京都の観光産業について

京都の観光産業について
2003 11/19 清水政宏
観光客の年次推移
42,500
42,000
41,500
41,000
40,500
40,000
39,500
39,000
38,500
38,000
37,500
37,000
・ ここ数年は増加傾向
→米テロ、SARSなど外
部的理由による
単位:百万
1999
2000
2001
2002
・ 2010年に5000万人
に乗せるのが目標
観光消費額の推移
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
総合
日帰り
宿泊
1999
2001
• 1999年がピーク、ここ数
年はやや持ち直している程
度。
• 宿泊客の消費が伸び悩む
• 一人当たりに直すと02年
は総合が10544円、日帰
りは5573円、宿泊は263
01円で、いずれも減少傾
向
→客数増加でカバーしてい
る。
問題は・・・
• 観光客数増加は外的要因によるところが多く、
このままにしておくと減少する可能性が高い。
• 全国的な動向だが、観光地であっても消費は
低迷している。
→ではどうすれば観光収入を増やせるか?
一般的な観光の目的
①見る ②感じる ③体験する ④買う ⑤食う
①・・寺社、景勝地、自然 etc・・
②・・雰囲気(田舎・都会など非日常、超日常)
③・・自然、温泉、伝統工芸、テーマパーク etc・・
④・・六本木ヒルズなど複合商業施設
⑤・・郷土料理、名産品
京都の特性→①,②が飛びぬけている。⑤もまあまあ。
では他は?
京都に足りないもの
・ ④・・京都駅ビルが限界
・ ②・・テーマパークは無理
→新しい建物を作って集客するというスタイルは京都に馴染ま
ない。
・ ②に関して、伝統体験は改善の余地が大いにある。
<以上から言えること>
ア)ハードの創出、発掘は難しい(JR東海:真如堂の例)
→京都と客をつなぐという意味でのチャネルの確保、見直し
イ)体験型の発掘
観光収入を伸ばすには?
(観光収入)=(1人あたり使う金額)×(観光客数)
=(価格)×(買う数量)×(観光客数)
=∑Pk・Xk×L
(P:あるモノ、サービスの価格 X:数量 L:人数)
→この3つの項について検討。但しPとXはセットで扱うことが妥
当。
・ Pを挙げてみる
①交通費、移動費 ②宿泊代 ③飲食代 ④土産物代 ⑤拝観
料 ⑥体験代
観光地に見られる主な出費は以上6つ。
PとXについて①
800
600
400
200
0
単位:億
1999
2000
2001
2002
以下弾力性については考慮しない。
①;(交通費)=(運賃)×(のべ移動回数)
・ (運賃)→市バスは大阪、神戸の200円と比べると高い。また、市民の足でもある
ことから値上げは無理。
・ (移動回数)→1日乗車券もあるので直接収入には関わらないが、移動しやすくす
ることは重要。
PとXについて②
1100
1000
単位:億
900
800
1999
2000
2001
2002
・(宿泊代)=(宿泊料金)×(宿泊日数)
・(宿泊料金)→宿泊料金は高い!(誰にとって?)
・(宿泊日数)→ 02年の平均宿泊日数は1.62泊でここ数年減
少傾向
PとXについて③
1250
1200
1150
1100
1050
単位:億
1999
2000
2001
2002
(飲食代)=(食事代)×(食った回数)
・食の内容、代金については今回はさておく。
・(回数)→単純に回数を増やせば収入は上がるので、先の宿
泊と同様長期滞在が鍵となってくる。
PとXについて④
1100
1050
1000
単位:億円
950
900
1999
2000
2001
2002
・売り上げ上位ランキング
<菓子部門> 1、八橋 2、生八橋 3、餅類 4、饅頭・・
<風味品>1、漬物 2、千枚漬 3、ゆば 4、宇治茶・・
<装飾・調度品>1、美術工芸品 2、仏具 3、陶磁器 4、絵葉書・・
・(売り上げ)=(価格)×(数量)
・(価格)→一般的な観光地、もしくは少し高い程度
・(数量)→中身にネタがない。八橋&生八橋が永遠のアイドルになっているあたりが
限界では。
PとXについて⑤、⑥
・(拝観収入)=(拝観料)×(行った回数)
→但し寺社仏閣を経済効率に巻き込んでよいのかという問題。
(ビジネスライクな寺も確かに存在する)
・回数を増やすというのはアクセスの問題に帰着
・拝観料については後で検討
・体験代・・そもそもコンテンツが少ない
以上から言えること
• ウ)宿泊代と滞在期間の問題
• エ)移動のしやすさ(交通)
• オ)体験のコンテンツの問題(先のイ)と同じ)
• これらは誰にとって問題となりうるか?
