鶏卵・食鳥肉の安全性向上の取組み方

定例学習会
2009年5月14日
鶏卵・食鳥肉の安全性向上の取組み方
鹿児島大学獣医公衆衛生学教授 岡本嘉六
◆ マルイの安心・安全
卵ひとつとってみても、そこに自信と責任がしっかりとつまって
いると言う人もいます。自分の商品に自信を持つということは、自
分の商品に責任を持つということです。私たちがこの30年間取り
組んできた「安心・安全」は、今やすっかり定着しました。あるいは、
生協さんとの産直運動の中で実践してきた、「商品のむこうに生
産者の顔が見える」ということは、今日流行の言葉で言えば、トレ
ーサビリティではないでしょうか。」とかなんとか、自慢しているわ
けではありませんが(いやいや自慢しているのです)、やはり私た
ちは、これまでの自分たちの考えはそう間違っていなかったと、ち
ょっぴり胸を張ったりするのです。
ラボラトリー
ラボラトリーは、安全なたまご・チキン・加工食品をお客様にお届けするために、
鶏の健康維持と、生産・加工・流通の衛生管理を基に、グループ全体における衛生・
品質管理部門としての役割を担当しています。
* にわとりの健康管理 *
* 農場衛生管理 *
* 飼料工場 衛生検査 *
* 飼料原料・製品衛生検査/残留農薬検査 *
* 鶏肉・鶏卵 残留物質検査 *
* 食品工場(チキンセンター・加工センター) 工程衛生検査*
* 食品工程(鶏卵)・製品(鶏卵)衛生検査 *
* 環境検査 *
* 運送車輌 衛生検査 *
50000
40000
件数
患者数
死者数
5000
4000
30000
3000
20000
20 2000
10000
10 1000
0
0
食中毒事故の件数、患者数、死者数の年次推移
0
細菌
40,000
35,000
細菌
600
30,000
25,000
自然毒
化学物質
自然毒
500
20,000
400
15,000
300
化学物質
200
100
0
食中毒患者数の推移
20
:総数
:細菌
:自然毒
化学物質による死亡者はいない
18
16
14
年 12
間
死 10
亡
数 8
6
4
2
0
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
25
20
累
積 15
死
亡
者 10
数
5
0
原因食品別にみた食中毒死亡者数
(1996~2002)
40
30
累
積
死 20
亡
者
数 10
7年間で67名の死亡者が発生したが、
その中の36名が家庭の食事を原因とし
ており、自分で取ってきたフグ、キノコを
自分で調理して起きた事故である。
0
食事場所別にみた食中毒死亡者数
(1996~2002)
死亡者の大半は家庭の食事 (2003~2008)
年
2003
2004
2005
2006
死亡数
6
内家庭
4
その他 販売店
仕出屋
5
3
販売店
不明
7
6
飲食店
5
4
仕出屋
植物性
1
キノコ
4
キノコ3
3
キノコ2
トリカブト
グロリオサ グロリオサ/?
2
キノコ
イヌサフラン
動物性
細菌性
3
フグ3
1
2
フグ2
2
2007
2008
4
7
3
6
その他 販売店
34名中26名が家庭の食事で死亡!
