大電流 小ビームサイズ

高エネルギー加速器
KEK 幅 淳二
加速器とは



粒子に運動エネルギ-を与
えて、速度を上げるための装
置。
粒子の加速には、電場を用
いる。電荷をもった粒子は、
電場の中で、エネルギーをも
らい速度が高くなる。電子は
加速され、速度を上げて正の
電極に向かう。この時の電子
の運動エネルギ-は、電場
の中での位置エネルギ-が
運動エネルギ-に変えられた
ものである。
電極間の電圧が 1 ボルトの
時、電子の得るエネルギーを
1 電子ボルトと言う。
加速器のエネルギー






加速器の世界では、エネルギ-は上の電子ボルトで言い表
し、そこでの、エネルギ-の単位の呼び方は以下のようであ
る。
1 eV= 1 電子ボルト (エレクトロンボルト)
1 keV(ケブ)= 1 キロ電子ボルト= 103 eV:1000電子ボ
ルト
1 MeV(メブ)= 1 ミリオン電子ボルト= 106 eV:100万電
子ボルト
1 GeV(ジェブ)= 1 ギガ電子ボルト= 109 eV:10億電子ボ
ルト
1 TeV(テブ)= 1 テラ電子ボルト= 1012 eV:1兆電子ボル
ト
(以前の)身近な加速器

テレビやパソコンの
ディスプレー用のブラ
ウン管では、陰極から
の電子が約2万ボルト
の電位差で加速され、
20keVのエネルギー
を持った電子ビームと
して、ブラウン管の発
光面を叩き、発光して
います。
加速器の種別
加速器の種類
(加速粒子)
加速電場
ビーム
軌道
エネル
ギー領域
コッククロフト・ウオルトン
型加速器
(陽子、イオン)
静電場
直線
10MeV
バンデグラーフ型加速器
(陽子、イオン)
静電場
直線
100MeV
サイクロトロン
(陽子、イオン)
高周波
ら旋
10MeV
ベータトロン
(電子)
高周波
円
100MeV
シンクロトロン
(電子、陽子、イオン)
高周波
円
1,000GeV
線形加速器
(電子、陽子)
高周波
直線
100GeV
コッククロフト型
バンデグラーフ型加速器
京都大学のサイクロトロン

質量m、電荷eの荷電粒子が、速度v
で磁束密度Bの一様な磁場の中を、磁
場に直角に運動する時、粒 子に働くロ
-レンツ力Fは、evBです。この時の円
軌道の半径がrであれば、ロ-レンツ
力と遠心力の釣り合いの条件から、
mv2/r = evB

粒子が円軌道を一周するのに要する
時間は、
T=2πr/v = 2π m/eB
シンクロトロン

加速粒子を円形軌道に乗せるための
多数の偏向電磁石と粒子を加速する
ための電極に相当する高周波加速
空洞から構 成。加速粒子をイオン源
からビームとして取出し、線形加速器
を使って、あるエネルギーにまで加速
した後、円形軌道に打ち込む。このと
き、 円形軌道上の偏向電磁石の磁
場の強さは、最小にします。ビーム粒
子は、円形軌道を周回するたびに、
加速空洞を通過し、その度に、加速
されエネルギーが増加 する。それに
合わせて、磁場も増加させ、同じ円
軌道を周回するように調整する。そし
て、最高エネルギーに達した時、円
形軌道から離脱させ、外部 へビーム
として取り出す。
直線型加速器

ビ-ムを、直線状に並べた加速電場(ギャップ)によって加速
するものを、線形加速器と言う。電極は一つおきに共通に接
続され、その間に高周波電圧を加える。電極と電極の間の
ギャップに発生する電場は図に 示すように、一つおきにその
向きが異なっており、粒子がギャップから次のギャップに達す
るまでの時間が高周波の半周期になるように電極の長さを
選ぶと、 ギャップでの電場の向きが常に粒子を加速する向き
となる。
放射光加速器

高エネルギーの電子が磁場の中を運動するとき、電子はフレ
ミングの左手の法則に従って、円運動の中心に向かって力を
受け、軌道が曲げられる。この時、電 子の周りにあった電磁
場が振り落とされるようにして、電磁波が円軌道の接線方向
に放射される。この電磁波を放射光(Synchrotron
Radiation)と言う。この加速器では、加速が終わっ たビー
ムは、加速器から外部へ取り出すのではなく、その円軌道に
そって回り続けるので貯蔵リング(Storage Ring)とも呼ば
れる。
電子貯蔵リングの特徴

加速器の種類


ビームの貯蔵



シンクロトロンの一種
 閉じたおおむね丸いビーム軌道
 高周波加速
ビームエネルギーはほぼ一定で、電子(又は)陽電子ビー
ムを長時間保持
 ビーム寿命は、1時間程度から1日程度
放射光によるエネルギーロスを高周波加速で補う
用途


電子、陽電子(陽子)衝突型加速器(高エネルギー実験)
放射光利用(主に物性実験)
電子貯蔵リングの構成要素
概念図

偏向電磁石


高周波加速空洞
四極磁石
入射器
四極電磁石

入射用磁石





図1.2
ビームのエネルギーロスを補う
真空チェンバー


ビームの軌道が発散するのを防ぐレンズ
の役割
高周波加速空洞

偏向磁石
ビーム軌道を曲げておおむね丸い軌道
を作る
ビームの軌道近くを高真空に保ちビーム
寿命を長く保つ
入射器
入射用磁石
ビームモニタ系
加速器制御システム
KEKBトンネル内
曲線部
6極電磁石
2極電磁石
4極電磁石
陽電子リング
曲線部
2/4/6極磁石が規則的に配置されている
電子リング
ビーム粒子の運動(1)

