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論文紹介
Rivalta, E. & Segall, P. (2008), Magma compressibility and
the missing source for some dike intrusions, Geophys.
Res. Lett., 35, L04306, doi:10.1029/2007GL032521.
Rivalta, E. (2010), Evidence that coupling to magma
chambers controls the volume history of laterally
propagating intrusions, J. Geophys. Res., 115, B07203.
doi:10.1029/2009JB006922.
2012年7月23日 火山物理学セミナー
背景
-2.7 Mm3
+10.3 Mm3
1997 Kilauea
(Owen et al., GRL, 2000; Segall et al., JGR, 2001)
-0.5 km3
+2.5 km3
2005 Afar
(Wright et al., Nature, 2006;
Grandin et al., JGR, 2009)
2000 Miyakejima
(Ozawa et al., JGR, 2004;
Irwan et al., JVGR, 2006)
問題設定
マグマだまりでの収縮体積とダイクorシルの膨張体積が合わないのはなぜなの
か?
主にマグマだまりとシルが同じ深さにある場合について考察するが,ダイクの場合
や深さが異なる場合についても言及する.
マグマからの発泡の有無による結果の依存性についても考察する.
仮定
 系は平衡を保たれる.
 マグマだまりへの外部からのマグマ供給は無視できるほどに小さい.
質量保存 (1/2)
マグマだまりとシル(ダイク)が同じ深さにあると仮定する.
(球形のマグマだまりの場合)
質量保存 (2/2)
(球形のマグマだまりの場合)
体積変化の比
μ= 0.1 - 30 GPa
βm= 0.4 - 2 × 10-10 /Pa(発泡した玄武岩の場合)
より 1.005 < rV < 9
キラウエア火山の場合
μ= 3 - 25 GPa
βm= 0.6 - 1 × 10-10 /Pa
より 1.24 < rV < 4.33
圧力低下にともなうマグマからの発泡を考慮するとrVはさらに大きく
なる.
発泡の効果
(気相が1種類の場合)
圧力が下がる→気相の質量分率が上がる→マグマの密度が下がる
マグマの見かけ体積圧縮率が上がる→rVが上がる
マグマだまりとシルが違う深さの場合
という拘束がマグマの密度について必要.
マグマだまりが深いとより多くのガスを溶かし込めるため,rVの脱ガスによる効果
は小さくなる.
ダイクの場合
質量保存の式
同じ深さ・同じくらいの体積のシルと比べrVは3-7 %小さい.
時間を入れる
 今後は発泡の効果は考えな
い.
 マグマだまりとシルの深さは
同じと仮定する.
τiおよびτcを求めるのが次の目標.
圧力変化の時間スケール
Poiseuille流を仮定すると
(円形クラックなら等号)
より
(円形クラックの場合)
マグマだまりとシルのカップリング
(圧力変化)
と定義し
と仮定すると
(平衡状態の圧力)
マグマだまりとシルの圧力変化
の時間スケールは等しい.
マグマだまりとシルのカップリング
(体積変化)
体積比は時間変化しない.
マグマだまりがシルの場合
(シルの相対的な大きさに依存しない)
2000年三宅島
 体積比は約3.6で時間的に一定.理論と調和的.
 剛性率10.8 GPa,Bulk modulus 16.25 GPaとするとβm=0.18/Gpa.発泡のない玄武岩
マグマはβm=0.06/GPa程度なので,発泡の効果で圧縮率が上がっていると考えられる.
 これらのパラメータを岩石学的証拠と独立に推定することができる.
 体積変化の時間スケールは6時間ほどだが実際には群発地震は2ヶ月続いたので,
群発地震の全体を理解するには他のマグマだまりが関与しているなどの可能性がある.
ダイクの長さの時間変化
ここまでの議論は,半径一定の円形シルの体積(厚さ)変化を考えてきたが,
震源位置の時間変化から推定されるダイクの長さの時間変化を今までの理論
の枠組みで(近似的に)考える.
b(クラックの径の関数),w(ダイクの厚さ)の時間変化を無視している.
群発地震の初期の段階で,震源の移動から最終的なダイクの長さを推定する
ことができる.
1978年Kralfa
t1/2の関数でのフィッティング
 全体的に観測と予測の一致はよい.
 マグマだまりの圧力変化がマグマ輸送の物理を支配していることを示唆する.
 予測されるダイクの最終的な長さまで地震活動が到達していない.岩石破壊の効
果やマグマの冷却の効果を無視していることによるものか.もしくは,地震をともなわ
ずにダイクが伸展している?
2006年Afar
 全体的に観測と予測の一致はよい.
 マグマだまり直上付近での沈降は観測されていない.マグマだまりが深いか,ダイ
ク貫入後のマグマだまりで発泡が発生してマグマだまりの体積を回復した可能性があ
る.
議論
 マグマの粘性流動・母岩の破壊強度などがダイクの水平伸展に及ぼす影響は小さいで
あろう.
 震央分布からはダイクが期待されるほど進展せずに止まっていることが示唆される.この
乖離は,Afar(頻繁な貫入)で小さく三宅島(稀な貫入)で大きい.母岩の破壊強度の違い
がこの違いを支配している?
 Viscous stress dropはマグマだまりとシル(ダイク)をつなぐパイプで発生していると仮定
し,ダイクないでの粘性流動による効果を無視しているが,それは正当化される.三宅島や
Afarではマグマだまりのすぐ脇で貫入が始まるが,それでもパイプ状になっている部分が
あるのだろう.
 ダイクの冷却の効果,発泡の効果,貫入域先端の破壊の効果などは無視しているが,
考慮するなら要数値計算.
 マグマだまりの形状は常に議論があるが,体積のミスマッチが起きるにはマグマだまりが
(球のような)変形しにくい形状である必要がある.