2
フグ2
1
1
フグ
2
4
キノコ2
3
フグ3
0
0
3
フグ3
1
フグ14名、キノコ9名、グロリオサ2名、トリカブト1名、細菌7名
グロリオサの球根
静岡1名
植物性自然毒
新潟1名
フグ
3名
長崎2名
広島1名
魚介類
魚介類加工品
肉類及びその加工品
卵類及びその加工品
事故数:1,289件
乳類及びその加工品
穀類及びその加工品
野菜及びその加工品
患者数:33,477名
菓子類
複合調理食品
その他
不明
キノコ 2名
愛知、大阪
死亡数:7名
食中毒事故
2007年(平成19年)
7.0
全
体
に
占
め
る
割
合
(
%
)
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
食中毒全体に占める割合の推移
卵類およびその加工品:
肉類(牛、豚、鶏)およびその加工品:
患者数、
件数
患者数、
件数
患者数
サルモネラ:
18,000
カンピロバクター:
患者数、
件数
患者数
件数
件数
1,800
16,000
1,600
14,000
1,400
12,000
1,200
10,000
1,000
8,000
800
6,000
600
4,000
400
2,000
200
0
0
サルモネラとカンピロバクターによる食中毒の推移
食
中
毒
事
故
に
占
め
る
割
合
(
%
)
40
30
20
10
0
サルモネラ:
患者数、
件数
カンピロバクター:
患者数
件数
4
2
0
0~4
累
積
死
亡
者
数
12
10
8
6
4
5~9
:動物性自然毒
:植物性自然毒
:大腸菌
:サルモネラ
:ぶどう球菌
:腸炎ビブリオ
10~14
15~19
20~29
中高年への衛生教育
2
0
30~39
40~49
50~59
60~69
70~
年齢
年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数
(1996~2002)
死者数
人口
50歳
15歳
患者数
0
20
40
60
80
100%
食中毒患者数および死者数の年齢別割合
:0~4
:30~39
:5~9
:40~49
:10~14
:50~59
:15~19
:60~69
:20~29
:70~
米国の食品規格コード(Food Code )
1-201 用語の定義と適用範囲
(44)高感受性集団(Highly susceptible
population)とは、次の理由で、一般集団の人より食
品媒介性疾患に罹りやすい人をいう。
(i) 免疫低下者、就学前児童、老人
(ii) デイケア施設、腎臓透析センター、病院または
療養所、看護付老人ホームなどの健康管理または
補助生活を受けている人。
日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に
関する法的根拠を設けることが重要である
健康弱者
(ハイリスク集団)
自主衛生管理
免疫低下者(HIV、糖尿病、
癌、重度の疾患など)
子供、老人、妊婦、病弱者
に対する特別措置
高度の安全性 = 付加価値
第三者認証
HACCP
(食肉処理場・食品工場)
HACCP
(食肉処理場・食品工場)
一般健康成人
衛生教育
ISO
SQF
Global GAP
農場でのGAP
一般的衛生管理
法律による規制
一般的衛生管理
食品衛生法
一般衛生基準
(PP;Prerequisite Program)
適性製造規範
(GMP;Good Manufacturing Practice)
衛生標準作業手順
(SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure)
衛生基準
営業許可
営業停止
食品の安全性に関わる社会システム:食品工場
低
個人衛生
自主衛生管理
法的規制
リ
ス
ク
・
レ
ベ
ル
衛生教育に掛かる費用
法的規制の水準を上げると、その分、
衛生対策費と監視業務の経費を税金で
賄わねばならない。赤字国債が問題とな
っている現状で、実行できますか?
商品価格
HACCP等
の費用
国民経済として
無駄な経費
法的規制
税金
高
ハイリスク集団
一般健康成人
リスク管理と経費負担のモデル
GAP管理基準作成
産業界のそれぞれ
の部分において、自
主管理基準を検討・
合意する。獣医界は
その基礎となる法令
等に基づく基準を整
理する。
生産過程における
HACCPシステム
の構築
米国の家禽向上国家計
GAPシステム
画(NPIP)のような法令
を構築すること
でGAPを定めた場合に
が先決であり、と
あっても、それへの参加
くに、認証組織と
は自由意志に委ねられ
検査を含む検証
ている。自主的取組み
体制(公的試験
とすることで、衛生対策
機関)をどうする
費を非参加商品に上積
かが大きな課題
みする道が開ける。
である。
GAP認証による付加価値
自主衛生管理項目
食品衛生法等に基づく
畜産物の安全性確保に関する義務規定
家畜伝染病予防法等に基づく
家畜伝染病に関する衛生管理基準
安全性向上に関するGAP管理基準の仕組み
永続的改善システム
衛生標準作業手順
SSOP
再吟味
検証
記録
衛生標準作業手順
SSOP
危害分析
再吟味
重要管理点
検証
記録
衛生標準作業手順
SSOP
標準作業手順
SOP
危害分析
一般的衛生管理
PP
重要管理点
HACCPは定まった衛生水準を規定
するものではなく、衛生水準を向上さ
せる永続的システムであり、そのシス
テムの可否を認証するものである。
HACCPと衛生水準
鶏卵のサルモネラ汚染問題
● サルモネラ・エンテリティディス(SE)は、英国を中心とする欧州お
よび米国で、1970年代から流行し始めた。感染した採卵鶏の親鳥は
無症状のまま産卵を続けるものもおり、卵白にSEが侵入してしまう。
産卵継続
感染親鳥
産卵停止
汚染卵
孵化途中で死
亡するのもの
あるが・・・・・・
概観から判らない介卵感染の制御は難しい
21日で孵化
保菌雛
鶏卵のサルモネラ汚染問題
育種用基礎系統群
様々な特異形質をもつ系統の収集・維持
系統造成群
優れた形質をもつ系統を交配し、生産性
の高い新たな系統を作成する
原原種鶏(GGP)
新たに作成された系統
雄の系統 雌の系統
日本は海外に依存
AABBCC
TTVVZZ
繁殖の基礎集団
AABBCZ
TTVVCZ
種鶏(PS)
繁殖用集団
AABVCZ
TTBVCZ
実用鶏
(Commercial)
採卵鶏集団
ATBVCZ
ATBVCZ
原種鶏(GP)
鶏卵のサルモネラ汚染問題
● 卵白にSEが侵入した菌数はわずかであり、新鮮な状
態で食べてもヒトが発症することはないが、流通過程で常
温保管されるとSEが増殖して発症菌数に達する。
新鮮卵
卵黄膜がしっかりしている。
常温保管した卵
卵黄膜が脆弱化している。
保管不良
割卵状態
野鳥の卵は雛が育つまでなぜ腐らないか?
