「ホームレス問題の経済学」 • 現在、日本が直面している格差問題、貧困問 題のひとつの象徴である「ホームレス問題」に 関して、理解を深める。 • ホームレス問題は何故起こるのか、問題の解 決のためにはどのようなことが必要なのか、 経済学的観点から考察する。 • 経済学は、問題解決志向的学問。ホームレス 問題を通して、経済学という学問の特徴・性質 を知る。 写真は何れもインターネット 新聞JanJanから転載 ホームレスのイメージ • 皆さんは、ホームレスを見たことがありますか。 どのようなイメージをお持ちですか。 • 怠け者、乞食 • くさい、汚い • 危ない、怖い(犯罪に関係している) • アルコール中毒、精神疾患を抱えている • 何を考えているか分からない関係が無い人々 • 空き缶などのゴミ回収をしている • 日雇い建設労働者 ホームレスとはどのような人々か • 厚生労働省「ホームレスの実態に関する全 国調査(概数調査)結果」(平成24年1月現 在) ホームレスの分布状況 • 厚労省全国ホームレス調査(2007年)によれ ば、全国のホームレス総数は18,564人(2003 年の調査に比べて6,732人、率にして26.6% の減少)。2012年の概数調査ではさらに減少 し、9,576人。ただし、ホームレスの定義が欧 米と日本では異なることに注意。路上生活者 が減少しているに過ぎない。 • 統計が不備であるが、1995、6年ごろから、都 市部を中心に急増したと見られる。全国的に は1998年ごろから急増。 • 特に、東京、横浜・川崎、大阪、名古屋などの 都市部に集中。都市では、日常的風景に。 2007年厚労省実態調査から • 平均年齢57.5歳とほとんどは中高年である(ただし、 若者も最近増えている)。→2012年速報59.3歳。 • 性別は95.2%が男性→2012年速報95.5%。 % 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 19 歳 20 以下 ~ 25 24歳 ~ 30 29歳 ~ 35 34歳 ~ 40 39歳 ~ 45 44歳 ~ 50 49歳 ~ 55 54歳 ~ 60 59歳 ~ 65 64歳 ~ 70 69歳 ~ 75 74歳 ~ 80 79歳 歳 以 上 0.0 2003年調査% 2007年調査% 野宿生活者の生活場所(公園が減少しつつある) 公園 道路 河川敷 駅舎 その他 2007年調査% 36.1 15.0 32.7 7.1 9.1 2003年調査% 48.9 12.6 17.5 7.5 13.5 路上の生活期間(長期化する傾向に) % 30 25 20 2003年調査% 2007年調査% 15 10 5 10 年 以 未 5年 ~ 10 年 5年 ~ 上 満 満 未 満 3年 3年 ~ 1年 ~ 1年 未 未 満 満 未 6ヶ 月 ~ 6ヶ 月 未 3ヶ 月 3ヶ 月 ~ 1ヶ 月 1ヶ 月 未 満 満 0 2012年速報では、10年超える 26.0%に。 路上生活直前の職業(日雇いが多いが、 最近はそれ以外も増加しつつある) 専門・技術的従事者 管理的職業従事者 事務従事者 販売従事者 サービス従事者 保安職業従事者 農林漁業作業者 運輸、通信従事者 採掘作業者 生産工程・製造作業者 印刷・製本作業者 建設技能従事者(大工、配管工など) 建設作業従事者(土木工、現場片づけなど) 労務・運搬作業従事者 清掃作業・廃品回収 その他 2007年調査% 2.0 1.7 1.2 4.9 10.3 2.6 0.7 4.8 0.1 13.0 1.4 18.5 30.6 4.0 2.5 1.6 2003年調査% 1.0 0.9 1.1 4.3 8.9 2.7 0.6 3.7 0.0 10.5 0.9 20.3 34.9 3.1 2.9 4.3 路上生活直前の雇用形態(日雇や非正規から、 正規、常用雇用も増加しつつある) 経営者・会社役員 自営・家族従業者 常勤職員・従業員(正社員) 臨時・パート・アルバイト 日雇 その他 2007年調査% 2.2 7.1 43.5 19.7 26.3 1.2 2003年調査% 2.2 4 39.8 13.9 36.1 4.1 路上生活に至った理由(仕事関係が大勢を占める) 倒産・失業 仕事が減った・出なくなった 病気・けが・高齢で仕事ができなくなった 労働環境が劣悪なため、仕事を辞めた 人間関係がうまくいかなくて、仕事を辞めた 上記以外の理由で収入が減った、又は、低い 借金の支払が出来ない・取立により家を出た アパート等の家賃が払えなくなった 