触法行為をどうとらえるか - Researchmap

触法障がい者・高齢者
被疑者・被告人段階での支援
南海福祉専門学校 社会福祉士養成通信課程科長
原田 和明
社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・介護支援専門員
個人のニーズを把握する
• 犯罪行為をすることそのものを生活支障ととら
える。
• 犯罪行為の因子としての個別的な社会ニーズ
の把握
• できるだけ早い段階でこういったニーズを把握
し,解決をはかることを支援の目標とする。
• すべてのニーズが解決することで,再犯が防
止され自立が図られるという仮定に基づく。
再犯防止を目的とした支援
• 再犯防止なくして自立更生はなし。
• 再犯を防止に留意し,そのうえで自立更生を
図ることを前提においた,ニーズアセスメント
をおこなう。
• 生活ニーズを福祉サービス等の利用で解決
することによって再犯を防止し,自立更生を
図る。
• 更なる被害者を生まないといった社会防衛的
要素もある。
自己決定の原則
自己決定がされていないと支援を受ける事に
消極的になる。
自らすすんでサービスを受ける事が再犯防止
につながる。→自らすすんでサービスを受けな
いと,継続することが難しい。
「触法行為をしない生活は快適である」という
自己決定を促す。
贖罪意識をもつことや,反省することも自己決
定の一つ。
司法手続きのステージに応じた支援
★被疑者段階
弁護人が窓口。弁護人と協働する。アセスメント
開始,状況によっては,具体的支援決定。
★被告人段階
更生支援計画の立案。支援を受けることの自己
決定。再犯をしないことや,自立更生に向けての
意思決定。
★受刑者段階
更生支援計画の見直し。支援を受けることや出
所後の再犯をしないことや,自立更生に向けて
の意思確認。
弁護人による逮捕等警察により検挙された時の取調等への対応
送検
弁護人による送検された際,検察官への取調等への対応
釈放
起訴
公判請求された場合,福祉的
対応として更生支援計画書を
提出する必要であれば作成者
の証人出廷
釈放
釈放
処分終了後,更生支援計画
を実施する。福祉サービス
等を利用しての自立支援
実刑判決→受刑
出所後,更生支援計画を実施する。福祉
サービス等を利用しての自立支援
被疑者段階の支援
• 不起訴処分が相当と判断されるような再犯防
止に効果のある福祉的支援の提示。
• 簡易鑑定の結果,起訴できないと判断され不
起訴となった場合についても積極的に再犯防
止のための福祉的支援を行なう。
• 自己決定の原則を遵守する。
• 処罰されなかったことによって,再犯を誘発し
ないように留意する。
情状酌量される点
公判の時点で
計画が実施された場合の再犯防止効果性
処分終了後,実施可能な支援であるのか
本人が了解しているのか(自己決定されているの
か)
公判において,計画の変更の可能性も示唆して
おくことも,場合によっては必要である。
更生支援計画は,再犯防止と自立更生を意図
しているが,それは,更生支援計画に沿った福祉
の支援を受ける事が前提となる。
留意する点
基本的には,犯罪は個人の責任であり社会の
責任ではないが,福祉の支援があれば犯罪を犯
すことがなかった,或いは可能性が低かったケー
スについては,すべてではないが,一定社会の責
任がある場合は,その点について指摘することが
必要となる場合もある。
福祉サービスが司法手続きの流れにあるといっ
た存在になることは避けるべき。
まずは,犯罪はした本人の責任であり,すべて
が社会の責任ではない。
終わりに
• こういった支援は,判決前調査としてとらえる
ことができる。
• ただし,日本刑事司法手続上,弁護側からし
かアプローチできない。本来は中立の立場か
らアプローチするべき。
• 支援を計画するものと支援を実施していくも
のとを分ける方法も考えていくべき。→ただし
実施者の決定は処分決定前に行われておく
べき。
• 悉皆的に被疑段階における,福祉的ニーズ
の把握ができないか。→ex.当番社会福祉士