卵白には細菌の発育を抑制する様々な成分が含まれており、新鮮卵
では細菌が増殖できない。卵黄成分が混じると、抑制力が失われる。
菌を増やさないため、農場から食卓までの温度管理が重要である
鶏卵のサルモネラ汚染問題
● 健康保菌している採卵鶏を見つけ出して排除することには限界
がある。ヒトでも大腸菌O157やサルモネラを健康保菌している場合
があり、現在の科学技術をもってしても健康保菌を完全に制御するこ
とはきわめて困難である。
● SEの増殖を阻止するために、フードチェーンを通した温度管理
が基本であり、米国では7.2℃以下と法律で定めた。日本では、生食
用殻付卵について賞味期限を設け、増殖期間を制御している。
野鳥の卵は雛が育つまでなぜ腐らないか?
卵の殻には、雛が発育するため呼吸す
る穴(気孔)が無数に空いている。その穴
から、細菌が侵入することがないように、
「クチクラ」という膜が覆っている。
産卵時に卵の表面が汚れるが、それを
不潔と思う方が多いことから、鶏卵は水
洗・乾燥工程がある。その過程で「クチク
ラ」はなくなり、卵の表面が濡れていると
細菌が自由に侵入できるようになる。
Salmonella Enteritidis Infections, United States, 1985–1999
Emerging Infectious Diseases, 10( 1), 2004
日本における「卵類およびその加
工品」を原因食とする死亡者数
1995年と1997年に2名、1998年
に1名の計3名に留まっている。
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
2
1
0
米国における
殻付卵を原因食とするサルモネラ食中毒による死亡者数
サルモネラによる広域集団食中毒事故例
1988年、6箇所、10,476名
6月27日
7月 7日
7月13目
7月13目
7月14日
7月14日
千歳市
室蘭市1
室蘭市2
倶知安町
苫小牧市
千歳市
20小中学校
21小学校
11中学校
7小中学校
12小学校
陸上自衛隊
1,266名
3,383名
1,933名
1,092名
2,573名
229名
冷やしラーメンの具材として使用した錦糸卵から、
患者と同一型のS. Typhimurium が検出された。
設備、器具から菌は検出されなかったが、他製品の原材料である鶏肉から同型
の菌が検出された。この錦糸卵製造業者では、鶏肉を取り扱う従業員も鶏卵製
品製造に従事しており、設備・器具の共用、殺菌加熱工程の不備、従業員の教育
不徹底、衛生設備の不備、さらに施設周辺から他のサルモネラ菌が検出れた。
汚染経路は、原料由来か設備、従業員などの環境によるものかは
判断できなかったが、従業員の手指や設備、器具の不完全な消毒・
滅菌および設備・器具の共用による二次汚染が主因と考えられた。
育種用基礎系統群、系統造成群、
海外に依存
原原種鶏農場(GGP)
インテグレーション(略称インテ):
飼料工場ならびに種鶏農場から
鶏卵生産農場までを自社組織と
して保有する企業体。
飼料工場
原種鶏農場(GP)
種鶏農場(PS)
穀類
(大半は輸入)
食品工場
割卵工場
飲食店
卵問屋
動物性
蛋白質原料
育雛場
インライン方式*
オフライン方式*
消費者
小売店
孵化場
鶏卵生産農場
(コマーシャル鶏)
GPセンター
*:洗卵、乾燥、検卵、重量選別、包装、出荷
鶏卵生産農場がGAPを実施するには、その上流にある種鶏場や孵化
鶏卵の安全性と関わる養鶏産業システム
場、飼料工場が品質保証を出せる体制作りが先行しなくてはならない
大雛
飼料
搬入
保管
給餌
水
殺菌
給水
搬入
衛生動物
廃棄物
鶏舎
倉庫
設備
機材
洗浄
消毒
保守
環境
健康管理
産卵
集卵
施設・設備
洗卵
薬物
