情報教育概論(S、教科または教職科目) 担当:山崎謙介、時間割コード:00388200 教科書:「情報学入門ー大学で学ぶ情 報科学・情報活用・情報社会ー」 大内 東・岡部茂玄・栗原正仁 編著 コロナ社、2006年、1600円(定価) 高等学校普通教科「情報」 情報A:主として「情報リテラシー」(識字教育) 情報B:主として「しくみ」(伝達,処理,加工) 情報C:主として「法と倫理」 本論(本書)は高等学校で学ぶ情報学から大 学でのそれへの橋渡し.「情報学概論」 皆さんは「情報教育」の専門家になることが 要請されている.4年間の学業生活は,この ための素養を身に着けるために用意されたも のである.本論はそれらを概観する. はしがき 第1次産業革命:18世紀後半.蒸気機関の 発明ー>鉄道,製鉄業,・・・が社会を大きく 変化させた. 第2次産業革命:19世紀終わり.内燃機関 の発明ー>自動車や電力などをはじめとして 社会を変革させた. 第3次産業革命:IT(Information Technology)がからむ.「第3の波」(Alvin Toffler) 第3の波の特徴 規模が世界的である. 変革の速度が速い 相反する現象が同時進行(正負の影響).たとえば ・集中化と多様化の同時進行 ・情報の非対称性の拡大(情報強者(巨大企業)と 情報弱者(消費者,発展途上国)) ・グローバリズムとローカリズム(ネットワークと個 人) ・情報財の公共性と個人性(公共財と個人財) IT(Information Technology)の特徴 第1グループ:ハードウェア(デジタルカメラ,DVD, フラッシュメモリ,CD,PC,モバイル,ネットワーク, サーバなど) 第2グループ:ソフトウェア(ウィンドウズ,エクセル, Java, Linuxなど) 第3グループ:システム(しくみ)(電子認証,電子決 済,eコマース,SCM*,ビジネスモデル) *Supply Chain Management(在庫分析):企業活動の管理手法の一つ。取引先との間 の受発注、資材の調達から在庫管理、製品の配送まで、いわば事業活動の川上から川下までをコン ピュータを使って総合的に管理することで余分な在庫などを削減し、コストを引き下げる効果があるとさ れる。 ITにおける共通の技術 デジタル技術:あらゆる情報を0と1の並びで 表現し,それらを処理する技術.コンピュータ の普及はあらゆる情報をデジタル化を促進し た.身近なところでは,音楽,映像,放送のデ ジタル化. デジタル技術の特徴:「無限回のコピーが可 能」 ビデオテープとDVDの比較(ダビング) 第3次産業革命の特徴:デジタル技術.無限 回のコピーが可能 3種の神器(パソコン,携帯電話,メールアドレス) パソコン:ソフトウェアを代表 携帯電話:ハードウェアを代表 メールアドレス:システム(しくみ)を代表・・・イ ンターネットに代表されるサイバー世界と呼 ばれる巨大な世界が存在.この世界は明る い未来と不透明な未来が混在する混沌とした 世界である.メールアドレスはサイバー世界 へと入るための鍵 目次 第1章 情報社会 第2章 生活と情報化 第3章 情報社会への 参画 第4章 データの管理と表 現 第5章 情報の検索と表現 第6章 いろいろな情報の デジタル表現 第7章 コンピュータの構成 としくみ 第8章 アルゴリズムとプロ グラミングの基礎知識 第9章 コンピュータネット ワークのしくみ 第10章 コンピュータの将 来と限界 補足:情報システム,ユー ザインターフェース 「情報学」の基礎的な項目 情報教育はその上に成り立つ 情報科学、計算機科学、コミュニケーション(情報の 伝達と通信)、メディアリテラシー(記号論が本質) 世の中でコンピュータがどのように使われているの かーー情報システム 教科書を分担して発表する 教科書には上記のいくつかが欠けている とくに学校教育において何が必要か,などに対する 見識・・・本講義で適宜補足していく NTT武蔵野研究所を訪問・見学(5月31日、木) 第1章 情報の学び方 (この本の概要) 1.1 情報の性質ととらえ方 「情報」は形がない。