ガバナンス論 第二回 倫理形成と「ガバナンス」 担当 吉田 「ガバナンス」のもとの意味 ガバナンス(Governance) – (主に古) 管理、制御(ジーニアス英和:大修館) – 支配、政治、統治、統括、管理(統治)法や組織 (リーダーズ英和:研究社) 「ガバナンス」のもとの意味 ガバナンス(Governance) – The way in which country (or company) is governed (or managed). Collins COBUILD ED for Al. – The action or manner of governing. Concise Oxford ED. Govern – 「船のかじをとる」が原義 治める、統治する、管理する、 決定する、律する、etc.(ジーニアス) – to have responsibility for making laws, managing economy, and controlling public services. (COBULD) – Conduct the policy and affairs of a state, organization, or people. (Oxford) 「ガバナンス」定義 合意形成・秩序形成の仕方 実行と決定の当事者(関係行為者)の参加 決定や指示はトップダウン式ではない 合意や秩序の形成は双方向的な流れで形成 – 宮川公男、山本清編著(2002)『パブリック・ガバ ナンス』日本経済評論社 – 小林傳司(2005)「科学技術とガバナンス」(『思 想』(2005)岩波書店、No.973、pp.5-26) トップダウンから水平的合意形成へ 統治 (ガバナンス) 協治 (ガバナンス) トップが決定・命令 多様かつ包括的な な参加と協議によ る合意形成 「グッド・ガバナンス」 国連による定義→ガバナンスが注目される – http://www.unescap.org/huset/gg/governance.htm 「グッド・ガバナンス」=次の8つの主要な性 格を持つ意思決定のプロセスと決定が実行さ れる(あるいは、されない)ためのプロセス – 参加、合意、説明、透明性、包含性、 実行、効果、合法性 ガバナンス 8つの基本性格 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 決定と実行の当事者(政府もその一つでしかない) の参加 その決定と実行の必要性に関する広く深い合意 アカウンタビリティ(特に影響を受ける者への) 透明性 すべてのメンバーの包含(排除されない) 一定の期間内に制定・実行されること 効果と効率(結果が社会のニーズ、自然条件など にかなう) 合法性(公平でマイノリティの人権保障の法的フ レームワーク) ガバナンスは国際援助の条件 必ずしも西欧型の民主主義でなくともよい しかし援助が適切に効果を挙げるには? – 受け取った援助を誰かが自分の好きなように 使ってしまうのは× – 一部の者の手で勝手に分け方を考えてしまうの も× – いきあたりばったりに分けていてもダメ – いつまでも実際に分けられないのも× で、グッドガバナンスが必要とされた ちょっと整理 国連の – グッドガバナンス⇔バッドガバナンス? 「ガバナンス」論の場合 – ガバナンス⇔非ガバナンス・ガバナンスがない。 ⇒ガバナンス論のガバナンス形成 =国連のグッドガバナンス形成のこと ちょっと倫理 倫理とは? – 目的=幸福や正義といった善の実現 • 人間として豊かな社会と生活の実現 – そのための原理、原則、条件などを明確にする • • • • 社会が、人間が幸せであるとはどういうこと? 正義が実現されている社会、人間関係とはどういう状態? どういう基本的なルールや方針が必要? 基本的条件としては? 教育、権力、文化、学問・芸術、衣食、技 術、、etcについて。 – ガバナンスと倫理 • ガバナンスでどのような倫理が形成できるか? • ガバナンスにどのような倫理が必要か? ガバナンスの試み? 部活動や学部の運営(トップダウンかも) (行政)NPO、NGO、そして市民の知識や意 見を交えた政策決定 国連をキー(トップではない)とする国際秩序 形成 インターネットの運営やオープンソースの開 発 掲示板、ブログ、ネットゲーム、googleなどの IT企業、寄り合い、談合、はどうでしょう? ガバナンスのメリット-1 もしガバナンスがうまく形成されれば – 多様な関係者行為者(アクター)が合意形成に参 加するから議論の幅が広がる • 政策にも多様性 • 生活にも多様性 • 価値の多様性 – ⇒豊かな生活、幸福な社会の実現 (お金の話ではない) ガバナンスのメリット-2 もしガバナンスがうまく形成されれば – 実行者が合意形成に参加するから、合意もよく受 け入れられ、実行意欲も湧く • ルールや命令を押し付けられるのは嫌! • 自分たちで決めたルールならその内容も実現の仕方 もよく分かってる • そして、そのルールを大切にできる • 倫理形成の方法としての有効性 ガバナンスのメリット-3 もしガバナンスがうまく形成されれば – トップに情報や判断、責任などが一極集中しない ため、柔軟で迅速な決定と実行が可能 • Ex. インターネットの分散的な秩序形成と運営 • W3C(HTMLなどの標準化)http://www.w3.org/ ガバナンスのメリット-4 もしガバナンスがうまく形成されれば – 不正や不平等は相互にチェックされるいみでも納 得のいく合意と秩序の形成が期待できる • 不平等や不正に対して すぐ声を上げられる! 考えよう⇒ほかにどんなメリットがあるでしょう? デメリット・リスクー1 合意形成と実行への参加資格の問題 – – – – 全員参加は非効率か不可能 では誰がどれだけ参加するのか? 一部の人への負担集中? 参加したくてもできないケースも デメリット・リスクー2 合意形成のプロセスは? – 協議 しかし多様で包括的な参加者でコミュニ ケーションできるか? • 専門知識の有無によるコミュニケーション・ギャップ • 問題関心の違いによるフレーミング・ギャップ – 皆が納得のいくプロセスって? • どこかで黙ってしまう人、切り捨てられる意見の存在 – 納得がいくまで話しましょう!⇒コストは? • 参加意欲の減少 デメリット・リスクー3 実効性の問題 – 最終的に合意できなかったら? • 多数決? それがガバナンス? – 実行における強制力は? • 政府? それがガバナンス? – では、どうやって実効性を確保できるか 課題 ガバナンスのメリットとリスクを考慮したうえで、 ガバナンスの有効な領域と、効果の期待でき ない領域を挙げてみよう。 – どのあたりがガバナンスに向いている(いない)の か、分析してしっかり指摘してください。 次回 民主主義と功利主義 – ガバナンスといわゆる「民主主義」はとどう違う? – あるいは民主主義=ガバナンス? 考えておいてください。
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