国内外における アジャイルプロセス普及実態と事例 2011年11月21日 資料作成 濱 勝巳 株式会社アッズーリ アジャイルプロセス協議会会長 大槻 繁 株式会社一 アジャイルプロセス協議会フェロー 本日発表 塩田 英二 TIS株式会社 アジャイルプロセス協議会 アジャイルマインド勉強会リーダ 1 目次 アジャイルプロセス協議会の活動概況 開発プロセス アジャイルプロセスの普及動向 アンケート調査 会員企業の事例 パラダイムシフト おわりに 参加のご案内 2 アジャイルプロセス協議会の活動概況 3 アジャイルプロセス協議会 • 大規模、小規模を問わず、新たなソフトウェア産業 のパラダイムを目指し、日本全国にアジャイルプロ セスに関する議論の場や研究成果の発表、情報 発信の場を提供することを目的とする。 • 個人よりも企業および団体としての活動を積極的 に進める 4 全国的な活動 イベント開催地 主な活動 • • • • • • • • 本支部 会報誌の発行 ワーキンググループ活動 各種セミナー・勉強会の企画・開催 会合の開催(月1程度)および合宿 自由研究、論文、記事等の投稿や執筆 Webサイトによる発信 メーリングリストによる議論 他団体・コミュニティとの連携 山陰支部 北海道支部 東北支部 北陸支部 見積・契約WG アジャイルマインド勉強会 アジャイル・サービス・マネジメントWG 知働化研究会 アジャイルチームWG ADVANCE WG 中国支部 九州支部 東京本部 東海支部 アジャイル組込みソフトウェアWG 西日本アジャイルプロセス研究会 四国支部 関西支部 5 アジャイルプロセス協議会の歩み ワーキンググループ 2010.6.12 2010 総会セミナー (大槻繁氏/一) 2009.11.6 協議会セミナー in 大阪 (山田正樹氏/メタボリックス) 2009 2008.7.31 2008 5周年記念セミナー 2007.8.7 総会セミナー (平鍋健児氏/チェンジビジョン) プロジェクトファシリテーション 2007 2006.6.21 2006 2005.6.17 2005 総会セミナー(松本吉弘教授) ソフトウェアにおけるセル生産方式 2004.6.11 総会セミナー(林衛氏/ITイノベーション) 日本におけるIT組織の課題とアジャイル手法への提言 2004 2003.7.9 2003 総会セミナー (岸良裕司氏/ビーイング) TOCクリティカルチェーン 設立総会 イベント 6 開発プロセス 7 新しい技術、新しい方法には、出現の背景があります。歴史的 な流れの中で今ある技術を理解することが重要です。アジャイ ルプロセスというと、とかく個人、チームの話題やコミュニケー ション、ファシリテーションに目が行きがちですが、産業論や科 学・技術史上の意味があるのです。 第1〜3の波 1970 1980 1990 ライフサイクル論争 NATO会合 農耕的 2000 2010 アジャイルソフトウェア 開発マニフェスト 工業的 知働的 SEの SEの SEの 第1の波 第2の波 第3の波 プログラム主体 構造化 機能中心 システム主体 大量生産/大量消費 分業/手順化/標準化 ドメイン主体 知識社会 多様化/価値指向 アルビン・トフラーの『第三の波』で提示されたパラダイムを、 ソフトウェアの世界にあてはめてみました。 8 ライフサイクル論争(開発プロセスの推移) 1981年頃ACM-SEN(Software Engineering Notes)での、ウォータ フォール型開発プロセスの原理的欠 陥に関する論争 最初の誤りが、最後にならないとわからない→ 大槻が教育用に四半世紀 程前に図柄をデザインし た絵です。未だにいろいろ な方々が使ってます。 最初が肝心ということを適確に進めるスパイラ ルモデルが、1988年にBarry Boehmによって提 唱されました → 9 新しいパラダイム(New Paradigm) Making things Conversation 母を横に乗せ、ハンドルを握った時 のことです。最初はうまく行ったよ うに見えました、でも、ちょっと油 断した瞬間に車は道路を外れて砂利 に突っ込んでしまいました。母は車 を道に戻すと、初めて運転とは何か を教えてくれました。 「運転で大切なのは、車を正しい方 向に進めることじゃないのよ。大切 なのは、常に注意を払って細かく左 右に方向修正していくことなの よ。」 2001年4月『XP&アジャイル開発セミナー』賢徒部駆氏講演より ベック氏からもらったスライドです。とても印象 に残っているので、いつもアジャイルプロセスの 導入で使わさせてもらっています。ちなみに「賢 徒部駆」という漢字名を付けたのは、大槻です。 本人も喜んでいました。 