キャビテーションを応用した水質 浄化方法に関する研究 平成17年2月14日 システム創成学科 知能社会システムコース 20880 吉川 雄介 研究背景1 • ダイオキシンの分解技術 – 活性汚泥処理、オゾンによる 分解、プラズマによる分解 • 当研究室 ダイオキシンの構造式 – ジェットキャビテーションによる 分解メカニズムの解明 • 有機物の構造によって分解 率が大きく変化 • 気泡崩壊エネルギーは分解 率に関係なし • 分解率はキャビテーション発 生頻度にキャビテーション発 生領域を乗じたものに比例 OH OH 気相 5000K~ 1000atm~ 熱分解反応 液相 常温常圧 気液界面 高温高圧場 OHラジカルに よる分解反応 OH キャビテーションによる分解メカニズム 研究背景2 • ジェットキャビテーション – 渦を生じさせることで圧力低下 させてキャビテーションを発生 – 溶液の揮発 – 溶質の吸着 実験上の問題がある。 ノズル FLOW ジェットキャビテーション ジェットキャビテーション • 超音波キャビテーション – 超音波による溶液圧力変化を させてキャビテーションを発生 – ガラス製容器 – 容積100ml以下 実験の信頼性が高い。 超音波キャビテーション 研究背景3 • 従来の超音波キャビテーションによる分解に関する研究は、 主に化学系の研究者によって進められてきた。 – 分解しにくい毒性物質を超音波照射し、分解中に現れる中間物質の特 定や最終分解物質の有害性に重点を置く(大阪府立大学の前田など)。 – 山本、小西(京大)の論文でも音圧と分解の関係を少し論じた程度であ る。 • キャビテーションによる有機物の分解は、力学と化学の両方 の分野にまたがる問題であるが、力学的な側面に対する理解 が乏しいと言える。 研究目的 • 超音波装置の各実験パラメータと分解率の関 係を明らかにする。 • 気泡崩壊衝撃力と分解率の関係を明らかに する。 • ジェットキャビテーションではこれまで不明だっ た分解データを補完する。 • 超音波キャビテーションがキャビテーション分 解の力学的解析を行う新たな手法として、そ の可能性を論じる。 研究方法1 • 用いる溶液はパラジクロロベンゼン溶液 – ダイオキシンと似た構造 – ダイオキシンより安全な物質 – 揮発性、無極性物質 揮発、吸着 Cl Cl Cl 実験の使用に適している。 などの中間生成物 2Cl 2 H 2O 6CO2 パラジクロロベンゼン ガスクロマトグラフィー イオンクロマトグラフィー パラジクロロベンゼンのキャビテーションによる分解メカニズム 研究方法2 1. 密閉型装置による分解率とパラメータの関係 2. 開放型装置による分解率とパラメータの関係 3. 衝撃力と分解率の関係 密閉型分解装置 容器 初期濃度 アクリル容器 容量 反応容器 冷却水の 水位 距離 時間 周波数計 振動子 発振器 パワーアンプ 密閉型分解装置の概要図 電圧計 反応容器と生成イオン濃度の関係 • 同種類の反応容器3つと 分解量の関係を測定する。 • 実験の条件は – 公称固有振動数40kHzの 振動子 – 水位は振動子の上2cm – 初期濃度0.227mMの溶液 50ml – 反応溶液と振動子の距離 は0.7mm – 発振器の設定周波数は 41.33kHz – 駆動電圧は93v (実効値65.8v) – 1時間照射 底の厚みを含めて反応容器全体のわず かな違いが生成イオン濃度に大きく影響。 生成塩化物イオ ン濃度(μM) 容器と生成イオン濃度の関係 8 6 4 2 0 1 2 反応容器番号 3 反応容器により生成イオン濃度が大きく異なる。 容器の底の厚みと分解量の関係 容器番号 容器底厚み (mm) 生成塩化物 イオン濃(μM) 1 1.59 1.19 2 1.65 0 3 1.27 7.53 同一の反応容器で実験を実施する必要性。 初期溶液濃度と生成イオン濃度の関係 – – – – – 塩化物イオン濃度 (μM) • 異なる4点の初期溶液濃度と 分解量の相関を調べる。 • 実験の条件は 溶液初期濃度と生成イオン濃度の関係 2 1.5 1 0.5 同一の反応容器 0 公称固有振動数40kHz振動子 0 1 2 3 4 水位は振動子の上2cm 溶液初期濃度(×10^-4M) 溶液50ml 生成イオン濃度は初期溶液濃度に比例する。 反応溶液と振動子の距離は 0.7mm – 発振器の設定周波数は41.33k 今後の分解率の評価基準として Hz 生成イオン濃度 100 正規化イオン濃度= – 駆動電圧は93v(実効値65.8v) 初期溶液濃度 – 1時間照射 を用いる。 開放型実験装置 駆動電圧 周波数計 発振器 電圧計 周波数 時間 パワーアンプ 初期濃度 アクリル容器 反応容器 振 動 子 溶液 開放型実験装置の概要図 冷却水 の水位 冷却水の水位と分解率の関係 • 10mmずつ5点の水位と分解 率の関係を測定する。 • 実験の条件は アクリル容器 水位の増加に応じて分解率が減少。 溶液 冷却水の水位 水位と分解率の関係 25 20 正規化塩化物 イオン濃度 – 同一の反応容器 – 初期濃度が0.358mMの溶液 70ml – アクリル容器の中央に固定 – 公称固有振動数が50kHzの振 動子 – 発振器の設定周波数は 55.23kHz – 駆動電圧は60v(実効値42.4v) – 照射時間は30分 反応容器 振 動 子 15 10 5 0 0 10 20 30 水位(mm) 40 超音波エネルギー拡散のため であると思われる。 