毎月レポート ビジネスの情報 (2014年6月号) ビジネスの情報 2014年6月号 ■強力です。実店舗だけでも、ネットだけでもない、「オムニチャネル」販促。 2011年に米国で発表され、日本でも昨年末ごろから小売業界を中心に急速に広がり始 めたのが「オムニチャネル」。一躍、今年の注目キーワードに浮上しそうな勢いです。「 Omni=すべての/あらゆる」「Channel=販路」の意味で、実店舗を含む通販サイト、テレビ 通販、カタログ通販、DMといった小売市場上のあらゆる販売チャネルをバリアフリー的に 融合し、消費者が自分の都合に合わせて、いつでも、どこからでも商品やサービスが利 用できる顧客主体のシステムのことです。ネットと実店舗の垣根を取っ払った、フラットで 新しいショッピング環境といえます。そして、このシステムの拡大に、スマートフォンなど携 帯端末の普及とSNS利用の広がりが大きく寄与しているのは言うまでもありません。 ウェブ上で注文して実店舗で受け取ったり、自宅に届けてもらったり、購入した商品が 気に入らなければ実店舗で返品できたり、店頭に在庫がなければ、即オンラインで在庫 の有無を確認して購入・配送できたり…。 「オムニチャネル」の特徴は、実店舗の販売員や配送担当者がモバイル端末を持つこと で、サービス内容だけでなく、在庫状況や顧客情報の一元化・共有化が販売チャネルを またがって融合される点です。販売チャネルごとで価格や在庫がバラバラ、提供されるサ ービスやサポートが異なる、顧客の情報がチャネル単位でしか把握されていないことなど が、「オムニチャネル」以前、つまり現在の大多数を占める小売りの現実であり、盲点でも あります。そんな、連携の希薄さを解消して、チャネル間の移動を容易にさせたのが「オ ムニチャネル」です。 ネット販売が実店舗を脅かすという概念は、もはや時代錯誤といえます。ネットを、実店 舗の補完という位置付けではなく、実店舗を活用して顧客との接点を増やし、ネット専門 企業にはできない、まったく新しいショッピングの価値を提供すること。つまり、実店舗を 持っていることが強みになる時代がやって来たのです。 一社で、ネット店舗・実店舗・配送のすべてをまかなう小売企業は、その存在価値を増し ていくことでしょう。それはまた、多くのネット通販専門企業が窮地に立たされることを意味 しています。すべての実店舗が、ネット購入の機能を持つことになるからです。「オムニチ ャネル」の浸透は、店舗ごとで売り上げを競う時代の終焉を意味しています。 [セブン&アイ・ホールディングス]をはじめ、[ヤマダ電機][ユナイテッドアローズ][ABC マート][資生堂][青山商事][パルコ][凸版印刷][富士通]など、大手各社は今年“オム ニ元年”と捉え、3年後には50兆円超が見込まれるというこの巨大市場の開拓に着々と乗 り出しています。 ※参考: 日経МJ(2014年3月3日付) 日経産業新聞(2014年3月13日付) ビジネスの情報 2014年6月号 ■もはや立派な“観光資源”です。輝きを増す、「夜景ビジネス」。 人工衛星で観測される夜の地球では、日本がひときわ光り輝いて見えるといいます。夜をテー マに和歌を詠む、建築にみる月見台、数々の夜祭りや送り火…元来、他国に比べても、日本は“ 夜”に関する独自の鑑賞文化を古くから持っている国です。 そんなDNAを受け継ぎ、「夜景」を愛でるという“夜景観賞”を、ビジネスのシーズとして活用・展 開する動きが広がっています。 「夜景」が現在のように注目されだしたのは、バブル崩壊後といわれています。お金をかけずに 楽しめる、都会ならではの夜のスポットとして口コミレベルで広がると、マスコミにも取り上げられ 、次第に地方へと波及していきました。自治体では、地域興しを目的に、地元ならではの「夜景」 の存在をアピール。その価値を高めるため、鑑賞環境を整備し、より観光資源として磨きをかけ ます。 今日の“夜景ブーム”の生みの親ともいえるのが、一般社団法人[夜景観光コンベンション・ビュ ーロー]。2004年から「日本夜景遺産事務局」を立ち上げ、その代表的な活動の一つが、「夜景 サミット」の開催です。全国の夜景観光活性化に尽力する行政・民間企業が一堂に会する国内 唯一の場として、2009年の東京を皮切りに(翌年も東京)、大阪、長崎、周南(山口県)と続き、昨 年、初の海外開催が香港で行われました。2012年のサミットでは、「世界新三大夜景」として、モ ナコ・香港・長崎の三都市を認定。これまでの「世界三大夜景」(ナポリ・香港・函館)は、決定時期 や決定者が曖昧だったため、新たに全国3,500人の“夜景観賞士”(同団体が行う検定試験の有 資格者)へのアンケート結果を元に、再検証を行い、決定されたものです。