2015年8月25日(内御堂 亮)(14.3MB)

Journal Club
「蘇生後におけるミオクローヌス」
東京ベイ浦安市川医療センター
内御堂 亮
2015.08.25
救命の連鎖
ACLS 2005
3
第5の鎖
ACLS 2010
第5の鎖:心拍再開後の集中治療
Post Cardiac Arrest Syndrome
4
Outcome
• Discharge:退院
• Mortality:死亡率
• Neurogenic outcome:神経学的予後
• Cerebral Performance Category
• CPC 1.2 (GOOD) VS CPC 3.4.5(POOR)
GOOD
POOR
Prognosis of PCAS
CT
-Landmark Reviewin 2006
• From American Academy of Neurology (AAN)
• 自己心拍再開後72時間以内の予後不良因子
– Day1
• Myoclonus Status epileptics
– Day1-3
• SSEPsにおける両側N20 waveの消失
• NSE>33μg/L
– Day3
• 両側対光反射・角膜反射消失
• M1−2
However, these recommendations need updating
-Landmark Reviewin 2006
• From American Academy of Neurology (AAN)
• 自己心拍再開後72時間以内の予後不良因子
– Day1
• Myoclonus Status epileptics
– Day1-3
• SSEPsにおける両側N20 waveの消失
• NSE>33μg/L
– Day3
• 両側対光反射・角膜反射消失
• M1−2
However, these recommendations need updating
低体温療法が普及した時代
Intensive Care Med (2014) 40:1816–1831
Predictio
n
どうして予後予測が必要なのか・・・
Predictio
n
GOOD
より積極的な医療介入
Predictio
n
POOR
不適切・過剰な医療を避ける
GOOD
Predictio
n
BAD
POOR POOR POOR
POOR
POOR
本当は適切な医療介入の撤退・差し控え
Predictio
n
予測精度
BAD
POORPOOR POOR
POOR GOOD
POOR
POOR
本当に適切な医療介入とは???
Intensive Care Med (2014) 40:1816–1831
定義と分類
• Myoclonus (ミオクローヌス)
– 一過性の非随意性筋収縮
• Status myoclonus (ミオクローヌス重責)
– 継続し全般化する非随意性筋収縮
– 少なくとも30分以上継続する
– (持続時間や頻度にはコンセンサスがなく文献により
様々)
• Myoclonus (or myoclonic) status epilepticus
(ミオクローヌスてんかん重積状態)
– てんかん波を伴うもの
筋収縮
(Myoclonic jerk)
Myoclonus
Classification
Status Myoclonus
・全般化
・少なくとも30分継続
with epileptic activity
Myoclonus status epilepticus
no epileptic activity
EEG of Myoclonus
• てんかん波を伴うことがある
• てんかん波があるかどうかで、予後に違いが
あるかは不明。
• てんかん波をと認めるStatus Myoclonusを
Myoclonus (or myoclonic) status epilepticus
という
SPIKE & WAVE
http://www.scielo.br/scielo.php?pid=S0004-282X2007000700036&script=sci_arttext
BURST & SUPRESSION
PED
periodic epileptifom discharge
Accuracy as a prognostic factor
• Myoclonus
– 自己心拍再開後72時間以内/低体温療法
• 偽陽性5%
• 感度33%
– 自己心拍再開後7日以内/低体温療法
• 偽陽性11%
• 感度54%
Intensive Care Med (2014) 40:1816–1831
Accuracy as a prognostic factor
• Status myoclonus
– 自己心拍再開後24時間以内/非低体温療法
• 偽陽性0%
• 感度15%
– 自己心拍再開後24時間以内/低体温療法
• 偽陽性0.5%
• 感度16%
Intensive Care Med (2014) 40:1816–1831
Status myoclonusがあっても神経学的予後良好
• Lance–Adams syndrome
– 覚醒後(蘇生後後期)におこるStatus myoclonus
• 蘇生後前期にミオクローヌスがおこっても
経学的予後良好のケースレポート
神
– ROSCから4時間以内に強いミオクローヌスが生じた患
者で神経学的転帰良好であった3症例を報告
Resuscitation. 2012 83(2):265-9
• 低体温療法施行下でのMyoclonusに関するデー
タは十分ではない
まとめ
〜What’s known〜
• 低体温療法普及前
– Status Myoclonusがある患者のうち生存者はいな
かった
Ann Neurol 1994; 35:239–243
Neurology 1990; 40:1843–1848
– Status Myoclonusがある患者のうち90%が神経
学的予後不良
JAMA 1985; 253:1420–1426
– 2006年のガイドライン
• DAY1におこるStatus Myoclonusを予後不良因子として
挙げている.
