地球温暖化関連 ニューストピックス

2003年 第5号
【7/19~8/31/2003】
~本号のメイントピックス~
《国内》 中環審、炭素税の具体的数字案を提示
《国際》 EU ETSとJI/CDMリンクの指令案
《特集》 環境省提案の温暖化対策税
もくじ
Monthly News

国内動向
 環境省
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中環審、温暖化対策税額の具体的試算結果の公開
2001年度の温室効果ガス総排出量報告
 経産省

CDM2件の日本政府承認
 農林水産省

温暖化対策税収の森林吸収源対策への活用の妥当性を検討
 その他省庁の動き


平成15年度「地球環境産業技術に係る先導研究(代替フロン等を対象とした排出抑制技術)」の委託
先を決定
国際動向
 京都議定書批准状況
 EU議会、 ETSとJI/CDMリンクの指令案
 世界銀行の新ファンド「コミュニティ開発炭素基金(CDCF)」発足

CDM理事会情報
特集 環境省の温暖化対策税とは
Appendix
国内動向 (制度・政策)
Points
・温暖化対策税額3,400円/t-Cで1990年比-2.4%を達成できると試算。(環境省)
・2001年度温室効果ガス総排出量は、前年比2.5%減。産業部門、民生家庭部門で減少。
(環境省)
◎環境省


中環審、温暖化対策税額の具体的試算結果の公開(8月28日)
中央環境審議会は「温暖化対策税制の具体的な案」を公開した。1990年の排出を100とした
場合に97.6にするという目標値を税の効果だけで達成しようとすると約45,000[円/t-C]の課税
が必要になる。一方、約3,400[円/t-C]の温暖化対策税によって集まった税収を環境対策とし
て効率的に還流することでも同等の効果が引き出せると試算している。
2001年度の温室効果ガス総排出量報告(8月29日)
環境省は2001年度の温室効果ガス総排出量が、12億9,900万トンで前年度比2.5%減少した
と、地球環境保全関係閣僚会議と地球温暖化対策推進本部に報告。景気低迷や暖冬・冷夏
でエネルギー消費が少なかったことが要因。部門別では産業部門と民生家庭部門が減少し、
業務その他部門と運輸部門が増加。ただし、京都議定書の基準年比では5.2%増となっており、
6%削減目標とは依然隔たりがある。
国内動向 (制度・政策)
Points
・2件のCDM事業が日本政府承認を取得。(経済産業省)
・温暖化対策税収の森林吸収源対策への活用を検討する中間報告を提出。(農林水産省)
◎経済産業省

CDM2件の日本政府承認
今年7月、イネオス・ケミカル社の韓国でのHFC23破壊事業および関西電力のブータン国で
の小規模水力事業の2件がCDM事業として日本政府承認を取得。これまでの承認も合わせる
とCDM全4件、JI1件となった。
◎農林水産省

温暖化対策税収の森林吸収源対策への活用の妥当性を検討(7月28日)
「地球温暖化防止吸収源対策の推進のための国民支援に関する研究会」から「中間報告」
が出された。温暖化防止に向けた今後の森林吸収源対策を強力に進めていく観点から、現在
検討が進められている温暖化対策税が導入された場合、その税収を森林吸収源対策へ活用
することの妥当性や意義等について整理するとともに、森林吸収源対策に対する国民的な支
援意識の醸成につなげていくことを目的と している。
国内動向 (制度・政策)
Point ・代替フロンの排出抑制技術研究の委託先を決定。(NEDO)
◎その他省庁の動き

