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フレアリボン内の微細構造で探るエネルギー解放機構
浅井
1
宏企 、
1
歩、
1
貴子 、
1
礼三郎 、
1
一成 、
黒河
石井
北井
柴田
2
3
3
4
増田 智 、 横山 央明 、 下条 圭美 、 矢治 健太郎
1 : 京大理、2 : 名大STE研、3 : 国立天文台野辺山、4 : かわべ天文公園
1. イントロダクション
リコネクションモデルの絵
太陽フレアとリコネクションモデル
エネルギー解放とHaフレアリボンの成長
太陽フレアは磁力線のつなぎ変え(磁気リコネクショ
ン)により、磁場エネルギーを解放することによって起
こる。従って、フレア中のエネルギー解放率は、磁場
強度に依存する。さらに、単位時間にリコネクション
領域にどれだけ多くの磁力線が入ってくるかにも依
存する。ここでは、エネルギー解放率が簡単に、
この仮定を検証するため、エネルギー解放率と、
リボン内の物理量およびその変化との関係を調
べる。先の式での、磁場強度BとHaフレアリボン
の成長速度viに注目する。
2
dE
B
2
vi A
dt
4π
B : 磁場
vi : inflow速度
A : リコネクション領域の面積
ポインティングフラックス
と書けるとする。
Figure 1. リコネクシンモデル
2. 磁場強度と放射強度の関係
解析したフレアは、2001年4月10日にNOAA 9415
で起きたX2.3クラスフレアである(Figure 2)。この
フレアは典型的なtwo-ribbon flareであるだけでな
く、Ha線、硬X線、電波での観測データがそろっ
ており、フレアリボンの成長と非熱的放射(強いエ
ネルギー解放の現場)との関係を詳しく調べること
ができる。
NOAA 9415
Figure 2. 左 : 2001年4月10日にNOAA 9415で起きたフレアの太
陽全面像(京都大学飛騨天文台フレアモニター望遠鏡にて撮影)。
右 : 京都大学花山天文台ザートリウス望遠鏡。
観測データ
Hα線・・・京都大学花山天文台
ザートリウス望遠鏡
硬X線・・・ようこう衛星
硬X線望遠鏡(HXT)
電波・・・野辺山電波へリオグラフ
3. フレアリボンの成長速度と放射強度の関係
ある一瞬の画像に注目する
E1
E2
E3
E4
W1
硬X線源
W2
W3
W4
Figure 3. Ha線像と硬X線放射源(右図黄色の等高線)の
位置分布。右の等高線は磁場強度(正/負)
磁場の
強さ (G)
E1 : 300
E2 : 1350
E3 : 550
E4 : 500
W1 : 300
W2 : 1200
W3 : 500
W4 : 450
Ha線像では多くのカーネル(Figure 3では8つ)
が見られるが、硬X線像では2つしか見られない。
↓
硬X線源と、他のHa線源でのエネルギー解放
率が有意に異なっている。
HXTのダイナミックレンジが10程しかないため、
硬X線源と他のHaカーネルで10倍以上のエネ
ルギー解放があれば、このような見え方の違い
が生じる。
フレアリボンの成長
東
×
×
t
05:40
Figure 4. フレアリ
ボンとスリット(黄
色い線)。フレアリ
ボンの東西方向の
成長速度を調べる。
またこのスリットは
硬X線源(青)を横
切るようにしてある。
距離
距離
05:10
そこで、解放されたエネルギー量の違いを調べ
るため、各放射源での磁場強度を測った。それ
によると、硬X線源では他のHaカーネルに比べ、
約3倍磁場強度が強いという結果が得られた。
先の式でエネルギー解放率はあらわに磁場強度の2乗に比例するが、これだとHXTのダ
イナミックレンジを有意には越えておらず、硬X線源が他のHaカーネルでも見られるはず
である。このことから逆に、inflow速度(vi)が磁場に依存すると予想される。考えられる依
存性としては、
西
次にフレアリボンの成長速度とエネルギー解放
率の関係を調べる。
東
Figure 5. タイムスライス
(Figure 4のスリット上で
のフレアリボンの時間
変化)。硬X線源(×)が
現れる直後に、Haカー
ネルに伴う増光が見ら
れる。
西
vi ∝ B1/2 ⇒ dE/dt ∝ B2.5 : Sweet-Parker型を仮定
vi ∝ B ⇒ dE/dt ∝ B3 : リコネクションレート一定を仮定
×
が挙げられる。どちらの場合も有意にダイナミックレンジを越えるようなエネルギー解放率
の差を生み出す。
そこで、磁場強度とフレアリボンの成長速度を
同時に見積もる必要がある。
東
西
t
t
距離
リコネクションレートとポインティングフラックス
リボンの成長速度(vfoot)
磁場強度とフレアリボンの成長速度の両方を同時に考慮するた
め、リコネクションレートとポインティングフラックスを計算する。
ただし、コロナ中の物理量は直接観測できないので、
リコネクションレート : Bcorona×vi = Bphotosphere×vfoot (磁束の保
存)
エネルギー解放率
硬X線放射は磁場の強いところで起こる
フレアリボンの成長が減速するときに強いエネ
ルギー解放が起こる(逆相関)
電波放射
リコネクションレートおよびポインティングフラッ
クスの変動とは高い相関がある
リコネクションレート
硬X線放射
とした。
ポインティングフラックス
Figure 6に示すように、非熱的放射と、これらの時間変化には高
い相関があることが示された。
しかし、磁場強度が強くなると、フレアリボンの
成長速度が遅くなる傾向にある。従って、フレア
リボンの減速も、硬X線源も、磁場強度の増大
によるものと考えられる。
光球磁場
4. まとめ
ポインティングフラックス : Bcorona2×vi ⇒ Bphotosphere2×vfoot
フレアリボンはほぼ南北に伸びており、成長方
向はほぼ東西方向。そこでFigure 4のようにフ
レアリボンにスリットを当て、その時間変化を調
べる(結果はFigure 5,6)。
↓
フレアリボンの成長が減速するとに、硬X線源
が現れる、つまり、強いエネルギー解放が起
こっている。
↓
エネルギー解放率とは逆相関!?
Figure 6. リコネクションレートとポ
インティングフラックスの時間変化。
下図は非熱的放射のライトカーブ