契約期間満了やその他会社の都合で宿舎を出た ホテル代、ドヤ代が払えなくなった 差し押さえや他の事情で、家やアパートから立ち 退きさせられ 病院や施設などから出た後行き先がなくなった 家庭内のいざこざや、その他家庭内の事情 飲酒、ギャンブル その他 理由無し 2007年調査% 17.6 19.1 13.3 3.1 9.5 1.7 4.4 8.1 1.6 3.1 0.9 1.8 5.4 4.1 5.2 1.0 路上生活直前の住居形態(ドヤや飯場などから、通常の 賃貸住宅が最近は目立つ) 持ち家(一戸建て、マンションなど) 民間賃貸住宅(アパート・マンション) 公共賃貸住宅(公団賃貸住宅・公営住宅等) 勤め先の住宅や寮 親族・知人宅 住込み先 飯場・作業者宿舎(飯場など現場に仮設された宿 舎) 簡易宿泊所(ドヤ) ビジネス・カプセルホテル・サウナ・映画館 病院 更正施設等の福祉施設 自立支援センターやシェルター その他 2007年調査% 8.1 38.3 3.6 17.3 4.1 3.3 2003年調査% 8.1 37.5 3.2 13.8 3.1 3.5 13.7 13.9 8 1.8 0.2 0.3 0.4 0.8 11.8 1.9 0.7 0.6 ― 1.9 現在の仕事による収入月額(ホームレスの就労率は 実は7割程度と高い。また、現金収入も平均4万程度と高い。 →2012年速報3.5万円。 % 40.0 35.0 30.0 25.0 2003年調査% 2007年調査% 20.0 15.0 10.0 そ の 他 上 万 円 以 満 未 20 円 20 万 ~ 15 10 ~ 15 万 円 未 未 円 10 万 5~ 満 満 満 円 未 満 5万 3~ 3万 円 未 満 未 1~ 1万 円 未 円 00 ~ 50 00 50 10 00 ~ 10 00 円 未 満 満 5.0 0.0 今後どのような生活を望むか(最近、やや減ったとはいえ 就労希望率は高いし、就職活動も行なっている) きちんと就職して働きたい アルミ缶回収など都市雑業的な仕事 行政から支援を受けながらの軽い仕事 就職できないので福祉を利用して生活したい 入院したい 今のままでいい(路上(野宿)生活) わからない その他 求職活動をしている 今は求職活動をしていないが、今後求職活動をす る予定である 求職活動をしていないし、今後も求職活動する予 定はない 2007年調査% 37.0 9.1 10.9 11.4 1.0 18.3 5.6 6.7 2003年調査% 49.7 6.7 8.6 7.5 0.7 13.1 4.7 8.9 2007年調査% 19.6 2003年調査% 32.0 20.6 26.1 59.8 42.0 • ホームレスは意外に働きもの。就労意欲があ る(ただし、最近高齢化で減退しつつある)。 • しかも、就労収入はかなりある。「乞食ではな い」という点は、世界的に見ても珍しい。 • 若者や中年ではなく、その多くが中・高齢者の 男性である。 • 発生の経緯は、正規⇒非正規⇒日雇と段階的 な落層が中心。 • ただし、最近は、そのようなパターンに当ては まらない人々も増加。高齢化、長期化も著しい。 経済学からみたホームレス発生 の原因 • 各種調査では、失業や失職、倒産などの就労 要因が原因。 • 日本では、就労のみが強調。就労したいのに 就労できない状態にいることが原因。 • しかし、あまりに簡単に野宿生活に落ちる 人々の存在。また、失業率との連動の低さ。 • 平均4万円の現金収入でホームレス生活。 • 低家賃賃貸市場の機能不全も原因(市場の 失敗)⇒就労対策だけが支援策ではない。 • ホームレスの人々や予備軍である低所得者 に対する賃貸住宅市場に「情報の非対称性」 による市場の失敗があり、十分な供給できず。 • ①家賃滞納の可能性 • ②社会生活能力、近隣住民の反応 • ②借地借家法 • ③保証人、敷金、礼金、賃貸拒否 • ⇒住宅弱者といえる。高齢者、障害者同様、 住宅弱者対策として政策的対応が正当化さ れる。家賃補助、公営住宅割当、住宅扶助単 給、公的保証(地域生活移行支援)。ハウジン グファースト論の根拠。 住宅の質 I1 A 通常の住宅 U1 I2 U2 E U3 I3 B C F 広義のホームレス G I3 I2 D I1 他の財 ホームレス対策の経済学的根拠 • • • • • セーフティーネット不備論の不備 外部性 ・・・①結核などの伝染病 ②公園や駅、道路などの公共空間占有 ③一般市民が悲しい気分になる ④周辺環境の悪化と地価・賃貸料の低下(10 人で3%、鈴木2004) • ⑤医療扶助の利用増(無保険状態の放置は非 常に高くつく) • 外部性の対処として、ペナルティーか公費によ る支援策の選択。 • 情報の非対称性・・・生活保護へのモラルハザー ドと、低家賃住宅市場の問題 • 当てはまらない人ももちろん居るが、生活保護に 対するモラルハザードがある。生活保護にいずれ かかるから、労働調整して貯蓄、生産形成しない、 自立をしないという行動。特に、現在地保護が認 められたことにより、ホームレスの生活保護は非 常にかかりやすくなった。 • 低家賃住宅市場では、情報の非対称性に起因す る市場の失敗(敷金、礼金、保証人) 、借地借家 法、家賃滞納、近隣住民の迷惑⇒「住宅弱者」 へ の介入の正当性 • 非価値財 • ひとたびホームレスになってしまえば、様々な 不可逆性(様々な行政サービスを得るために は住所設定必要、路上生活は犯罪に巻き込 まれやすい) 消費者として合理的な判断が難しい人々の存 在。 • 対策としては、①公共空間の占有に刑罰・罰 金、②公費をかけた支援策の2択。前者は、 ホームレスの場合機能せず、結局高く付くた めに、②が政策的対応となる。 ホームレスの就労問題 墨田区悉皆聞き取り調査 (1)調査方法 • (1)第一次調査 • ①調査地域 墨田区全域 • ②調査対象 墨田区内に起居する全ホームレス • ③調査期間 平成16年10月~11月 • • • • (2)第二次調査(本調査) ①調査地域 墨田区全域 ②調査対象 第一次調査で把握されたホームレス ③調査期間 平成16年12月 • ・墨田区委託調査。 • ・調査の実施は、NPOふるさとの会、研究者、 緊急地域雇用創出特別対策推進事業費 を 用いた元ホームレス調査員。 • NPOふるさとの会はアウトリーチや炊き出し を通じてこの地区のホームレスとのコミュニ ケーションを持つ。元ホームレス調査員の動 員によりさらに信頼性が確保。 • 質問をプラカードにして恣意性を統御。 データ説明 表 4 就労の有無 サンプル数 仕事あり 仕事なし 全体 362 57 419 割合(%) 86.4 13.6 100 表 5 職種(複数回答) 廃品回収 建設日雇 公的就労 運輸日雇 サンドイッチマン チケットならび 屋台 その他雑業 その他 サンプル数 152 125 97 20 0 0 6 19 13 割合(複数回答) 43.6 35.8 27.8 5.7 0 0 1.7 5.4 3.7 注)その他雑業とは、家電修理,車整理,交代勤務,引っ越し,片づけ,宿直な ど。その他は、ホ テル 清掃,近所手伝い,缶詰販売,衣類販売,印刷,小屋ばらし 手伝い,倉庫フォー クリフトなど。 表 6 1 ヶ月あたりの収入 千円未満 千円~5千円未満 5千円~1万円未満 1~2万円未満 2~3万円未満 3~5万円未満 5~10万円未満 10~15万円未満 15~20万円 20万円以上 全体 サンプル数 2 20 22 103 93 62 35 11 3 7 358 割合(%) サンプル数 5 55 82 63 32 19 66 322 割合(%) 0.6 5.6 6.2 28.8 26 17.3 9.8 3.1 0.8 2 100 表 7 1 ヶ月あたりの労働日数 0日(就労なしとして処理) 1 , 2日 3 , 4日 5~9日 10~14日 15~19日 20日以上(具体的日数あり) 全体 1.6 17.0 25.7 19.5 9.9 5.9 20.4 100 -2 -4 -6 lwage 0 2 賃金率(1日あたり収入)と労働日数の関係(対数) 0 1 2 ljobday m 3 4 消費 U1 U2 A B 貯蓄ゼロ水準 C 生存限界水準 D O 労働日数 ホームレスの健康問題 • 大阪城一時仮設避難所入所ホームレスの検 診データの分析 • 慢性疾患を抱えるものの割合が8割以上 • 糖尿、高血圧、高脂血など、心臓関係の疾 患や脳関係の疾患に繋がるリスク群が多い。 また、肝機能障害も多い。 • 野宿期間が長くなるほど基本的に悪化。はじ めの1年で急激に悪化する。 • 野宿期間における逆転現象。 (1) 最高血圧 (2) 最低血圧 (3) GOT (4) GPT (5) γ-GTP (6) 血糖 (7) 総たんぱく 要 精 検 ・ 指 導 以 上 の 割 合 1年未満 20.8% 1年以上2年未満 12.5% 2年以上3年未満 30.0% 3年以上4年未満 18.9% 4年以上5年未満 34.8% 5年以上6年未満 36.0% 6年以上10年未満 28.6% 10年以上 27.3% 8.3% 12.5% 20.0% 10.8% 34.8% 20.0% 19.0% 27.3% 18.2% 0.0% 0.0% 2.9% 5.0% 12.5% 0.0% 0.0% 13.6% 0.0% 0.0% 2.