“人の心(情)に働きかける(報)何か”と いう意味であり、物理的実体のあるものではない。 情報は、事物のあり方の変化や、構成状態の変化に関する 概念である。情報の生成・伝達によってまた別の情報が関係 してくることもある。・・・とらえどころのないもの。 ー>より具体的な物に頼る“情報=コンピュータ”という発想が 生まれた。->“コンピュータリテラシー” ー>情報の偏ったごく一面を垣間見る程度。 この本は情報を本来の姿でとらえ、その表現や伝達、われわれ の“ものの見方、考え方”にかかわる事項、問題解決の原理 と実際、そして情報社会に暮らすための素養などについて、 統一的な支店を与えることを目的としている。 1.2 情報の多面性 情報を表現し、伝え、そして理解するという活動を 行っている。->人間に関わる側面 問題解決に関わる側面 例:クラス会の企画 ・会合の形態と参加人数 ・会場予約 ・予算を決 める ・データの収集、分析、比較、評価。会場の広 さや経費などについての計算。 情報機器使用の有無 社会に関わる側面 ネットワーク、情報システム、日常生活から企業活動 情報の諸側面 人間 社会 表現・伝達 システム・ 社会 情 報 問題解決 情報機器 1.3 情報活動の諸要素 表現と伝達 ・何を表現するか(表現の対象):what ・なぜ表現するか(表現の目的):why ・どのように表現するか(表現の方法):how *人間同士の情報伝達ー>認知に関する事項が必要 *間に情報機器が介在ー>機械処理に関する技術的側面が 必要 ●情報の伝達 ・情報理論(C.E.Shannon):送信記号と受信記号の出現確 率、伝播経路での誤りの度合いなどの理論的枠組み ・通信プロトコル(protocol、規約):情報の送り手と受け手の 間に成立する共通の理解(規約) モデル化 現実に目の前になかったり、あっても触ったり できないものについても、それらに代わるもの を利用して種々の考えをめぐらせる。 例:大小2つのボールを使って、太陽と惑星、原 子核と電子、等々 様々な状況で使われる代替物をモデル、モデ ルを作ることをモデル化と呼ぶ。 人間は現実世界を様々なモデルを通して理解、 把握する。 モデル化 現実世界 現実の操作 モデルの 世界 モデル上での操作 データモデル、計算モデル、プログラム言語 データのモデル:“ものおよびその状態”の代 替となるもの 計算のモデル:モデル化されたデータを操作 するためのもの プログラム言語:実際に実現されている計算 機構や、計算記述の表現手段 (本学、本専攻の授業では、「プログラミング言 語」、同演習) 情報、データ、知識 データ:人間の一連の活動でやりとりされる信号の うち、人間が判断や評価づけをするための素材や 資料。 情報:データに従った判断や行動に役立つもの。 知識:情報やデータを体系的にまとめ、判断や思考 に利用・活用できるように蓄積されたもの。 コンピュータが取り扱うものはすべて「データ」である。 コンピュータは人間のように自分では価値判断がで きません。 例:天気予報ー兵庫県南部は明日1日中晴天、最高気温32度、 最低気温25度 この天気予報は「情報」ですか?それとも「データ」 ですか? 想定:夏の甲子園野球大会中の報道。->球場の お弁当屋さんにとっては重要な「情報」。しかし関東 で営業している弁当屋さんにとっては単なる「デー タ」にすぎない。 ある人にとっては「情報」でも、ほかの人にとっては 特に意味の無い「データ」になることはよくあります。 日常生活において、情報とデータが曖昧んい使わ れる 問題解決 われわれはさまざまな状況をモデル化し、それを表 現することによって、対象としている“問題”を処理で きる状況を作り出す。次の段階としては、それを利 用して問題解決を行うことになる。 問題解決に利用するモデルも解決の方法も千差万 別。