サプライチェーン・マネージメント (SCM) 図 1 サ プライチェーン・マネージメント グローバル化と並行して、大手製造業はサプライチェーン・マネージメント(SCM )を有力な経営改革手 法として積極的に導入を進めています。 サプライチェーン・マネージメント(SCM )は近年の市場の激しい需要変化に柔軟に対応することを目的 として開発された考え方です。 ・見込み違いで売れ残り、 ・過剰な在庫発生のリスクを避けるために在庫を極力圧縮し、 ・逆に欠品が生じるリスクも防止するために、 →多品種・少量・多頻度・短納期生産が可能な製造体質への転換が目標です。 この動きは流通在庫の圧縮から始まり、調達資材の在庫圧縮の動きへ波及し始めました。 すでに先進大手企業は納入業者である中小製造業に対する短納期納入要求を強めており、この動きは 今後あらゆる企業の資材調達へ急速に拡大してゆくと予想されます。 具体的には、これまで毎月1 回発注、1 ヶ月納期であったものが、毎週1 回の発注に変わり、最先端の事例 では毎日1 回発注、納期数日にまで変化しています。 稼働日数が20日の工場が毎月1 回受注から毎日1 回受注に変化すれば、製造LOT は20 分の1 の少LOT 生産になり、生産準備には20 倍の手間がかかります。 これを避けるためにまとめ生産をすれば大量の在庫を持たなければならず、しかも発注企業はこの在庫の 買取り保障はしてくれません。 資材発注側の大手企業も流通在庫が圧縮されたため、市場の突発的な要求に対応せざるを得ない場 面が増えており、資材供給サイドの中小製造業にランダムな要求を出さざるを得ない状況にあります。 このような不定期・ランダムな要求に対しても短時間で正確な納期回答と、回答した納期を確実に守る ことが求められています。 このような新しい要求に対応するために、 ・製造ラインのセル生産方式による1 個作りラインへの転換や、 ・受注組立て生産方式の導入など、 →SCM 対応のさまざまなスピード経営手法が開発され活用され始めています。 また、このような「スピード経営」をサポートする情報システムの活用もSCM 実現のためには欠かせない条 件です。 多品種・少量・多頻度・短納期生産は海外製造拠点では対応できません。 日本国内の工場ならば1 日で製品を届けることが可能です。これに対し海外製造拠点から船便で日本国 内に持ち込むためにはどんなに頑張っても2 週間はかかります。 中小製造業生き残りの有力なキーワードは日本国内に拠点を持つ“地の利を生かした”「スピード経営」体 制の確立です。 このような「スピード経営」は海外製造拠点からでは実現困難です。 ●デル・コンピュータはSCM の世界的な成功事例 SCM の世界的な成功例はデル・コンピュータでしょう。同社はガレージ・ベンチャーとして1984 年に創業しま したが、1990 年代にインターネットの普及を活用した直接販売方式を導入して急速に事業を拡大し、ついに 2001 年には世界最大のパソコンメーカーに成長しました。顧客は同社のホームページから自分の希望する 仕様を入力すると1 週間で自分の好みのパソコン1 台を組み立てて納入してくれます。SCM を活用した受注 組立て生産方式の典型的な成功モデルです。 アジア市場の製造拠点はマレーシアです。インターネットで受注した製品はマレーシアで組み立てられ、航 空便で成田空港へ運ばれます。海外製造拠点ではSCM は実現困難と言いましたが、高額で軽量な製品は 時間と空間の壁も乗り越えてしまうのです。 しかし、日本国内で生産しているデル・コンピュータのライバル・パソコンメーカーは納入日数をさらに短縮し て勝負しようとしています。やはり最後はスピードが重要な差別化ポイントになるのです。
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