リニアコライダー実験用カロリメータの設計研究 目次 • • • • • • • 研究目的 リニアコライダー計画 カロリメータ 解析方法 単一粒子の分解能 ジェットエネルギー分解能 まとめ 2006/02/14 素粒子実験室 山口佳博 研究目的 ﻪリニアコライダー実験における、ジェットエネルギー分解能 と、ハドロンカロリメータのエネルギー分解能の目標を満た すカロリメータを設計することが、本研究の目的である。 ﻩ分解能の目標値は以下である。 ジェット ハドロンカロリメータ jet E jet 30% E jet (50%) 2 (2%) 2 E E E ﻩリニアコライダー実験で新しく用いる事が考えられている、デジタル カロリメータの有効性について評価する。 ﻯデジタルカロリメータとは、カロリメータのエネルギー測定方法として、 従来のアナログ(波高)読み出しではなく、デジタル(ヒット数)を用いて 測定を行う。 2006/02/14 修士論文公開発表会 2 リニアコライダー計画・検出器 ﻪリニアコライダー実験とは リニアコライダー検出器 ﻩ電子・陽電子衝突型線形加速器 ﻩ重心系エネルギー 210GeV 1TeV ﻩトップクォークの精密測定 ﻩヒッグス粒子の探索 ﻩ新粒子の発見 検出器 紫: バーテックス検出器 赤: タイムプロジェクションチェンバー 緑: 電磁、ハドロンカロリメータ 灰: ソレノイド (3T) 青: ミューオン検出器 2006/02/14 修士論文公開発表会 3 カロリメータ ﻪ ﻪ 電子や光子、ハドロン粒 子はカロリメータでシャ ワーを起こす。 入射粒子のエネルギー とシャワー中の粒子数 が比例 カロリメータ エネルギー測定 電磁カロリメータ 38 層: 27 X0 ハドロンカロリメータ 130 層: 6.1 0 シンチレーター 1mm 12cm 12cm 分割 33 2006/02/14 鉛 4mm 分割 1212 修士論文公開発表会 シンチレーター 2mm 鉛 8mm タワー 4 ジェットエネルギー測定法 ジェット クォークが単体で観測されることは無く、 ハドロン化する。このため、単体のグルー オン、クォークからハドロン粒子群が生成 される。 ジェットのエネルギー測定法 = PFA (Particle Flow Algorithm) ee Z0H qq s 500 GeV ﻩ荷電粒子は飛跡検出器で測定された運動量を使用する。 ﻩ光子は電磁カロリメータでエネルギーを測定。 ﻩ中性ハドロン粒子はハドロンカロリメータでエネルギーを測定。 2006/02/14 修士論文公開発表会 5 デジタルカロリメータ ﻪPFA を用いた場合、ジェット内の粒子同士のシャワーの重な りを小さくするために、カロリメータの横方向の分割を細かく する必要性がある。 ﻪチャンネル数が膨大になり、従来のアナログ読み出しでは回 路が複雑になり、費用がかかりすぎる。 デジタルカロリメータ ﻩ ﻩ ﻩ ﻩ タイルサイズを十分小さくする。 ヒットが有ったか無かったか、というデジタル情報を用いる。 測定されるエネルギーとヒット数の間には比例関係が成り立つ。 読み出しが容易で、費用も安い。 ﻪアナログ読み出しとデジタル読み出しの違い Etotal = EEM EHD (Analog) = EEM W NHD (Digital) 2006/02/14 修士論文公開発表会 6 単一粒子による分解能 測定されたエネルギーとヒット数の相関 ﻪ使用した事象 ﻩ ﻩ ﻩ ﻩ ﻩ パイ中間子 3 100 GeV 3000 事象 電磁カロリメータ: 4cm4cm ハドロンカロリメータ: 1cm1cm 3cm3cm 閾値 0.5 MIP タイルサイズ: 1cm1cm ハドロンカロリメータ ﻪ右図より、高エネルギー粒子では測 定されたエネルギーとヒット数の相 関に大きな広がりが存在。 ハドロンシャワー中で高エネルギー の電磁シャワーが発生したため。 2006/02/14 修士論文公開発表会 Area 1 Area 2 7 シャワーの違い (パイ中間子 100GeV) ハドロンシャワー Area 1 EMCAL 電磁シャワー成分が支配的 Area 2 HDCAL EMCAL HDCAL ピンク;電子 青;ミュー粒子 赤;パイ中間子 緑;陽子 2006/02/14 修士論文公開発表会 8 エネルギー分解能 閾値依存性 分割依存性 閾値とはヒットが有ったとする最小エネルギー。 