第5章

第5章
経営行動と会計の仕組みを知る
1.経営行動と会計の関係を知る
[1]経営プロセスと会計プロセス
・経営行動の結果を測定・評価し整理要約することにより、
会計情報利用者に情報を提供することが会計の役割。
・「管理会計」・・・内部経営管理向けの会計情報を取り扱う
領域。
・「財務会計」・・・外部公表向けの会計情報を取り扱う領域。
このように経営者への報告会計である管理会計プロセス
とは異なり、財貨の移動や債権債務の発生があっては
じめて取引の対象が始まる財務会計プロセスを通して
出来上がるのが財務諸表。
[2]資金循環プロセスと財務会計
・会社経営は資金循環プロセスとも見ることができま
す。会社経営そのものが、資金調達→資金投下→
資金回収の再生産プロセスだからです。
こうした会社の資金循環プロセスを示すと次のよう
になります。
会社の資金循環プロセス
株式発行
工場設備購入
原材料購入
資 金
生産→製品→販売→回収→資金
従業員雇用
外部借入
役務購入
[3]会社業務と会計処理
・会社における重要な活動が、管理会計の対象にはなっ
ても、財務会計の対象にはならない場合が多くあります。
財務会計の対象は、具体的な財貨の移転や債権債務
の発生と連動しなければならないからです。
・会計取引は複式簿記の「仕訳」という手続きを通して、財
務諸表に集約されます。財務諸表は、このような個々の
取引、それに伴う仕訳を積み重ねて作成されますが、
経営分析手続は、財務諸表の勘定科目およびその金
額の動向から、いかなる経営行動があり、それはどの
ような戦略のもとの行動なのかを推論しなければなりま
せん。
2.会計情報の作成と財務諸表の仕組み
[1]簿記の仕組みと会計情報
・会計取引は、簿記という技法を採用し、「財務諸表」に
要約表示されます。簿記の基本には、資産・負債・資
本・費用・収益という5つの勘定科目があります。
・資産・負債・資本の関係は、次のような等式で表せます。こ
れを簿記の「基本等式」と呼びます。
[資産=負債+資本]
・また、収益と費用、さらに「利益」との関係は、次のようになり
ます。
[収益=費用+利益]
[2]財務諸表の体系
・会社の経営行動の結果である会計取引を、財政状態と経
営成績を中心に整理して財務諸表を作成する一定期間を
「会計期間」と言います。
・財務諸表は、会計期間の会社の経営成績を表すために作
成されますがこれには2つのタイプがあります。
1.会計期末時点の財政状態を表す→「貸借対照表」
2.会計期間の経営成績や資金状況を表す
→「損益計算書」
→「資金収支実績表」
→「キャッシュフロー計算書」
連結財務諸表
・現在、公表財務諸表は主たる財務諸表が親会社単
体で従たる財務諸表が連結財務諸表ですが、200
0年3月から連結決算が導入されると、これが逆転
し「連結財務諸表」が主たる財務諸表になります。
・連結決算制度が、会社の会計情報には不可欠にな
りました。この場合の公表財務諸表は、次のとおり
です。
連結貸借対照表
会社の財政状態を明らかにするため、
会計期末におけるすべての資産、負
債、資本を記載し表示する。
連結損益計算書
会社の経営成績を明らかにするため
に、1会計期間に属するすべての収
益・利益とこれに対応する費用・損失
とを記載して当期の利益を表示します。
連結キャッシュ
フロー計算書
当期純利益を起点に、資金の動きを
営業活動、投資活動、財務活動の3
区分により、期末現預金の増減の原
因分析を示したもの。
[3]財務諸表のルール
・財務諸表はいずれも信頼できる会計記録にもとづい
て作成され、政策的配慮で真実をゆがめられること
があってはならない。
(単一性の原則)
・計算書類規則や財務諸表規則に準拠して作成され、
必要な会計取引を明瞭に表示し、会社の状況につい
て利害関係者の判断を誤らせないようにしなければ
ならない。
(明瞭性の原則)
・会社の経営成績を明らかにする損益計算書は、1会
計期間に属する収益と費用を対応させ、当期純利益
を表示する。この場合、費用と収益とを相殺すること
なく総額で表示する。
(総額主義の原則)
一般に認められた会計原則
実現主義
売上高は、原則として得意先に対して
(収益を認識する基準) 商品を倉庫から出庫した時点で、収益
が実現したと認識される。
発生主義
(費用を認識する基準)
損益を確定する
(費用収益対応の原
則)
給料、運賃などの費用は、その支払の
原因が発生した時点で認識する。
収益と費用との差額が損益になります
が、1会計期間に属するすべての収益
と、これに関連するすべての費用を対
応させて損益を確定する方法。
• 資産を確定する
・会計期末に残っている資産は、取得原価で評価されます。
これを「原価法」と言います。しかし、購入したときよりも時
価の下がるものもあります。このような場合に、時価で評価
する方法を「低価法」と言います。
・有形固定資産は、長期間にわたり価格が減少していく資
産です。これは使用期間中に、資産から費用へ、その取得
原価が配分されていく過程を意味しています(費用配分の
原則)。こうした費用配分の方法を「原価償却」と言い、この
対象を「償却資産」と言います。
・減価償却の方法
「定額法」・・毎期、定額ずつ減価償却費を計上していく。
「定率法」・・毎期、期首残高に一定率を掛けて減価償却
費を計上していく。
• 会計取引を処理するにあたっては、簿記という仕組
みにのっとり(正規の簿記の原則)、会計処理の基
準を適用します。また、基準の適用にあたっては、
できるだけ事前に費用を多く計上する基準(安全性
の原則)を適用します。また、各種の方法をみだりに
変更することなく毎期継続して適用する(継続性の
原則)ことによって、はじめて外部の情報利用者に、
真実の報告をする(真実性の原則)ことができ、会
社の過去の財務情報との比較を可能(比較可能
性)にさせます。
• 経営業績と重要な会計方針
会社はつねに、利益を長期的かつ安定的に計上しな
ければなりません。そこで、業績のよい会社は、可能
な限り利益を圧縮して計上します。
一方、業績の悪い会社は、実態より利益が出ているよ
うに見せたいものです。可能な限り費用を少なく計上
し、利益を捻出します。
◎会社の経営分析をするに当たり、まずチェック
しなければならないことは、重要な会計方針に
業績のよい方法を採用しているか、悪い方を採
用しているかです。