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Bファクトリーで何がわかるか
------反宇宙人の見分け方教えます
高エネルギー加速器研究機構
幅 淳二
粒子と反粒子
粒子と反粒子は光子から「対生成」によってペ
 ディラックは、反粒子の存在を
アで生成され、お互いが出会えば 「対消滅」し
光子になる。
予言した。(1928)
 相対論と量子論を融合させ、粒
反粒子は粒子と質量や寿命は等しく、
電荷の大きさも等しいが、符号が反対。
子の運動を記述するディラック
すべての素粒子は、反粒子をもつ。
方程式を導いた。
そこに負のエネルギー
準位の解が存在
P. A. M. Dirac
レプトン
クォーク
第三世代
tt -
トップ
タウ
第二世代
m
c
ミュー
チャーム
第一世代
u
e
アップ
電子
反レプトン
反クォーク
bnt
タウ
ボトム
ニュートリノ
sn
m
ミュー
ストレンジ
ニュートリノ
dne
ダウン
電子
ニュートリノ
tt +
bnt
反トップ
反タウ
反タウ
反ボトム
+
m
c
sn
+
u
e
dne
ニュートリノ
m
反ミュー
反ミュー 反ストレンジ
反チャーム
ニュートリノ
反アップ
陽電子
反ダウン
反電子
ニュートリノ
レプトンについても同様に、反レプトンがある
対称だったはずの物質と反物質、しかし
この宇宙には物質だけが残っているようにみえる
2005年12月12日

宇宙からの交信があっ
た。

初めての「未知との遭
遇」。歓迎準備で地球は
大パニック!

銀河系周辺を航行中
に君たち知的生命体
の存在を感知した。
これからそちら(地
球)に立ち寄って親
善を深めたい。


どんな料理でおもてなし?
やっぱり中華でしょ。
日本酒よりワインだよね?
最初はビールか?
そもそも地球の大気は大
丈夫?
??????
ある物理学者がふとつぶやいた
 ところでやつらは、反
宇宙から来た反宇宙
人じゃないだろうな。つ
まり、体も宇宙船も反
物質からできている。
反物質は、反陽子と反中性子でで
きた「反原子核」の周りを陽電子
が回る「反原子」から構成される。
 だとしたら、地球の大
気に触れたとたん、対
消滅して大爆発だ。
 大急ぎで確認するんだ。
反原子、反物質そして反宇宙
電子
ud
u
u
ud
陽電子
水素原子
反水素原子
ところでどうやったら確認できる?
 交信は電磁波(つまり  電荷もまた相対的な概
光子)を使ってる。反
念だ。原子を回る電子
「いい考えがある」 の電荷の+/-を尋
宇宙が相手でも区別
はつかない。
ねても意味がない。
素粒子物理学者が言った。
 粒子と反粒子は相対
「最近Bファクトリーで発見された
的な概念だ。反宇宙で
は反粒子が「普通」の
現象を利用すればよい。」
粒子。「あなた方は反
宇宙ですか」と尋ねて
ても意味はない。
中性B中間子 の二つの崩壊モード
K+
+
-
-
B
p
 K π と K π+
(-)
e‐
B
p+
e+
K-
950
1150
反宇宙人の見分け方

中性B中間子を、正反それぞれ一
億個ずつ用意する。
 ご用命は、つくば・高エネルギー加
速器研究機構、あるいはカリフォル
ニア・スタンフォード線形加速器セ
ンターまでお願いします。ただし生
産には現在のところ約一年かかり
ます。





それを自由に崩壊させる。寿命は1.
5ピコ秒なのでお時間はとらせませ

ん。ただしその全部を分析してくだ
さい。
荷電K中間子と荷電π中間子の対
に崩壊した事象を選び出す。
K中間子の電荷の符号(プラスとマ
イナス、これは相対的概念)で分類。
事象の多かったほうの電荷の符号
に注目。
その宇宙の原子中で、軌道を回る
粒子(われわれの世界なら電子)の
電荷の符号と先の多かったK中間
子の符号を比較。
反対符号ならOK!彼らはわれわ
れ同様、物質世界の通常宇宙人だ。
握手をしても消滅しない。親善を深
めよ。
だがもし、同符号なら>>>>
粒子・反粒子の非対称CP対称性の破れ
 小林益川モデルの提唱(1973)
 3世代6種類のクォークで定式化可能
小林誠
益川敏英
当時は3種類の
クォークしか見つ
かっていなかった!
大胆な予想
(その後すべてのクォークが発見された)
いつノーベル賞でもおかしくない!
クォークの崩壊(1973以前)
小林・益川の要請
t
トップ
c
チャーム
u
アップ
b
ボトム
s
ストレンジ
d
ダウン
CP非保存の説明
新たなクオークの
導入
J/yの発見
(1974)
n p + e + n
Kp + m + n
小林・益川行列(KM matrix)
小林益川クォーク混合行列
 d '  VudVusVub  d 
 