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 36.4% 6.3% 15.0% 11.4% 10.0% 16.7% 0.0% 4.8% 18.2% 6.3% 35.0% 34.3% 40.0% 37.5% 30.0% 19.0% 0.0% 0.0% 0.0% 2.9% 0.0% 4.2% 0.0% 0.0% 要 医 療 の 割 合 1年未満 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上6年未満 6年以上10年未満 10年以上 4.2% 0.0% 10.0% 5.4% 17.4% 12.0% 4.8% 9.1% 4.2% 0.0% 5.0% 8.1% 13.0% 12.0% 4.8% 9.1% 9.1% 0.0% 0.0% 2.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 4.5% 0.0% 0.0% 2.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 27.3% 6.3% 10.0% 5.7% 10.0% 8.3% 0.0% 4.8% 18.2% 6.3% 5.0% 14.3% 35.0% 16.7% 25.0% 14.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% (mmHg) 147.0 140.9 147.3 142.9 153.8 145.9 146.9 146.9 (mmHg) 88.0 88.3 87.7 87.7 93.0 88.8 88.7 90.3 (IU/l) 56.5 26.9 24.7 30.9 31.5 37.5 26.8 25.4 (IU/l) 44.4 23.5 17.5 26.3 20.4 26.4 21.3 24.0 (IU/l) 182.2 71.8 70.8 47.2 55.1 116.3 32.6 48.3 (mg/dl) 126.8 103.3 111.8 116.8 136.4 107.5 117.5 125.2 (g/dl) 7.1 7.6 7.7 7.6 7.7 7.7 7.6 7.5 (8) A/G比 4.5% 0.0% 5.0% 2.9% 0.0% 8.3% 0.0% 0.0% (9) 総コレステロール 13.6% 25.0% 15.0% 17.1% 30.0% 12.5% 10.0% 9.5% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 20.0% 4.2% 5.0% 9.5% 平 均 値 1年未満 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上6年未満 6年以上10年未満 10年以上 1.6 1.5 1.5 1.6 1.5 1.4 1.5 1.4 (mg/dl) 188.1 202.9 191.9 197.2 228.9 187.5 189.7 195.0 (10) トリグリセリド 要 精 検 ・ 指 導 以 上 の 割 合 1年未満 27.3% 1年以上2年未満 37.5% 2年以上3年未満 25.0% 3年以上4年未満 31.4% 4年以上5年未満 45.0% 5年以上6年未満 20.8% 6年以上10年未満 25.0% 10年以上 19.0% 要 医 療 の 割 合 1年未満 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上6年未満 6年以上10年未満 10年以上 (11) HDLコレステロール 4.5% 0.0% 5.0% 2.9% 5.0% 8.3% 5.0% 0.0% (12) BMI 0.0% 12.5% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 8.7% (13) 尿酸 0.0% 12.5% 15.0% 8.6% 5.0% 16.7% 15.0% 9.5% (14) クレアチニン 54.5% 31.3% 55.0% 48.6% 45.0% 50.0% 65.0% 47.6% (15) 赤血球数 0.0% 6.3% 10.