ビームを構成する荷電粒子は, 磁石磁場から受ける力によって, 設計軌
道のまわりを水平/垂直 (x/y)方向に微小振動(ベータトロン振動
Betatron Oscillation/ Betatron Motion)しながらリングを周回する.
x(s)  Wx  x (s) cos x (s)  x0 

ビーム光学系 Optics

2極磁石(偏向磁石):ビームの設計軌道を形づくる




補正用2極磁石:ビーム軌道の補正に用いる
4極磁石:設計軌道まわりのビームの収束発散を制御する
6極磁石:運動量がずれた粒子に対する4極磁石の収束力の過不足分を補う. 色収差
補正.
粒子
設計軌道 ~ 基準座標曲線
http://accmac-server.kek.jp:8080/KEKB/index.html
KEKB巡業セミナー資料より
ビーム粒子の運動(2)




電子(陽電子)ビームの粒子はリング内に一様に分布せず, バンチと呼
ばれる塊になる.
バンチ内の粒子はシンクロトロン振動する. (バンチの前後、エネルギー
の高低)
高周波電場(KEKBでは508.9MHz)でビームを加速しているため, この高
周波電場の適切な位相のところだけに電子が安定に存在できる.
存在できるバンチの最大値は、リングの周長と高周波の周波数で決まる.
(KEKBでは5120)
E
t
http://accmac-server.kek.jp:8080/KEKB/index.html
KEKB巡業セミナー資料より
バンチ内の粒子の分布

Transverse方向(水平、垂直方向のビーム
サイズ)



リングの場所によって、ビームサイズが異なる
このビームサイズは、ビーム光学でレンズの役
割を果たす四極電磁石(Quadruple Magnet,
Q Magnet)のリング内の配置に依存する ->
β関数
Longitudinal方向(バンチ長)

高周波加速の加速電圧、偏向電磁石の強さな
どで決まる
衝突型加速器

衝突型加速器のメリット



粒子反応に寄与する実効エネルギー(重心系エネルギー)をFixed target
の実験に比べて飛躍的に高めることができる
KEKBでは、エネルギー効率を多少犠牲にして非対称エネルギー衝突を用
いる
タイプ

貯蔵リング型衝突加速器



リニアコライダー


シングル・リング・コライダー(TRISTAN等)
ダブル・リング・コライダー(KEKB等)
超高エネルギーの電子、陽電子コライダーで有効
実験の目的

エネルギー・フロンティア


TRISTAN, LEP, LHC…….
ルミノシティ・フロンティア


精密実験
KEKBはこのタイプのマシンとしては世界最強
まず素粒子製造のための加速器:
衝突型と固定標的型
Ecm  2 Elab mtarget
Ecm  E1  E2
(標的静止、高エネルギー)
(加速されたビームの同士の衝突)
電子陽電子衝突型リングのエネルギー
LEP
DAFNE
SPEAR,BEPC
KEKB, PEP-II、CESR
TRISTAN
CERN
モンブラン
レマン湖
ジュネーブ
周長27km
地下100m
衝突型蓄積リングの重要パラメータ

重心エネルギー


どんな物理を目指すかで決まる
ルミノシティ

設計値は勿論存在する。しかし、それを実現す
るには搾り出すような努力が必要
ルミノシティ

定義
EventRate  L  
ルミノシティ:
加速器の性能に依存
人間の努力により向上


素粒子反応の断面積
(精密実験を眼目とする)ファクトリ・マシンにとって、
ルミノシティはプロジェクトの命運を握る最重要パラ
メータ
加速器のパラメータによる
ルミノシティの表現
N  N f
L
RL
* *
4  x y
N  , N :
バンチ内の陽電子、電子の粒子数
f : 単位時間当たりの衝突の回数
 *x, *y : 衝突点での水平、垂直方向のビームサイズ
RL : 幾何学的理由によるルミノシティのreduction factor
通常1に近い

ルミノシティは、ビーム電流( I  N  f  e
ビームサイズによりほぼ決まる
)と衝突点での
ルミノシティを上げるには
大電流
電子・陽電子の
数を増やす
L
N e N e f
RL
4  *x *y
小ビームサイズ

断面積を小さく
ルミノシティの制限要因

ビーム電流

制限要因




高周波(RF)加速のパワー
真空チェンバーなどの大電流運転での耐性
ビーム不安定性
衝突点でのビームサイズ

ビームサイズ縮小の方法


衝突点でのβ関数を極限まで小さくする
ビームサイズ縮小の制限要因



β関数絞り込みの副作用(ダイナミックなアパーチャー減少など)
バンチ長の範囲でのビームサイズの増大
ビーム・ビーム効果によるビームサイズの増大


衝突型加速器で普遍的な制限要因
陽電子リングにおける電子雲(光電効果などで発生)によるビーム
サイズの増大

Bファクトリで始めて問題なる
Low- Optics


衝突点付近の特殊な四極電磁石により極限まで衝突点のβ
関数を絞り込む
β関数

リングの平均的な値


5~30m
衝突点(KEKBデザイン値)


水平方向(x*):33cm
垂直方向(y*):10mm
ビーム・ビーム効果


衝突点でぶつかる相手のビームによって生
じる現象の総称
(主に)相手のビームの非線形電磁場の影
響でビームサイズが増大することが、衝突
型加速器での主要なルミノシティ制限要因
の一つ
陽電子リングの不安定性
「総研大ジャーナルNo. 3」より
ソレノイドにより電子雲を抑える
ピーク・ルミノシティの変遷
まとめ



加速器の発展によって素粒子物理学は進
んできた
衝突型加速器の発明によって、到達可能な
エネルギーは飛躍的に増大した
自習は、加速器によって作り出される素粒
子反応の研究する装置(測定器)について
述べる