ネットワーク(結びつき)のお話 物理教室セミナー 肱黒長憲 2005.2.26 1.Introduction More Is Different 「多は異なり」 P.W.Anderson, Science 177(1972)393 膨大な数の原子・電子からなる物質の性質を理解するには個々 の構成粒子に対する物理法則とは異なる概念が必要である。 科学のそれぞれの階層で知的独立性がある。 単純なものからより複雑なレベルへの創発 単純な構成員の間の相互作用がいかにより複雑な振る舞い を引き起こすか 複雑系の科学 Networkの科学 • 複雑な系:要素還元主義が通用しない(要素の組み合わせ方が膨大) • あらゆるものが他のあらゆるものにつながっている→自己組織化 →ネットワークの重要性 • Laws of Form(形式の法則) ミクロな要素間の結びつき方のパターンから、どのようなマクロな法則性が出てく るかを問題にする。 (グラフ理論、システム論) 実際のネットワークの例 ● 電力網、インターネット ● 映画俳優、WWW、知人関係 ● ニューラルネットワーク、etc ネットワークは、点(vertex or node)と辺(edge or link)からなる。 vertex edge ネットワークの点の総数=6 ネットワークの辺の総数=7 A B 点Aの次数(点に接続された辺の数)=3 点Aと点Bの間の経路長(経過する辺の数の最小値)=2 Mathematica の利用 • • • ネットワークを調べる道具が用意されている プログラムが簡単である グラフィックスを使ってイメージが描きやすい • 計算時間が長い(プログラムにもよる) • 簡単な Networkプログラム例 Combinatorica DiscreteMath`Combinatorica`とは,組み合わせ論とグラフ理論における450以上の 関数によってMathematica を拡張するものである.このような関数には,グラフやそ の他の組み合わせ論的な対象を構成するもの,これらの対象の不変量を計算するも の,さらにはその結果を表示するものがある. このパッケージの最善のガイドブックとなるのは,Steven Skiena,Sriram Pemmaraju共著の「Computational Discrete Mathematics: Combinatorics and Graph Theory with Mathematica」(2003年Cambridge University Press)であろう. 新しいCombinatorica は1990年のオリジナルバージョンを書き換えたものである. 新バージョンは,以前のものよりもずっと速く実行でき,グラフィックスも向上し新機能 も加わった. Webのwww.combinatorica.comには,パッケージの最新リリース,Combinatorica グラフィックスのエディタ,興味深い追加ファイルなどがある. Combinatorica パッケージをロードしなくてはならない. <<DiscreteMath`Combinatorica` (東洋大学工学部環境建設学科 Yoshino のHPに有用なプログラムの解説がある) 2.Regular Network と Percolation Site Percolation nXn 正規ネットワークから m 個の生き残る点をランダムに 選んでランダムグラフを作る。 n=10, m=60 Bond Percolation nXn 正規ネットワークから m 個の削除する辺をランダムに 選んでランダムグラフを作る。 n=10, m=60 Site Percolation 臨界値 (0.5927) Bond Percolation 臨界値 (0.5) 3.Random Network ランダム・ネットワークが依って立つ2つの仮説 (1) 多数の節点がすでに存在している。 (2) すべての節点は対等である。 m=50 m=100 N=20 p=0.3 p=0.6 N=20 ネットワークを特徴付ける基本的な量 Random Network のポアッソン分布 ランダムネットワークのリンクの度数分布がポアッソン分布になる。 点の数 N 、連結確率 p のとき、平均次数は p (N-1) 点の数 N 、辺の数 m のとき、平均次数は 2m / N N = 点の総数 m = 辺の総数 Random Network の Percolation 転移 ランダムネットワークの辺の数を増やしてゆく(平均次数を増やす)と、ある 臨界値で巨大クラスターができることを示す。 平均次数の閾値は1で、このときすべての節点が少なくとも一つの辺を持 つことを意味する。 現実のネットワークは 平均次数の閾値1を大 幅に超えている。 孤立した点は存在しな い。 Random Network の 平均経路長と クラスタリング係数 p の小さいところで、 平均経路長 L : 短い クラスタリング係数 C : 小さい 完 全 ネ ッ ト ワ ー ク 実際のネットワークの特徴 • 緊密にリンクされたクラスターがいたるところにある (クラスタリング係数が大きい)にもかかわらず、全体 がスモールワールドになっている(平均経路長が短 い)。 • 次数分布が正規分布でない場合がある。 ➞実際のネットワークは正規ネットワークでもランダム ネットワークでもない。 平等主義的➞Small World Network 貴族主義的➞Scale Free Network 4.Small World • Milgram (Psychology Today 2 (1967) 60) • 友人のネットワークを通して世界中のどの人へも到達するに は何ステップ必要か? • ネブラスカ州オハマの住人160人からボストンの株式仲買人 まで手紙を転送(ただし、手紙を受け取った人はファースト ネームで呼び合うような人にしか手紙を送ってはならない) • (6 degrees of separation = 6次の隔たり) Small World Network • • • • Watts,Strogatz (Nature 393 (1998) 440) Regular networks(クラスタリングは強い、経路長は長い) Random networks(クラスタリングは弱い、経路長は短い) Small world networks(クラスタリングは強い、経路長は短い) Small World Network を作る Regular network を確率pでランダムにつなぎ替えを行う Regular Network からのつなぎ替え N = 10, k = 4 各辺を確率 p で接続されていない 2点間へつなぎ替える 点1の C = 3/6 = 0.5 点1の C = 1/3 点3-点8 の L = 3 点3-点8 の L = 1 Small World Network の 平均経路長と クラスタリング係数 ごく少数のつなぎ替え(確率 p が 小さい) でも 平均経路長 L : 短かくなる クラスタリング係数 C : 大きいまま 5.Scale Free 80対20の法則 Zipf の法則(単語の出現頻度Hardy) Zipf の法則(単語の出現頻度Dickens) Zipf の法則(日本の都市人口) Gutenberg-Richterの関係式(地震) M : マグニチュード(= 振幅の対数) Log(地震数) = a – b M マグニチュードについて 1935年,リヒター(Richter)によって 導入された。震源から100km離れた 地点に置かれた当時の標準地震計 (ウッド・アンダーソン型地震計)で記 録された揺れの最大振幅をミクロン (μm)単位で表わし、その数値の対 数をマグニチュードとして定義した。 防災科学技術研究所HPより Web サイトへの通信量の分布 Distribution of traffic referred to useit.com from other websites in a 3-month period. Blue dots are referrals from search engines; gray dots are all other referrals; red line is best-fit Zipf curve Note use of a double-logarithmic scale. Jakob Nielsen‘s Websiteより Zipf の法則,Paretoの法則,べき乗則 スケールフリー・ネットワークを生成する2つの原理 (Barabasi) • (1) 成長(Growth):自律的に新たな節点が追加され 続ける。ネットワークは1度に1つだけ節点を増やす。 • (2) 優先接続(Preferential Attachment):新しい辺 はより多くの辺を持つ節点に結合しやすい。すなわ ち、ある節点が選択される確率は、その節点がすで に獲得している辺数kに比例する。 Scale Free Network を作る m0=3, m=2 Loop=0 Loop=1 Loop=2 Loop=3 Scale Free Network m0 = 3 m=2 Loop = 100 Scale Free Network の次数分布確率密度 Scale Free Network のべき乗分布 6.Random Growth Network m0 = 3 m=2 Loop = 100 Random Growth Network の次数分布確率密度 Random Growth Network の指数関数分布 Network の種類と特徴 7.結論 (1)Network の手法で Percolation も扱える。 (Site Percolation、Bond Percolation) (2)Regular & Random Network では現実の Network を 表せない。 (3)Regular Network に少数の「つなぎ替え」を行うと Small World Network が作られる。 (4)「成長」と「選択接続」から Scale Free Network が作ら れて、べき乗分布が得られる。 (5)「選択接続」ではなく、まったくランダムに接続をする Random Growth Network では指数関数分布が得られる。
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