知的財産訴訟における留意点 ー 裁判官的見地からの

2012年11月1日
CCJPシンポジウム
出版社の新しい著作隣接権
を考えるシンポジウム
元・知的財産高等裁判所判事
弁護士
三 村 量 一
長島・大野・常松法律事務所
第1 既存の著作隣接権
 権利主体(著作権法89条1項~4項)
① 実演家
② レコード制作者
③ 放送事業者
④ 有線放送事業者
 権利保護の根拠
実演の創作性、実演家への利益分配
著作物の伝達行為の準創作性(?)
投下資本の回収
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第2 中川勉強会の考え 1/2

出版社に著作隣接権を付与する理由
著作隣接権保護の根拠としては、①準創作性の保護及び②
公衆に伝達する役割を担う者の保護という点にあるところ、
出版者は、
(ア)著作者と協力して創作に係る補助的な編集作業を行って
いること、
(イ)書籍等の制作コストを負担し、書籍等を流通させるための
媒介となって収益を上げて著作者に報酬を配分していること
が挙げられている。
(平成24年9月4日付け「出版物に係る権利(仮称)」の法制化
について 論点4より)
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第2 中川勉強会の考え 2/2
 出版物に係る権利を著作隣接権として構成すること
のメリットとして挙げられている理由
○ 出版者が自ら海賊版に対する法的手続をとることができる。
○ 当初出版の後であっても、著作権者において、自ら電子書籍
化して出版することや、異なる出版者を通じた出版ができる
ため、自由な競争が阻害されない(出版権の拡張という法制
との比較において)。
(平成24年9月4日付け「出版物に係る権利(仮称)」の法制
化について 論点5より)
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第3 著作権者と出版者の関係 1/2
 著作物創作の際における編集者の寄与
 二次的利用(アニメ化・映画化)の際における出版社
の関与
 著作物の題名・キャラクターについての商標登録の
際における出版社の関与
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第3 著作権者と出版者間の事例 2/2
出版社による著作権の管理
 「罪に濡れたふたり」事件(2チャンネル事件)
東京地判平成16年3月11日、東京高判平成17年3月3日
編集者による権利行使の代理(抗議行動)
 「やわらかい生活」事件(脚本事件)
東京地判平成22年9月10日、知財高判平成23年3月23日
出版社による事実上の著作権管理と権利行使の代理
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第4 著作権ビジネスと出版者隣接権
 デジタル時代における著作権ビジネスの発展
 権利処理の対象を増やすことの是非
 出版者隣接権の行使と著作権者の意思との関係
 出版者隣接権の権利範囲の明確化が必要
 既存の著作物との関係(立法技術上の常識として
は、法改正後の出版物に限られるはずである)
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ご清聴ありがとうございました。
元知財高裁判事・弁護士
三 村 量 一
長島・大野・常松法律事務所
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