06.彗星の正体 佐々木 彩奈(茨城大学)宇野 由紀(同志社高校) 八百 多佳実(カリタス女子高校)日堂 真由(松本県ケ丘高校) 山崎 すばる (木曽高校)古村 夢結(岡谷南高校) 私たちは、東京大学木曽観測所で行われる銀河学校2007に参加しました。そこで、東京大学木曽観測所105㎝シュミット望遠鏡と天体画像解析ソ フト「マカリ」を使用し、彗星の正体について研究しました。結果、それぞれ(4P/Faye , 29P/Schwassman-wachman1 C/2006XA1)の彗星の色、大きさ、 明るさ、ダストの量などの情報から、彗星の形状について推察することができました。 使用データ(Rバンド、Bバンドで撮影) 2007年2月2日:4P/Faye , 29P/Schwassman-wachman1 2007年3月23日:4P/Faye , 29P/Schwassman-wachman1 C/2006XA1 使用ソフト:マカリ C/2006XA1 4P/Faye 29P/SW 考察 彗星の形状 ・彗星の色 マカリで彗星の明るさを測光し、さらに、各彗星のRバンド、Bバンドのカウ ントを求めR/Bの値を出すことにより、彗星が赤、青のどちらの色に近いかを 調べた。このとき、青色に近いと彗星にガスが多いことが分かる(☆より)。 下表より、R/Bの値は、C/2006<4P/Faye<29P/SWだった。よって、C/2006のほ うがより青く、29P/SWのほうがより赤い彗星であると考えられる。このことか らC/2006のほうが、29P/SWに比べてガスが多いことが分かる。 彗星 R/Bの値 C/2006XA1 (3月) 10pix 2.622 29P/SW (3月) 10pix 3.762 29P/SW (2月) 10pix 2.926 4P/Faye (3月) 24pix 3.629 左の写真は、Rバンドで撮影した写 真である。 Bバンドで撮影した写真は同じよう に見えるが、少しカウントが違う。 <ダストの放出率を求めるために> 彗星のダストの放出率を求めるために、彗星の大きさと明るさ、 ダストの一粒の明るさと重さ、そして、それぞれの彗星におけるダ ストの個数を求めた。 ・大きさ まず、R バンド、B バンドそれぞれでの彗星の r km 大きさを測ることで、およその大きさを求めた。 1.5 更に、円周を使い正確な大きさを求めた。彗星の 3600度 大きさχ、地球からの彗星の距離r、画像上の彗 360° 星の大きさ(度)θ(1pix=1.5 秒角を使って直した) とするとχ=2πr×θ/360°となる。 ・明るさ 1等星を100万カウントとしたときに対しての彗星の明るさを比で 出した。しかし、彗星-地球、彗星-太陽の距離を等しくしないと 正しく比較できない。そこで、1等星を100万カウントとしたときの 彗星の明るさに、彗星から地球の距離と、太陽から彗星の距離のそ ☆ れぞれ2乗をかけ、比較できる値を出した。 ∥ ・ダストの1粒の明るさと重さ 3.485 4P/Faye (2月) 24pix 彗星の明るさにはダストの量が関係している。「太陽光を反射し ている」という条件がダストと月は同じなので、月の大きさをダス ☆・太陽の光より、ダストが赤く光る→Rバンドを通してよく見える。 トの1粒の大きさ(直径1μm)と見立てて、ダストと月を1AU の距離に ・彗星を取り巻く金属のガスが炎色反応と同様の反応により青く光る 持っていき、ダスト1粒の明るさを求めることにした。また、そのダ →Bバンドを通してよく見える。 スト1粒の明るさからダストの個数を求めた。そしてダスト1粒の質 量を求め、それにダストの個数をかけてダスト全体の質量を出した。 ∥ ・一秒当たりのダストの放出量を求める まず、V=0.1㎞/sで進むと仮定し、彗星の大きさを利用して半径に到達する までの時間を求める。 それから、X= 1秒あたり何gとけるか(つまりダストの放出率)として、 C/2006XA1 ガスの放出率が高 く、ダスト放出率が 低いので、表面は チョコばかりだと考 えることができる。 ダストの重さ:半径に到達するまでの時間=X:1秒 の比を利用して、ダストの放出率を求めた。 ・結論 1秒あたりのダストの放出量が C/2006 < 4P/Faye < 29P/SW だったことからC/2006のほうがよりダスト 放出率が低く29P/SWのほうがよりダストの放出率が高いことが分かる。 彗星 ダストの放出率(g/s) C/2006XA1 (3月) 10pix 8.81×103 29P/SW (3月) 10pix 3.11×105 29P/SW (2月) 20pix 3.26×105 4P/Faye (3月) 24pix 9.97×103 4P/Faye (2月) 20pix 1.13×104 4P/Faye 29P/SW ・まとめ 以上の結果より、彗星の構造をアーモンドチョコレートに喩えることができ た。彗星をアーモンドチョコレート、ダストをアーモンド、氷をチョコレート (溶けてガスになる)にたとえると右の表のように表すことができる。 ・参考文献 ・彗星のダストの速さV=0.1km/sで進むという仮定 Swamy K.S.K., (1997). In Physics of Comets, 2nd edition,World Scientific 注)ダストの放出速度=0.1km/sと直に書かれている箇所はない。 ガス速度~ダストの速度と仮定した上で、ガス速度の式を流用した。 V=0.535r^(-0.6)km/s r:彗星ー太陽の距離(AU) 彗星-太陽の距離にも依存するので、0.1km/sというのはオーダーでこれ くらいだという仮定をした。 C/2006XA1に比べて、 ガスの放出率が低く、 ダストの放出率が高 いので、表面はアー モンドとチョコレー トでゴツゴツしてい ると考えることがで きる。 上の2つに比べて、 ガスの放出率が低く、 ダストの放出率が高 いので、アーモンド がチョコの外側に出 てきていると考える ことができる。 ・ダストの1cm3の密度が2~3 g Horz F.et al., 2006. Science314, 1716-1719. 注 ) 参 考 文 献 中 に は 、 最 密 な 砂 粒 の 密 度 = 3g/cm3 、 最も空隙の多い砂粒の集合体の密度=0.3g/cm3と記述されている。砂 粒の密度が0.3-3g/cm3の範囲であることと、ダストの成分は主に砂粒 であるという前提から、上記を仮定した。 ・理科年表 謝辞 今回のジュニアセッションに参加するにあたり、様々な助言をしてくださった宮田隆志氏をはじめとする東京大学木曽観測所・銀河学校 2007のスタッフの皆さんにこの場を借りて厚くお礼申し上げます。また、本発表には、NPO法人サイエンスステーションの協力をいただきました。
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