10 従来の開発とアジャイルな開発の違い 「作る」から「育てる」へ 進化するソフトウェア 従来の開発 11 アジャイルプロセスの普及動向 12 海外アジャイルプロセス普及動向 Version One 社のアンケート調査より 88カ国、2587名を対象 http://www.versionone.com/ 84%の回答者がアジャイルプロセスをやっている組織に勤務 利用アジャイル手法:SCRUM(50%),SCRUM+XP Hybrid(24%), XP(6%)… 利用プラクティス:イテレーション、朝会、ユニットテスト、短かいリ リース、ふりかえり… 導入障壁:経営層が変化を嫌う、初期計画の不足、管理統制の 不足… アジャイルプロジェクト失敗理由:アジャイル手法の経験不足、企 業文化、不明、ウォータフォールの外部からの押しつけ… 導入理由:マーケットインスピード、変化への対応能力… 導入効果:変化への対応能力、プロジェクトの可視化、ITとビジネ スとの連動、チームモラル、マーケットインスピード… 13 国内アジャイルプロセス普及動向 着実に普及し、選択肢のひとつとして市民権を得ている 民間企業 雑誌記事、シンポジウムなどでの主な発表 • 日本ユニシス(すかいらーく) • 永和システムマネジメント(UMLエディタ) • NEC(ヤンマー農機) • TIS(金融系) • 富士通(Webサーバ) • 東芝医用システムエンジニアリング(医療) • 富士通(学校向け) • リクルート(Webシステム) • ウルシステムズ(東邦チタニウム) • アッズーリ(金融機関向け) Agile Japan 2010 楽天とDeNA( Webサービス開発) 官公庁 独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター • 非ウォーターフォール型開発に関する調 査※1 島根県 • Rubyビジネスモデル研究実証事業※2 山形県庁と佐賀県庁 • プロジェクトファシリテーション等の積極 利用 (Agile Japan 2010 発表) ※1: http://sec.ipa.go.jp/reports/20100330a.html ※2: http://www.pref.shimane.lg.jp/sangyo/it/2010_04_ruby_business_model.html 非ウォータフォールの動向 14 2009年11月〜2010年3月にかけて、まず 課題を抽出するという目的の第一弾の調 査・検討が行われました。 国の公的な機関がアジャイルプロセスを採 上げたことは、画期的な(相当遅れている のは確かですが)事件です。 http://sec.ipa.go.jp/reports/20100330a.html 15 アンケート調査 16 2006.1〜3アンケート調査 (アジャイルプロセス協議会調べ) 17 18 19 20 会員企業の事例 21 会員企業の事例(1/1) • 株式会社アッズーリ – アジャイル・ソフトウェア・セル生産A-BIPとメタコンポーネントによる企業向アプリケーシ ョンを構築。東京/大阪両拠点による分散アジャイルを成功させている。 • 株式会社一 – アジャイルプロセスのもたらす価値は、不確実性への対応、短期化、リソースの平準化 である。グローバル対応等のビジネスバリューに直結したプロセス改善のコンサルティ ングを行っている。 • 株式会社アットウェア – 組織のチーム構成をダイナミックに変える事により、数名規模から数十名規模までの 様々な開発チームで、アジャイルプロセスを成功させている。 • TIS株式会社 – 従来型の大規模プロジェクトの一部にアジャイルプロセスを導入することで、アジャイ ルプロセスの利点を得ながら、顧客の負担を軽減している。 22 会員企業の事例(1/2) • 株式会社CIJ – アジャイルプロセス、リーンソフトウェア開発、ソフトウェア・セル生産を融合させた進化 型開発プロセスを実践している(会報誌Vol.1より) • 株式会社ライテック – 協議、見積による作業サインアップといった「できること」から無理をせず取り入れるこ とでアジャイルプロセスを実践している(会報誌Vol.1より) • トラスティア株式会社 – 開発チームだけではなく、営業担当にアジャイル開発を理解させることでユーザ、開発 者、営業担当者の3者がハッピーになれるようにしている(会報誌Vol.2より) 23 パラダイムシフト 24 アジャイルソフトウェア開発マニフェストは、 それなりにインパクトがありました・・・ 「マニフェスト」というと最近は印象が 悪いものになっていますが、こういっ た問題意識を共有するメッセージをま とめておくことは、とても効果的です。 プロセス ツール 個人能力 相互作用 Individuals and interactions over processes and tools 動くソフト 文書 Working software over comprehensive documentation 顧客協調 契約・交渉 Customer collaboration over contract negotiation 変化対応 計画遂行 Responding to change over following a plan アジャイルな気持ち 伝統的取組みの傾向 (Manifesto for Agile Software Development, 2001年2月) 25 狭義から広義のアジャイルへ 「狭義」「広義」というのは、もっと良い命名をした いのですが、そのままにしています。狭義のア ジャイルプロセスの歯車が内向きになっていると ころがポイントです。広義のアジャイルプロセス の絵柄は、次世代のコンセプトを表わすために、 いろいろなところで象徴的に使っています。 