第五回

アーカイブズとガバナンス
―同和地区に関する行政文書を例に―
07/05/08ガバナンス論
情報学研究科
清水惠枝
行政の同和対策

「部落」とは?
江戸時代の徳川幕府による身分制度⇒世襲化
明治政府による身分制度の廃止(四民平等)
しかし、対象地区や居住民への不利益つづく
(就職、結婚、生活環境整備の遅れなど)

戦後、行政の同和対策
同和地区とは、歴史的社会的理由により生活環境等
の安定向上が阻害されている地域
(同和対策事業特別措置法第1条)
・生活環境改善、同和教育などを行う
2
アーカイブズ(Archives)
同和対策に関する
アーカイブズの例
組織が業務の処理過程で作成または
取得した文書のうち、特に歴史的、
文化的、証拠的価値などをもつために、
永続的に保存され、利用される文書。
『昭和46年農林業地域改善対策事業出来高設計(同和対策)』

【文書番号】 13838-1 【文書件名】同和地区実態調査表の調査項目等の照会に
ついて(回答)
【施行年月日】昭和 45年 5月15日 【差出名】農政普及課長 【宛先名】厚生部長 【利用制限】閲覧非
【資料概要】同和地区実態調査表の調査項目等の照会に対する回答、[添付資料]農山漁村同和対策事
業関係の実態調査表、…

【文書番号】 13838-2 【文書件名】昭和45年度農山漁村同和対策事業計画の協
議について
【施行年月日】昭和 45年 5月19日 【差出名】福井県知事中川平太夫 【宛先名】北陸農政局長 【利用制
限】閲覧非
【資料概要】農山漁村同和対策事業実施要領第2の4の規定に基づく協議、[添付資料]事業計画書、実
施計画書

【文書番号】 13838-3 【文書件名】同和対策事業(農山漁村)施設設計書(事
業種目農道新設)
【施行年月日】昭和 45年 5月 1日 【宛先名】福井県知事中川平太夫 【利用制限】閲覧非
【資料概要】同和対策事業(農山漁村)施設設計書、[添付資料]設計説明書、平面図等

【文書番号】 13838-4 【文書件名】昭和45年度農山漁村同和対策事業計画の承
認について
【施行年月日】昭和 45年 6月23日 【差出名】福井県知事中川平太夫 【利用制限】閲覧非
【資料概要】農山漁村同和対策事業実施要領第2の1に基づく承認通知、昭和45年6月23日付福井県指令農
普第1488…
3
アーカイブズが果たす役割

アーカイブズの利用者
・地元の人、記録を作った組織の人、先祖調べの人、歴史
研究者、教員、学生、社会学者、所属する組織から利害
を被っている人、報道関係者
 アーカイブズを何のために利用する?
・問い合わせに対応するため、
・教育のため、研究の資料として、
・過去の事例調査のため、
・組織の名声のため、
・組織活動の正当性を証明するため、
・組織における過去の意思決定の経緯を参照して、未来の組織経営
の参考にするため、
4
アーカイブズとアーキビスト
公文書館
アーキビスト(Archivists)
組織の資料室や公文書館な
どにおいてアーカイブズを収
集し管理する。アーカイブズ
の保存と利用のために従事
する専門職員。
歴史的公文書
(Archives )
利ア
用ー
制キ
限ビ
のス
判ト
断に
よ
る
公
開
適切なガバナンス
による決定
5
アーキビストの倫理要綱(抜粋)
(ICA1996年北京大会採択)







1.アーキビストはアーカイブズを完全のまま保護します。 一部を差換えた
り、破棄したりしません。証拠性を保証します。
5.アーキビストはアーカイブズに対する行為を説明できなければなりませ
ん。
6.アーキビストは利用者に対して、公平にアーカイブズを提供します。
7.アーキビストは公開とプライバシーの両方を尊重します。法律の範囲内
でアーカイブズを取り扱います。
8.アーキビストは利害関係のなかでも自らの信用を貫きます。逆に自らの
地位を不公正な利益のために使いません。
9.アーキビストは専門職として自らの専門知識と経験の向上に努めなけ
ればなりません。
10.アーキビストは他の領域の専門家と協力してアーカイブズの保存と利
用に努めます。
http://www.jsai.jp/file/archi.html
6
アーキビストが考慮すべき諸条件
同和地区住民
のコミュニティ
日本国憲法 第14条
すべて国民は、法の下
に平等
当事者の
プライバシー
研究の資料
として使いたい
事実を正確に知っ
て社会問題を解
行政の説明責任
決したい
Archives
アーカイブズの内
容から、まだ公開
するべきでない
自分のルーツを
知りたい
を問いたい
この問題はそっと
しておくべきだ
etc.…
7
課 題
話し合っていただきたいこと…
みなさんは、アーキビストです。
アーカイブズの公開の是非について
どのようなプロセスを経るとよいでしょ
う?
「ガバナンス8つの主要な性格」に照らして考えてください。
参加、合意、説明、透明性、包含性、実行、効果、合法性
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