地球温暖化対策

2003年 第7号
【10/1~10/31/2003】
~本号のメイントピックス~
《国内》 平成16年度地球環境保全関係予算概算要求の状況
《国際》 CDM理事会、新たに方法論を承認
《特集》 吸収源CDM
もくじ
Monthly News

国内動向
 環境省
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
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平成16年度地球環境保全関係予算概算要求とりまとめ
二酸化炭素排出抑制対策対策事業費等補助金交付・実施要綱(民間団体)
二酸化炭素排出抑制対策対策事業費等補助金交付・実施要領(地方公共団体)
地球温暖化対策技術検討会の開催
 民間の動き


日本経団連 奥田会長記者会見、温暖化対策税(環境税)などで所見
国際動向
 京都議定書批准状況
 カナダ排出権市場の創設に向けて政府と産業界が合意
 EU排出権取引指令が成立
 CDM理事会、新たに方法論を承認

CDM理事会情報
特集 吸収源CDM
Appendix
国内動向(制度・政策)
Point ・平成16年度地球環境保全関係予算概算要求取りまとめを発表。「地球温暖化対
策」では前年に比べ72億円減。(環境省)
◎環境省

平成16年度地球環境保全関係予算概算要求とりまとめ(10月14日)
環境省は、関係府省庁の平成16年度地球環境保全関係予算概算要求額を取りまとめて発表
した。平成16年度地球環境保全関係予算概算要求の総額は9,213億円で、平成15年度予算額と
比べて約17億円、0.2%減となっている。施策対象分野別に見ると、平成15年度と比べて大きく減
少したのは「地球温暖化対策」で8,371億円から8,299億円へと72億円減少、逆に増加したのは
「国際的に価値の高い環境保護対策」で54億円から120億円に66億円増加している。
主な施策対象分野による分類 (環境省HPより抜粋)
15年度予算額
地球温暖化対策
(単位:億円)
16年度要求額
対前年度比増減額(率%)
8,371
8,299
▲72( ▲ 0.9%)
オゾン層の破壊対策
5
5
0(±0%)
森林の減少・劣化対策
8
8
0(±0%)
生物多様性の減少対策
39
44
5(12.8%)
開発途上国の環境対策
49
56
7(14.3%)
国際的に価値の高い環
境保護対策
54
120
66(122.2%)
国内動向(制度・政策)
Point ・二酸化炭素排出抑制対策事業に補助金を交付。補助率は総事業費に対し、民間の
場合1/3、自治体の場合1/2。(環境省)
◎環境省 つづき


二酸化炭素排出抑制対策対策事業費等補助金交付・実施要綱(民間団体) (10月15日)
この補助金は、エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制事業として、地球温暖化防止に関す
る技術開発、京都議定書に規定するクリーン開発メカニズム(CDM)又は共同実施(JI)及び高効
率な廃棄物発電や廃棄物由来のバイオマス発電等の廃棄物処理に係るエネルギー利用施設
の整備を実施する事業者に対し、総事業費の1/3が補助金として支給される。特にCDM、JIにつ
いては事業を行うために必要な本工事費等に加え、調査費、CDM/JI手続経費、外国旅費等ま
でが補助の対象となっている。
二酸化炭素排出抑制対策対策事業費等補助金交付・実施要領(地方公共団体)(10月15日)
この補助金は、地方公共団体等が行う地球温暖化対策事業(代エネ・省エネに係るものに限
る)に対し、必要な経費を国が補助することにより、地方公共団体等による地球温暖化対策の強
化と速やかな普及を図ることを目的とする。総事業費の1/2が補助金として支給される。
国内動向(制度・政策)
Point ・石油特別会計を有効活用するための検討会を開催。(環境省)
◎環境省 つづき

地球温暖化対策技術検討会の開催(10月28日)
石油特別会計を有効に活用するために地球温暖化対策技術のとりまとめ、効果・排出量の
評価等、技術開発テーマの検討・評価、普及方策の検討等を行うこととし、地球温暖化対策推進
大綱の第2ステップに向けた検討に役立てるとともに、エネルギー起源二酸化炭素排出抑制の
ための施策の立案、実施に反映することが狙いである。平成16年度概算要求における石油特別
会計によるCO2排出抑制対策の総額は130億円としている。
国内動向(民間)
Point ・温暖化対策税に対し、反対すべき方向で一致。(日本経済団体連合会)
◎民間の動き

