学習会資料(2015.1.23、北海道大学) 遺伝子組換え作物と 「新しい育種技術」(NBT) 立川雅司(茨城大) 1 Part Ⅰ 遺伝子組換え作物をめぐる状況 2 世界のGM作物栽培面積は、 1億7,520万ヘクタールに(2013) 3 2 0 1 3 年 の 組 換 え 作 物 作 付 け 国 4 http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/qanda.htm#ans1_3 5 遺伝子組換え作物の特徴 ①自然界では交雑できない種から取り出した遺 伝子を ②DNAを操作する技術により宿主生物に導入 することで ③新たな形質(特徴)を付与する 6 典型的な遺伝子組換え作物 除草剤耐性大豆 ラウンドアップ・レディ大豆(モンサント社)など。 特定の除草剤(ラウンドアップなど)に耐性をもち 、除草の手間を省くと共に、不耕起栽培に適する。 Btトウモロコシ Yield Guardなど。Bt(農薬成分)を植物体の中に 作りだし、アワノメイガや根切り虫(corn rootworm) に耐性をもつ。農薬使用削減に効果。 Btワタ Btトウモロコシと同じ。Bt成分により、害虫に耐性 をもつ。農薬使用削減効果をもつ。 7 害虫の被害 European Corn Borer(アワノ メイガ) 8 雑草に覆われた大豆畑(日本) 除草剤散布後にラウンド アップレディ大豆だけが残 る(アメリカ) 9 遺伝子組換え作物のリスク 【食品リスク】 • アレルギー物質 • その他の健康影響(急性・慢性) 【環境リスク】 • 遺伝子拡散による耐性雑草・耐性害虫の登場 • 非標的生物への悪影響 • 生態系への長期的な悪影響 など 【社会経済的影響】 • 農薬への依存度をさらに深化 国内法では • 作付体系の単純化(遺伝的画一性) 考慮されて • 交雑・混入リスク いない • 風評被害 など 10 出所)農業生物資源研究所 11 遺伝子組換え食品の安全性審査 出所)厚生労働省ウェブサイトから 12 アメリカの動向 13 アメリカ: トウモロコシ、大豆、綿花の普及は一巡 100 90 80 70 60 トウモロコシ 50 大豆 40 綿花 30 20 10 0 USDA-NASS 14 アメリカ:食用GMO導入の本格化? GM Papaya: Rainbow™ 1998~ GM Salmon: AquAdvantage Salmon™ 認可間近?~ GM 小麦 10年後めざして・・・ 15 GM大西洋サケ 左側が、GM大西洋サケ(2倍体)、右側が非GM大西洋サ ケ。どちらも2月中旬にふ化して、飼養したもの。 [AquaBounty社で、2011年8月撮影] 16 米豪加の関連団体による GM小麦に関する声明 • 米豪加の小麦関連9団体によるGM小麦商業 化に関する声明(2009年5月) • 商業栽培を、同時に開始することを声明 17 アメリカ各州でのGM表示法案 http://farmassist.com/promo/thrive/policy/label_laws.html 18 EUの動向 19 EUにおけるGMOの現状 • 生産国は、数か国あるものの、スペインが中 心。(Btトウモロコシ) • 栽培可能なGM作物:2つのみ(Btトウモロコシ と加工用バレイショ) • 試験栽培への破壊活動多発→研究も低調 • GM作物と有機栽培との「共存」が議論 • GM作物には反対しているが、GM微生物で は世界最先端(発酵産業) ・・・White Biotech 20 EUにおけるGMトウモロコシ 栽培面積の推移 資料:USDA-FAS (2012) 21 栽培 前向き 慎重 反対 資料:USDA-FAS (2012) 22 共存ルールが議論されている背景 • EUでは、GM作物が栽培されている国(スペイン 等)もあるが、栽培に否定的な国(オーストリア等) も存在。 • 花粉による交雑や、流通過程での混入が発 生することへの不安 • GMOと有機農業などを区分管理するための ルールを作る必要性が認識 [共存ルール] ①交雑・混入を防止するためのルール ②混入した時の対応を決めるルール 23 日本は? • 日本では、まだGM作物は栽培 されていません。 • 例外:「青いバラ」「色変わりカーネーション」 (サントリー開発) • 数多くのGM作物が認可されているものの、 消費者の懸念があるために、生産されていな い。