住み慣れた家で死ぬ ということ 〜死の日常化へ向けて

あなたの家にかえろう
~住み慣れた家で死ぬということ~
尼崎市
さくらいクリニック
桜井 隆
おかえりなさいプロジェクト
阪神ホームホスピスを考える会
第16回長崎市医師会市民健康講座
2008.11.29@長崎
Tribute
DR.TASAKA&SHIRAHAMA
M.Mさん63歳 女性
胆管癌、肝転移、癌性腹膜炎
夫、娘(33歳)の3人暮らし 専業主婦
鹿児島出身、親類は鹿児島在住
2007年4月肝機能異常精査目的のERCPで膵炎を
おこし重症化、6月に閉塞性黄疸出現しPTCD施行
その時点で上記診断。
入院中、家族と病院スタッフが告知について何度も話し
あうが家族の心の揺れが大きく、未告知のまま。
8月中旬 娘さんがネットでさくらいクリニックを探し
受診、Mさんの入院後初めての外泊時に往診を受け
在宅での症状コントロール、PTCD管理について本人、
家族と話し合い、そのまま退院。
症状コントロール
2007年9月20日
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デュロテップパッチ 7.5mg/2d
オキシコンチン 40mg/d
ハイペン
2T
リンデロン 6T
ノバミン
3T
オメプラール2T
• Rescue
オプソ10mg
1-2/d
ボルタレン座50mg 1-2/d
死因
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•
1.がん
2.心臓
3.脳血管
4. 肺炎
5.事故
6.自殺
30.0%
15.5%
13.2%
8.9%
3.9%
3.0%
医療機関における死亡割合の年次推移
%
自宅で死亡する者の割合
医療機関で死亡する者の割合
26
29
32 35
41
44 47 50
(昭和・年)
53
56
59
62
2
5
8
11 14
(平成・年)
(千人)
死亡数の年次推移
2038年 170万人
推計値
実績値
26 32 35 41 44 47 50 53 56 59 62 2 5 8 11 14 17 20 23 26 29 32 35 38 41 44 47 50 53 56 59 62
昭和
平成
(年)
在宅死亡率(平成16年)
• 全国
1、和歌山
2、奈良
3、新潟
4、長野
5、山形
兵庫
5、熊本
4.福岡
3、大分
2、長崎
1、北海道
12.4%
16.4%
16.2%
15.9%
15.5%
15.0%
14・2%
9.5%
9.4%
9.5%
9.0%
8.2%
在宅死亡率(平成19年)
• 全国
12.3%
1、奈良
2.大阪
3.東京
3.京都
5.兵庫
6、和歌山
6、宮城
15.9%
14.9%(大阪市
14.6%(区部
14,6%(京都市
14.4%(神戸市
14.3%
14,3%(仙台市
5、大分
4.福岡
3、長崎
2、北海道
1、佐賀
16.3%)
15.9%)
14.6%)
15.6%)
16.2%)
9.0%
8.7%(福岡市 10.0%)
8.6%
8.3%(札幌市 10.0%)
8.2%
死亡場所の構成比
病院
自宅
施設
癌の病院死
日本
84%
12%
4%
アメリカ
41%
31%
22%
41%
オランダ
35%
31%
33%
35%
93%
さくらいクリニック在宅死亡診断件数
(206 男98 女108)
• 癌患者 158(76%)
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•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
肺癌
胃癌
大腸癌
肝臓癌
膵癌
乳癌
脳腫瘍
胆嚢癌
腎臓癌
子宮癌
膀胱癌
その他
29
27
23
19
11
7
4
9
5
3
2
18
•
非癌患者 48
なぜ、家に“かえれ”ないのか?
病院で死ぬのが当たり前!
退院=もう打つ手はない、見捨てられるという誤解
病院という温室?から出たくない、出したくない
本当の情報に基づいた自己決定ができない
それを支援できない
在宅ケアのメニューがわからない
コスト面での不安 (がん保険、死亡保険)
社会制度の不備 (介護保険、支援費制度)
家族に迷惑をかけるのでは、 という本人の心配
自宅で介護できるのだろうか、 という家族の不安
情報不足のため、これからおこることがわからない
なぜ、家に“かえせ”ないのか?
• 在宅ホスピスケア(麻薬処方)に対応する開業医が少
ない (在宅療養支援診療所は機能するか?)
• 24時間対応の訪問看護、介護ステーションが少ない
• 病院スタッフの在宅ケアに関する知識が少ないため
情報提供できない。
• 患者、家族の病院医療に対する過大な期待のため
在宅への移行が困難な場合がある。
• 状態の変化が大きい末期患者に対する介護保険
支援費制度、生命保険といった制度の利用が困難。
• 退院支援システムが機能していない。
(死亡診断24時間ルールの誤解)
死亡診断24時間ルールの誤解
• 診療が継続していれば、原病に関連する
原因で死亡した場合は、死亡の際に立ち会っ
ていなかった場合でも死後診察し、死亡診断
書を交付することができる。 例外として診療
から24時間以内に死亡した場合なら改めて
死後診察しなくても死亡診断書は書ける。
(医師法第20条但し書き)
• 「死亡したとき」は死亡確認時刻ではなく、
死亡時刻を記入する。
(死亡診断書マニュアル、厚生労働省)
最期を家で過すための条件
• 本来、家に帰るのはあたりまえのこと。
• あなたも私も学校が、遊びが、仕事が終わったら
家に帰る。
• 人生という仕事が終わる時、家に帰るのは当たり前。
病院は人生の最期を過す場所ではない。
• 当たり前に家に帰ることを当たり前に支援するケア
おかえりなさい! ただいま!
そして、、、、
「生、老、病、死」の流れに寄り添うケア
医療ー福祉ー介護の垣根を越えて広がるケア
時間ー空間ー次元の垣根を越えて流れるケア
(診療所ー専門病院ーホスピスケア)
癌難民、障害難民、連携難民、死亡難民
をつくらないために。
予防から看取りまで 「生、老、病、死」
の広がりと流れに寄り添うケアのために。
医療条件の4分割
患者の立場
家族の立場
医療者の立場
社会の環境
(基本のリズムパターン)
往生際
「おわりよければすべてよし」 か?
あなたが望む “大往生” とは?
“PPK”思想の弊害
中往生、小往生でも、、
おわりあかんでもまあええか!
あなたの家にかえろう
あなたもわたしも
仕事が終われば家に帰る
それと同じように
人生という仕事が終わる時は
家に帰ろう
あなたが願うなら、
家でもだいじょうぶですよ。
おかえりなさいプロジェクト