物質科学実験 CIII タンパク質の取り扱い

専門海洋生命・分子工学基礎実験
タンパク質の取扱い
(1)
細胞分子工学研究室担当
1.試薬の調製(1)
大事なポイント
• 試薬の取り扱い(計算,計量)
• pH メーターの使い方
• ピペッターの使い方
溶液の濃度
• パーセント濃度もそれほど単純じゃない。
o 小学校で習うのは重量パーセント(weight/weight)
o でも,これから重要なのは weight/volume
・・・つまり一定の溶液中に溶けている溶質の量
Q: 10% (w/w) の食塩水(NaCl 水溶液)と,10% (w/v)
の食塩水はどっちが濃い?
• 「溶質」「溶媒」「溶液」という言葉は OK?
溶液の濃度
• モル濃度が重要
o モルは分子の数をあらわす
・・・ 1 mol は 6.022 x 1023 分子
o モル濃度は,決まった体積の溶液に溶けている溶質のモ
ル数
o 1 M は 1 mol/L
o 1 mol の NaCl (分子量 58.44)は,58.44 g
Q: 100 mM の NaCl 水溶液を 200 mL 作るために必要な
NaCl は何グラム?
試薬の調製
A. 200 mM NaH2PO4 (pH 8.0) を 100 mL
o NaH2PO4・2H2O の分子量は 156.0
o さて,何グラムの粉が必要?
【 簡単で失敗のない方法 】
o 1 mol/L の溶液を 1 L 作るとしたら何グラム?
o 200 mM の溶液を 1 L なら?
o 200 mM の溶液を 100 mL なら?
暗算でできる方法を考えよう…筆算は間違いのもと!
試薬の調製
A. 200 mM NaH2PO4 (pH 8.0) を 100 mL
o NaH2PO4・2H2O の分子量は 156.0
o 前のスライドで計算した結果を踏まえて …
o 粉を 80 mL 程度の蒸留水に溶かす
o 10 N NaOH 溶液で pH を 8.0 に合わせる
o メスシリンダーで,全量を 100 mL に合わせる
試薬の調製
B. 3 M の NaCl を 50 mL
o NaCl の分子量は 58.44
o
o
o
o
o
o
さっきと同様に考えよう
3 M の溶液を 1 L 作るなら…? から順に考えていく
結局…何グラム?
40 mL 程度の蒸留水に溶かす
pH は合わせなくていい
メスシリンダーで全量を 50 mL に合わせる。
試薬の調製
C. 1 M のイミダゾールを 50 mL
o イミダゾールの分子量は 68.08
o さて,何グラム?
o 40 mL 程度の蒸留水に溶かす
o pH を合わせる
o メスシリンダーで全量を
50 mL に合わせる。
試薬の調製
各グループで以下の溶液を調製する(各 10 mL)。
(Wash Buffer)
50 mM NaH2PO4 (pH 8.0), 300 mM NaCl,
20 mM イミダゾール
(Elution Buffer)
50 mM NaH2PO4 (pH 8.0), 300 mM NaCl,
250 mM イミダゾール
2.アフィニティークロマトグラフィー
これから行う実験の概要
• 目的のタンパクが,特定の物質と結合する性質を利用して精
製する
• クラゲ由来の蛍光タンパク EGFP を使う
• 青い光(励起光)を当てると緑色の蛍光を発する
• この実習で使う EGFP は,N 末端に 6 個の連続したヒスチ
ジン(His)残基を人為的に付加されている
• 連続した His 残基が Ni2+-NTA と特異的に結合する性質を
利用して EGFP を精製する
アフィニティークロマトグラフィーの原理
• ヒスチジン (His) と Ni2+-NTA の特異的結合
アフィニティークロマトグラフィーの原理
• ヒスチジンとイミダゾールの構造の類似性
アフィニティークロマトグラフィー(1)
• 各グループに 1.5 mL のタンパク溶液を渡す(試料 A)
• タンパク溶液のうち 50 mL を,新しい 1.5 mL チューブ
に取り分ける
• 50 mL のタンパク溶液に,等量の 2x SDS サンプルバッ
ファーを加えて混ぜる (試料 a)
(2x SDS サンプルバッファーについてはこのファイル
の最後の方のスライドを参照)
アフィニティークロマトグラフィー(2)
• 250 mL の Ni2+-NTA アガロースビーズが入った 2 mL
チューブに,1.5 mL のタンパク溶液(試料 A) を入れ
て混ぜる
• そのまま,氷中に 30 分以上おく
o ときどき混ぜる。 30 分以上・・・できる限り長く
アフィニティークロマトグラフィー(3)
• 簡易カラムに移し,下から落ちてくる液を新しい 2 mL
チューブで受け取る (試料 B)
• 試料 B のうち,50 mL を新しい 1.5 mL チューブに取り
分ける
• 50 ml の試料 B に対して,等量の 2x SDS サンプルバッ
ファーを加えて混ぜる (試料 b)
アフィニティークロマトグラフィー(4)
• 2 mL の Wash Buffer をカラムに載せ,自然に溶液が落
ちるのを待つ
• 落ちてくる溶液を新しい 2 mL チューブに受け取る (試
料 C)
• 試料 C のうち,50 mL を新しい 1.5 ml チューブに取り
分ける
• 50 mL の試料 C に対して,等量の 2x SDS サンプルバッ
ファーを加えて混ぜる (試料 c)
アフィニティークロマトグラフィー(5)
• 0.5 mL の Elution Buffer をカラムに載せ,落ちる溶液を,
新しい 2 mL チューブに受け取る(試料 D)
• 試料 D のうち,50 mL を新しい 1.5 mL チューブに取り
分ける
• 50 mL の試料 D に対して,等量の 2x SDS サンプルバッ
ファーを加えて混ぜる (試料 d)
アフィニティークロマトグラフィー(6)
• 試料 D と,試料 a, b, c, d を回収する
(大事な試料を捨てないように!!)
• 次回まで冷蔵保存しておく
• 次回は,回収した試料 D に溶けているタンパク質を定
量する
サンプルの調製
• SDS サンプルバッファー
o 10% (w/v) グリセリン
o 5% (v/v) 2-メルカプトエタノール
o 2.3% (w/v) SDS
o 62.5 mM Tris-HCl (pH 6.8)
• 当日は上記のサンプルバッファーの 2 倍濃縮ストック溶液を
使用します(次のスライド)
2x SDS サンプルバッファー
のつくり方
• 以下のものを混ぜて 10 mL とする
o 50% グリセリンを 4 mL
o 2-メルカプトエタノールを 1 mL
o SDS の粉を 0.46 g
o 0.5 M Tris-HCl (pH 6.8) を 2.5 mL
o 蒸留水を 2.5 mL
o 少量のブロモフェノールブルーの粉を溶かす