NEDOは、平成15年度「地球環境産業技術に係る先導研究(代替フロン等を対象とした排出
抑制技術)」の委託先を決定
代替フロン等3ガス(HFC注)、PFC、SF6)の使用増加が考えられており、地球温暖化問題へ
の悪影響が懸念されている。このため、排出削減のための先導研究を行う委託事業者とし
て4団体が選ばれた(予算8,300万円)。
研究課題
申請者の名称
超臨界二酸化炭素を利用した硬質ポリウ 日清紡績株式会社
レタンフォームの製造技術の確立
断熱用発泡樹脂中の代替フロン等の回収 独立行政法人産業技術総合研究所
と分離に関する研究
冷媒にHFCを使用しない空気サイクル冷凍 株式会社アースシップ
システムの冷凍、空調利用に関する先導
システム
大気プラズマによる代替フロン等3 ガス ユースエンジニアリング株式会社
(HFC、PFC、SF6)の分解処理装置の開発
注)CDM理事会Methパネルにおいて、ベースライン、モニターリング共に審査結果がAとなって
いるプロジェクトとして韓国におけるINEOS Fluorによる「HFC破壊プロジェクト」があり、大きな
注目を集めている。
国際動向
Points
・京都議定書の批准国は116ヶ国に。 (UNFCCC)
・持ち込み量に制約を設ける可能性はあるが、EU ETSはJI/CDMとリンク可能。(EU)
・コミュニティ開発炭素基金が発足。沖縄電力、出光興産らが出資。(世界銀行)
◎京都議定書批准状況(9月12日現在(最新)の国連情報)
8月中にGUYANA(8/5)、ボツワナ(8/8)、ミャンマー(8/13)、SAINT LUCIA(8/20)が批准して、京
都議定書批准国の総数は116カ国、批准した附属書Ⅰ国のCO2排出量合計の割合は44.2%のま
まである。
◎EU議会、ETSとJI/CDMリンクの指令案
7月23日の提案は、EU各国が京都議定書で認められているJIおよびCDMによって得られたクレ
ジットを自由に変換して、EUで実施されるETS(Emission Trading Scheme)で取引可能とすることを
示している。ただし、2008~2012年でのEUに対する排出割当量の6%相当がEU ETSに持ち込ま
れた場合には、レビューが行われ、残りの期間における持込量の制約が議論される可能性が高
い。また、提案では原子力プロジェクト、炭素シンク注)を除外するとしている。
◎世界銀行の新ファンド「コミュニティ開発炭素基金(CDCF)」発足
世界銀行は7月15日、貧しい発展途上国の温室効果ガスの排出削減事業を支援する「コミュニ
ティ開発炭素基金(CDCF)」を正式発足させたと発表した。日本からは沖縄電力、出光興産など4
社が各250万ドルずつ出資する。
注)炭素シンク: 二酸化炭素の吸収源のこと。森林など。
CDM理事会情報
Point ・イネオスケミカル日本らの新方法論を公式に承認。
2003年7月28、29日にボン(ドイツ)で開催された第10回CDM理事会において、新方法論が審査さ
れ、日本企業では、イネオスケミカル日本、Climate Expertsらが提出した新方法論が、正式に承
認された(A評価) 。また電源開発の新方法論はB(再検討)の評価を受け、再提出すれば第11回
CDM理事会で再検討される見通しである。(詳細はAppendixを参照)
A
韓国
イネオスケミカル日本ほか:
HFCsの回収破壊
チリ
電源開発ほか:
燃料転換
B
CDM理事会情報
Point ・運営機関(OE)に立候補している企業は、日本企業6社を含めて計15社。
2003年8月末の時点で、運営機関(OE)に立候補している企業は、日本企業6社を含む以下の15
社である。
AE 機関名
URS Verification Ltd.
KPMG Certification B.V.
TÜV Anlagentechnik GmbH
PricewaterhouseCoopers Certification B.V.
国名
英国
オランダ
ドイツ
オランダ
Korea Energy Management Corporation
韓国
BVQI Holdings Ltd.
英国
SGS UK Ltd. (SGS = Société Générale de Surveillance)
英国
朝日監査法人
日本
日本プラント協会 (JCI)
日本
トーマツ審査評価機構 (TECO)
日本
TÜV Süddeutschland Bau und Betrieb GmbH (TÜV Süddeutschland)
ドイツ
中央青山PwCサステナビリティ研究所 (CSRI)
日本