指示書
添加剤
添加物
消毒薬
乾燥・殺菌
検卵
健康管理
個人衛生
教育・訓練
従業員
保管
出荷
農場には日齢の異なる鶏が
おり、日齢の進んだ鶏がSEに
感染していると、若鶏に感染
が広がる。日常作業を介して
鶏舎外から作業員が持ち込
む危険性もある・・・・・・・・
鶏卵市場
一般生産農場における生産工程一覧図
GAPは畜産物の安全性向上を目的とし、同時に、畜産物
の安全性に対する不必要な不安を解消することによって需
要の安定を図り、安全性に要する費用を適正に評価して
価格に反映させるためのシステムである。このシステムが
機能するためには、安全性確保のために設定されたGAP
管理基準が正しく遵守されていることを証明する記録を付
けることが必須である。
記録簿目次例
大項目と整理記号
Ⅰ
鶏群
中項目
小項目
搬入
搬入(A)
受領、ロット番号
受領
健康管理(B)
健康異常、診断依頼
産卵(C)
産卵数、異常卵数
給餌(D)
飼料ロット番号
給水(E)
ニップル確認、水温
記録責任者
○山×夫
鶏群導入記録票例
IA
導入鶏舎番号
B3
区画番号
3,4
1
2
鶏群番号
0410B3
0312B3
0306B3
導入日時
種鶏場名
トリミング歴
保証書番号
同一鶏舎内の既存鶏群番号
導入羽数
TOKYO
日齢
T-1234567
ワクチン名
日齢
銘柄名
サルモネラ
メーカー名
清浄、未清浄
回数
最終接種日
マレック
ワクチン接種歴
(メーカー名、
接種回数、
最終接種日)
伝染性咽頭気管炎
ニューカッスル
伝染性気管支炎
鶏痘
・・・・・・・
スライドの都合で2枚になっているが、縦用紙で1枚に収める。
薬剤使用歴
使用日齢
処方箋(番号)
死亡雛
異常雛
搬入車両の衛生
輸送ケージの衛生
21
7
数
千羽当り割合
依頼先
所見
所見
詳細頁
◯ ◯家畜保健所
IA/16
車内
出発時の消毒
輸送時の温度
血便
下痢便
汚れ
所属
搬入責任者名
(自筆)
導入責任者名
(自筆)
月
千羽当り割合
有無
検査依頼
年
数
所属
日
時
記帳責任: ○山×夫
IA/15(ページ)
導入時検査依頼記録票例
検査依頼日時
依頼機関
導入日時
導入羽数
種鶏場名
死亡雛(d)
異常雛(p)
IA
◯ ◯家畜保健所
日齢
TOKYO
数
千羽当り割合
21
7
数
千羽当り割合
所見
所見
検体番号
内容
検査結果
d1
鶏体
SE陽性
d2
腸
SE陽性
p1
糞便スワブ
p2
糞便スワブ
SE陽性
SE陽性
o1
輸送ケージ内血便
SE陽性
・・・
・・・
次ページに続く
前ページから続く
衛生措置
年
殺処分
経過(法令に基づく措置に対して、農場が対処した事項
を箇条書きにする)
日時:対処事項
日時:対処事項
・・・・・・
淘汰
隔離
その他
経過(検査結果に基づいて農場が自主的に対処した事項
を箇条書きにする)
日時:対処事項
日時:対処事項
・・・・・・・
月
日
時
記帳責任: ○山×夫
IA/16(ページ)
雛白痢などの法定伝染病を雛が持込んだ際に、農場全体の鶏群が
法的殺処分となる場合もあることから、導入時に明確な手順を踏まな
いと種鶏場に損害賠償を請求することが難しくなります。
Ⅱ
鶏卵処理
集卵(A)
滞留卵
滞留卵、破卵
洗卵(B)
温度、殺菌料
乾燥(C)
温度
検卵(D)
異常卵
保管(E)
温度、時間
出荷(F)
温度
滞留卵の問題点=常温で
放置される時間が長くなる。
1.産卵後卵白のpHが上昇
する迄にSE菌数が10倍に
増えるとされているが、放置
によってさらに増える。
2.その後産卵した卵と同一
ロットとして賞味期限が設定
されると、ロットの均一性が
なくなる。
3.その結果、SEが想定し
た以上に増殖し、食中毒発
生のリスクが大きくなる。
滞留はどうして起きるのか?