日本経団連 奥田会長記者会見、温暖化対策税(環境税)などで所見(10月6日)
日本経団連の奥田会長は6日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行い、温暖化対策税
(環境税)に対する日本経団連の考え方の説明を行った。環境省中央環境審議会の委員会から
報告された温暖化対策税案について、「とりやすいところから徴収しようとする、実質的な産業界
への新たな課税である」と述べるとともに、国際競争力への影響や既存エネルギー税との関係
など、さまざまな問題点があると指摘。同日の会長・副会長会議で、日本経団連として反対すべ
きとの方向で一致したことを明らかにした。
さらに奥田会長は、温暖化対策の検討について、削減が進んでいない民生部門対策をはじめ、
徹底的な議論と検証が不可欠とした上で、「民生部門対策は、国民のライフスタイルを変えていく
ことしかないのではないか」との考えを示した。
国際動向
Points
・京都議定書の批准国は119ヶ国のまま。 (UNFCCC)
・カナダ排出権市場の創設に向けて政府と産業界が合意 。(カナダ政府、産業界)
・EU排出権取引指令が成立。(EU)
◎京都議定書批准状況(9月12日現在(最新)の国連情報)
10月中に京都議定書に批准した国はなく、京都議定書批准国の総数は119カ国、批准した附属書
Ⅰ国のCO2排出量合計の割合は44.2%のままである。
◎カナダ排出権市場の創設に向けて政府と産業界※が合意
10月23日、カナダの国内排出権取引制度に関する12項目の指針について、カナダ政府とカナダ産
業界※が合意した。合意した項目の内容は、国際排出量取引や他国の取引市場とのリンクを目指す
こと、流動性を確保し取引コストを低減すること、バンキング制度を認めること等、カナダの排出権取
引制度が目指す方向性を示すものとなっている。
◎EU排出権取引指令が成立
10月13日に、EU排出権取引指令(2003年第4号で紹介)が成立し、10月25日のEU官報にて公表さ
れた。
※具体的には、国際排出権取引協会(IETA)のカナダ排出権取引WG(CWGCM)に参加している電力、エネルギー等を中心
とした25の企業である。
国際動向
Point ・新たに4件の方法論を承認。 (CDM理事会)
◎CDM理事会、新たに方法論を承認
CDM理事会は第11回会合(10/16-17)で、新たに4件の方法論を承認した。新たに承認されたのは、
ブラジルのLFG(ランドフィルガス)プロジェクト、南アフリカのLFGプロジェクト、チリの燃料転換プロジェ
クト、タイの籾殻バイオマス発電プロジェクトが申請していたベースライン方法論とモニタリング方法論
である。
CDM理事会情報
Point ・新たに電源開発、および三菱証券の新方法論をそれぞれ承認。
2003年10月16、17日にボン(ドイツ)で開催された第11回CDM理事会において、新方法論が審査
され、日本企業では、電源開発らが提出した新方法論と、三菱証券らが提出した新方法論が、正
式に承認された(A評価) 。(詳細はAppendixを参照)
A
タイ
三菱証券ほか:
もみ殻発電
チリ
電源開発ほか:
燃料転換
A
特集 吸収源CDMの論点
非永続性に対する2つのアプローチ – COP9でも論点に!
吸収源CDMでは、植林により一旦CO2を吸収したとしても、伐採や火災などによりCO2が再放出される
リスク(吸収源CDMの「非永続性」と呼ばれる)を考慮する必要性がある。このため、排出源CDMによる排
出削減量は確定値であるのに対し、吸収源CDMによる吸収量は確定値とならない。この問題は、吸収源
CDMの制度設計において最大の論点となっている。現在、この非永続性に対して「EUアプローチ」と「カナ
ダアプローチ」の2つ方法が議論されており、COP9の主要議題の一つとして注目されている。
EUアプローチ
吸収源CDMのCERはTemporary CER(TCER)として、一
般のCERとは別途処理する。
国別登録簿においては、TECR専用の償却口座及び取消
口座を別途新たに設けて処理する。
TCERは発効後5年間で失効する。
TCERは発行された約束期間の目標達成にのみ有効で
ある。
TCERの有効期間は常に5年であるが、TCER発行5年後
に、森林が依然残っていれば、その炭素蓄積の量に応じ
てTCERは再発行される。
TCERは償却口座又は取消口座に移転する。
カナダアプローチ
保険アプローチとリスク管理アプローチを取る。
保険アプローチでは、伐採、火災等による森林の消失
分のCERを、保険会社がKyoto Money(AAU、一般の
CER等)により補填する。
リスク管理アプローチでは、プロジェクト参加者自身が
組んだポートフォリオの中に、当該吸収源CDMプロジェク
ト、他の吸収源CDMプロジェクト、近隣のCDMプロジェク
ト等をコンポーネントとして配置し、当該吸収源CDMプロ
ジェクト起源のCERが消失した場合には、他のコンポー
ネント起源のクレジットで補填する。
カナダ政府は、TCERも認めつつ、選択肢の1つとして
Insured CERもありえるとの考え方である。
