07行動分析学特論 (1)行動分析学の基礎 応用行動分析/行動分析学特論/演習の参考資料です。 (復習のための資料) 望月昭 [email protected] HP: http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~mochi/ ブログ http://d.hatena.ne.jp/marumo55/ 1 本日の課題 1)心理学あるいは行動科学とは? 2)相関と因果の違いは? 3)2つの変数:独立変数と従属変数 4)実験とはどのような作業か? 5)行動分析学とは? ミニヒストリー 6)行動分析学の特徴は? 変数の特徴 7)行動の分類: 消長の原因を、独立変数である環境刺激出現のタイ ミングで分類する。 レスポンデントとオペラントという分類 2 行動の科学一般の話で す。 1)行動と環境との法則性の発見 ある「行動」はなぜ生じるのか? (因果関係をさぐる) この基本的な作業をどのように 行うか? 3 2)相関か因果か? (例) なまずのひげが動くとき、よく地震が起こる (みたい) A.なまずのひげが動く B. 地震がおこる 確かに、AとBは関係がある (=「相関」がある)。 Aをよく観察していれば、Bを予測(predict)はできる。 では、AはBの「原因」として良いかどうか? 4 3)実験(Experiment)の意味 実験はなぜ行われるのか? ある事象の原因と思われる事象(なまずのひげ動き) を操作して、実際に予測した結果(地震)が生じるか 原因と思われる事象(=独立変数)を操作して、その結果 として、他の事象(=従属変数)が制御(Control)されるか をみる → 実験 5 実験からわかること 観察から示された相関関係による「予測」に くわえて、実験によって「制御」(control)できた場 合、因果関係があったと(いちおう)言える。 因果関係の必要条件 予測(prediction)と制御(control) 相関だけから原因を断定してはいけない。 実験できないものには、控えめな態度を! 控えめでないヒトがいろいろ理論を作る。 6 4)行動分析学(Behavior Analysis) 心理学の中では、「行動主義」という 立場の最終的姿 • • 行動分析学 (Behavior Analysis) 1)実験的行動分析 Experimental Behavior Analysis 2)応用行動分析 Applied Behavior Analysis (ABA) B.F. Skinner 7 歴史:生物学的属性か環境との関係か • 20世紀の初頭では、 「行動主義」がメインだった (米国) ・試行錯誤学習 (Trial and Error) ・刺激-反応 の組み合わせ(機械的) 「やってみなはれ」風な心意気が 米国では受けた。 8 ところが・・・・ ウォルフガング・ケーラー(1925) 「チンパンジーの洞察学習」 手の届かないところにバナナがつるしてある. 隅には踏み台があった. しばらくチンパンは,ジャンプしたりしたが手が とどなかない.「しばらく考えた」 そして「!」という感じで,踏み台をバナナの下 まで持ってきて,それに乗ってバナナをget! 9 ほんなら、椅子を積み上げて と 10 どんなもんじゃ! やったわね、 11 踏み台と棒も 使うぞ! 12 ケーラーの研究 • いかにもチンパンジーが「考えて」 行動しているように見える。 • デンショバトやラットではできそう もない 13 そして時代は下って20世紀も後半に ●ケーラー派:「ネズミやハトじゃ無理ね.チンパン ジーとか人間とか霊長類の固有の能力だよ.だから, 人間のことを考えるには,こういう固有の「能力」につ いて研究していかないとだめ」 ○行動主義派:「もちろんハトと人間の能力は違う.で も,能力の差って言ってしまったらそれで話は終わり だろ」 ●ケーラー派:「ほな,ハトでこんなことができまっ か?」 ○新しい行動主義派(行動分析学) 「やってやろうじゃん!」 14 Epstein, R. (1996) “Insight” in pigeon 15 Epsteinの実験 「バナナを踏み台でとる」という問題には2つの大き な行動の獲得が必要だろう.それは 1)バナナをつつくとそれがとれる 2)踏み台を移動させて「目的地」につく. 2つとも必要か,試してみよう(実験). それまで全然,経験のないデンショバトを使って やってみよう. 