  
 s '   VcdVcsVcb  s 
 b'  V V V  b 
   td ts tb  
クォークで描いてみよう
•π+中間子の崩壊
•中性子の崩壊
•D+中間子のKπ崩壊
•B0中間子のDーμ+ν
•B0中間子のπーμ+ν
b1/3
W+
Vab
a2/3
クオークの弱い相互作用基本形
小林益川行列とユニタリ三角形
b uln
with several
approaches
(excl. & incl.)
B DK
B D(*)p
(0,0)
__
(r, h)
f2(a)
B0  p+pBrp
Brr
_
BB mixing (Dmd)
ユニタリ三角形
f3(g)
B D(*)ln
f1(b)
(0,1)
B0  J/y KS(L), y(2S) KS,
c1 KS, hc KS
CP対称性研究のために粒子と反
粒子をつくる
 人工的に粒子と反粒子を作り出し、その性
質の違いを探る。
 違いが最も際立つと予想されるbクオークの
システム(B中間子)にターゲットを絞る。
 電子と陽電子(これまた粒子と反粒子)を加
速、衝突させてB中間子のペアを大量生産
する。(Bファクトリー)
電子陽電子衝突反応で素粒子の
ペアが製造可能
LEP
DANE
SPEAR,BEPC
KEKB, PEP-II、CESR
TRISTAN
10.58GeV/c2
“10Hz for L=1034”
Y(4S)
_
g B0B0 (~50%)
g B+B- (~50%)
5.28  2 = 10.56GeV/c2
Just above the threshold
KEK BファクトリーでのB中間子生成
_
~50%
e+(3.5GeV) e-(8GeV) g (4s) g B0B0
ウプシロン
10.58 GeV/c2
B0中間子
寿命 t(B0) = 1.537 ps
質量 M(B0) = 5.279 GeV/c2
B0中間子
d
b
ダウン
反ボトム
b
d
反ダウン
ボトム
(4s)の生成レート約10Hz
_
年間約1億個の中性B中間子:B0とB0が同数生成される
(ほぼ同数の荷電B中間子対B+B-も生成される)
筑波山
日光
Belle
KEKB Rings
Linac
高エネ研
(KEK)
KEKとKEKB加速器
KEKB Accelerator
 2重リング構造
 ビームのエネルギー
ee+




非対称衝突
8GeV (electron)
3.5GeV (positron)
Operated on (4s)
 リングの周長
 ~3018m
8 GeV e3.5 GeV e+
Linac
 高周波加速システム(RF)
 fRF ~ 509MHz
 ARES (LER)
 ARES+SCC (HER)
すべての源、電子銃
J-ARC
Linac (入射器)
ライナックからリングへの入射
RF acceleration
ARC section: various magnets
Two rings
Fuji もうひとつの対称点
Go into the collision point
ルミノシティ(luminosity)
 定義
EventRate  L  

ルミノシティ:
加速器の性能に依存
人間の努力により向上
素粒子反応の
断面積
(反応の発生
確率)
 (精密実験を眼目とする)ファクトリ・マシ
ンにとって、ルミノシティはプロジェクトの
命運を握る最重要パラメータ
Two B factories in operation
since 1999
KEKB collider for Belle
PEPII collider for BaBar
KEK
KEKB
Collider
SLAC
KEKB:世界一の性能を達成
1.61x1034/cm2/sec→
Peak luminosity:
15 BB 対/sec
Daily luminosity: 1200/pb→ 120万 BB対/日
これまでの積分 : 500/fb → 5億 BB対
KEKB
PEPII
1989:
Design work started.
1994:
Approval of the budget,
construction started.
June 1995:
KEKB Design Report
Sep. 1997:
Commissioning of the
injector Linac started.
Dec. 1998:
First beam at HER.
Jan. 1999:
First beam at LER.
May 1999:
Belle roll-in.
June 1999:
First event at Belle.
Apr. 2001:
World record of the
luminosity, 3.4 /nb/s.
Oct. 2002:
World record of the
integrated luminosity,
100 /fb.
May 2003:
Exceeded the design
luminosity, 10 /nb/s.
Feb. 2004:
Exceeded 12 /nb/s &
200 /fb.
Mar 2005:
15 /nb/s & > 1000
/pb/day
Nov. 2005:
500 /fb
… continues updating self records …
加速器のパラメータによる
ルミノシティの表現
N + N- f
L
RL
* *
4 p x y
N + , N- : バンチ内の陽電子、電子の粒子数
f : 単位時間当たりの衝突の回数
 , : 衝突点での水平、垂直方向のビームサイズ
*
x
*
y
RL : 幾何学的理由によるルミノシティのreduction factor
通常1に近い
ルミノシティは、ビーム電流( I  N  f  e )と
衝突点でのビームサイズによりほぼ決まる
Colliding Bunches at KEKB
Hor. Crossing Angle
22 mrad
World’s smallest beam
size of ring colliders
ビームサイ
ズは最小に
速い繰り返しで
衝突させる
7×1010
positrons/bunch
5.8×1010
electrons/bunch
ビーム高さ 2.2 mm
ビーム幅 110 mm
数多くの
電子を
長さ: 7 mm
回転周期: 3000m/光速=10 msec
1284 bunches / beam
Collision with a finite crossing angle
Easier beam separation.
No bend for the incoming beam (less
radiation).
No separation bends (less background).
Simplified IR.
Room for solenoid compensation, smaller
 .
So, the merits were obvious, but was that safe enough?
What about the synchrotron-betatron coupling?
陽電子リングの不安定性
「総研大ジャーナルNo. 3」より
電子雲(electron cloud)によるビームサイズ
の増大
ARES 加速空洞
 KEKが誇る独創的発明
 貯蔵空洞に蓄えられた高
周波エネルギーによる
ビーム不安定性の克服
Storage
Accel.
Resonant
超伝導加速空洞
• 世界最大のビーム電流,
1.3 A.
• 超伝導の高い効率で
ビームの不安定性を克
服
Winding more solenoids in the LER
ビーム・ビーム効果
 衝突点でぶつかる相手のビームによって生
じる現象の総称
 (主に)相手のビームの非線形電磁場の影
響でビームサイズが増大することが、衝突
型加速器での主要なルミノシティ制限要因
の一つ
ビーム・ビーム効果[続]
y
 ビーム・ビーム・パラメータ
beam-beam limit
 x,y 
re
2pg  
*
N b x,y
*
x,y
(
*
x
+
*
y