50 駆動電圧と分解率の関係 – 同一の反応容器 – 初期濃度0.422mMの溶液 70ml – 水位0mm – 公称固有振動数50kHzの振 動子 – 発振器の設定周波数は 55.23kHz – 照射時間は30分 駆動電圧と分解率の関係 20 正規化塩化物 イオン濃度 • 10Vずつ5点の駆動電圧と 分解率の関係を測定する。 • 実験の条件は 16 液面は静止 12 液面は振動 8 4 0 0 20 40 60 駆動電圧(V) 80 100 駆動電圧により分解率は大きく影響。 振動が溶液内の振動モードを変化させる ため、分解率が減少すると思われる。 •密閉型と開放型の分解率 の時間変化を測定する。 •実験の条件はそれぞれ 基準としてきた条件で行う。 分解率は時間に比例する。 開放型の方が分解率が高い。 正規化塩化物 イオン濃度 各装置の分解率の比較1 各装置の時間と分解率の関係 35 30 開放型 25 20 15 10 密閉型 5 0 -5 0 60 120 180 240 300 時間(分) 減少したパラジクロロ ベンゼン濃度 減少率= 100(%) 初期パラジクロロベン ゼン濃度 生成した塩化物イオン 濃度 回収率= 100(%) 減少したパラジクロロ ベンゼン濃度 2 各装置の分解率の比較2 装置 減少率(%) 回収率(%) 密閉型 4(4時間) 66~76(1時間、4時間) 開放型 60(60分) 30~40(30分~60分) ジェットキャビテーション 35(6時間) 2.3(6時間) 超音波キャビテーションはジェットキャビテーションに比べ、少ない時間で良い回収率、減少率を獲得。 2% Cl 2Cl 2 H 2O 6CO2 Cl Cl 揮発、吸着 98% 40% などの中間生成物 60% ジェットキャビテーションでは 分からなかったパラジクロロ ベンゼンの行方がある程度 解明できた。 衝撃力の測定 周波数計 発振器 電圧計 ト ラ ン ジェント コンバー タ パワーアンプ アクリル容器 反応容器 溶液 パソコン 振 動 子 衝 撃 力 セ ン サ 衝撃力測定装置の概要図 キャビテーションの力学的作用と化学的作用の関連を調べる。 • 溶液内の局 所的な衝撃 力変化 • 水位と衝撃 力の関係 • 駆動電圧と 衝撃力の関 係 溶液内の衝撃力の変化 振動子 • 溶液中央で振動子の下か ら1mmずつ21点を測定し、 溶液内の衝撃力の変化を 調べる。 • 実験の条件 中央 溶液内の衝撃力分布 12 衝撃力(N) – 衝撃力センサを含めて溶液 容量70ml – 公称固有振動数50kHzの振 動子 – 発振器の設定周波数は 55.23kHz – 駆動電圧60v(実効値45.4v) – 水位0mm 溶液内の衝撃力 測定ライン 超音波の半波長 =13.6mm 8 4 0 0 5 10 15 20 25 振動子からセンサまでの垂直距離(mm) 溶液内の振動モードは複雑であると思われる。 水位と衝撃力の関係 水位と衝撃力の関係 8 6 4 2 0 0 正規化塩化物 イオン濃度 – 衝撃力センサを含めて溶液 容量70ml – 公称固有振動数50kHzの振 動子 – 発振器の設定周波数は 55.23kHz – 駆動電圧60v(実効値 45.5kHz) – 衝撃力は振動子の下1mmで 計測 衝撃力(N) • 10mmずつ5点の水位と衝 撃力の関係を測定し、分解 率と比較する。 • 実験の条件 10 20 30 水位(mm) 40 50 水位と分解率の関係 25 20 15 10 5 0 0 10 20 30 水位(mm) 40 50 振動モードが変化しない時、衝撃力と分解率に相関が見られる。 駆動電圧と分解率の関係 – 容量、振動子、設定周波数 は一つ前の実験と同じ – 水位0mm – 衝撃力は振動子の下1mmと 下20mmで計測 駆動電圧が上がると衝撃力は上がる が、分解率は途中から減少に転じる。 14 12 10 8 6 4 2 0 1mm下測定 1mm下測定 20mm下測定 20mm下測定 0 20 40 60 80 100 駆動電圧(V) 駆動電圧と分解率の関係 20 16 12 8 4 0 正規化塩化物 イオン濃度 • 10vずつの駆動電圧と衝撃 力の関係を測定し、分解率 と比較する。 • 実験の条件 衝撃力(N) 駆動電圧と衝撃力の関係 0 20 40 60 駆動電圧(V) 分解率は衝撃力より溶液内モードの影響が大きいと思われる。 80 100 本研究のまとめ1 • 超音波キャビテーションの分解率に対する各 種のパラメータの影響を明らかにした。 – 濃度は分解率に関係がない。 – 反応容器により分解率は変化する。 – 水位が増加するほど、分解率が減少する。 – 駆動電圧は分解率に大きく影響する。 – 分解量は照射時間に比例して、増加する。 • 反応容器内の複雑な振動モードが分解率に 対して支配的な影響を持つと考えられる。 本研究のまとめ2 • ジェットキャビテーションでは回収できなかっ たパラジクロロベンゼンの行方がある程度解 明した。 • メカニズム解明のための実験手法として、本 手法と、ジェットキャビテーションを比較すると、 – 揮発や吸着の影響を受けにくく、物質の化学変 化をより正確に測定できる。 – 実験パラメータのわずかな変化で溶液内の振動 モードは大きく変わるため、振動モードをコント ロール可能な、より高精度な実験装置で実験を 行う必要性がある。
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