 3 2.5 2 1.5 1 0.5 Xを独立変数(説明変数)とよび、Yを従属変数(被説明変数)とよぶ。 20 18 16 14 12 10 8 6 4 X 2 20 18 16 14 12 8 10 6 4 0 2 0 20 18 16 14 12 10 8 6 4 X Y =5/(X +2)のグラフ Y 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 2 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 0 Y =5+2X 2のグラフ Y 0 Y =5+2X のグラフ Y Y=a/(X+b) X 所得と消費の例では、散布図や経済理論から Y=α+βX という直線の関係が最適であると示 唆される。 回帰分析の第1目標 → α,β(これらを回帰係 数とよぶ)の推定値を求めること ⇒ この推定値を求めることによって、所得が変化したと きに、消費がどの程度の大きさになるかを推定できる。 所得と消費 300 280 消費 260 240 Y=α+βX 220 200 180 160 200 220 240 260 280 所得 300 320 340 回帰係数の推定値 回帰係数の推定値は最小2乗法という方法で求めることがで きる。 最小2乗法はデータの各点と直線との距離(これを残差とい う)の2乗和が最小となるように直線を引く方法である。 推定値は次のような式 で求められる。 11 10 9 8 b 7 6 n XY X Y n X 2 ( X ) 2 X Y X XY a n X ( X ) 2 5 2 4 3 6 9 12 15 2 予測値と残差 あるXに対応する直線上の点を予測値(または理論値)といい、 であらわす。 Yˆ 予測値は、すべてのデータが推定された回帰直線上にある とした場合に、あるXに対応したYの値であり、データとして現 有していないXに対するYの値の予測となる。 11 Y Yˆ 残差はYから Yˆ を引い たものである。 10 9 8 7 6 5 4 3 6 9 12 15 所得と消費 300 280 260 消費 係数推定値として、 b=0.945 a=-23.21 という結果が得られたとする。 これは、回帰直線の方程式 Yˆ (ただし、推定されたもの) が、 Y = -23.21 + 0.945 X であることを表している。 240 220 Y=-23.21 +0.945X 200 180 160 200 220 240 260 280 所得 X=250のとき、 Y = -23.21 + 0.945 × 250 = 213.04 から、Yの予測値(理論値)は213.04となる。 X=350のとき、 Y = -23.21 + 0.945 × 350 = 307.54 から、Yの予測値(理論値)は307.54となる。 300 320 340 決定係数 決定係数は回帰モデルのあてはまり具合を示す尺度 である。次のような数値例を考えてみよう。 例1 X 例2 X Y 10 8 13 9 11 14 6 4 12 7 5 8.1 7.1 9.5 7.5 8.4 10 6 5 9 6.4 5.5 Y 10 8 13 9 11 14 6 4 12 7 5 9.3 8.3 8.2 7.5 7.1 10.7 6.7 5.7 9.7 5.1 4.2 この2つの例に回帰分析を適用すると、ともに Y=3+0.5X という回帰直線が導出される。ところで、 散布図に回帰直線を書き入れたものが下図である。 11 11 10 10 9 9 8 8 7 7 6 6 5 5 4 3 6 9 12 15 4 3 6 9 12 15 この2つの図を比べると、データに対する回帰直線のあては まりが異なることがわかる。それを数値で表したものが決定 係数R2であり、左はR2=0.998、右はR2=0.685である。 決定係数は、 R2 回帰によって説明され る変動 Yの全変動 と解釈することができ、0と1の間の値をとる。決定係数が1に 近いほど回帰直線のあてはまりはよく、決定係数の値が小さ い場合(0.5とか0.6以下の場合)には、分析の妥当性を検討す る必要がある。 具体的には、すべての点のYの平均の線を引き、各点と平均 の差の2乗和と、回帰直線上の点(予測値)と平均の差の2乗 和の比をとったものである。 11 10 9 8 7 6 5 4 3 6 9 12 15 — Yの平均の線 } 各点と平均の差、これの2乗和がY の全変動となる。 { 回帰直線上の点(予測値)と平均の 差、この2乗和が回帰によって説明さ れる変動となる。 この2つの比が決定係数R2となる。 決定係数の式は次のようになる。 R 2 (Yˆ Y ) (Y Y ) 2 2
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