すべての問題に対して適用できる万能問題解 決器は存在しない。 問題の性質に応じていくつかの問題解決パターンを 適用し、それを遂行する仕組みを計算モデル上に 構築すること。 このやり方をアルゴリズムと呼ぶ。:データモデル上 でさまざまな操作を順次実行する形式のこともある し、データモデルの要素間のさまざまな関係を書き 下したものであることもある。 アルゴリズムと計算量 アルゴリズム 1 モデル 化され た問題 設定 計算量 1 アルゴリズム 2 計算量 2 アルゴリズム n 計算量 n 解答 1.4 計算の機構 コンピュータ: 実質的に意味のある大きな問題を扱うためには、何 らかの意味での自動機械の導入が必要。20世紀の 初頭までは目的別に数多くの自動機械が作られた。 この状況を一変させたのがコンピュータの出現であ る。(ENIAC、1946年) 1.現実世界のさまざまな問題を数値の組み合わせ の世界にモデル化する。 2.数値の世界で“現実の操作をモデル化” 3.結果をふたたび元の問題の世界い解釈しなおす。 ー>数値モデル化が可能な範囲内で万能の問題解決 機械としての地位を得た。 コンピュータの位置づけ 問題 問題 数値モデルの世界 問題 数値モデル上での 操作(計算) コンピュータ 2進数モデル 2進数でのモデル化:数値の世界へのモデル化に際 して、できるだけ能率のよいモデルとして生き残った もの。 ブール代数(論理代数):2進表現のデータを扱うた めの理論として使用され、具体的な実現素子として 論理回路が研究され使用されている。 コンピュータの中では、データモデルに相当する情 報が作成・蓄積されるとともに、計算モデルで定義さ れる計算要素の集まり、すなわちプログラムの処理 が実行されている。 プログラム内蔵方式:物理的な機械としてのコン ピュータは、その内部構造を変えることなしに、どの ような計算でも行うことができる。・・・Neumann型計 算機(主記憶、制御、演算、入出力の各装置を含 む)の特徴。 1.5 情報システムと社会 1.5.1 情報システム ソフトウェア:1つまたはいくつかのプログラムを集め て、全体として1つのサービス、あるいは業務を行う ようにしたもの。 情報システム:ソフトウェアを含むコンピュータや情 報処理機器と、情報伝達のためのネットワークを組 み合わせることによってさまざまなサービスや機能 を提供できる。このような複合システムをいう。情報 社会の実体の大部分。 例:カーナビゲーションシステム、遠隔医療システム、 チケット予約システム、鉄道改札システム、銀行の 窓口システム 等々。 ユーザインターフェース ユーザインターフェース:利用者が情報システムと 関わる部分。 情報システムが社会に浸透すればするほど、この ユーザインターフェースの役割が大きくなってくる。 ユニバーサルデザイン:広い範囲の知識水準と能 力レベルを持つユーザを対象としたシステムデザイ ン。現代の情報システム開発において重要な項目。 ユーザ ユーザ ユーザインターフェース 情報システム 社会(情報化社会) 情報システムは新しい存在であるので多くの場合社会的な 体制作りが追いついていない。->会社や国家といった既 成の枠組みとは相容れない情報システムも稀ではない。 新規システムが持ち込む新しい概念、システムの使われ方、 既存の価値観との調整がそのままでは対処できないことが 多い。 例:情報を「財」とみなす、ネットワーク越しの違法アクセスの 制限、ウェブ(Web)による情報開示の性格付け、等々は法 律が後追いで制定されている。 情報の所有と流通に関する既成の枠組みを脅かす事態も発 生(Winnyなどによるファイル交換ソフト) 情報社会人の基本的素養が必要:問題点から背けない、問 題の発生をすべて他人の責任にしない、等々 リベラルアーツ:知ることによって無知から自由になれる
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