まとめ
〜What’s unknown〜
• 低体温療法普及後の
– Myoclonusの特徴、神経学的モニタリング(EEGなど)の施
行率、Myoclonusを合併した患者の神経学的予後、死亡
率、死亡時期など
– Status myoclonusの神経学的予後不良因子としての精度
• Status Myoclonus患者において、てんかん波の有無が予後と
関連があるか
• Myoclonus患者におけるWithdrawalと死亡率の関連
MATERIALS AND METHODS
• 観察研究
• International Cardiac Arrest Registry (INTCAR).
– ウェブ上のデータベース
– 欧州・アメリカの34施設が参加
• 期間:2002–2012
• 対象:GCS<6
18才以上
心肺停止後蘇生(院内・院外両方)
ICU入室
DATA Collection
• 患者背景・併存症・心停止に関連する因子・ウツタインでの時間情
報
• 心停止に関する情報
– 救急隊から標準化された定義を使って収集
• 事前に決められたプロトコールにそって、集中治療や副作用に関
連するデータは記録される.
• 間欠的もしくは持続的ともに『脳波の使用』として記録される
• 脳波の種類
– dominant EEG background patterns
– epileptiform activity
• periodic discharges
• seizures
• status epilepticus
• 痙攣とミオクローヌスを含む異常動作.
• TTM(Target Temperature Management)の有無、全ての副作用、
DNR指示の使用の有無、治療撤退の有無
DATA Collection
MyoclonusとStatus myoclonusとLance-Adams Syndrome
• 出現のタイミング、持続時間、症状の部位は
記録されていない
• MyoclonusとStatus myoclonusと
Lance-Adams Syndrome の区別は本研究では
ついていない
Data Collection
Myoclonus and EEG
• てんかん性活動を伴うMyoclonusの定義
– Myoclonusに加えててんかん性活動が記録され
ている
• periodic epileptiform discharges
• seizures on EEG
• status epilepticus on EEG
• ただし多くの患者は脳波検査を施行されてい
ないので上記の区分は全ての患者に適応で
きていない
Outcome Measurement
• Primary outcome
–退院時の神経学的予後
• Cerebral Performance Category
Statistical Analysis
• データ記述
– 名義変数の割合はパーセンテージ
– 連続変数
• 正規分布 平均・標準偏差
• 非正規分布 中央値・四分位
• 検定
– 名義変数 カイ二乗検定
– 連続変数
• student’s t test
• Mann-Whitney-Wilcoxon rank-sum test
– 両側検定
– 有意水準 p=0.05
Primary Outcome
n=31
Fig1
>
>
>
<
<
>
>
>
<
<
>
<
<
79%
>
<
55%
>
>
>
Myoclonaus(+)で脳波施行された全患者:374
⬇
てんかん性活動(+):205
⬇
てんかん性活動(−)179
⬇
神経学的予後良好:5
➡2%
⬇
神経学的予後良好:26
➡ 15%
5/471(1%)
Myoclonus status epilepticus
>
>
<
<
Discussion points
1. Myoclonusの割合が先行研究と比較して少ない
こと
1. てんかん波を伴うMyoclonusの頻度とその予後
2. Myoclonusがあっても予後良好の人がいること
1. Myoclonusの存在が適切な医療を差し控える理
由に成っている可能性