Det Norske Veritas Certification Ltd. (DNV Certification Ltd)
日本環境認証機構 (JACO)
日本品質保証機構 (JQA)
ノルウェー
日本
日本
2003年8月末現在
特集 温暖化対策税制
温暖化対策税制の概要
京都議定書の6%削減約束達成のためには従来施策にも増して合理的施策が必要とされており、中
でも温暖化対策税は国民に身近な市場の力を積極的に活用する経済的手法で、その価格インセン
ティブ効果(化石燃料の相対価格の上昇により温暖化対策製品の購入や設備投資を促す効果)を通
じ、温室効果ガスの排出を削減することが期待される施策の1つである。
省エネ・新エネ技術の進歩、製品の相対価格低下
省エネ製品による燃料使用量の減少
温暖化対策税
化石燃料価
格の上昇
省エネ・新エネ事業の
普及拡大、投資の増大
CO2低排出産業
への構造転換
温暖化問題に対する意識の高まり
燃料消費の節約
温暖化対策
税収
省エネ・新エネなど温
暖化対策への補助金
環境関係公共事業や対
策の推進バックアップ
「環境政策における経済的手法活用検討会報告書」より作成
二
酸
化
炭
素
排
出
量
の
減
少
特集 温暖化対策税制
温暖化対策税の仕組みと経済への影響
中央環境審議会では、温暖化対策税制として「化石燃料最上流課税」「化石燃料上流課税」の2つの考え
を示している。いずれの課税体系であっても、経済へのマイナス要因になると考えられるが、同審議会で
はその影響は決して「非常に大きい」ものではないとしている。
【課税要件(案) 】
①最上流課税:化石燃料の保税地域からの引取量(輸入時点)または採取場からの採取量(採取時点)
課税物件の例:石炭、原油・輸入石油製品、天然ガス(LNG)
②上流課税:化石燃料の製造場(エネルギー転換部門)からの移出点(出荷時点)
課税物件の例:石炭、石油製品(ガソリン、重油、軽油など)、都市ガス、発電用化石燃料(石炭、石油、LNGなど)
【中央環境審議会での試算結果】 -2010年のCO2排出量を1990年レベル2%減とする場合
①税金のみで対応:45,000円/t-C(GDP-0.16%)
②税金+補助金による税収の還流で対応: 3,400円/t-C (GDP-0.06%)
注)GDPは何も追加的な対策を行わなかった場合に比べて
税制のメリット
エネルギー効率の改善
枯渇性エネルギーを保全することによる超長期のエネルギーコス
トの上昇を緩和
自然エネルギー利用、省エネルギー推進のインセンティブ効果
環境関連投資による新規産業や新たな雇用創出による経済効果
(技術開発による製品価格の低下や国際的先行利益の確保など)
税制のデメリット
エネルギー価格の上昇や新たな設備投資によるコスト増
(エネルギー多消費産業への影響大)
>短中期的影響
製品価格の上昇、消費の抑制や低下による国内生産の減少
>長期的影響
貯蓄の減少による資本蓄積率の低下、国内総生産の減少
「温暖化対策税制の具体的な制度の案(報告案)」より作成
Appendix (CDM理事会情報)
第10回CDM理事会における、新方法論の審査結果。
受付番号
プロジェクト名/概要
ホスト国
運営機関(OE、AE)
参加企業等
理事会評価
NM 0004
Salvador da Bahia
Landfill Gas Project
ブラジル
Det Norske Veritas
Certification Ltd. (DNV
Certification Ltd.) (ノ
ルウェー)
・VEGA Bahia Tratamento
de Residuos S.A.(ブラジル)
・SUEZ Environment(フラン
ス)
・ICF Consulting(米国)
承認(A)
韓国
Japan Quality
Assurance Organization
(JQA=日本品質保証機
構)
・INEOS Fluor Japan(イネオ
スケミカル、日本)
・Foosung Tech Corporation
Co., Ltd. (韓国)
・UPC Corporation Ltd. (韓
国)
・Climate Experts (日本)
承認(A)
製油工場における蒸気
システムの効率化
NM 0007
HFC Decomposition
Project in Ulsan
HFCsの回収破壊
NM 0016
Graneros Plant Fuel
Switching Project
食品製造工場における
天然ガスへの燃料転換
チリ
・Nestle Chile S.A. (チリ)
・電源開発
・MGM International, Inc.
(アルゼンチン)
再検討(B)