An Improved Limit on Invisible Decays of Positronium コロキウム 21.Nov 2006 高エネルギー研 M1 五味 慎一 1 Abstract • 今回報告する実験結果では、オルソ=ポジトロニ ウムのinvisibleな崩壊過程について、そのBrの 上限値をさらに下げることに成功した。 • また、パラ=ポジトロニウム・e+,e-の直接的な対 消滅についてのinvisibleな崩壊モードについて も、そのBrの上限値を得ることができた。 • この結果から、標準模型を超える『新しい物理』 の可能性について考察する。 2 Contents 1. Introduction 2. Experimental technique and setup 3. Background estimation and dedicated engineering run 4. Data analysis 5. Results 6. Interpretation 7. Conclusion 3 1. Introduction 4 『 new physics 』 • 『 new physics 』の探求は、主に高エネル ギーの分野で研究がなされている。 その一方で・・・ 低エネルギー領域での、精密測定におい て『 new physics 』の可能性を探る現象が 確認されている。 Invisible Decays of Positronium 5 Invisible Decays of Positronium • ここで言う、『 invisible decay 』とは、『photonが 検出されない崩壊モード』を意味している。 • 標準模型(SM)では、Psは、ニュートリノ=反ニュートリノ 対へと崩壊する、invisibleな崩壊モードが存在する。 Br(o - Ps invisible) 6.6 10 -18 • もし、このSMの予想よりも高い分岐比が実験によって 観測されたならば、それは新しい物理を裏付ける確たる 6 証拠になる! extra dimension • この世界には、3+1次元に加え、n(≧2)次元の余 剰次元が存在する。 • 質量を持つ粒子は、この余剰次元へトンネル効 果を通じて逃げることが可能。 ゲージ階級問題の解決 k ~ 数TeV LEPでの実験結果 2.7TeV < k 10 10 Br (o - Ps invisible ) 10 7 8 milli-charged particle • 1986年・Holdomは、もし観測され得ない第二のフォトン(the shadow photon)が存在すると仮定した場合、より自然に『grand unified model』が構築できることを指摘した。この考えには、電子 よりもさらに少ない電荷量を持った粒子(milli-charged particle)も 含まれている。 • もし、このmilli-charged particleが存在していると仮定すると、oPsはSMには無い崩壊モードを持つことになる。これはmillicharged particleはカロリメータと反応し難いためにinvisibleな崩 壊になる。 m 3 x Br(o - Ps XX) 1 2 4 ( 9) me 370 2 2 2 1/ 2 1 m 2 1 x 2 me for mx me 8 New light vector boson • 以下の相互作用Lagrangianを持つ軽いベクトルボソン:Xが存在 すると仮定すると、invisible decayの新しい可能性を導く。 LX g X X o-Ps X* X1X1 なる崩壊過程を考えた場合、そのBrは以 下のように表される。 Br(o - Ps X* X1X1 ) mX 3 1 k F me 2 4( 2 9) 2 k 2 10 3 XX1 2 m X X XX 1 1 3 mo2-Ps 2 9 mirror world 1956年・Lee, Yangに よってparityの破れが発 見される 真空のsymmetryは崩れてい るのだろうか? Mirror World – 粒子とmirror粒子とは同じ物理法則に従い、た だ左・右だけが異なる。 – 粒子とmirror粒子とは、以下の二つの方法で繋 がっている。 1. 重力相互作用 2. mixing between mirror partners – mirror粒子は、ダークマターの候補である。 10 mirror worldへの崩壊 photon=mirror-photon kinetic mixing e+ Lint F F ' e- o-Ps γ γ’ e-’ e+’ o-Ps’ • o-Psは、γとγ’とを通じて、自らのmirror partnerであるoPs’との間で振動を行っている。 mirror worldへの崩壊を検知することはできない ・・・ invisible decay 2(2 f ) 2 Br(o - Ps invisible) 2 4(2 f ) 2 11 2. Experimental technique and setup 12 How to trigger the positronium? • Invisibleなので、self triggerは使うことはできない。oPsの生成でタグ付けをしたいところではあるが、困難。 