電子回路 - Indico

電子回路
放射線計測エレクトロニクスの信号処理の為の
アナログ電子回路の基礎
村上浩之
Apr.2010
目次(1)
• 序
– 放射線計測における電子回路の役割
– 放射線計測の信号処理の流れ
– 電子回路の構成要素
• アナログ信号処理とディジタル信号処理
• アナログ電子回路の要素とディジタル電子回路の要素
• 電子回路を構成する電子部品
– 電子回路のシミュレーション(SPICE)
• SPICEの機能と限界
Apr.2010
目次(2)
• 回路の構成要素
– 受動部品と能動部品
– 受動部品
• 抵抗(R)
• コンデンサー(C)
• コイル(L)
– 能動部品
•
•
•
•
•
真空管
ダイオード(D)
バイポーラトランジスター(Tr)
電界効果トランジスター(FET)
その他の能動
• 等価回路
Apr.2010
目次(3)
• 回路の基礎
– 2端子回路
• 有能電力
– 4端子回路
– 伝達関数とインパルス応答関数
– ラプラス変換
– 等価回路
• 帰還増幅回路
• 多段増幅回路
Apr.2010
目次(4)
• 基本回路
– トランジスター回路
• ベース接地
• エミッター接地
• コレクター接地
– FET回路
• ゲート接地
• ソース接地
• ドレイン接地
Apr.2010
放射線計測における電子回路の役割
• 放射線はどの様にして測定されるのか?
– 放射線と物質の相互作用
• 電離作用
– 原子を電離して自由電子とイオン又は正孔(ホール)対を生成する。
» 電子ーイオン(正孔:ホール)対を作る平均エネルギーをw値(半導体ではε値)
» 電子ーイオン(正孔:ホール)が電界の中で動く事で電流となり測定可能になる。
• 発光作用: 励起、チェレンコフ光、シンクロトロン光
– 励起 : 緩和する時に発光
» シンチレーション光
» 蛍光
– チェレンコフ光 : 物質の中で荷電粒子が光速を超えると衝撃波で発光
– シンクロトロン光 : 荷電粒子が加速度を受けると発光
– 光の検出方法
» 光 ーー> 目視、蛍光板、感光紙(写真など)、着色、・・・
» 光 ーー> 光電変換素子で電気信号に変換
• その他の作用
– 化学 : 写真、化学反応、着色、・・・
– 遺伝 : 露草の突然変異、・・・
– 熱
: 超伝導検出器、・・・
Apr.2010
放射線計測における電子回路の役割
• 放射線検出器に生じた入射放射線の情報が電気信号として
得られれば電子回路を利用してアナログ信号処理やディジタ
ル信号処理を行って入射放射線の情報を収集する(大量に)
出来る。
• ディジタル信号処理だけで検出器からの情報は得られない。
• ディジタル信号処理までのアナログ信号処理が放射線検出
システムの能力の限界を支配している。
• 最も重要なのは検出器からの電荷情報を電圧情報に変換
する前置増幅器の能力。
Apr.2010
電子回路から見た放射線検出器
• 検出器は電子回路から見ると信号源
– 検出器から放射線と検出器の相互作用で生じた光子や電離電荷の情報
が検出器の固有の機能と作用した結果として検出器から電気信号として
出力される。但し、光子の情報は光電変換素子で電荷に変換されて光子
の情報が電気信号として出力される。
• 入射した放射線の情報
– 時刻、エネルギー、電荷(Z、原子番号)、質量(A、原子量、核子数」)、入射位置、・・・
• 検出器の機能に依り一部の情報が選択されて出力される。
• 電子回路は検出器からの情報を選択して最適化した状態で電圧情報に変換して
蓄積・分類・分析などの処理を行い、人が利用できる情報に変換して出力する。
• 入射した放射線の情報を的確に得るには検出器の選択と電子回
路の選択が重要になる。
– 現状は検出器の選択はある程度的確に行われているが電子回路の選