ケージの構造(傾斜、金網の歪み)
鶏糞付着による汚れ
死亡鶏によるブロック
下痢や病死など、鶏の健康を損な
うことが卵の安全性と密接に関係
している。
エレベータ
正常
集卵ベルト
ベルト上の破卵
エレベータ接合部の破卵
破卵や軟卵を産まない
健康な鶏を育てる
す通 汚 ー 破
る過 す ジ 卵
。す 。 内 や
るその軟
金卵
卵こ
で
を増網を
次殖や産
む
々し、
ベと
とたル
汚菌ト、
染がをケ
滞留卵の放置を防ぐためには、定期的見回りが必要です。
それを補助するものとして、ベルトが停止している間に滞留卵を
ベルトに落とす機械装置を設置することも有効です。
ケージ構造上の問題は、設備更新時に十分検討すべきです。
何よりも、下痢や病死を防ぎ、正常な卵を産ませるため、鶏群の健康管理が基本。
鶏舎内日常点検票例(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ、X)
鶏舎番号: B3
B3-3 B3-4
XIA
異常事項:所見、対応
詳細頁
点検項目
B3-1
B3-2
ⅠB-1 死亡羽数
0
0
20
0
削痩、顔面腫れ
ⅠB/21
ⅠB/21
ⅠB-2 異常羽数
0
0
>100
0
下痢、淘汰、治療
ⅠB/21
ⅠB/21
ⅠB-3 薬物投与
ⅠC-2 異常卵数
×
×
○
○
生菌用混合物
ⅤF/7
○
○
3
○
軟卵、小卵
ⅠC-2 滞留卵数
ⅡA-1 滞留卵
○
○
1
○
金網汚れ、洗浄
○
1
○
○
エレベータゴミ、清掃
ⅡA-2 破卵
○
○
3
○
ベルト、清掃
ⅢC-1 給餌器
○
○
1
○
給餌不良、保守依頼
ⅢC/5
ⅢC/5
・・・・・
・・・・・
大項目
ⅠC-2: Ⅰ(鶏群)
ⅡA-1: Ⅱ(鶏卵処理 )
ⅢC-1: Ⅲ(飼料)
中項目
C(産卵)
A(集卵 )
C(給餌器)
複数の大項目にある日常点
検を必要とする中項目を1~
2枚の用紙にまとめる。
Ⅲ
飼料
搬入(A)
受領、ロット番号
保管(B)
温度、湿度、期間
給餌器(C)
保守点検
湿度が高い時期に、管理が悪いと
パイプ内で飼料が固まることがある。
給水器が飼料の上部にあると、水
滴が落ちてカビが着生する原因とな
ることもある。
ワクチン(A)
指示書、投与
抗菌性添加剤(B)
指示書、投与
抗菌性飼料添加物(C) 納品書、混合、投与
Ⅴ
薬物
消毒剤(D)
納品書、使用
洗卵用殺菌料(E)
納品書、使用
生菌用混合物(F)
納品書、投与
駆除剤・除草剤(G)
納品書、使用
その他(H)
納品書、使用
○山×夫
○山×夫
GAP基準としての薬物の使用管理に関する原則
1.全ての動物薬および薬品は、薬物管理獣医師の指示の下に、
製造者の取扱注意を遵守して使用・管理しなければならない。
2.動物薬および薬品の使用・管理は、適切な教育・研修を受けた
作業員のみが行うものとする。
3.動物薬および薬品の購入は薬物管理獣医師に指示された必
要分のみとし、使い残しが出た場合には適正に処分して過剰な在
庫を残さない。
薬品管理総括票例
区分
薬物グループ
A
ワクチン
B
抗菌性添加剤
小区分
Ⅴ
サブグループ
整理記号
A
d
飲水添加剤
Bd
f
飼料添加剤
Bf
C
抗菌性飼料添加物
C
D
消毒剤
D
E
洗卵用殺菌料
E
F
生菌用混合物
F
G
駆除剤・除草剤
G
H
その他
d
飲水添加剤
Hd
f
飼料添加剤
Hf
「薬事法」および「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」で規定された動物薬