beam size 増大
Rx,y
beam size 一定
 ビーム・ビーム力によるTune shiftの大きさを表す
 ビーム・ビーム力の非線形性の強さの目安も与える
 ビーム・ビーム・パラメータの最大値が衝突型加速器の性能の一
つの指標
 ビーム・ビーム・パラメータを大きくできると、ルミノシティが向上する
 衝突点でのβ関数をx,y同じ割合で絞り込むとビーム・ビームパラ
メータは変わらない->Low-b opticsの有効性
Ibeam
Crab crossing is coming soon!
Crab crossing will boost the beam-beam parameter up to 0.19!
K. Ohmi
Head-on(crab)
(Strong-strong simulation)
crossing angle 30 mrad
(at the optimum tune)
Superconducting crab cavities are
under development, will be installed in
KEKB in early 2006.
Input Coupler
I.D. 240
I.R. 90
I.D. 120
I.D. 188
I.R.241.5
Coaxial Coupler
866
I.R. 20
I.D. 30
Monitor Port
0
100
50
150
483
scale (cm)
K. Hosoyama, et al
間接的CPの破れ測定の原理
(時間依存型CPの破れ)
B・反Bの判定
電子(8GeV)
崩壊モード特定
陽電子(3.5GeV)
B
B
(4S)
10.58GeV/c2
Dz
Dz  cbgtB ~ 200 mm
Dz
c bg
=D t
Time-dependent CP violation in
(CP = +1)
B0
made by H. Miyake
Mixing-induced CPV
(A = -C )
Direct CPV
0 : combined result
B0  J/y K
_
B0 tag
B0 tag
sin2f1= 0.652 ±0.039 ±0.020
A = 0.010 ±0.026 ±0.036
(stat) (sys)
386M BB
BG subtracted asymmetry
Belle preliminary
BaBar measurement
sin2f1= 0.722  0.040_  0.023
(227 M BB pairs)
WA: sin2f1= 0.69 ±0.03
Good tags
< 5% accuracy !
consistent w/ SM expectation
ユニタリー三角形
Bファクトリーで角度決定・・・・・高精度化更に進行中
Dmd
b fu1l =
n (22  1)º
bdg
+13
Vud f
Vub* =
(99 V-8td V)º
*
2 f2(a
+15 tb
f3 = (63 -12 )º
f3(g
f1(b
f1 + fV2cd +
*f
Vcb
3
=
b+20
cln
(184 -14 )º
(naïve sum by the speaker)
Summary




Bファクトリーは素粒子のフレーバーの謎を解き明か
すユニークなマシンだ。
KEKB はルミノシティ性能で世界のトップを走り続けて
いる。
ユニタリー三角形は予想を上回るはやさで、確定され
つつある。
今後数年では10億個のB中間子対を生産。
もっと稀な(珍しい)現象の研究(10-8の感度)
小林・益川理論の限界がみえるかも
標準理論を越えた新物理(超対称性理論など)

クオークもレプトンも3世代。何か深い理由があるに違
いない。そのヒントが見つかるか。