(認可品目数は、アメリカとほぼ同じ) • ただし、大量のGM作物が輸入されている。 (飼料用、油などに使用されている) 24 日本ではGMが見えない形で利用 • 表示制度(JAS法、食品衛生法) -表示対象品目は、組換えDNAや新規タンパ クが検出可能な場合に限定 (精製油や水あめ等は、表示対象外) -飼料は対象外 -全重量の5%以下の意図せざる混入であれ ば、表示免除。 • 表示が必要なものは、非GMOが使用。 • 表示が不要なものは、GMOが使用。 25 緑の革命とバイオ革命の相違 緑の革命(1960s) • 途上国[アジア(イネ)と ラテンアメリカ(小麦)] における収量性増大 • 公的機関により品種改 良(育種):HYVs • 公的普及機関を通じた 種子配布 • 化学肥料と農薬、機械 化、水利にも依存 バイオ革命(1990s) • 先進国(アメリカ)にお けるGM品種の採用・拡 大(トウモロコシ、大豆、 ナタネ等) • GM品種は、民間企業( 化学企業)による開発 • 種子は企業から、契約 に基づく有償購入。 • 除草剤とのセット使用 26 GM作物の開発費用 • McDougall(2011)[CropLife Intl委託事業]による開発 企業への調査結果 • 2008~11年に商業栽培認可がなされた新たなTrait をもつGM作物の開発費用は、1億3600万ドル(約 110億円)にのぼる。 • またその内訳は、 右のグラフの通り。 • 開発期間は、平均 13.1年を要する。 公的研究機関は、こうしたGM作 物開発費用を正当化できるか? 27 原発のコストは、社会状態の関数 • 原発のコストは、社会がどこまでの安全を求めるか に依存する。 • コスト=「人びとのリスク感、安全意識、人権意識が 低下し、専門家や政府の権威が強まった場合には 下がる」(小熊英二『社会を変えるには』、p.50) • 逆の状態になるとコストは高くなる。 • 「つまり、原発のコストは純粋に経済学的なものとい うより、社会状態の関数」(小熊、p.50)といえる。 遺伝子組換え作物にも当てはまるのでは? 28 Part Ⅱ 新しい育種技術をめぐる状況 (New Breeding Techniques, NBT) 29 NBTをめぐる状況 • 遺伝子組換え技術に関しては、食品安全性や環境安全性の 観点から、社会的論争の対象に • 近年、「新しい育種技術」(new breeding techniques, NBT)が 登場。研究者にDNA改変の新たな(より簡便な)手法を提供 し、生物学上のさまざまな研究への応用が期待されている。 • DNA改変の痕跡が残らないことで、突然変異と区別できず、 「見えない遺伝子操作技術」とも呼ばれる。 • 規制上の取り扱いや、その商業的利用に関しては、議論す べき論点が多い。(国際的にも検討中) • 学会、業界団体では、NBTの規制上の取り扱いをめぐって議 論が活発に行われている。 • しかし、消費者や市民とのコミュニケーションはほとんど実施 されていない。(海外も同様) 30 《ことの発端》 EUでNBTに関する報告書公表(2011) • 欧州JRC-IPTSによるNBT関連のレポートで議論され ている諸技術(7つの技術) 2007年段階の技術例 • Zinc finger nuclease (ZFN) technology (ZFN-1, ZFN-2 and ZFN-3) • Oligonucleotide directed mutagenesis (ODM) • Cisgenesis and intragenesis • RNA-dependent DNA methylation (RdDM) • Grafting (on GM rootstock) • Reverse breeding • Agro-infiltration (agro-infiltration “sensu stricto”, agro-inoculation, floral dip) 31 その他のNBTと考えられる技術 • • • • • • • TALEN CRISPR/Cas9 meganuclease Seed Production Technology(Dupont/Pioneer) TMS循環選抜育種(作物研) RNAウィルス感染による開花促進技術(岩手大) 接ぎ木によるエピゲノム編集(弘前大) ゲノム編集技術など、育種に用いることができる技術が次々 に開発されている状況。