択は的確に行われていない。
• 誰かが使用したのを真似をして購入する。(誰か以上の結果は出ない)
• 手元にある物を無自覚に利用する。(適切な情報が得られない)
• 最適な電子回路は自分(グループ)で開発する。
Apr.2010
放射線の計測はどの様に行われるか
• 目視
– 燐光、蛍光、電離電荷(箔検電器など)
– 定量化する方法が考案されてきた。
• 電離電荷を他の物理量に変換して定量
• 写真乾板など
• 電離電荷を電気信号に変換して計測
– 真空管の発明で電子回路が使用される様になった。
– トランジスター、集積回路の発明で小型化と複雑な信号処理が可能
になってきた。
• 化学作用を利用した計測
• 遺伝の発現を利用した低線量(環境放射線)の計測
• 熱ルミネッセンス、同位元素比、固体飛跡(SSTD)
– 年代測定、被曝線量の測定、過去の放射線環境(太陽活動など)
Apr.2010
1890年代の放射線計測
• ベクレル
(1896年)
りん光体によって発せられる不可視放射を発見
金属ウランからの新放射の発見
• キュリー夫人 (1898年)
ウランおよびトリュウム化合物から出る放射線の測定
• キュリー夫妻
(1898年)
ピッチブレンドに含まれる新放射性物質(ポロニウム)を発見
放射性新物質とその放射線の性質を報告
(ポロニウム・ラジュウム・アクチニウム)
Apr.2010
ラザフォード散乱の実験に用いた検出器
1913年にGeigerとMarsdenが
用いた装置
Fで散乱されたα粒子でSの
蛍光板を光らせてMの顕微鏡で
覗いて位置を測定した
田島 原子核概論 地人書館
Apr.2010
箔検電器
+ ++
帯電した箔検電器に
放射線を照射すると
電離電荷によって
放電して箔が閉じる
+
+
+
+
Apr.2010
+
+
ローリッツエン検電器(線量計)
ポケット線量計に使用されている
田島 原子核概論 地人書館
Apr.2010
Becquerelは磁界による偏向
する放射としない放射を示した。
Apr.2010
ポロニウムからの放射がA-T間の間に入れる
アルミ箔の枚数で電流の流れ出す距離をはかった
(Curie夫妻)
放射能 (東京大学出版会)
Aの電位を圧電素子QのHによる歪みで生ずる電荷で測定
Apr.2010
放射能 (東京大学出版会)
電離作用を利用した放射線の検出
ー 電荷を計測 ー
• 電離箱
– 積分型電離箱 : 電離の総量を検出−−>線量計
• 目視 : 箔検電器、ローリツェン検電器(線量計)
– 蓄電した電荷を電離電流で放電
• 直流電流 : 電離箱型線量計
– 電圧を印加した電極間の電離電流又は電荷を検出
– 微分型電離箱 : 放射線を一つ一つ分離して検出
• パルス電流 : パルス電離箱
– 電圧を印加した電極間に入射した放射線に依り生じた電流又は電荷の量を
一つ一つ区別して検出
» 気体 : 希ガス、混合ガス、有機ガス、窒素、炭酸ガス、空気
» 液体 : 液化希ガス
» 固体 : 半導体
Apr.2010
積分型電離箱
• 積算線量計測
– 照射した放射線の電離作用に依って生じた電離電荷の総量を計測
• コンデンサー(電離箱)に充電した電荷を電離電荷で放電してコンデンサーの電
極間の電位を測定して電離電荷の量を測定する。
• 電離箱の電離電荷に依る電流をコンデンサーに充電してコンデンサーの電位の
変化量を測定する。
• 微分線量(線量率)計測
– 電離電荷の単位時間当たりの線量を計測
• 時間の単位は法律や作業の単位に応じて秒、分、時間、日、週、月、年が使用さ
れる。特別な場合は秒以下も使用される。
• 放射線作業の作業時間の管理、被曝線量の管理
– 電離電流は毎秒当たりの線量と等価
• 単位時間積分するとその単位時間当たりの線量率になる。
– 吸収線量は同じ照射線量でも線質、スペクトル、吸収する物質で異な
