ミクロ経済学II 第13回 生産の決定2 損益分岐点 操業停止点 供給曲線の導出 前回の宿題 • ある完全競争企業の費用関数がC=Y2であるとし ます。 1. 限界費用曲線のグラフを描きなさい。 2. 市場価格が100のときに利潤を最大化する供給 量と、そのときの利潤を求めなさい。 今日やること 完全競争企業の生産の決定の続き 1 企業が供給をやめるのはどんなとき? 1.1 利潤がゼロになる点:損益分岐点 1.2 利潤がゼロでもマイナスでも営業? 1.3 供給をやめるべき点:操業停止点 2 供給曲線の導出 平均費用と(固定費用を考慮した)利潤 P0 • P0=「 」となる生産量Y* MC AC が利潤を最大化 • Y*のもとでの固定費を含 めた利潤は? =P×Y*-C(Y*) AC(Y*) =P×Y*-AC(Y*)×Y =(P-AC(Y*))×Y* = Y* Y 損益分岐点: 利潤がゼロとなる価格と生産水準 MC AC • AC(平均費用)が最小に なる点でMC=AC • この点を損益分岐点と呼 ぶ 損益分岐点 Y 市場価格と損益分岐点が一致するケース MC AC • P=MCになるように生産量 Y*を選ぶ • Y*のもとでの固定費用を 含めた利潤は P P=AC(Y*) 損益分岐点 Y* Y (PーAC(Y*))×Y*=0 • Pがこれより高かったら 利潤は+ • Pがこれより低かったら 利潤はー 市場価格が損益分岐点より低いケース MC AC AC(Y*) P • P=MCになるように生産量 Y*を選ぶ • Y*のもとでの固定費用を 含めた利潤は (PーAC(Y*))×Y*<0 → 損益分岐点 Y* Y だけの損が発生 今日やること 完全競争企業の生産の決定の続き 1 企業が供給をやめるのはどんなとき? 1.1 利潤がゼロになる点:損益分岐点 1.2 利潤がゼロでもマイナスでも営業? 1.3 供給をやめるべき点:操業停止点 2 供給曲線の導出 利潤がゼロなのに営業するの? コストに含まれる項目: • 経営者への報酬 • 利子・配当 • 内部留保 → 利潤がゼロでもちゃんと支払われている → 利潤がゼロでも営業する → 利潤がマイナスでも営業することはある!? 利潤が負でも営業する? • 利潤=収入-可変費用-固定費用 1.利潤が負でも、収入>可変費用なら営業すべき ←固定費用をすでに払ってしまって取り返せない段階 では、固定費用のことは無視 2.収入<可変費用なら営業をやめるべき • 平均可変費用 (Average Variable Cost, AVC) =可変費用÷生産量 P×Y>可変費用 → P>AVC P×Y<可変費用 → P<AVC 利潤が負でも生産を続けたほうが良い例 ラーメン屋の屋台 • 1杯550円が市場価格 • 1杯あたりの平均可変費用(AVC)が500円 • 1日20食しか作れない • 屋台製作費が100万円、屋台は1年しかもたない 365日分の固定費を入れない利潤: 50×20×365=36万5千円 →固定費を考えると利潤は負 →でも屋台を作ってしまったなら、固定費のことは考え ずに1日1000円の利潤でも稼いだほうがいい 生産をやめたほうがよい例 ラーメン屋の屋台 • 市場価格が550円から480円に下がってしまった! • 1杯あたりの賃金と材料費(平均可変費用、AVC)は500 円のまま P<平均可変費用=可変費用÷Y → 収入=P×Y<可変費用 つまり固定費用を勘定に入れなくても利潤が負 作れば作るほど損をするので、生産をやめるべき 今日やること 完全競争企業の生産の決定の続き 1 企業が供給をやめるのはどんなとき? 1.1 利潤がゼロになる点:損益分岐点 1.2 利潤がゼロでもマイナスでも営業? 1.3 供給をやめるべき点:操業停止点 2 供給曲線の導出 平均可変費用と限界費用 AC MC AVC 損益分岐点 操業停止点 Y • AC(平均費用)が最小にな る点でMC=AC • AVC(平均可変費用)が最 小になる点でMC=AVC この点を操業停止点と呼ぶ 平均可変費用と利潤 AC • P=MCとなるように最適生 産量Y*を選ぶ AVC P • Y*のもとでの固定費を除 いた利潤は? MC AVC(Y*) Y* Y =(P-AVC(Y*))×Y* = 市場価格と操業停止点が一致するケース AC MC AVC • P=MCになるように生産量 Y*を選ぶ • Y*のもとでの固定費用を 除いた利潤は (PーAVC(Y*))×Y*=0 P=AVC(Y*) • Pがこれより低かったら操 業を停止するべき 操業停止点 Y* Y 市場価格が操業停止点より低いケース AC MC AVC AVC(Y*) • P=MCになるように生産量 Y*を選ぶ • Y*のもとでの固定費用を 除いた利潤は (PーAVC(Y*))×Y*<0 →固定費用を除いても P 操業停止点 Y* Y だけの損が発生 まとめ AC MC ① 損益分岐点 AVC ③ ② 操業停止点 Y ① 市場価格>損益分岐点 →利潤>0 ② 市場価格<操業停止点 →固定費用を除いても利潤 がマイナス →生産を停止すべし ③ 操業停止点<市場価格 <損益分岐点 →利潤<0だが、固定費用 を除けば利潤はプラス →営業は続けるべし 今日やること 完全競争企業の生産の決定の続き 1 企業が供給をやめるのはどんなとき? 2 供給曲線の導出 • 各企業の供給曲線 • 市場全体の供給曲線 市場価格と、ある完全競争企業の供給量 限界費用 市場 価格 MC この企業の 供給曲線 P3 P2 P1 Y1 Y2 Y3 生産量Y 生産量Y (各企業の)供給曲線: P=MC それぞれの企業について 供給曲線=限界費用曲線 MC 供給曲線の高さ =売ってもよい最低価格 =限界費用 Y 厳密に言うと MC AVC • 供給曲線は限界費用曲 線のうち操業停止点より 右上の部分 • 価格がこれより下だと生 産停止→供給量ゼロ 操業停止点 Y 市場全体の供給曲線: 各企業の供給曲線を横に足したもの 企業1の 供給曲線 企業2の 供給曲線 Y1 Y2 企業数2の場合の 市場全体の供給 曲線 Y1+Y2 宿題 提出の必要はありません。次回に解説します。 ある完全競争企業の費用関数がC=Y2+20Y+100で あるとします。 1. 市場価格が最低いくらなら、利潤が0以上になりま すか? 2. 操業を停止したほうが良いのは、市場価格がいくら に下がった時ですか? 3. この企業の供給曲線を求めなさい。 I. II. ある財を供給する全ての企業の費用関数がC=5Yで あるとします。市場全体の供給曲線を求めなさい。
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