革命的な技術革新が起きつつあると 考えられている(バイテク関連技術や蓄積情報とのシナジー 効果が発揮されつつある)。 32 NBTの諸タイプ:3グループ ①ゲノム編集技術: 人工タンパクなどを導入し、数塩基を人工的に欠損/ 置換させる手法。 例)Zinc finger nuclease (ZFN), TALEN, CRISPR-Cas9 ②育成過程でGMを使用するものの、最終製品からは 挿入遺伝子が除去(=ヌル分離体)されているもの。 例)Reverse breeding、Seed Production Technology ③GMに準じた技術: 接ぎ木(GM台木と非GM穂木)、シスジェネシス(同 種間の遺伝子組換え)など。[…GMと考えられる] 33 遺伝子工学の技術 http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/genetech.htm 34 遺伝子組換え作物とNBTとの相違 《遺伝子組換え作物》 検知可能 微生物の 遺伝子 検知可能 同作物の遺伝子 GM? 非GM? 35 ゲノム編集技術 削 除 検知不可能 自分の遺伝子 A→G GM? 非GM? 検知不可能 ★ 自分の遺伝子 GM? 非GM? 36 DNAメチル化=墨塗り教科書 • DNAの一部をメチル化 することで、遺伝情報 を読めなくする(形質 が変化する) • なお、このメチル化は 遺伝する(但し、永続 的ではない) 37 国内における規制検討状況 • 日本においては、海外の情報収集を行っている段 階であり、政府としての明確な規制方針はいまだ定 められていない。 • 例外:Dupont社によるSPTを利用して育成したトウモ ロコシに関して、非GMと判断。(厚労省、農林水産 省、2013年3月) [アメリカ以外では初の判断] • カルタヘナ法におけるGMO定義の解釈との整合性 を踏まえて、対応方針を検討していくことになると考 えられる。(検討のプロセスに関しては不明。) • 2013年4月、OECDのバイテク規制監督WGに対して 、NBTを検討課題とすることが決定。2014年2月に第 1回会合。 38 NBTをめぐる国内状況 • 学会:育種学会、分子生物学会などでシンポ • 大学:筑波大の書籍。遺伝子施設協の声明 • 研究機関:基礎生物学研究所でゲノム編集 生物の機関外移転時の書式作成 • 学術会議: 公開シンポ、「報告」の公表予定 • 業界団体: ILSIがシンポ • 出版・メディア: 一部報道あり。専門誌で特 集。 39 諸外国での規制検討状況① • アメリカにおいては、規制3省庁のいずれも、基本 的にケースバイケースでの判断を行う方針。 • USDA(規制根拠:Plant Pest)からは、NBT関連製品 に関して、すでにいくつかの判断が示されている。 • FDAも含めて、製品の安全性確保は企業責任とされ ており、開発者や企業は、自己防衛のためにも、政 府に意見を求めている状況。 • EUでは、欧州委員会での検討が滞っており、具体的 な進展は、2015年以降になる見通し。 • EUでは、GM規制だけでなく、新規食品規則との重 層的な規制が検討されている。 40 諸外国での規制検討状況② • ニュージーランド:政府とNGOとの間で裁判となった 事例がある。判決内容=ゲノム編集技術(ZFN-1、 TALEN)を用いたものは、科学的知見の蓄積がない 段階では、規制対象と見なすことが妥当。 • その他の国でも検討中。 豪州、アルゼンチンなどで検討が進んでいる。 • OECD:バイオテクノロジー規制の監督調和を検討す るWGで、2014年2月から検討開始。 41 GMOか、非GMOか? • 国際的にも検討中。結論にはなお時間がかかる。 • 法令上の解釈と共に、科学的なエビデンスの蓄積 が求められる。 • 現時点では、将来的にGMとして規制されても問題 が生じないよう、慎重な対応が求められる。 • 大学での研究: 大学遺伝子協などの声明・見解 「ゲノム編集技術を用いて作成した生物の取り扱い に関する声明」(H26.5.20) • 産業利用: 関係省庁への事前相談の仕組み 42 有機農業からの見解例 • CisgenesisとReverse Breeding 有機農業としては「認められない」 【根拠】 • 植物全体ではなく、DNAレベルでその一部に対して育種的改良を行うこと は、生命の全体性(integrity)を損なうものであり、有機農業における自 然らしさ(naturalness)の概念と齟齬が生じる(p.407)。 • 交配可能種から取り出された遺伝子であっても、その遺伝子を宿主作物 の染色体にランダムに導入するという点も問題。育種の場合にはこうした ランダムな導入は起こらないため。(p.408) • EU有機農業指令においては、有機農業生産ではGMOあるいはGMO由 来製品を使用してはならないことになっている。逆育種で作出された品種 は、GMO由来製品に該当するため、有機農業で使用することができない と解釈。(p.408) GMOではないが、有機としても (出典:Lammerts, E.T. et al. (2007) ) 認められない、新たなカテゴリー が発生する可能性 43 GM Watchによる批判(2014.7.24) 44 日本学術会議報告(2014.8) 「植物における新育種技術の現状と課題」 • 「NPBTの適切な受容には、市民の理解が不可欠で ある。そのためにも、NPBTの開発については、市民 に対する十分な情報の公開が不可欠である。また、 NPBTを用いた作物開発にあたっては、外来遺伝子 の挿入や改変などがないとして、独断的に非組換え 体であると判断するのではなく、カルタヘナ法に従っ て、実験計画等を事前に申請し許可を得たうえ実験 をおこなうという従前の方法に従って、管理運用し、 知見を集積することが重要である。このような運用 と実績の積み重ねから、我が国でNPBTについての よりよいコンセンサスが生まれることを期待する。」 45 NBTに対する批判? • 規制見直しを検討している国も徐々に登場している が、限定的。国際的なGMO規制の相違は、NBTによ り一層複雑な様相(混乱)を呈すると想定。 • EU議会やGM反対派による批判が2014年夏から開 始。NBTについて、市民社会組織が今後、どのよう な批判を展開するかにより、NBTの命運が左右? • NBTをめぐる研究者コミュニティの楽観的対応は、今 後の社会受容にマイナスに働くのではないか? (過去の経験が全く活かされていない。) • 検知・同定できないNBT由来製品の流通(輸出入) は、技術そのものに対する社会的な批判をさらに高 める可能性。 46 結 論 • アメリカとEUなどの海外諸国では、NBTによって法律 改訂を行うことは想定されていない。現行法をどの ように解釈するか、その範囲内で対応する方向性。 • 現実として、NBT関連製品における国際的な不整合 が発生する可能性がある(GMと同じ事態)。 • NBTは既存のGM技術の利用効率性も高める。様々 な研究蓄積を動員できる国とそうでない国とで、競 争上の優位性に格差が生じる可能性。 47 【謝辞】 農林水産省委託プロジェクト(GMO-RA) (公益社団法人)農林水産・食品産業技術振興協 会(JATAFF) 《参考文献》 ●立川雅司(2014)「新しい育種技術をめぐる海外諸国における政策動向」、 『JATAFFジャーナル』 2(8): 5-9。 ●立川雅司(2014)「新植物育種技術をめぐる海外諸国の規制動向」、 『B&I』72(6):514-517。 ●立川雅司・鎌田博(2014)「新しい育種技術をめぐる規制と社会的対応」、 『生物の科学 遺伝』、3月号:145-149。 ●畠山華子・立川雅司(2013)「新しい育種技術をめぐるガバナンス上の課題 -米欧の動向からの示唆-」、『フードシステム研究』20(3): 193-198。 48 参 考 資 料 49 アメリカの対応動向 【USDAによる組換え作物規制】 ・これまでは「植物病害」を根拠とした規制により、プロ ダクト・ベースの規制を行っていた。 ・Agrobacteriumなど植物病害(7 CFR 340.2に記載)を 用いないGM作物に対しては、規制権限がない。 ・ただし、連邦政府は、いくつかのNBT由来作物に関し て、「規制権限外」と認めはじめている。 アメリカにおいては、GMOに対する規制権限の制約が 存在しており、行政判断により、NBTの一部に関して、 規制対象外との判断を行いつつある。 