『 sourceからe+が放出され、ターゲット内で静 止したのにも関わらず、Ps起源のγ線が検出さ れない 』 現象を探す。 trigger invisible source 4π ECAL Image e+ Scintillatar Ps decay 13 到達すべき精度について Br(o - Ps invisible) 10 -8 この到達すべき値まで精度を高めるために・・・ (a). e+,e-の対消滅によるフォトンを感知しそこなう確率・・・<10-9 (b). ターゲットを囲む有感領域について、不感領域を最大限小さくする (c). ターゲットの適切な選択 (d). トリガーレート・DAQ速度を最大にする (e). トリガー(ポジトロニウムのタグ付け)の精度の向上・バックグラウンドの除去 (f). 22Naからの1.27MeVフォトンと荷電粒子との区別( @ trigger counter )。 14 e+ source : 22Na • e+のソースとして、22Naを用いる。 今回の実験では大抵の場合、 o-Ps (p-Ps)崩壊では、3(2)+1 個のフォトンが放出される。 半減期 : 2.6年 30kBq 放射能の強さ = トリガーレートと、イベントが重なることによる エネルギーの合計は、2×511keV inefficiencyとの割合から決定される。 EC過程におい て、軌道電子 が弾き出され ることがある shake-off electron 15 22Naのセットアップ ファイバー両端からの読み出し Philips XP2020 • 精度を高めるために不感領域を最大限減らさなければな ( 特にノイズの小さいものを選択した。 ) らない。ソースホルダーも有感領域にする工夫をする。 二つのコインシデンス e+通過のタグ付け シンチレーターで造られたファイバー ( φ500μm ) の一部を圧し 両側からのコインシデンスをとることで、バックグラウンドを減少させること 潰して、平らな領域( 100μm×2mm×8mm )を造る。そこに ができる。( <1.9×10^-9 ) 22Naを蒸着したものを、ソース( ファイバーはトリガー読み出し )と して用いる。 Side view これによって、ソースホルダーに不感領域を無くすことができる。 16 シンチレーターの配置 • ECALはBGO結晶×100個で形成される。 – 断面は6角形で横幅は61mm・長さは200mm – 各結晶は750μm厚のテフロンフォイルで覆われている。 – 最中央部(緑)は特に、アルミで覆われた2μm厚のMylarフォイル で覆われている(特に感度を上げる)。 – FBGO・及び胴部の結晶からのシグナルは、ETL9954によって 読み出される。 17 タグ付けしよう • ファイバーでの、各XP2020によるe+の通過で得られる ファイバー×2 + FBGO によって・・・ 光電子数は、平均約1.2程。 1.2 非常に小さい 13±1 p.e この値に対してカットをかけようと するのは得策とはいえない。 • FBGOでもファイバーでのe+の エネルギー損失を見る。 – ファイバーで生じた光は無色透明 なエアロゲルを通過し、前面にあ けた開口部からFBGOへ入り、そ の後方のPMTで検出される。 18 TBGO • 1.27MeVのフォトン(=the triggering photon )の同定 のために、より高いエネルギー分解能が求められる。 – ETL9964 光の収集能力・QEが高い – BGO結晶も一番良い物を選ぶ 不感領域を減らし、収集能力を高めるために、3M radiant mirror ( 64μm厚 )で覆う。 『 the triggering photon 』には、 ( 1275±67 ) keVのものを選ぶ。 triggerには、ファイバーを通過するe+ ( XP2020×2,FBGO)と、1.27MeVフォト ン( TBGO)との2つを用いる。 19 Ps生成のターゲット Scintillating Fiber source Aerogel 4x8x8mm^3 • ターゲットとして、4×8×8mm^3の SiO2エアロゲル小欠片(松下電工株式 会社製 type SP30 : 屈折率;1.03 密 度;0.11)を用いた。 • エアロゲル小欠片は圧し潰した部分に 密着させる。 • e+はエアロゲル内で停止 → Ps形成。 • Psは、エアロゲル内の空孔へ移動。 ( Psと通常の原子との間には電気的な斥力が 働くため、物質中では原子間の間隙に存在し、 空孔的欠陥があるとその中に捕捉される。 ) 20 実験の安定性について • BGO結晶は温度に敏感なので、暗箱内の温度を管理す る必要がある。(±0.5℃) – 2つのサーモメータで温度管理された水が銅パイプ内を循環す ることで温度を保つ。 – 実験室の温度は±1℃以下でコントロール – HV等、熱源になりそうなものは近くに置かない • BGOはLEDを備えていて、定期的にLED光源で状態を モニターできるようになっている。 • PMTは、511keV・1.27MeVの2種類のフォトンでキャリブ レーションされている。 • 1runあたりでのエネルギースケールの変化は、1%以下 で良くキャリブレーションされている。 