ちなみに、「日本三大 夜景」は、函館・神戸・長崎の三都市です。 「夜景」の商品化は、さらに発展します。 最近、近未来的でSFチックな工場群の夜景クルーズが大ヒット。2011年の「全国工場夜景サミ ット」で、北九州、室蘭、川崎、四日市が「四大工場夜景」として発表されました(2013年に周南市 が加わって五大に)。このなんとも魅惑的な灯りが、実は夜景観賞のためにライトアップされたも のではなく、プラントの安全を守る作業灯であるというリアルな“無骨さ”が、見る人にはたまらな いようです。 デートスポットとして注目されてきた「夜景」の魅力も、昨今は世代や性別、国籍不問。ビジネス としても、ホテル、旅行、観光、交通、展望施設から不動産、エンターテインメント施設など、さま ざまな分野に広がりをみせています。特に、観光業界において、観光客を夜まで引き留めて泊ま り客の増加を招くという“夜景パワー”は、地方経済への貢献度が大きいと言えます。 「夜景」の宝庫ニッポンの次なるステップとして、今後は海外から人を呼ぶためのナイトツーリズ ムのいっそうの充実が求められています。 ※参考: 夜景観光コンベンション・ビューロー 工場夜景サミット 朝日新聞(2013年11月16日付) http://www.yakei-cvb.or.jp/ http://www.kojyoyakei.com/ ビジネスの情報 2014年6月号 ■世界征服も夢じゃない? グローバル化が加速する、「ラーメン」。 日本の“国民食”ともいえる「ラーメン」が、いまや「RAMEN」として国境を越え、世界各国で華 々しく“活躍”しています。 「ラーメン」のグローバル化はパリから始まったといっても過言ではないほど、ヨーロッパで「ラー メン」熱が最も高いのが、フランス。今年1月に開催された「パリ・ラーメンウィークZuzutto(ズズット )」も大変好評でした。 一方で、「ラーメン」を世界的にメジャーにしたのは、ニューヨークでのブームだったといわれて います。1975年に初登場して以来、2005年に「山頭火」、2007年に「せたが屋」、2008年には「博 多一風堂」といった、日本の有名店が続々と進出。特に「一風堂」の出店が、日本を代表する食 文化として一気に世界中で注目されるきっかけとなったと同時に、“とんこつ”を「ラーメン」のスタ ンダードへと一変させてしまったのです。当時の「N.Yタイムズ」には、“わずか$13で飛ぶ、日本 への旅”と紹介されました。常に行列ができるため、入口をバースタイルにし、軽くお酒を楽しみ ながらのウェイティングを演出しています。 世界で、日本に次ぐ「ラーメン」激戦区といえば、アメリカ西海岸エリアです。ロサンゼルスだけ でも300軒は下らないといわれています。1988年に日本人オーナーによって創業された「ASAHI RAMEN」は、当初、日本からの駐在員ばかりでしたが、ある時期からアメリカ人の客が急増。そ の理由は、映画「たんぽぽ」の影響だったとか。 2011年にハリウッドで誕生した、アメリカ初のつけ麺(DIP RAMEN)店「IKEMEN HOLLYWOOD」。つけダレは、とんこつベースにバジル、松の実、オリーブオイル、ニンニク、チ ーズなどを使用。トッピングの具材は、チャーシューの他、ベビーリーフ、トマト、かつお節、マッシ ュルームと、“純国産”とはひと味違ってユニーク。メニュー名も、“ジョニーディップ”“ゴーストバス ターディップ”“スパイダーメン”など、土地柄の遊び心いっぱい。2013年には、「新横浜ラーメン博 物館」に出店し(2014年5月まで)、“日本へ逆輸入!”と話題になりました。 遅ればせながら、ロンドンにも「ラーメン」旋風が吹き始めました。日本でいうなら、新宿・歌舞伎 町ともいうべきソーホー地区に、本格的なラーメン店が続々と産声を上げています。口コミやSNS を追い風に、新しもの好きのロンドンっ子たちが店の前に行列をつくっています。 “すする”という文化がない欧米に合わせて麺を短くしたり、スープの温度を下げたりと、進出国 それぞれのお国柄に受け入れられやすいようにアレンジ。 日本の食文化、究極のファストフードとしての「ラーメン」をもっと世界に広げようと、今年「ラーメ ン博物館」は、2024年までにヨーロッパに進出することを宣言しました。 ※参考: 日本貿易振興会 https://www.jetro.go.jp/ 新横浜ラーメン博物館 http://www.raumen.co.jp/ 朝日新聞(2014年3月1日付) 神奈川新聞(2014年3月4日付)
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