講義例 生涯最高の失敗 ~ノーベル賞につながった開発プロジェクト~ 島津製作所 田中耕一 さんになったつもりで・・・ Address: 〒606-8203 京都市左京区田中関田町2-7 思文閣会館1階 Web Site: http://www.npo-kgc.or.jp/ e-mail: [email protected] FAX: 075-771-6763 1 本日の予定 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. プロジェクト開始 障害・壁 ブレイクスルー前夜 ブレイクスルー グループディスカッション プロジェクト成果 成功の要因 2 Copyright 2006-2007 KGC プロジェクト開始 1983年:島津製作所入社 中央研究所へ配属 →表面分析用のレーザ質量分析装置開発プロジェクトに参画 結果:製品化につながらず! もっとニーズのあるものを! 1985年:生体高分子用のレーザ質量分析開発プロジェクト開始 5人のチーム、私は試料のイオン化を担当 5人共、化学の出身者ではなかった そこには壁が!! 3 Copyright 2006-2007 KGC 障害・壁 「質量数1万もの高分子を壊さずに測定する方法がない!」 ・レーザの専門家曰く、レーザ照射で高分子を壊さずにイオン化できるはずがない ・当時の常識としても非常識(当時は質量数1000程度が限界) しかし、チームには化学の専門家がいなかったため 専門家・常識を軽視してしまった 幸運にも!! 大胆な挑戦へ! 目標は質量数1万の分子のイオン化 試料の調整、質量分離・検出用の装置、回路設計、 ソフトウェア開発まですべての工程を自前で! 4 Copyright 2006-2007 KGC ブレイクスルー前夜「異分野の融合」 当時、冶金分野で注目されていた超微粒金属粉末を レーザの衝撃を和らげるための緩衝材に使用すること をメンバーが提案 →今まで測定されなかった分子イオンが検出! しかし、質量数2千程度までが限界、再現性も低い 暗礁へ!!万事休す 5 Copyright 2006-2007 KGC ブレイクスルー「生涯最高の失敗」 失敗1:超微粒金属粉末の溶媒「アセトン」の代わり に誤って「グリセリン」を使ってしまった 失敗2:その溶液を「もったいない」と思って実験して しまった 結果:質量数10万をこえるたんぱく質を壊さずに イオン化できた! 6 Copyright 2006-2007 KGC グループディスカッション あなたはあるプロジェクトメンバーの一人に 任命されました。 今回のプロジェクトに直接関わりのある専門家は あなたを含めメンバーには誰一人としておらず、 また皆専門が違うことがわかりました。 さて、このチームがうまく機能するために、 あなたならどういう行動をとりますか? 7 Copyright 2006-2007 KGC プロジェクト成果 「ソフトレーザ脱離イオン化法」を開発 世界中の研究者による改良 「MALDI法」という社会に必要不可欠な技術に発展 2002年、ノーベル化学賞受賞! 8 Copyright 2006-2007 KGC 成功の要因 •ノーベル賞はチームワークなしには得られなかった •失敗を失敗と思わない粘り強さがあった •常識に囚われず、何でもやってみる姿勢があった •偶然を見過ごさないだけの毎日の積み重ねがあった •何よりも実験が好きで、それを通して社会の役に立ち たいという強い気持ちがあった 9 Copyright 2006-2007 KGC
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