21 3. Background estimation and dedicated engineering run 22 Background estimation • 求められる精度~10-8に達するために、バッ クグラウンドは良く制御されなければならない。 • バックグラウンドの起源を理解し、またMCシ ミュレーションと比較するために行った、試験 的なrunでの結果を、シミュレーションとの比 較を含めて述べる。 23 1) Hermiticity Dead Material Resolution • ECAL(~200mm厚)において、2個(3個)の511keVの フォトンが検知されない確率・・・ <10^-9 γ Miss! γ Miss! ・・・Invisible? 24 2) Absorption in trigger Energy Window • もし、1個以上の511keVフォトンが1.27MeVフォトンに重なって TBGOのエネルギー分解能によって決定される。 TBGOに入っても、(1275±76)keVに入ることができる。 トリガー範囲の上限値と、(the triggering photon+511keV photon)の分離は、 この時、残ったフォトンが検知されなかった場合、 1786keVにできるGAUSSIANピークについて、7σ invisibleのように見えてしまう。 このバックグラウンドは、< 5×10^-9 γ Miss! γ(511keV) trigger ・・・Invisible? 25 3) MS positron with Emax=546keV • 1.27MeVフォトンが感知されず、一方でe+がファ イバーで多重散乱し、ちょうどエネルギーがtrigger と一致したことによるバックグラウンド。 γ(1.27MeV) Miss! (200~300) + 511×2 e+ (200~300keV) e+ (546keV) 1.27MeV 対消滅 < 10^-8 ・・・Invisible? 26 4) MS positron with Emax=1.83MeV • 3)と同様のプロセスで、1.83MeV e+起源のもの。 e+ (1.83MeV) (200~300) + 511×2 e+ (200~300keV) 1.27MeV 対消滅 < 10^-8 ・・・Invisible? 27 5) Compton EC photon • 1.27MeVフォトンがファイバーで相互作用することでe+のように見 え、さらに散乱されたフォトンとCompton electronとのエネルギー の合計が、トリガーとして認識された場合。 ・・・Invisible? γ(1.27MeV) e- < 10^-8 1.27MeV この3),4),5)の場合では、荷電粒子(赤矢印)がTBGO前面 に置かれたプラスチックシンチレーターを横切っているので、 28 これによってvetoすることができる。 6) Accidental noise and EC photon • 2つのXP2020でのノイズによるcoincidence によってtriggerがか かるバックグラウンド。(with 1.27MeV) ノイズの少ないPMT・XP2020を2つ用いることで最小 化 ・・・< 1.9×10^-10 7) Shake-off electrons in EC process • Shake-off electronによりファイバー側のtriggerがかかることによ るバックグラウンド。(with 1.27MeV) EC過程において、e-の放出確率は運動エネルギー が大きくなるにつれ急速に減少する。このため、ファイ バー側でカットを用いることで、十分落とすことが可能。 29 ・・・< 10^-8 Total Background • Total Background について、 10^-8の sensibilityを 達成。 30 4. Data Analysis 31 1. エレクトロニクスの安定性 • 以下の7つの値を定義し、それについて分布を見る。 1)ΔTshort トリガースタートから2つのshort gateを作るタイマー ユニットのエンドマーカーまでの時間 2)Tlong long gateで積分されたQDCチャンネルのpedestal エレクトロニクスの安定性・ゲート幅の継続 時間のチェック 32 2. Accidental trigger の抑制 3)ΔTXP 4)ΔTTBGO 2つのXPのファイバー読み出しの時間差 2つのXPのコインシデンスとTBGOとの時間差 偽のe+がファイバーへ侵入したことによる、 accidental trigger を抑制 Accidentalは最小に、統計は最大になるように設定 33 3. エネルギーの分布 5)ETBGOc TBGOのみでのエネルギー損失(プラスチックシンチ除く) 6)ETBGO TBGOでの全エネルギー損失。( long gate ) 7)EFBGO FBGOから見たファイバーでのエネルギー損失。 Cavity内でe+の様に振舞うバックグラウンドを消す。 34 特にこのあたりは、EC過程で生じるshake-off electronによる寄与。 カットのまとめ • この設定され たカットによっ て、トリガーの 精度は求めら れるレベルま で高められる。 (1~6についてはGAUSSIANによるフィットから求められたもの) (7)の低側のカットは、shake-off electronによるイベントを減らす ように求められている。 <10^-8 35 5. Results 36 『 zero energy region 』の上限値 • 「これ以下をinvisible」と定義するエネルギーの閾値を決 めるために、試験的なrunの結果を見る。 • ファイバー読み出しを除き、1.27MeVフォトンのみでトリ ガーを取る。 • ゼロエネルギー領域に、EC (shake-off electron)による ピークが発生。MCシミュレーションと良く一致。 • この値について、ECプロセスとPsが形成される場合との 違いを考慮して、値を是正する。これによって得られた ピークについて、その99%を網羅する領域を『 zero energy region 』と定義する。 Etot < 80 keV 37 Results • 以上のカットによって、1.41×10^8個のイベント が残った。これらについて、ECAL(TBGOは除く) でのエネルギー損失を全て足し上げる。 Etot Zero energy 2×511 keV Events Events Zero energy領域では、 イベント無し 100 10 1 0.1 Energy [ keV ] 0 200 400 38 Energy [ keV ] Branching ratio の決定 • 全体に対するo-Psの割合は、崩壊時間の曲線の、 Ae (t / o-Ps ) B 関数のフィットで見積もられる。 • ゼロエネルギー領域でイベントが観測されな かったことによって、Brの上限値が決定する。 Br(o - Ps invisible) 2.3/(N o-Ps ) 4.2 10-7 (90% C.L.) Br(p - Ps invisible) 2.3/(N p-Ps ) 4.3 10-7 (90% C.L.) Br(e e - invisible) 2.3/(N e e- ) 2.110-8 (90% C.L.) 39 6. interpretation 40 Milli-charged particleの評価 • 得られた結果から、以下の式を用いることで電荷Qxeを 持つ質量mxの粒子の存在しない領域が下図のように 規定される。 mX2 5QX2 me (o - Ps XX) 6 k F 2 me electron mass 41 mirror worldの評価 • フォトン=鏡フォトンのmixing strength ・εは、 Br(o-Psinvisible)を用いて、以下の様に表 される。 Br(o - Ps invisible) SM coll 1 2 f 2(1 Br(o - Ps invisible) ) 値を代入することで、mixing strength :εの上限値を得た。 1.55 107 (90% C.L.) 42 7. Conclusion • 本実験で得られた結論のまとめ Br(o - Ps invisible) 4.2 10 (90% C.L.) -7 Br(p - Ps invisible) 4.3 10 (90% C.L.) -7 - Br(e e invisible) 2.110 (90% C.L.) 1.55 10 -8 7 (90% C.L.) 5 Q x 3.4 10 ( for m X me ) 43 Supplement 44 ポジトロニウム = Ps • もっとも単純な、粒子-反粒子の系で、電磁相互作用の みが働いていると考えられる。 para-Positronium (p-Ps) p - Ps 2 , 4 , ortho-Positronium (o-Ps) o - Ps 3 , 5 , 45 Invisible Decays of Positronium • ここで言う、『 invisible decay 』とは、『photonが 検出されない崩壊モード』を意味している。 • 標準模型(SM)では、Psは、ニュートリノ=反ニュートリノ 対へと崩壊する、invisibleな崩壊モードが存在する。 Br(o - Ps νe νe ) 6.2 10 -18 (o - Ps 3 ) Br(o - Ps νl νl ) 9.5 10 - 21 (o - Ps 3 ) l e • もし、このSMの予想よりも高い分岐比が実験によって 観測されたならば、それは新しい物理を裏付ける確たる 46 証拠になる! New physics への扉 • もし、このSMの予想よりも高い分岐比が実験に よって観測されたならば、それは新しい物理を 裏付ける確たる証拠になる! •extra dimension •milli-charged particle •new light gauge boson •mirror world 47 荷電粒子と the triggering photon との分別 • TBGOへ入る荷電粒子をvetoするために、1mm 厚プラスチックシンチレーターをTBGOの前面に 貼り付ける。 同じPMTで、薄いプラスチックシンチレーターと、TBGOとの2つ からのシンチレーション光を観測する。 この2つは、decay timeの違い から区別することができる。 Scinti ~ 2.7ns BGO ~ 300ns 48 シグナルは、short,long、2つのゲートについて測定される。
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