50 環境放出指令における規制対象 規制対象[附属書1A Part 1] GM (1)生体外で作成された核酸分子をベクター系に挿入することによ り遺伝物質の新たな組合せを形成し、自然には存在しないが継続 的継代が可能な宿主生物中に導入する組換え核酸技術 (2)生体外で調製された遺伝物質を直接生物体に導入する技術。 (3)自然では起らない方法による2つ以上の細胞の融合 除外[附属書1B] (1)突然変異誘導 (2)植物細胞の細胞融合(プロトプラストフュージョンを含む)であっ て、生じる生物を通常の育種技術によっても作り出せるもの 非GM[附属書1A Part 2] (1)試験管内受精 (2)接合、形質導入、形質転換等の自然のプロセス (3)倍数性誘導 51 日本のGM規制:「カルタヘナ法」 第二条 この法律において「生物」とは、一の細胞(細 胞群を構成しているものを除く。)又は細胞群であって 核酸を移転し又は複製する能力を有するものとして主 務省令で定めるもの、ウイルス及びウイロイドをいう。 2 この法律において「遺伝子組換え生物等」とは、次 に掲げる技術の利用により得られた核酸又はその複 製物を有する生物をいう。 一 細胞外において核酸を加工する技術であって主 務省令で定めるもの 二 異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合 する技術であって主務省令で定めるもの 52 消費者から見たNBT(安全性について) • 安全性の懸念はないのか。GM作物の懸念(食品や 環境へのリスク)がそのまま当てはまる • これまでの人為突然変異のものにも同じリスクや問 題があったのではないか • 高齢者や子どもなどのセンシティブ・グループへの 安全性は考慮されているのか • 海外から輸入される農産物にも、同様の懸念がな いかどうか • 従来のGM作物に対する懸念をクリアできるのであ れば、もしかしたら望ましいかもしれない 53 消費者から見たNBT(その他) • 消費者にとってのメリットは何なのか • 選ぶ権利について考慮してほしい(表示) • 規制が時代遅れになっているのではないか。規制を 変えるべきではないか • 過去の法律の定義をもとに、GM作物に当てはまる かどうか考えるのは間違い。当時の立法者の趣旨 を斟酌すれば、NBTも規制に含まれるべき • 海外の規制動向はどうなっているか • 生命に対する人為操作がGM以上に進んでいると考 えるべきではないか 54 農業生産者から見たNBT(生産・販売) • 栽培しやすさ、栽培技術上のメリットがあるか • 資材として購入する際の価格はどうか • 商品として売れるか売れないか • 土壌への影響や、栽培上の安全性(触れていると手 がかぶれるなど)の問題はないか • 消費者は納得してくれるか • 風評被害にあわないか • NBT関連の作物を生産した場合、GMと同じような批 判を浴びないか 55 農業生産者から見たNBT (規制など) • 何か問題が生じた場合には責任は誰がとるのか • 何かが起こった際のクレーム対応などをどこが担っ てくれるのか • 突然、自治体等によって栽培が規制される政策リス クがある • 資材の履歴情報を知りたい(cf. 有機での飼料の出 所問題)。お墨付きや保証をだれがしてくれるのか • 有機農業に利用できるか。最終的には農水省へお うかがいを立てるということになるのか 56 開発者から見たNBT(研究開発) • 今まで作出しずらかったものが短期間につくれる。食料 問題を解決することにもつながる • 日本発の技術を開発すれば、国内研究を活性化できる • ゲノム編集は、従来のGM技術とは異なり、正確性、予 測可能性が高い • 操作性や予測可能性が高まることは、悪意を持った操 作の危険性も高まることにつながる • 一般の育種で生じる変異の幅に比べると、例えばゲノム 編集の変化の幅は狭い • 研究が成果として生かせる場合には、高い評価が得ら れる 57 開発者から見たNBT(規制など) • 規制対象になるのか。プロセスとして外されることを 期待するが、科学的にはプロダクトとして評価される べき • 規制への対応のために、どのような手続きやデータ 提出が求められるのか • 材料を他の機関とやり取りする際の制約は? • 技術利用上の特許との関係は? • 技術開発の立場 vs 技術ユーザーの立場 • 論文作成や研究費獲得競争への影響 58
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