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 15.0% 2.9% 5.0% 8.3% 0.0% 4.8% (16) ヘモグロビン 0.0% 0.0% 5.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 4.8% (17) ヘマトクリット 4.5% 6.3% 15.0% 2.9% 5.0% 12.5% 5.0% 4.8% 0.0% 0.0% 5.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 平 均 値 1年未満 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上6年未満 6年以上10年未満 10年以上 (mg/dl) 164.0 185.6 203.9 179.0 240.2 183.4 140.1 170.5 (mg/dl) 61.5 61.1 61.4 61.3 61.4 58.2 63.3 62.7 22.5 24.5 23.1 22.3 23.1 21.5 21.6 23.4 (mg/dl) 5.3 6.2 5.4 5.4 5.6 5.9 5.1 5.5 (mg/dl) 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.7 (万/mm3) 429.7 443.8 450.8 447.5 473.0 455.0 438.1 456.3 (g/dl) 13.9 14.6 14.1 14.1 14.8 14.4 13.9 14.4 (%) 40.9 43.0 43.0 41.8 43.6 42.7 41.4 42.9 • 「体の具合がわるい」と回答したホームレスの有訴 率は、47.4%に上っているが、実際に通院をしてい る者はそのうち(有訴者)の19.7% • ホームレス達が既に健康保険証を保持しておらず、 全額自己負担をする余裕もないこと、あるいは通常 の医療機関に通院することが心理的にも困難であ ること等が背景 • 「無料低額診療所」があるが、外傷や急性疾患の治 療が主であり、高齢者が大半を占めるホームレス達 にとってより深刻な問題である慢性疾患の治療には 事実上対応できていない • 多くのホームレス達は自覚症状がありながら 治療を放置しているというのが現状であり、 最終的に疾患が重篤化した段階で、「救急搬 送」という形で入院を行うこととなる。 • 救急搬送による入院は、急迫保護として生活 保護の医療扶助単独給付(以下、医療単給) が認められるため、ホームレス達のいわば 「最後の切り札」 • 医療扶助の生活保護費総額に対する割合は 51.8%で生活扶助費 自立支援法の課題 • 2002年自立支援法成立。 • それ以降の施策の中心は自立支援事業、つ まり「就労支援」。 • 自立支援センター:全国で22ヶ所、定員2060 人の規模で運営されている • 自立支援事業のほかに、公園対策や日雇対 策から派生している緊急一時宿泊(シェル ター)事業:全国10ヶ所において定員2220人 • 巡回相談等の総合相談推進事業や、職業相 談・職業紹介、職業能力の開発等 写真は、JanJan及び、渡辺まさし氏の HPから転載 • 自立支援センターの入所期間は原則2ヶ月 (延長 2ヶ月) • 生活相談、住宅相談、就労相談、技能講習、法律 相談が提供。就労相談はハローワーク出向。 • ベッドのある相部屋、入浴、娯楽室、洗濯機(乾燥 機)、エアコンなどが整備 • 食事提供、日用品や理髪等も提供。 • 支給金:日曜品費、求職交通費、外食費、就労支度 金が提供、面接衣類の貸出 • 入所中は、飲酒や金銭の貸借、ギャンブル、ケンカ・ 口論、無断外出・外泊などが禁止 • 門限も設定 • 2003~2006年度の退所者22,721人のうち就労に よって退所した人数は5282人であり、就労退所率 は23.2%。 23% 38% 就労による退所 生活保護による退所 期限到来・無断退所 39% 出典:厚労省資料 • 通常型において2003~2006年度に退所者 した3,523人のうち就労によって退所した人 数は428人であり、就労退所率は12.1% 12% 23% 就労による退所 生活保護による退所 23% 42% 自立支援センターへの入 所 期限到来・無断退所 出典:厚労省資料 東京都の自立支援事業 第1ステップ (緊急一時保護とアセスメント) 第2ステップ (自立支援プログラム) 緊急一時保護センター 自立支援センター ・心身の健康回復 ・能力に応じた処遇方針 の決定 (原則1ヶ月入所) 就労自立を支援 (原則2ヶ月入所) 全体計画700人程度 (5箇所) 13年度 14年度 15年度 16年度 1箇所 1箇所 1箇所 2箇所 全体計画400人程度 (5箇所) 12年度 2箇所 13年度 2箇所 15年度 1箇所 第3ステップ (地域生活のサポート) 社会生活へ の復帰 就労自立 (都営住宅) グループホーム 生活・就労指導 就労自立 (アパート等) 16年度 1箇所 半福祉・半就労 (宿泊所等) 生活保護 (居宅、施設、入院) ≪多分野にわたる総合的対策の推進(目的)≫ 公共施設の適正管理 保健・医療の充実 就労機会の拡大 住宅の確保 • 墨田寮、渋谷寮、北寮、中央寮、杉並寮の5 施設が存在(合計で342名) • 各寮は東京都区部を5ブロックに分け、その 中で5年ごとに違う区に施設を移動してゆく • 管理は特別区人事・厚生事務組合が行い、 運営は委託を受けた社会福祉法人。 • 入所期間は原則2ヶ月 (延長2ヶ月) • 生活相談、住宅相談、就労相談、技能講習、 法律相談が提供。就労相談はハローワーク 出向。 • ベッドのある相部屋、入浴、娯楽室、洗濯機 (乾燥機)、エアコンなどが整備 • 食事提供、日用品や理髪等も提供。 • 支給金:日曜品費、求職交通費、外食費、就 労支度金が提供、面接衣類の貸出 • 入所中は、飲酒や金銭の貸借、ギャンブル、 ケンカ・口論、無断外出・外泊などが禁止 • 門限も設定 • 持ち込める荷物はダンボール1箱から2箱分 程度に制限 • ペット、動物を飼うことも禁止、家族も離散 緊急一時保護センター・自立支援セン ターを利用したにも関わらず再路上化 するケースが2割も存在している。 緊急一時保護センターの元入所者 緊急一時保護センターへの入所希望者 自立支援センターの元入所者 自立支援センターへの入所希望者 自立支援センターへの入所希望者( 非利用者のみ) 生活保護経験者( 医療扶助単給を含む) 平均 16.4% 19.0% 11.8% 14.9% 14.0% 15.6% 自立支援事業利用に対する簡単 な経済モデル。 賃金 率 W2 W1 65歳 年齢 入所期 間(T 1) 就労期間(T 2) 保護期間 • 2期間人的資本モデル • 入所と非入所の総価値を比較、NPVが高いほど 入所確率が増す。 • 費用としては、アパートや宿泊所に移った後の家 賃、借金の返済などの直接費用、自立支援セン ター入所時に失う資産(諸荷物、テント、テントを 置いていた場所の価値等)や、やはり入所時に失 う犬などの動物や同居家族ホームレス期間中の 自由な生活時間、生活習慣(アルコール、ギャン ブル等)の効用価値 w1T2 w2 (1 ) w1 T2 NPV C w1T1 1 r 1 r NPV w1T1 T2 1 r ( w2 w1 ) C • ①現在の賃金率が高いほど入所確率が低くなる(月 収入、賃金率、食事回数) • ②将来の賃金率が高いほど入所確率が高くなる(最 長職正社員、資格保有) • ③就労確率が高いほど入所確率が高くなる(健康、 年齢) • ④就労期間が長くなるほど(年齢が若いほど)入所 確率が高くなる(年齢)、 • ⑤費用が高くなるほど入所確率が低くなる(アルコー ル、テント、借金) • 鈴木・阪東(2006) では、①現在の賃金率が 入所希望率に対して負に有意、②若い層の ダミー変数(40代ダミー)が正で有意であり、 記述統計の結果とも合わせて、概ね上記のモ デルが妥当。 • 合理的に、自立支援事業に乗らない人々が いる。所得が高い人、高齢の人が多い理由に は合理性がある。自立支援事業の限界があ る。 • また、自立支援センター元入所者のホームレ スの就労に関する資質は、入所経験のない ホームレスと比較して必ずしも低くはなく、特 に入所希望者と比較すると明らかに高い。 • 自立支援事業ではカバーできない対象者に 対しては、それ以外の方策を模索する必要 性 • 2004年から東京では、ホームレス移行生活 支援事業(新宿中央公園、戸山公園、代々 木公園、隅田公園、上野公園)3年間で 1,541人が地域の借上げアパートに移行 • 自立とみなされる月収13万円以上を得ている 入居者は、約2割に過ぎず 。既に生活保護の 受給率は各区とも2~4割に上っている。 • 自立支援事業も、生活保護による退所率が4 割。 • 「東京ホームレス就職支援事業」 • 巡回相談事業とあわせた就労支援等 • 現状では、ホームレス対策の決め手は、「生活 保護頼り」である。 • 実際、ここ10年ほど、生活保護が最も大きな 対策として機能した。
© Copyright 2024 ExpyDoc