洞察と言われるような「個体の能力」ではなく、外的 に操作可能な経験によって、同じ行動を生み出せ るかも知れない (説明できるかも知れない) 16 踏み台でバナナ peckだけを練習 踏み台でバナナ peck/踏み台 の無目的移動 だけを練習 踏み台でバナナ peck + 踏み台の目的 地移動を訓練 17 この研究が示すもの 1)観察可能な環境事象を、取り扱う内容 とする(教育・援助実践には不可欠) 2)求められた課題について、そこに含まれ る必要な行動を獲得させれば、複雑に見え る行動も獲得が可能である。 3)なんとかなる! 18 5)行動分析学の特徴は? ・なぜ、ある行動をするのか(できるのか) 1)生物学的属性、個人の能力? 2)現在と過去の環境との相互作用? 2)を選ぶことを「宣言」します! (どちらが科学的に正しいという事ではない) 19 行動分析学の特徴:変数の特徴 (1)研究の対象は行動それ自体である。行動を通 して心ないし意識や認知あるいは脳の働きなどを 研究するのではない (2)行動に関するすべての出来事を、同一の理論 的枠組みとできるだけ少ない共通の原理で分析す る(parsimony:例外の多い枠組みはダサイ) (3)行動の原因(独立変数)を、個体の内部にで はなく、個体をとりまく過去および現在の外的環境 のなかにもとめる (佐藤方哉:2001) 20 行動分析の基本: 「分析するということ」: 行動の原因について、相関で同定する場合も あるが、 基本は実験によって、行動の原因を検討する。 これは、実験的行動分析でも、応用行動分析 でも同じ。 (問題行動の同定などで、インタビューや観察のみの分析は 相関研究、実際に原因と思われる環境設定を実験的に示し て確認するのは実験的分析(アナログ分析と呼ぶ)但し、後 者は倫理的観点からも要注意) 21 6) 行動の分類:消長を決める独立変数の 出現タイミングに注目する 1)レスポンデントとオペラント レスポンデント 目に光りが入ると瞳孔が 縮む。 オペラント 背伸びをする 歩く 膝を叩くと伸びる(膝蓋腱 反射) 本を読む 新生児の原始反射 投票行動をする 温度や緊迫状況などでの 発汗、心拍昂進、 相づちをうつ 考える げんをかつぐ 22 レスポンデントとオペラント:分類の基準 レスポンデント 無意識的? 生得的? オペラント 意識的? 意識性なしの行動 多し 後天的(学習的)? 次ページ参照 先行する刺激に 専ら統制される 後続する刺激によっ て次の機会での消長 が決まる どのように操作可能か、という分類の仕方をすることで、は じめて実践的に使える(業務用心理学) 23 後続する刺激によって 当該の行動の次の機会での消長が決まる? 「後続する刺激が行動の消長を決まる? それは時間的順序がおかしい」と いう批判があった。時間的に後にくるものが前の反応に影響を与え る??? よくある非行:「だから反応が出る前の内的状況をさぐる必要がある」(S-O-R 式考え:認知心理)という方向にいくヒトもいる ★「次の機会での消長」と言ってるでしょ。 (行動分析学) つまり行動分析学は、「繰り返しのある行動」を対象とする点が基本。行動 分析学は、個体と環境の間の一定に安定したバランス状態(定常状態)と しての「行動」を扱うのが基本。 お! これは吉兆の「一見さんお断り」の世界か! HPの、「最近考えること」の中の 「デニーズへようこそ」で述べている「負けの心理学」という表現を参照して ください。 24 という具合に、研究行動や定 義の意味も行動的に振り返る 癖をつけよう 分類とは(分類する行動の意味) • 分類する「行動」も、オペラント行動です。どのようにで もできる(恣意的:次の時間にやります) • なぜ、さっきにようにオペラントとレスポンデントを分類 するか? • • 消長を「統制」する方法による分類である。 原因を明確に同定できる。 このことは、対人援助といった実践的方法とし ても重要。という「機能」があるから。 25 レスポンデント行動 新しいレスポンデント反応の形成 ・レスポンデント条件づけ 特徴:反応の形態自体は(基本的に)同じ パブロフの犬 新しい先行刺激の統制を受けるようになる 口に食べ物 唾液反射 無条件刺激 条件反応 音刺激 対提示操作 条件反応(反射) 無 定位反射 無条件反応 新しい刺激-反応の組み合わせは、先行刺激の対提示 のみで成立(レスポンデント条件づけ) 26 学習されたレスポンデント行動の 消去と忘却 ・消去:条件刺激のみ提示される 条件刺激に新しい刺激が対提示される ・忘却:条件刺激自体が提示されない。 問題:「匂い刺激で、昔の思い出が、よく蘇る 理由は?」(視覚や聴覚に比べて) 「よごれちまった悲しみ?!」 27
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