1.Myoclonusの割合が
先行研究と比較して少ないこと
• Myoclonusの割合は18%
– 低体温療法普及前の先行研究では30-40%
– 低体温療法施行下の先行研究とはほぼ同等
• Myoclonusの頻度が減る背景がある
–
–
–
–
低体温療法
神経集中治療の発展
バイスタンダーCPR割合の増加
自己心拍再開時間の短縮
• レジストリーのサンプル集団の特性
– 初期波形:Vfもしくは脈無しVTが57%
• 低体温療法施行時の筋弛緩薬や鎮静薬の使用
Neurology 1988; 38:401
JAMA 1985; 253:1420
2.てんかん波を伴うMyoclonusの
頻度とその予後
• 脳波の使用率は79%
– 脳波の一貫性のない使用
– 脳波モニタリングの利用のしやすさ
– Status Myoclonusの定義が曖昧
• 診断に必ずしも脳波を必要としない
• てんかん波の有無を調べる意図なし
• てんかん波(+)の患者群はてんかん波(ー)
の患者群と比較して神経学的予後が悪い
3.Myoclonusがあっても
予後良好の人がいること
• 蘇生後でMyoclonus(+)
– 19%(471/2532)
• Myoclonus(+)で神経学的予後良好
– 9% (44/471)
• Myoclonus(+)てんかん波(ー)で神経学的予後良好
– 15%(26/179)
• Myoclonus(+)てんかん波(+)で神経学的予後良好
– 2%(5/205)
4.Myoclonusの存在が適切な医療を差
し控える理由に成っている可能性
• 神経学的予後良好群は、神経学的予後不良群
と比較して治療期間が長い
• 神経学的予後不良群のうち89%は、平均して
蘇生後5日目に治療撤退され、死亡している
• 神経学的予後良好群のICU滞在日数中央値は
8日間、病態滞在日数中央値は14.5日間
4.Myoclonusの存在が適切な医療を差
し控える理由に成っている可能性
• Myoclonusの存在が、神経学的予後良好の可
能性のある患者において、治療撤退を早めて
いる可能性があるのでは?
• Myoclonusだけでなく、SSEPs・バイオマーカー・
画像検査などを含めた、Multimodal
Prognosticationが必要
Limitation
• データの正確性と臨床徴候の解釈
– EEG interpretation (決まったスタンダードなし)
• データの欠損
– 全ての患者にEEGが施行されていない
• MyoclonusとStatus myoclonus の区別がない
• 持続的に筋弛緩薬を使用されている患者におい
てはMyoclonusの症状が出ない可能性がある
イベントの測定が
正確でない可能性
Validation
〜妥当性〜
• 外的妥当性
– 標本集団の性質(Characteristics)
• 58%:初期波形がVF/脈なしVT
• 84%:By stander CPR
• 27%:院内CPA
– ミオクローヌスを呈した患者の性質(Characteristics)
• 94%:低体温療法
Validation
〜妥当性〜
• 内的妥当性
– 単解析のみ
• 交絡因子の調整はされていない
担当者の私見
• ミオクローヌスの有無と治療撤退の有無の間に関連が
あるかは検定されていない
• 治療撤退しなかった群で、神経学的予後良好は
25(44/178)%
• 今回の標本でプライマリーアウトカムである
Myoclonus(+)で神経学的予後良好の割合(9%
(44/471))について母比率
– 95%CI [0.06,0.11]
Conclusion
• 蘇生後に低体温療法を施行されかつ、Myoclonusを呈した患者の中
で、神経学的予後良好は9%
• Myoclonus(+)で脳波施行された全患者
– てんかん性活動無しの神経学的予後良好は15%
• Myoclonus(+)患者の死亡は早すぎる治療撤退後に起こっている可
能性
• ただし、治療期間の延長が患者予後を改善するかは不明
• 脳波検査を施行すべき
• Myoclonus単独での予後の決定は行うべきではない