特集 吸収源CDMの論点
排出権の買い手から見たTCERの特徴
TCERのように排出権に有効期限がある場合、その排出権を消費する企業や国は、過去に消費(償却)
した排出権をその後も管理し続ける必要性がある。例えば、第一約束期間にTCERを償却した企業は、そ
のTCERが発生した吸収源プロジェクトをその後も管理し、伐採などにより固定量が減少した場合には、
他の排出権によって過去に消費した排出権を補填する必要が生じる。このように、TCERは償却後も長期
の管理が必要となることから、企業にとっても国にとっても非常に使い難い排出権といえる。このため、仮
にEUアプローチが採用されれば、吸収源CDMの大規模な活用は困難になるであろう。
吸収源CDMの非永続性の問題を解決し、かつ市場参加者にとっても活用しやすい制度設計が望まれ
るところである。
第1約束期間
第2約束期間
固定量減少
◎◎●●●
◎◎◎◎◎
期限切れの10TCER(第1約束期
間で償却済み)を再発行7TCERと
の差を他の排出権で補填
固定量維持
◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎
期限切れの10TCER(第1約束期
間で償却済み)を再発行10TCER
で補填
固定量増加
◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎
○○○○○
期限切れの10TCER(第1約束期
間で償却済み)を再発行10TCER
で補填した上で新規の5TCERを
取得
10TCERを償却
○○○○○
○○○○○
○:新規TCER
◎:再発行TCER
●:補填対象TCER
Appendix (CDM理事会情報)
第11回CDM理事会で新たに承認された新方法論の一覧。
受付番号
NM 0005
プロジェクト名/概要
Brazil NovaGerar Landfill Gas
to Energy Project
ホスト国
Durban Landfill-gas-toelectricity project
埋め立て廃棄物処分場でのメ
タンガス回収と発電
参加企業等
ブラジル
Det Norske Veritas
Certification Ltd. (DNV
Certification Ltd.) (ノル
ウェー)
・EcoSecurities Ltd. (英国)
・SA Paulista (ブラジル)
・NovaGerar EcoEnergia Ltda. (ブラ
ジル)
・World Bank Netherlands Clean
Development Facility (アメリカ)
南アフリカ
TÜV Süddeutschland Bau und
Betrieb GmbH (TÜV
Süddeutschland) (ドイツ)
・Durban Solid Waste (DSW) (南ア
フリカ)
・World Bank Prototype Carbon
Fund(世銀PCF) (本部米国)
・Ethekwini Municipality (南アフリ
カ)
・Durban Metropolitan Unicity
Municipality (南アフリカ)
・Ethikwini Electricity (南アフリカ)
・South African Department of
Environmental Affairs and Tourism
(南アフリカ)
埋め立て廃棄物処分場でのメ
タンガス回収と発電
NM 0010
運営機関(OE、AE)
Appendix (CDM理事会情報)
受付番号
NM 0016
プロジェクト名/概要
Graneros Plant Fuel Switching
Project
ホスト国
A.T. Biopower Rice Husk Power
Project in Pichit, Thailand
もみ殻によるバイオマス発電
参加企業等
チリ
Det Norske Veritas
Certification Ltd. (DNV
Certification Ltd.) (ノルウェー)
・Nestle Chile S.A. (チリ)
・電源開発
・MGM International, Inc. (アルゼン
チン)
タイ
Det Norske Veritas
Certification Ltd. (DNV
Certification Ltd.) (ノルウェー)
・A.T.Biopower Co. Ltd.(ATB) (タイ)
・三菱証券 クリーンエネルギーファ
イナンス委員会
・Rolls-Royce Power Ventures
Ltd.(RRPV) (英国)
・Al Tayyar Energy Ltd.(ATE) (アラ
ブ首長国連邦、米国)
・The Engineering Business Division
of the Electricity Generating
Authority of Thailand(EGATEB) (タ
イ)
食品製造工場における天然ガ
スへの燃料転換
NM 0019
運営機関(OE、AE)