る。
Apr.2010
電子増倍機能のない微分型電離箱
• ガス検出器
– パルス電離箱、グリッド付パルス電離箱
• 液体検出器
– 液体アルゴン電離箱、液体Xe電離箱
• 固体検出器
– 半導体検出器(C, Ge, Si, GaAs, CdTl等)
Apr.2010
電離箱の動作原理
プラス電極
電離性放射線
(荷電粒子)
電離電荷が電気力線に
沿って移動するとき両
電極に生じた静電誘導
電荷の量は変化する。
電離電荷が電極に達す
ると誘導電荷は消滅し
て電離電荷が残る。
電離で生じた電子ーイオン対
静電誘導電荷の量が
変化している間は電流
が流れる。
マイナス電極
Apr.2010
電離電流と電荷の波形
電子に依る電流
プラス電極に
現れた電荷
電子に依りプラス電極
に現れた電荷
正孔に依る電流
0
Apr.2010
0
正孔に依りプラス電極
に現れた電荷
時間
グリッド付パルス電離箱の動作原理
アノード
(プラス電極)
電離性放射線
(荷電粒子)
電離電子がグリッドに
達するまではグリッド
でシールドされて大部
分の誘導電荷はグ
リッドとマイナス電極
に生じる
プラス電極には電離
電子がグリッドを通過
すると電子の誘導電
荷が現れる。
グリッド
プラス電極にはイオン
の誘導電荷は現れない
カソード
(マイナス電極)
Apr.2010
演習問題
1. パルス電離箱のカソード面の中央に点状のα線源があると
きにアノードに現れる電荷量の時間変化をグラフで表しなさ
い。
2. アノードに現れる電荷量のスペクトルをグラフで示しなさい。
3. グリッド付のパルス電離箱のアノードの電荷量の時間変化
と電荷量のスペクトルをグラフで表しなさい。(条件は前問と
同じ)
4. グリッドに現れる電荷量の時間変化をグラフで表しなさい。
5. グリッドとアノードの間に二つ目のグリッドを配置した時に二
つ目のグリッドとアノードに現れる電荷量の時間変化とスペ
クトルをグラフに表しなさい。
但し、時間の原点はα線が出た時とする。
Apr.2010
半導体検出器の動作原理
マイナス電圧
PN接合に逆バイアス
電圧を掛けると
逆バイアス電圧接続
P+層
空乏層
電離性の放射線で
生じた電子ー正孔
対は電気力線に
沿って逆向きに移
動する。
N層
N+ 層
プラス電圧
Apr.2010
電子の増倍機能のある電離箱型検出器
• ガス検出器
– GM計数管
– 比例計数管、ドリフトチェンバー、・・・
– 放電箱(スパークチェンバー、PPAC等)
• 液体検出器
– 液体Xe比例計数管、液体Xeドリフトチェンバー、・・・
• 固体検出器
– 半導体アバランシェダイオード
Apr.2010
発光作用を利用した放射線の検出
• 励起に依る放射線検出器
– シンチレーション発光
• 放射線の励起作用によって励起状態の原子が短時間で光子を出して緩和する。
– 無機シンチレーター : NaI(Tl), CsI(Tl), BGO, GSO, PWO(Ce), ・・・
– 有機シンチレーター : プラスチックシンチレーター、 液体シンチレーター、・・・
– 蛍光
• 励起状態の原子が緩和する時定数が比較的長い発光をする。
– 蛍光板、
– 燐光
• 励起状態の原子が緩和する時定数が非常に長い発光をする。
– 放射線の発見のきっかけになった現象
– 熱ルミネッセンス
• 励起状態で安定して緩和しないが加熱すると緩和して発光する。
– 被爆線量測定に利用されている。
Apr.2010
光電変換素子の動作原理
電子(電流)
シンチレーター
蛍光体
チェレンコフ検出器
Apr.2010
光電管
光電子増倍管
ホトダイオード
アバランシェホトダイオード
半導体フォトダイオードの動作原理
P+層
空乏層
N層
N+ 層
プラス電圧
マイナス電圧
Apr.2010
逆バイアス電圧接続