「薬事法」および「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」で規定された動物薬
生菌用混合物: 上記に該当しない飼料原料の「生菌剤(CE剤等)」など。
ビタミン剤など家畜の健康増進に使用され、安全性と関わらない製品。
抗菌性添加剤管理票例(薬剤名:ペニシリン)
年月日
購入量
指示書番号
納入伝
票番号
使用量
詳細頁
処分
量
ⅤB
処理伝
保管量
票番号
P041108
出荷制限期間指示書
P041108
年
指示に係る動物の所有者又
は管理者の住所氏名
月
獣医師の住所
氏名
日
印
動物用医薬品の使用の規制に関する省令第4条の規定に基づき、下記のとおり指示する。
1.指示に係る動物の種類及び頭数
2.指示に係る動物の名号、性、年齢又は特徴
3.指示年月日及び出荷制限期間
食用のために出荷してはならない期間
指示年月日
年
月
動物
日
生産物
健康管理記録票例
B3-3
鶏舎番号
数
死亡雛(d)
IB
日齢
千羽当り割合
所見
削痩、顔面腫れ
千羽当り割合
所見
下痢
20
数
異常雛(p)
>100
診断と衛生措置
管理獣医師の診断
伝染病の疑い
検査依頼
伝染病でない場合
の管理獣医師の指
示
要、不要
薬剤投与
有、
なし
検査材料
指示書番号
要、不要
薬剤名:
出荷禁止期間:
管理獣医師名
(自筆)
指示に基づく措置の実施経過
衛生措置
年
自主的判断に基づく措置の実施経過
月
日(発見時):生菌用混合物投与
月
日
時
記帳責任:
ⅠB/21(ページ)
○山×夫
悪
い
例
プレミックス
添加
混和
配合飼料
少量のプレミックスをいきなり大量の飼料に添加すると、部分的に高濃度の
付着が起こり、以後の混和によっても均一な濃度が得られない。すなわち、高
濃度付着部分を食べた鶏で残留問題が発生する。容量に応じた飼料攪拌器
を使って、下記のような階段希釈を実施することが重要である。
良
い
例
プレミックス
添加
混和
添加
配合飼料
混和
添加
混和
抗菌性飼料添加物を均一に混和する方法
育雛場
ニューカッスル病(ND)
伝染性気管支炎(IB)
鶏痘(FP)
伝染性コリーザ(IC)
伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)
鶏脳脊髄炎(AE)
マレック病(ND)
一般生産農場における
追加免疫
採卵鶏のワクチン接種に関す
るGAP基準(例)
1.赤枠の7種については育雛
場での接種を確認する
2.青文字の2種については業
界と学会で検討する
伝染性咽喉頭気管炎(ILT)
3.青丸の追加免疫については
マイコプラズマ感染症(MG)
業界と学会で検討する
産卵低下症候群(EDS)
トリニューモウイルス感染症(APV) 4.それ以外については、地域
的流行情況を踏まえて検討する
トリレオウイルス(ARV)
サルモネラ・エンテリティディス感染症(SE)
ワクチン接種計画と記録
「総合ワクチネーションプログラム(鶏病研究会報、1999)」を参照のこと
養鶏業に獣医療がもっと貢献するために!
● 悪性伝染病の脅威は国際流通の進展によって強まっており、「家
畜伝染病予防法」に基づく防疫体制の維持・強化が必要である。
● 食の安全に関する農場段階の取組みに関する法整備を急ぐ必要
がある。
家畜保健衛生所の獣医師は、法律に基づいてしか動けない。伝染病
以外の食の安全について獣医師に協力を求める事項を養鶏業界
は積極的に提言しよう!
