新編日語 第四冊 第16課 五十嵐勝さん (言葉と表現) 1 第16課のポイント ~ものだから ~やら~やら どれもこれも 副詞「まるで」 副詞「まず」 (動詞の終止形)しかない ~くせに ~破目になる ~あげく ~きり 2 一、 ~ものだから 【意味】 「原因、理由」を表す。個人的な言い訳を言いたい 時によく使う言い方。 *『から』に言い換えることが出来ますが 、後に意志表現、 命令表現はつけられない。 ☺どうして遅刻したんですか。 ☻目覚まし時計が壊れていたものですから。 あまりのんきものだもんだから、失敗するんですよ。 3 私の前を走っている人が転んだものだから、それにつ まづいて私も転んでしまった。 駅まであまりに遠かったものだから、タクシーに乗っ てきました。 あまり早口に言うものだから、少しも聞き取れません。 4 二、 ~やら~やら 【接続】 体言、活用語の連体形または連体形+の 【意味】まだ外にもいろいろあるが、先ず1、2の例を 挙げたい時に使う。「~たり~たりして」のようにいくつ の中から並べあげるのに用いる。いろいろあって大変だと いう意味で使われることが多い。 5 机の上に紙くずやらノートやら、糊やらが、ごちゃごちゃ 置いてある。 びっくりするやら悲しむやら、ニュースを聞いた人たちの 反応はさまざまだった。 マラソンで三位に入賞した時、嬉しいやら口惜しいやら複 雑な気持だった。 来月はレポートやら試験やらでひどく忙しくなりそうだ。 6 昨日は電車で財布をすられるやら傘を忘れるやらで さんざんだった。 皆さんにこんなに祝ってもらえるとは恥ずかしいや ら、嬉しいやらなんともお礼の言いようがありませ ん。 日が沈んで、山道は寒いやらこわいやらで小さい子 は泣き出してしまった。 7 「~のやら~のやら」の形で「二つのうちのどちらか よく分からない」という意味 話し手が判断に困っていたり、話題の主の態度がはっ きりしないのを快く思っていないときに使われること が多い。 行きたいのやら行きたくないのやら、あの人の気持は どうもよく分からない。 こんなに辛くては、味がいいのやら悪いのやらさっぱ り分からない。 うちの子はいつも部屋にいるけど勉強しているのやら していないのやら、まったく分からない。 8 「何」、「どこ」などの疑問詞について、はっきりそれと は指し示せないこと。 父の誕生日がいつやらはっきり覚えていない。 会議のあとでどこやら高そうなバーに連れて行かれ た。。 なにやら騒がしいと思ったら、近所が火事だった。 40年も会っていないのではじめは誰が誰やらはっき り分からなかった。 9 三、 どれもこれも 【意味】 「どれも」より強めた言い方。 どれもこれも似たり寄ったりだ。 どれもこれも実にうまかった。 どれもこれも平凡で、抜きん出たものはない。 だれもかれも私の気持を理解してくれない。 (自分以外のほかのどんなひとも) 春のなると、どこもかしこも花でいっぱいだ。 (あちこち) 10 四、副詞「まるで」 【意味】 ちょうど。あたかも。「まるで~ようだ/みた いだ」、「まるで~かのように/かのごとく」という形で 使う。ある状態を他の例にたとえたり、二つを比べて「実 際には違うが、たいへん近い」ことを表す表現。 *「らしい」と一緒に使うことはできない。 彼は入学試験を受ける友人のことを、まるで自分のことの ように心配している。 11 「全然~ない」、「まったく~ない」 いくら仕事ができても、自分の身の回りのことがま るでできないようでは、一人前のおとなとは言えな い。 みんなの話では、ずいぶん嫌な男のように思えたが、 実際に会ってみると、聞いていたのとはまるで違っ ていた。 いつ話したの。わたし、まるで忘れてしまったの。 12 五、副詞「まず」 最初に。第一に。 日本の年中行事として、先ず盆と正月があげられる。 今年の夏は暑いから、ボーナスが入ったら、まずクーラー を買おうと思っている。 次に皆さんのご意見をお伺いしたいと思います。では、ま ず川口さんからお願いします。 13 おおよそ、たぶん、おそらく 彼が一度「だめだ」と言ったら、もう可能性はないと 思って先ず間違いない。 予算は十分にあるから、足りなくなることは先ずない でしょう。 山田氏の当選は先ず間違いないでしょう。 14 よく「先ずは」の形で、「完全にではないが、一応 は」、「十分ではないが取りあえず」という意味を表 す。 これで先ずは一安心した。 先ずはほっとした。 結果はまずよいほうでした。 15 六、(動詞の終止形)しかない 【意味】「そうするだけだ」という意味で外に方法がな い、外の可能性がないという文脈で使われることが 多い。 高過ぎて買えないから借りるしかない。 そんなに学校が嫌ならやめるしかない。 ここまで来れば、頑張ってやるしかほかに方法はあり ませんよ。 16 この事故の責任はこちら側にあるのだから、謝るしかない と思います。 ビザの延長ができなかったのだから、帰国するしかありま せん。 この病気を治す方法は手術しかないそうです。緊急に入院 するほかありません。 17 七、 ~くせに 【意味】悪い点を非難したり軽蔑したりする気持や意外な気 持、不満を表す時に使う。 【接続】 体言+の、活用語の連体+くせに 彼は自分ではできないくせに、いつも人のやり方に文句 をいう。 好きなくせに、嫌いだと言い張っている。 あの選手は体が大きいくせに、まったく力がない。 18 和子は二十歳にもなったくせに、まだ親に部屋の掃除をし てもらっている。 臆病者のくせに強がりを言っている。 君は知っているくせに、教えてくれないね。 19 八、 ~破目になる 【意味】好ましくない事態、逃げられない事態になる。 承諾せねばならぬ破目になったそうです。 彼らは苦しい破目に陥っている。 子供を小さいときから甘やかしたので、こんな破目になっ たのだろう。 20 ひどい破目になった。 彼は大学に入ってから、よく勉強もしないで、さんざん遊 んだあげく、こんな破目になったのだ。 とうとう、お家を競売にかけられる破目になったそうです。 21 九、 ~あげく 【意味】 「いろいろした後で、とうとう残念な結果になっ た」と言いたいときに使う。 【接続】動詞の過去形、名詞+の+あげく 考えに考えたあげく、この家を売ることに決めた。 相談のあげく、こう決まった。 22 この問題については、長時間にわたる議論のあげく、 とうとう結論は出なかった。 さんざん道に迷ったあげく、結局駅前に戻って交番で 道を聞かなければならなかった。 23 十、 ~きり 【意味】 名詞について、「それだけ」と範囲を限定する のに用いる。「これ、それ、あれ」につくときは「これっき り、それっきり、あれっきり」となることが多い。 二人きりで話し合った。 残ったのは私一人きりだった。 見て、残ったお金はこれっきりよ。 24 それを最後として、次に予想される事態が起こらないこと を意味する。 【用法】多く「~た(っ)きり~ない」の形で使われる。 昨年の正月に年賀状をよこしたっきり、何の音沙汰もない。 今朝、家を出たきり、まだ帰っていない。 25 彼は卒業して中国を出たっきり、もう5年も帰ってこな い。 あの方とは一度お会いしましたきり(で)、その後、会っ ていません。 あの方とは一度お会いしましたが、それっきり会っていま せん。 26
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