年金改革の経済学1 少子高齢化と社会保障財政の危機 • 簡単なたとえ話 保険料負担 は、月一人当 たり:1万円 2万円 2万5千円 3万3千円 5万円! 10万円!! • 20人の現役で1人の老人(10万円)を支え る・・・保険料5千円 • 10人の現役・・・1万 • 5人の現役・・・2万 • 4人の現役・・・2.5万 • 3人の現役・・・3.3万 • 2人の現役・・・5万 • これではさすがに立ち行かない。10万を8万 にカットすると、4万 • しかしカットされる人々は将来の老人。 19 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 2095 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070 2075 2080 2085 2090 2195 2100 05 少子高齢化の現実 90.0% 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 中位推計 高位推計 30.0% 20.0% 10.0% 実績値 予測値 0.0% • 15歳から64歳までの勤労可能な年齢の人々 (「生産年齢人口」)に対する65歳以上の「高齢 人口」の比率:高齢者・現役比率 • 国立社会保障・人口問題研究所が公表してい る最新の人口予測(「日本の将来推計人口(平 成18年12月推計)」 • 1950年の高齢者・現役比率は8.3% (12人対1 人)、 1970年には10.2%(約10人対1人) 、1980年に は13.5%(約7.5人対1人)、1994年には20.2% (約5人対1人) 、2000年には25.5%(約4人対 1人)、2008年現在では33.6%(約3人対1人) • 現在はまだ山の4合目にもうすぐ到達 • 特に今後の10年間はかつてないほどの急勾 配。これは、「団塊の世代(戦後のベビーブー ムに生まれた世代)」の大量退職が理由 • 団塊の世代の大量退職 は正念場ではない。 • 2023年には、すでに高齢者・現役比率は 50.2%(2人対1人) • 2040年には67.2%(1.5人対1人)、高齢者・現 役比率のピーク(頂上)である2072年には同 比率は85.7%(1.17人対1人) • 財政危機は今後半世紀以上も続く 人口予測はどこまで信用できるか • 信用されていない社人研予測 • 現役・高齢者比率はしかし30-40年は外れな い • それは既に現在起きている現実だから。 • 人口予測とはどのように行なうか:コホート要 因法 • 「今年の年齢階級別の人口」に、「年齢別の 死亡率」を乗じて「来年の年齢階級別の人 口」とするという方法 • 年齢別の死亡率というものは年毎にそれほど 変動するものではなく、非常に安定 • 一方、出生数予測は難しい • 社人研が過去5年ごとに常に予測を外し、評 判を悪くしているというのは、この出生数(出 生率)の部分に限ってのこと • 「高齢者・現役比率」が始めはほとんど外れな いというのはどうしてかというと、この将来の 新生児たちが現役の勤労層になるためには、 大人に成長するための期間が必要だから • 点線は、社人研が想定するもっとも楽観的な 出生率の仮定をおいて計算した予測値(高位 推計)。 • 1.57ショック直後の水準まで回復することが 想定。 • 中位推計(実線)と比べると、まずはじめの20 年程度はほとんど重なっていて差が見えない。 • その後、差はやや広がりますが、2048年まで は両者の比率の差は5%ポイント程度ですか ら、その差は、わずかなもの • さすがに、その後の差異は大きく広がるが、、 この楽観的な予測においてさえ、 • ①高齢者・現役比率の上昇はピーク時の 2057年まで今後50年近く続き、 • ②ピーク時には71.9%(現役約1.4人で1人の 高齢者を支える)に達する、 • ③しかもその後の比率低下も緩やかで高い 位置にとどまる、ということは強調しておくべき 結論。 • 少子化対策が成功しても、社会保障財政への 貢献は小さい • 現在、政府が懸命に行っている少子化対策は、 もしそれが成功して仮に出生率が上昇してゆ くとしても、社会保障財政への貢献という意味 では、30年、40年程度の間は、あまり効果を 持たない。 • 実際、少子化対策で増えた新生児たちが保険 料を支払ってくれるまでには、平均20年程度 待つ。 • その後も、少子化対策分の若者の財政貢献 は毎年1歳ずつ徐々にしか増加しない。 • コラム1 モンテカルロシミュレーションによる 現役・高齢者比率 傾向グラフ 110.0% 100.0% 90.0% 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 95% 50% 25% 2090 2085 2080 2075 2070 2065 2060 2055 2050 2045 2040 2035 2030 2025 2020 2015 2010 2005 • モンテカルロの「モンテカルロ」とはカジノで有 名な国 • ギャンブルで使うサイコロを何度も転がしてそ のばらつきをみるように、過去の変動を考慮し て何度も無作為に予測シミュレーションを行う。 • 1975年から2005年までの出生率の変動と死 亡率の変動を考慮して、社人研が行っている ものとほぼ同様の方法でシミュレーション計算 を10,000回行う。 • 95%信頼区間の範囲は、2050年の高齢者・ 現役比率は68.5%~78.2%、ピーク付近であ る2075年でさえ、74.0%から89.4% • コラム2: 社人研予測は何故外れるのか • • • • 政治的要因説 当てる気のない予測 足元の外れは重要 景気予測に見習うべき予測 医療・介護も同じ構造 • 受益と負担の年齢別分布(年金) 3,000 2,6782,639 2,500 2,539 2,244 2,068 2,035 2,000 受益 負担 1,500 1,000 425 510 500 615 744 1,045 966 1,001 929 851 917 273 上 以 歳 89 歳 90 ~ 84 歳 85 ~ 79 歳 80 ~ 74 歳 75 ~ 69 歳 70 ~ 64 歳 65 ~ 59 歳 60 ~ 54 歳 55 ~ 49 歳 50 ~ 44 歳 45 ~ 39 歳 40 ~ 34 歳 35 ~ 29 歳 30 ~ 14 歳 25 ~ 10 15 ~ 19 歳 0 • 医療 500 434 449 450 400 350 318 250 149 150 134 50 248 222 200 73 受益 負担 194 179 94 79 77 55 47 53 67 310 293 278 300 100 345 404 394 383 370 118 147 145 90 103 69 51 30 15 0~ 4 5~ 歳 10 9歳 ~ 15 14歳 ~ 10 19歳 ~ 25 14歳 ~ 30 29歳 ~ 35 34歳 ~ 40 39歳 ~ 45 44歳 ~ 50 49歳 ~ 55 54歳 ~ 60 59歳 ~ 65 64歳 ~ 70 69歳 ~ 75 74歳 ~ 80 79歳 ~ 85 84歳 ~ 90 89歳 歳 以 上 0 5 • 介護 300 275 250 220 200 156 150 130 100 68 63 59 70 66 50 3334 25 24 4 4 4 4 4 27 19 12 4 上 以 歳 90 89 歳 ~ 85 84 歳 ~ 80 79 歳 ~ 75 74 歳 ~ 70 69 歳 ~ 65 64 歳 ~ 60 59 歳 ~ 55 54 歳 ~ 50 49 歳 ~ 45 40 ~ 44 歳 0 受益 負担 社会保障財政の現実 • 厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し-平成18年5月-」 図 社会保障全体の生涯純受給額 1940 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 年金 3,397 1,802 516 -207 -848 -1,382 -1,751 -2,048 -2,260 -2,403 -2,453 -2,532 -2,596 -2,823 医療 1,479 1,212 997 733 589 441 295 141 -47 -225 -351 -384 -472 -525 単位:万円 介護 403 372 312 286 233 205 196 201 227 259 321 380 453 527 全体 5,279 3,386 1,825 811 -26 -735 -1,260 -1,706 -2,080 -2,369 -2,484 -2,537 -2,615 -2,821 • 世代間不公平の計算に対する厚労省批判 • 第一の批判は、年金というものは「世代間の 助け合い」を原則とするものなので、損得の観 点から論じることは本質的になじまない • 第二の批判は、「経済学者たちがこのような 損得計算をするから、若者を中心に年金不信 感が広がっている」といった類の批判。 • 第三の批判は、年金がたとえ世代間不公平 を生んでいたとしても、親から子への支援や 遺産相続も考慮すれば不公平とは言えないと いう類の批判 • 第四の批判は、年金で得をする世代は子供 をたくさん生み、制度の維持に貢献した世代 であるからその対価を受けるべき、その後の 損となる世代は子供をあまり生まず、少子高 齢化を招いたのであるからその報いを受ける べき、という因果応報論 • 第五の批判は、年金制度を創設したときに既 に高齢者であった人々に対し、政治的に受給 を認めざるを得なかったため、こうした世代が 得になるのは当たり前で、これを世代間不公 平とは言えないという批判。 • コラム3: 厚労省が行なった損得計算 • 事業主負担と現在割引価値がポイント 9.0 8.0 8.3 7.0 6.0 6.3 5.0 手取り賃金現在価値 利子率現在価値 4.6 4.0 3.2 3.0 3.2 2.7 2.4 2.3 2.3 1.7 1.6 1.6 2.2 2.0 1.9 2.3 1.6 1.0 0.0 1935 1945 1955 1965 1975 1985 1995 2005 生年 手詰まりとなる改革手段 • 基本的に、給付カットか保険料引上げ以外に 方法が無い。 • そのどちらも世代間不公平の問題を解決しな い。 第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 第7期 1:10 1:5 1:4 1:3 1:2 1:1 - 高齢者年金(月当たり) 10万円 10万円 10万円 10万円 10万円 10万円 10万円 現役保険料(月当たり) 1万円 2万円 2.5万円 3.3万円 5万円 10万円 - 給付負担倍率 3.3倍 1.7倍 1.3倍 1倍 0.7倍 0.3倍 - 第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 第7期 1:10 1:5 1:4 1:3 1:2 1:1 - 高齢者年金(月当たり) 10万円 10万円 10万円 9万円 8万円 8万円 8万円 現役保険料(月当たり) 1万円 2万円 2.5万円 3.0万円 4万円 8万円 - 給付負担倍率 3.3倍 1.7倍 1.2倍 0.8倍 0.7倍 0.3倍 - 高齢者・現役比率 高齢者・現役比率 第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 第7期 1:10 1:5 1:4 1:3 1:2 1:1 - 高齢者年金(月当たり) - 10万円 10万円 10万円 10万円 10万円 10万円 現役保険料(月当たり) 3.3万円 3.3万円 3.3万円 3.3万円 3.3万円 3.3万円 - 1倍 1倍 1倍 1倍 1倍 1倍 - 高齢者・現役比率 給付負担倍率 年金制度の概要 • 年金制度は、全国民に共通した「国民年金(基礎年金)」を 基礎に、「*被用者年金」「企業年金」の3階建ての体系。 【1階部分】全国民に共通した「国民年金(基礎年金)」 すべての国民が国民年金制度に加入します。 • 【2階部分】国民年金の上乗せとして報酬比例の年金を支給 する「被用者年金」(厚生年金、共済年金) • 【3階部分】「企業年金」(厚生年金基金、適格退職年金) • 自営業者や農業者は国民年金のみ。民間の被用者は国 民年金に加えて、厚生年金にも、公務員等は共済年金にも 加入。 図表 加入者の種類と保険料 支給は、 (1)老齢になった場合 (2)病気やけがで障害を有することとなった場 合 (3)年金受給者または被保険者(加入者)が死 亡した場合 という3つの場合。 老齢(退職)年金 基礎年金 障害年金 遺族年金 *老齢基礎年金 *障害基礎年金 *遺族基礎年金 厚生年金 *老齢厚生年金 *障害厚生年金 *遺族厚生年金 共済年金 *退職共済年金 *障害共済年金 *遺族共済年金 (1)老齢年金 ○支給要件 ・原則として国民年金に25年以上加入。 〔老齢基礎年金〕 原則として65歳から受給。 繰り上げ、繰り下げ支給あり。 〔老齢厚生年金〕 原則は65歳からであるが、現在は、60歳支給 から65歳支給への過渡期。 2)障害年金 • 〔障害基礎年金〕 ・1級(両手の機能に著しい障害を有する人など) 2級の1.25倍。 ・2級(片手の機能に著しい障害 を有する人など) 老齢基礎年金の満額と同じです。 • 〔障害厚生年金〕 ・老齢年金と同様、厚生年金加 入中の賃金の平均と加入期間に応じて計算されま す。 • ・1級の人の年金額は2級に比べ1.25倍になりま す。 • ・厚生年金には、2級より程度の軽い3級の障害厚 生年金と、さらに程度の軽い場合の障害手当金(一 時金)が設けられています。 (3)遺族年金 〔遺族基礎年金〕 老齢基礎年金の満額と同じです。 〔遺族厚生年金〕 ・亡くなった人がその時点で受け るはずだった老齢厚生年金の4分の3になりま す。 ・加入期間が25年(300月)に満たずに被 保険者(加入者)が死亡したときには、25年加入 したものとして年金額を計算します。 • 受給額は現在、国民年金が満額で月6万 6000円。厚生年金が平均16万9000円。 • 財政規模は、収入支出が厚生年金32兆、国 民年金が5兆、基礎年金勘定が17兆円程度。 1. 2004年金改正の評価 ○2004年(平成16年)年金改正の主要ポイント • 保険料(厚生年金18.30%、国民年金16900 円)への引上げと固定 • マクロ経済スライドによる給付水準引き下げ (ただし、代替率50%以上の確保) • 基礎年金の国庫負担比率1/2へ引き上げ • 有限均衡方式の導入 マクロ経済スライド • 「新規裁定額」は、「給付年額=過去の平均 賃金×生まれ年で決まる給付乗率/1000× 被保険者期間の月数」 • 再評価率で「賃金スライド」を反映 • 「既裁定額」は、「物価スライド」 • 「新規裁定の年金スライド率=賃金スライド 率-スライド調整率」 • 「既裁定の年金スライド率=物価上昇率-ス ライド調整率」 • 「スライド調整率=公的年金の全被保険者数 の減少率の実績(3年平均)+平均余命の伸 び率を勘案して設定した一定率(0.3%)」 (1)16年年金改正はなぜ必要だったのか、年金 改正がなければ何が起きたのか。 ・16年改正OSUモデル(八田=小口モデル)の 2004年β版による分析 ・経済前提や足元の経済状況を今回の改正の ままとし、制度のみを前回改正時に戻して財 政収支、積立金をシミュレーションする。 ・今回の改正を行わなければ何が起きたのか がわかる。 国民年金財政収支の将来予測と前回財政再計算との比較(現在 割り引き価値ベース) 0.4 0.2 0 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正後(モデル) -0.2 -0.4 -0.6 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070 2075 2080 2085 2090 2095 2100 -0.8 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070 2075 2080 2085 2090 2095 2100 国民年金積立金 15 10 5 0 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正後(モデル) -5 -10 -15 2090 2095 2100 2065 2070 2075 2080 2085 2040 2045 2050 2055 2060 2015 2020 2025 2030 2035 2005 2010 厚生年金財政収支 2 1 0 -1 -2 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正後(モデル) -3 -4 -5 -6 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070 2075 2080 2085 2090 2095 2100 厚生年金 積立金 200 150 100 50 0 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正後(モデル) -50 -100 -150 • 2004年改正は、前回財政再計算時以降生じ た様々な前提の乖離を修正して、前回改正の 収支・積立金予測のレベルに戻すための対策。 • 2004年改正に盛り込まれた改正点が、事後 的に見ると、純粋な意味では「改正」でなかっ たという点はもっと認識されてよい。 • 積立金残高がほぼゼロである2100年であっ ても単年度収支が赤字のまま→2004年改正 の諸前提通りに行っても2100年以降に改正 が必要になる危うさを含んでいる。 (2)前回改正からの乖離は人口予測のせいか 表4 新人口推計の厚生年金・国民年金への財政影響に ついて(厚生労働省発表資料) 平成11年財 政 高位推計 中位推計 低位推計 再計算ベース 厚生年金保険 料率 国民年金保険 料 21.6%(100) 22.8%(106) 25,200円 (100) 27,100円 (108) 24.8% 27.5%(127) (115) 29,600 円(117) 注1: ( )内は平成11年財政再計算ベースを100とした指数である。 注2: 現在の保険料(率)は、厚生年金13.58%(総報酬ベース)、国民年金13,300円である。 33,000円 (131) 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070 2075 2080 2085 2090 2095 2100 国民年金積立金 15 人口以外の要因 10 5 0 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正前(人口予測要因) 人口要因 -5 -10 -15 厚生年金積立金 200 150 100 50 人口以外の要因 0 -50 人口要因 -100 -150 05 20 15 20 25 20 35 20 45 20 55 20 65 20 75 20 85 20 95 20 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正前(人口予測要因) 180 170 160 人口以外の要因 150 140 1999年財政再計算(厚労省) 2004年改正前(モデル) 2004年改正前(人口予測要因) 130 120 110 100 90 人口要因 80 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 (3)財政の維持可能性はどのように変化したのか 国民年金純債務残高の平成16年改正前後の比較 単位:兆円(2005年価格) 支払債務 積立金残高 純債務 改正前 145.0 10.8 134.2 改正後 139.5 10.8 128.7 差引 5.4 0.0 5.4 注)2005年時点の現在割引価値で評価。 厚生年金純債務残高の平成16年改正前後の比較 単位:兆円(2005年価格) 支払債務 積立金残高 純債務 改正前 825.0 163.9 661.1 改正後 791.6 163.9 627.7 差引 33.4 0.0 33.4 注)2005年時点の現在割引価値で評価。 