● 農業共済制度の中で働く獣医師は、診療報酬の枠内でしか活動
できない。食の安全や予防衛生指導について活動できるシステム
に共済制度を改善する必要がある。
● これらは、食の安全に関しての責任分担を明確
化し、一般生産農家が背負い込んでいる責任を、
家畜保健衛生所や農業共済の獣医師に転化する
ためのものである。
Ⅵ
鶏舎
鶏舎(A1)
清掃、機材(洗浄、消毒)
・・・・・・・
・・・・・・・
鶏舎(B3)
清掃、機材(洗浄、消毒)
・・・・・・・
Preharvest HACCP in the Table Egg Industry: Hazard Analysis Critical Control
Point System for Enhancing Food Safety. Pennsylvania State University 1997
洗浄・消毒の後は、環境サンプルを培養検査する
引きずり法(ドラッグ法): 滅菌ガーゼを付け
たヒモを引きずって、鶏舎の床を所定距離移
動し、それを培養する。
Preharvest HACCP in the Table Egg
堆積した鶏糞についても、同様
Industry: Hazard Analysis Critical
Control Point System for Enhancing
の方法で定期的に採材し、培養
Food Safety.
検索する。
Pennsylvania State University 1997
Ⅸ
環境
敷地衛生(A)
道路、塀、車両消毒
建物(B)
破損
衛生動物
衛生動物(C)
ネズミ
ネズミ、野生動物、野
良、害虫
廃棄物(D)
鶏糞、死体
鶏舎にはネズミの
餌が豊富にあり、隠
れる場所も無数に
あります。サルモネ
ラ等の病原菌を運
ぶネズミを制御する
ことは容易ではあり
ません。米国では、
専門の駆除業者の
登録と駆除証明を
要求しています。
ネズミの数をモニターする
ネズミの糞には23万個のSEがいる
ためのトラップ
捕獲されたネズミの数
ネズミ指数
Preharvest HACCP in the Table Egg
Industry: Hazard Analysis Critical
Control Point System for Enhancing
Food Safety.
Pennsylvania State University 1997
車両の消毒や鶏舎入り口での履替
えと消毒は、ほとんどの農場で実施
されていることであり、GAP基準は
消毒液の交換・補充情況を確認す
ることで足りる。
関連する大項目
大項目+中項目
XIA
農場内日常点検票例(Ⅵ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ)
点検項目
確認
異常事項:所見、対応
詳細頁
ⅨA
車両消毒設備が適切である
×
消毒剤液量不足、追加
ⅨA
作業動線が汚れていない
×
水溜りがあり、補修を指 ⅨA/3
示
ⅨB
建物外周に異常がない
×
床下通気口の網破損
(B1)
ⅨC
野生動物、野良の侵入がない
×
野良猫2頭、場外に出し
た
ⅨD
衛生害虫の発生がない
×
蚊、ハエ
ⅦA ローラーコンベア外周に異常
がない
○
・・・・・・・・・・・・・
○
・・・・・・・・・・・・・
○
小項目番号
2005年 1月 1日 10 時
ⅥB/1
記帳責任: ○山×夫
XI A -1/ 13(ページ)
農場経営者
生産管理統括者
衛生管理統括者
事務
管理獣医師
鶏群管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
飼料管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
鶏卵処理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
薬物管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
施設管理責任者 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
廃棄物処理責任者
・・・・・・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
従業員教育・訓練責任者 ・・・・・・・・ 各部所のチームとチームリーダー
GAPに関わる農場組織図
パドック
鶏舎の内部(中央通路)
資料提供: 「たまご博物館」。詳細はインターネットを御覧下さい。