狭義のアジャイルプロセス 開発者側中心の視点 顧客側とのコミュニケーションや確認を重視しては いるものの、あくまでも受動的 協調/同期 開発プロセス 広義のアジャイルプロセス 顧客側と開発側との同期 全体での価値創出、ビジネスプロセ スを能動的に考慮 開発プロセス ビジネスプロセス 新しい時代の価値観 新世代(第三の波)の方向性 アジャイルソフトウェア開発マニフェストにならって、新しい時代の 価値観を描いてみました。ロバート・グラスの『ソフトウェア・クリエイ ティビティ2.0』なども参考にしつつ、周囲の専門家の方々と議論し て、時々刻々と洗練化させています。実は、30以上の対峙項目が あるのですが、代表的なもの紹介しています。 伝統的取組みの傾向 柔軟性 規律 発見的 形式的 満足化 最適化 多様 生命的 一様 操作主義的 様相 機能 知識 コード 豊かさ 金銭 26 27 人働説から知働説へ 人月の神話 天動説 「作る」と「使う」は本質的に同じ 人働説 価値 価値 技術 地動説 ソフトウェアとは 《実行可能な知識》である Executable Knowledge ソフトウェアとは 実行可能な知識を紡いだ 《様相》である 技術 Texture 中心は《機能》から《様相》へ 知働説 知働化研究会は、アジャイルプロセス協議会のWGとして、2009年6月に設立されました。 コンセプトリーダ:山田正樹氏(メタボリクス社) 運営リーダ:大槻繁、現在メンバ数24、研究室数6 http://www.exekt-lab.org/ 28 『新ソフトウェア宣言』は、通称『呪縛宣言』とも 呼ばれています。 2010年6月9日〜11日に横浜開港記念館で開 催されたソフトウェアシンポジウム2010の中の ワーキンググループ「ソフトウェアエンジニアリ ングの呪縛WG」に集まった賢人たちが、これ からのソフトウェア、および、ソフトウェアエンジ ニアリングの方向性について議論したものが元 になっています。 最終的には、「呪縛WG」の二人のコーディネー タである大槻繁と濱勝巳氏によって、WG終了 後議論が重ねられ、今の7項目からなる形に集 約されました。 http://www.exekt-lab.org/Home/newsoftdecl 29 知働化研究会では、年1回程度の研究誌をまとめることにしています。 創刊第1号が11月3日(文化の日)に公開されました。 http://www.exekt-lab.org/Home/exerev 30 価値について SEC/価値指向マネジメントWG マネジメント、交渉、取引き、契約などでは、プロセスやプロダクトがもたらす価値の視点が必要です。 アジャイルプロセスが不確実性に対応できるということは、選択肢を持てる(オプション)価値があるこ とですが、それだけリソースやゆとりが必要であり、工数もかかる(高くつく)ということになります。 価値ドメイン 受発注フレーム (WF、非WF/アジャイ ル等の受発注開発•保 守) <ビジネス> 調達プロセス 提案プロセス ユーザ システム 交渉(negotiation) 契約(contract) 市場フレーム 保守 価値プロセス (バリューチェーン、ポータル、SIなど) 利用 <エンジニアリング> ユーザ ベンダ ベンダ 市場 提供 ベンダ (メーカ) 付加価値 価値の転換 ベンダ 調達 基盤フレーム(複合フレーム) (インフラ、クラウドなど) 市場 提供 ベンダ SI マーケティング ユーザ ベンダ ベンダ プロダクト サービス ユーザ ベンダ ベンダ 従量制(価格決定) 進化フレーム 変化(予測) メタ価値プロセス (発展、進化、適応、 フィードバック主体) 環境 対象 市場 提供 マーケティング インフラ ベンダ (システム/組織) 適応 フィードバック システムなど ベンダ バリューチェーン ペルソナ/ユーザエクスペリエンス (製品開発、Webサービ ス、プロダクトラインなど) メタ価値プロセス 連鎖フレーム 初期構築 ベンダ ベンダ インタフェース システム 調達 開発・保守 31 おわりに 32 アジャイルプロセスは、ビジネス環境の変化、世の中の流れの中で の「必然」である。 アジャイルプロセスは、単なる教えや提唱理論でも、対岸の火の手 でもなく、実践段階に入っている。 あらゆる科学・技術・経済/社会・ビジネスの底流に、通奏低音のよう に共通の変化が起こっている。 次世代のソフトウェアは、実世界の中に溶け込み、富を生み出す機 械として実行され、ソフトウェアに関わる産業構造も変貌していく。 ソフトウェアの本質的困難(複雑性、同調性、可変性、不可視性)の 問題は依然として困難であり続ける。 33 参加のご案内 34 活動への参加方法 アジャイルプロセス協議会への会員登録が必要 参加資格: アジャイルプロセスに関心のある組織または個人 入会費: 無料 入会申し込み: www.agileprocess.jp の登録フォーム 入会の特典 ワーキンググループの設立、運営、参加 • 1WG: 50,000円/年活動費支給 会報誌の購読、団体名掲載、情報発信 協議会主催イベントへの優待 他団体の協賛イベントやセミナーの優待 メーリングリストへの参加 年会費 300人以上の組織: 30,000円 30人以上の組織 : 20,000円 30人未満の組織 : 10,000円 個人: 10,000円 研究機関: 10,000円 ※運営委員会の承認が必要 教育機関: 10,000円
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