単位には最小電離損失粒子 (MIP) の損失エ ネルギーを使用する。 閾値: 0.5MIP タイルサイズ: 1cm1cm 分割による依存は低エネルギー では少ないが、高エネルギーではタ イルサイズが小さいほうが良い。 2006/02/14 閾値依存による分解能はそれほど 違いが見られない。 修士論文公開発表会 9 セミデジタルカロリメータ デジタル = 1ヒット / 1タイル しかし、1タイルのヒットの重複度 が大きい セミデジタルカロリメータ ヒットの定義 パイ中間子 50GeV 測定されたエネルギー / タイル 2006/02/14 ﻪセミデジタルは 2bit の情報を読み 出す。 ﻪ閾値は3つ。 ﻪ1つ目の閾値は 0.5 MIP に固定。 ﻪ残り2つの閾値を最適化する。 ﻪタイルサイズ: 1cm1cm 測定されたエネルギー(MIP) ヒット数 0 0.5 0 0.5 n 1 n n2 n n2 n2 MIP 修士論文公開発表会 10 閾値依存性 閾値: 0.5, 10, 100 MIP 閾値依存性 タイルサイズ: 1cm1cm 閾値が 0.5,10,100 MIPの場合、最 も分解能が良くなることが分かった。 2006/02/14 デジタル読み出しと比べ、エネル ギーとヒット数に1次の相関がはっきり とみえる。 修士論文公開発表会 11 エネルギー分解能 デジタル: 0.5MIP セミデジタル: 0.5, 10, 100 MIP タイルサイズ: 1cm1cm エネルギー分解能 E E 2 stochastic constant 2 • Analog ; sto = 48.9 0.6 % con = 5.0 0.2% • Digital ; sto = 37.0 0.9% con = 13.8 0.2% • Semi ; sto = 45.1 0.6% con = 6.8 0.1% 2006/02/14 修士論文公開発表会 12 ジェットイベント ﻪee qq (u/d/s)、 s = 91 GeV, 350 GeV, 500 GeV ﻪ両ジェットがカロリメータのバレル部 に入る事象を用いた。 ﻪデジタルの閾値は 0.5 MIP に固定。 ﻪ解析にはPFAを用いるので、デジタ ルカロリメータに関係するのは、主 に K0L中間子と中性子である。 2006/02/14 修士論文公開発表会 ee qq、s = 350 GeV 13 K0L中間子の分解能 s = 91 GeV s = 91 GeV ジェット中のK0L中間子が実際に 持つエネルギー。 ほとんどが数 GeV のエネル ギーしか持たない。 2006/02/14 各エネルギー領域で、カロリメータで測定 した値をジェネレータから得た値で割り、 ガウスフィットして得られた分解能。 低エネルギーではアナログとデジタル で差は無い。 修士論文公開発表会 14 ジェットエネルギー分解能 カロリメータで測定されたエネル ギーを用いて、PFA によりジェット エネルギー分解能を算出した。 デジタル s = 350 GeV タイルサイズ: 1cm1cm 2006/02/14 タイルサイズが 1cm1cmの場合 は、デジタル読み出しでアナログと同 程度、もしくは良い分解能を得られる。 修士論文公開発表会 15 まとめ ﻪシミュレーションにより単一粒子を入射させた場合と、 ジェットの場合でのデジタルカロリメータの性能を調 べた結果、十分なジェットエネルギー分解能を持つ ことが分かった。 ﻩ単一粒子入射の場合 ﻯデジタル読み出しでは、50 GeV 以上の入射エネルギーを持った 粒子に対するエネルギー分解能が悪い。 ﻯタイルサイズは小さいほうが良い。 ﻯ分解能は閾値にはそれほど依存しない。 ﻯセミデジタルでは 100GeV までのエネルギー領域で、ほぼアナロ グ読み出しと同等の分解能が得られる。 ﻩジェット事象の場合 ﻯタイルサイズが 1cm1cmの場合、s 500 GeV までの事象にお いては、デジタル読み出しで目標となるジェットエネルギー分解能 の性能を持つことが分かった。 2006/02/14 修士論文公開発表会 16
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