「放し飼い養鶏」
「放し飼い養鶏」の例:
鶏舎の内部
青森県の東北牧場 。鶏舎2棟、2000羽飼育。
産卵箱の内部
産卵箱
(nest:ネスト )
平飼い鶏舎
有精卵を生産している農
場の多くが採用している飼
育方式。卵肉兼用種で、白
いのがオス、赤い(茶色い)
のがメス。メス10羽にオス1
羽の割合。
産卵箱
(nest:ネスト )
ケージ飼い開放鶏舎
上段
フ
ン
ニップル給水器
餌とい
下段
上段
フ
下段 ン
鶏舎面積を広くとることになるが、上段と下段の重なりは好ましくない。
ウィンドウレス鶏舎
埼玉県の愛鶏園(株)、愛知県の三州食品(株)、広島県 のアキタ(株)
産卵リズムを調整する人工照明と、温湿度管理などを自動制御
鶏糞
ベルト
集卵
ベルト
給水器
給餌器
鶏糞
ベルト
集卵
ベルト
エレベータから降りてきた卵を処
理施設まで運ぶローラーコンベア
ロ
ボ
ッ
ト
ア
ー
ム
エ
レ
ベ
ー
タ
ローラーコンベア
ローラーコンベア
鶏舎内のローラーコンベア
鶏舎出口の屋根付のローラーコンベア
処理施設入口のローラーコンベア
そのままベルトを乗り換えて洗卵器へ
衛生標準作業手順 SSOPの作成
生産管理マニュアルにし
たがった生産管理記録
衛生管理マニュアル
各工程の危害要因の制御手順書と
作業記録書の作成
各工程の作業手順書と
作業記録書の作成
A.衛生管理総括表
作業工程
危害要因
防止措置
管理基準
モニタリング
改善措置
記録
B.記録簿のフォーマット
日常作業の重要点検項目、日常的な農場重要点検項目
素畜搬入時検査、 飼料/資材受領と検査、畜舎間移動、薬物/ワクチン使用、疾病発生と
死亡・淘汰、畜舎清掃消毒、使用水消毒、鼠族駆除、機材保守管理、来訪者・車両、化学薬
品在庫、従業員研修、試験室テスト
C.検証方法と検証記録
農場内のHACCPチームによる検証から始め、第三者認証組織による検証に移行する。
記録簿目次例
大項目と整理記号
Ⅰ
鶏群
Ⅱ
鶏卵処理
Ⅲ
飼料
中項目
小項目
搬入(A)
受領、ロット番号
健康管理(B)
健康異常、診断依頼
産卵(C)
産卵数、異常卵数
給餌(D)
飼料ロット番号
給水(E)
ニップル確認、水温
集卵(A)
滞留卵、破卵
洗卵(B)
温度、殺菌料
乾燥(C)
温度
検卵(D)
異常卵
保管(E)
温度、時間
出荷(F)
温度
搬入(A)
受領、ロット番号
保管(B)
温度、湿度、期間
給餌器(C)
保守点検
記録責任者
○山×夫
大項目と
整理記号
Ⅳ
水
中項目
小項目
殺菌(A)
消毒剤、保守点検
給水器(B)
保守点検
ワクチン(A)
指示書、投与
抗菌性添加剤(B)
指示書、投与
抗菌性飼料添加物(C) 納品書、混合、投与
Ⅴ
薬物
Ⅵ
鶏舎
消毒剤(D)
納品書、使用
洗卵用殺菌料(E)
納品書、使用
生菌用混合物(F)
納品書、投与
駆除剤・除草剤(G)
納品書、使用
その他(H)
納品書、使用
鶏舎(A1)
清掃、機材(洗浄、消毒)
・・・・・・・
・・・・・・・
鶏舎(B3)
清掃、機材(洗浄、消毒)
・・・・・・・
記録
責任者
○山×夫
○山×夫
大項目と整理記号
Ⅶ
集卵施設
Ⅷ
他の施設
中項目
小項目
コンベア(A)
清潔、不良卵排除
洗卵(B)
水温、消毒液
乾燥(C)
温度
殺菌(D)
殺菌工程
検卵(E)
透光検卵
包装(F)
ラベル
保管(G)
温度
出荷(H)
温度
飼料保管庫(C)
鼠駆除、温度、湿度
機材倉庫(D)
鼠駆除
管理棟(E)
便所、休憩室
記録責任者
鶏糞処理施設(F)
死体処理施設(G)
「小項目」には具体的な点検項目を挙げますが、GAPの管理基準を含
むことが必要です。 具体的基準は、「衛生管理ガイドライン」を地域安
全推進会議等において実情に合わせて見直す中で作成しましょう。
大項目と整理記号
Ⅸ
環境
X
従業員
XI
総合
中項目
小項目
敷地衛生(A)
道路、塀、車両消毒
建物(B)
破損
衛生動物(C)
鼠、野生動物、野良、
害虫
廃棄物(D)
鶏糞、死体
健康管理(A)
健康診断、始業時点検
個人衛生(B)
着衣、履物、消毒
教育・訓練(C)
計画・実施
日常点検(A)
農場、鶏舎、集卵施設
記録責任者
生産管理総括(B) 産卵率、生産指数
衛生事務事項(C) 来訪者、車両
販売情報(D)
苦情、リコール
記録簿の目次の例を紹介しましたが、この全てを最初から付け
ようとするのは無謀です。あくまでも例であり、できる部分からス
タートすることが大切です。次に、幾つかの項目を例に説明しま
すが、項目の整理記号で記録用紙を整理します。