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 40 20 45 20 50 20 55 20 60 20 65 20 70 20 75 20 80 20 85 20 90 改正前後における厚生年金純債務の将来予測の比較 700 600 500 400 300 200 100 0 改正前 改正後 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 40 20 45 20 50 20 55 20 60 20 65 20 70 20 75 20 80 20 85 20 90 改正前後における国民年金純債務の将来予測の比較 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 改正前 改正後 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 40 20 45 20 50 20 55 20 60 20 65 20 70 20 75 20 80 20 85 20 90 国民所得に対する厚生年金純債務の比率の推移 3.50 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 改正前 改正後 国民所得に対する国民年金純債務の比率の推移 0.450 0.400 0.350 0.300 0.250 0.200 0.150 0.100 0.050 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 40 20 45 20 50 20 55 20 60 20 65 20 70 20 75 20 80 20 85 20 90 0.000 改正前 改正後 ①結局、財政の維持可能性は確保した。 ②ただし、その確保は、将来における過去債務 を圧縮する形で行われている。つまり、痛みは 将来世代に負わせる形での改革である。 (4)世代間不公平はどう改善されたのか ・世代間不公平の改善は、16年改正の当初の 目標であった。 ・厚生労働省試算では、①改正後のみ、②事業 主負担をいれる、③割引率に賃金上昇率を 使うなど問題が大きい。 2004年改正前の厚生年金の生涯保険料率と生涯受給率 (男子40年勤務、妻ありのケース) 35.0 30.0 25.0 生涯保険料率 生涯受給率 20.0 15.0 生年 19 40 19 45 19 50 19 55 19 60 19 65 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 10.0 注1)生涯保険料率は生涯賃金(現在割引価値・実質価格ベース、各値は厚生労働省想定に同じ)に対する生涯に支払う保険料額の割合(現 在割引価値・実質価格ベース、各値は厚生労働省想定に同じ)。生涯受給率は、生涯に受け取る年金受給額(現在割引価値・実質価格ベー ス、各値は厚生労働省想定に同じ)の生涯賃金に対する割合である。生涯賃金は、ボーナスを除く決まって支払われる給与のベース。総報 酬制の保険料率ではないことに注意。 注2)受取額には、配偶者の基礎年金、遺族年金、障害者になる場合の確率を考慮した生涯年金などを平均余命を考慮して計算に入れている 。平均余命は平成15年度の簡易生命表を用い、60歳時点の平均余命を元に計算。 注3)保険料は、厚生労働省と異なり、事業主負担分は労働者の負担である。 2004年改正後の厚生年金の生涯保険料率と生涯受給率 (男子40年勤務、妻ありのケース) 35.0 30.0 25.0 生涯保険料率 生涯受給率 20.0 15.0 19 40 19 45 19 50 19 55 19 60 19 65 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 10.0 生年 改革前後の純受給率の比較 15.00 10.00 5.00 0.00 2004年改正前 改正後 -5.00 -10.00 19 40 年 19 45 19 50 19 55 19 60 19 65 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 -15.00 生年 まとめ ①公的年金の規模が将来的に縮小されるとい うことは評価できる。公的年金シェアの縮小 は、賦課方式から積立方式への移行、もしく は積立方式を部分導入することに他ならない。 ②保険料率を固定し、給付水準を自動調整す るという方式は、評価が高い。しかし、問題は 少子化の不確実性よりも、経済の不確実性。 スライドは最も重要な経済所前提についても 実施すべき。 ③前回からの経済前提や少子化の見込み違いにより 生じた財政の維持可能性は、とりあえず、確保され た。しかしながら、今後、どうなるかは予断を許さな い。 ④しかも、財政の維持可能性の確保は、将来純債務 の縮小、つまり、後の世代にツケを回すという形で 行われた。 ⑤したがって、世代間不公平はほとんど変化がない。 ⑥有限均衡方式によって、さらに将来の世代にはツ ケが回った。 コラム:OSUモデル
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