4.意思決定の問題 タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培

4.意思決定の問題
タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
• パーカム村の歴史
1970ころ 森林を切り開いて自発的な入植開始
76
タイ政府による定住(土地なし農民の
強制移住)開始
94
農業・農協銀行(国立)の融資開始
(農村開発政策の本格化)
96
県シードセンター(農業・農協省の支
部)
による大豆栽培奨励
4.意思決定の問題
タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
• 森林開拓地への移住
一世帯1.2haの土地配布(この地方では少ない)
水稲耕作に向かない土地…米の収穫低迷
灌漑のない天水田…気候変動の影響が大きい
⇒米単作では生活できず、季節労働が盛ん
• 新品種の大豆
大豆油の採取用⇒自分では消費できない
県シードセンターの一元管理(品種改良実験)
作付け、農薬や肥料の投入、収穫、販売まで
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タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
4.意思決定の問題
タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
• 作付け:シードセンターの配布する種子を7月(雨
季の初め)に購入、作付け
*最初の年(1996)の土地、種子、農薬、肥料代
…一世帯あたり2~4万バーツ借金(年利1
3%)
その後は毎年2,000バーツ程度の農薬、肥料、
種子投入+雇い入れ費用
• 栽培:品種改良の栽培実験なので、毎月シード
センターの職員が視察
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タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
• 販売:10月(雨季の終わり)、シードセンターの職
員が買いつけ
皮むき(90バーツ/100kg)、選定(5バーツ
/100kg)の費用を農民が払う
→シードセンターの基準に合えば販売(1000
バーツ/100kg)
売れ残った分は市場でもっと安く販売
=実験のリスクは農民が負う
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タイ東北部、コンケーン県パーカム村の大豆栽培
• (単純計算)最初に2万バーツ借りた場合
費用:利子2600+生産費用2000=4600バーツ
利益:100kgあたり905(1000-100-5)バーツ
510kg売れば毎年の費用を回収
• (実例)年に3万バーツの売り上げ…3年目以降
収穫が減り、1万バーツ以下の時も
+支出の増加(肥料や人件費の高騰)
→「最初の借金が返せない」…出稼ぎ再開
• …「市場価値」の基準で見ても「開発」に失敗
5.まとめ:「緑の革命」の思想的な背景と社会的効果
•
人々の「貧困」「低開発」としての抽象化
単一基準=市場価値による地域の文脈
からの切断
→「経済開発の対象」としての農民
• 外部投入への依存=市場への依存
→農民からの意思決定権の剥奪