暗黒の火曜日(1929年10月29日) 株価は下がっていった。最初の一時間の取引が終わる前に、全く前 例を見ない驚くべき激しさで下落していることが明らかになった。全 国の仲買人の店で表示テープを見つめていた人たちは、驚きと困惑 とで互いに顔を見合せた。(中略)株価の機構がつぶれると共に、そ の下から逃げ出そうとする恐怖遁走が突然はじまった。(中略)立合 い場からあがったどよめきの声は、恐怖の呻き声へと変っていった。 普通ならば、よく慣れたテープ読みは、取引所が末尾の数字以外を すべて省略していたとしても、スクリーンを一瞥しただけで成行きが 分るものである。(中略)しかし、この日、彼はラジオ株の“六”が、六 六か五六か、四六を示すのか、確信が持てなかった。しかも、表示 機は一時間半遅れているのだと聞いた。彼が見ていたものは、すで に過去の記録であった。いま、立合い場では、一体何が起こってい るのか?(アレン『オンリーイエスタディ』pp.372-374 野口[1992]、p.87)
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