レジュメ4

ホームレス自立支援法の課題
• 2002年、ホームレスの自立の支援等に関す
る特別措置法が成立。2012年に5年延長。
• 施策の中心は自立支援事業「就労支援」。
• 自立支援センターが全国に作られる。
• 自立支援事業のほかに、公園対策や日雇対
策から派生している緊急一時宿泊(シェル
ター)事業。
• 巡回相談等の総合相談推進事業や、職業相
談・職業紹介、職業能力の開発等
写真は、JanJan及び、渡辺まさし氏の
HPから転載
• 東京では、「緊急一時保護センター」と「自立支
援センター」が一体化された「新型自立支援セ
ンター」に2013年に切り替え。
• 緊急一時保護事業及び自立支援事業の利用
期間を通算して、最長6ヶ月。
• 生活相談、住宅相談、就労相談、技能講習、法
律相談が提供。就労相談はハローワーク出向。
• 新型では、転居支援、アフターケアも。
• 足立寮、目黒寮、中野寮、港寮、文京寮の5施
設が存在(定員は370名)
• 管理は特別区人事・厚生事務組合が行い、運
営は原則、委託を受けた社会福祉法人。
• ベッドのある相部屋、入浴、娯楽室、洗濯機
(乾燥機)、エアコンなどが整備
• 食事提供、日用品や理髪等も提供。
• 支給金:日曜品費、求職交通費、外食費、就
労支度金が提供、面接衣類の貸出
• 入所中は、飲酒や金銭の貸借、ギャンブル、
ケンカ・口論、無断外出・外泊などが禁止
• 門限も設定
• 持ち込める荷物はダンボール1箱から2箱分
程度に制限
• ペット、動物を飼うことも禁止、家族も離散
• 自立支援センター事業の問題点は、
• ①就労自立をモデルとしているが、就労自立
率が必ずしも高くないこと。高齢化により、対
象者も少なくなってきている。
• ②再路上化も広範に見られる
• ③そもそも、自立支援センターに行きたがら
ないホームレスが多い。
• ④最近は利用率が極めて低い。
• -ただし、新型になりある程度は問題が改善
している。
自立支援事業利用に対する簡単
な経済モデル
賃金
率
W2
W1
65歳
年齢
入所期
間(T 1)
就労期間(T 2)
保護期間
• 2期間人的資本モデル
• 入所と非入所の総価値を比較、NPVが高いほど
入所確率が増す。
• 費用としては、アパートや宿泊所に移った後の家
賃、借金の返済などの直接費用、自立支援セン
ター入所時に失う資産(諸荷物、テント、テントを
置いていた場所の価値等)や、やはり入所時に失
う犬などの動物や同居家族ホームレス期間中の
自由な生活時間、生活習慣(アルコール、ギャン
ブル等)の効用価値
w1T2 
 w2  (1   ) w1 T2
 
NPV  
 C   w1T1 

1 r
1 r 

 
NPV   w1T1 
T2
1 r
( w2  w1 )  C
• ①現在の賃金率が高いほど入所確率が低くなる(月
収入、賃金率、食事回数)
• ②将来の賃金率が高いほど入所確率が高くなる(最
長職正社員、資格保有)
• ③就労確率が高いほど入所確率が高くなる(健康、
年齢)
• ④就労期間が長くなるほど(年齢が若いほど)入所
確率が高くなる(年齢)、
• ⑤費用が高くなるほど入所確率が低くなる(アルコー
ル、テント、借金)
• 鈴木・阪東(2006) では、①現在の賃金率が
入所希望率に対して負に有意、②若い層の
ダミー変数(40代ダミー)が正で有意であり、
記述統計の結果とも合わせて、概ね上記のモ
デルが妥当。
• 合理的に、自立支援事業に乗らない人々が
いる。所得が高い人、高齢の人が多い理由に
は合理性がある。自立支援事業の限界があ
る。
• また、自立支援センター元入所者のホームレ
スの就労に関する資質は、入所経験のない
ホームレスと比較して必ずしも低くはなく、特
に入所希望者と比較すると明らかに高い。
• 自立支援事業ではカバーできない対象者に
対しては、それ以外の方策を模索する必要
性
• 2004年から東京では、ホームレス移行生活
支援事業(新宿中央公園、戸山公園、代々
木公園、隅田公園、上野公園)3年間で
1,541人が地域の借上げアパートに移行。
• 2010年に事業終了。
• 自立とみなされる月収13万円以上を得ている
入居者は、約2割に過ぎず 。既に生活保護の
受給率は各区とも2~4割に上っている。
• 自立支援事業も生活保護による退所率が4割。
• 地域生活継続支援事業
• 新型自立支援施設(新たに借上げ型自立支
援住宅を第3ステップとした支援)に移行。
• もっとも、現状では、ホームレス対策の決め手
は、「生活保護」に移っている。2000年代前半
から、無料低額宿泊所入所者の急増。2000
年代後半からはさらに広範に生活保護が急増。