→Lはどうなのかを考えてみる。(Lが一番強い変数)
→その指標として、①年齢 ②出発地別 を用いる。
※①と②は独立ではないが、②のほうがより強い条件と捉え、
バラバラにした。
年齢別に見た観光客数
総合
男
女
20歳未
満
12.9
13.7
12.5
20代
13.7
12.6
14.3
30代
10.5
11.6
11.5
40代
19.4
13.8
19.4
50代
29.2
31.7
29.3
60代以
上
14.3
16.6
13.0
36.4
63.6
男女比
•
•
•
•
•
20歳未満は主に修学旅行生
女性が圧倒的に多い
20代は低い位置で安定
30代は共に少ない
中年以降は安定
出発地で見た観光客数
40
•
30
20
%
10
•
•
グラフは左より、大阪・その他近畿・中部・
東京・関東その他・東北、北海道・四国、
中国・九州、沖縄の順。
近畿だけで7割弱
近畿以外もここ数年で増加傾向
0
•
国、地域
宿泊者数
割合(%)
アメリカ
130785
27.2
台湾
71163
14.8
韓国
51929
10.8
中国
29331
6.1
イギリス
26446
5.5
表は02年の推計(SARSの影響で例年1
位の台湾が下がったと思われる)
問題と年代、出発地を組み合わせて考える
1位
2位
3位
‘95
京都 奈良 長野
‘97
京都 北海 長野
道
北海 京都 沖縄
道
大阪 京都 北海
道
‘99
‘00
①、修学旅行生
まず、なぜ修学旅行生か?
→今後の客足を支える下地になる
イ)修学旅行の目的
→ヤフーで検索かけてみると、大体目的
は以下4つ
1、体験 2、集団生活 3、仲間 4、
ルール
ロ)修学旅行の現在(左は高校の旅行先
ランキング)
→やられ気味。最近は海外も人気
どう奪い返すか?
・ 以上より①体験型②チャネル
①・・伝統工芸だけでいいのか?自然をテーマに何かできない
か?
②・・旅行先決定はグレーゾーンの可能性
→修学旅行は「手配旅行」。客の要望に合わせて旅行会社がプ
ランを決定。
→京都はPRをしているが、決定には関与してないと思われる。
こちらからモデルの提示をする
また、③交通の問題。自由行動の際の移動などもある。
②若者
• この年代は時間はあるのに金がない!
→ 一番の問題は宿泊代。
• ユースホステルが少なく、しかも高い
• 京都など「日本的なもの」に対しては好感を示す
• 流行のくせに「自分だけのもの」が大好き
→以上から町屋など伝統家屋を使ったゲストハウスを作る
・ ゲストハウス・・アジアによく見られる1泊2000円程度の安宿
→現在もあることはあるのだが、基本的に外国人バックパッカー向け。日本
人単独では泊まれないところすらある。
・ 確かに単価が安いので宿泊費としての利益は出にくいが、1週間、1ヶ月
など長期滞在をして、自分なりの京都観を持つことができる。これはリ
ピーター獲得にも繋がる。
・ これはチャネルの問題も内包。
③30代、中年
20代
30代
40代~
2回
9.5
4.4
4.8
3回
19.0
13.0
8.4
4回
7.2
4.4
3.5
5回以
上
19.0
30.4
25.5
10回以
上
35.7
47.8
54.5
新聞・雑 10.3
誌
19.1
20.8
パンフ
レット
7.7
0.0
11.3
テレビ・
ラジオ
5.1
9.5
4.9
ネット
17.9
0.0
6.6
<30代>
• この層が最も来そうで来ない。
• →ちょうど飽きが来ている時期
<中年>
• この層は手堅い。入洛も半数が
10回を超える。
• 金銭的にはそれなりに余裕。
• 移動は下手(自分でサクサク動
きにくい)
(左図)上;入洛回数
下;入洛動機
30代、中年をどうするか
• 両者とも何度も来ている。中年に飽きられたら終わり。
→体験型が鍵
• しかし修学旅行生と同じような体験型では無理
→「これまで何度も来ていて味わえなかったもの」
=一見さんお断りの店、舞妓と豪遊・・・
→京都の深層を味わえるような体験
・ これは個人レベルでは困難なのでツアーの中に入れる(京
都に慣れている人が多いので、自由度の高いツアーにする
のは必須)
・ 交通の問題
遠方、外国人をどうするか
• 遠方の人
• 来ると必ず宿泊するのでその価
値は大きい
• チャネルは?
→隣の業界を考えると・・・
• マイルの導入、遠方割引(宿泊
代割引、拝観料無料など)
•
外国人
→長期滞在だが金がない。移動も難し
い
<アジア>
• 寺社・仏閣は当たり前。
→拝観料を払ってまで来るのか?
→企画・運営・ガイドなど留学生との連
携がポイント
<欧米>
• ベタなPRでもよい
• 東京から遠くはないことをアピール
• 拝観料?
• 金をかけない手作り体験
解決しなかった問題
• 交通の問題
→移動のしやすさ・・①目的地へのアクセス方法がすぐ分かる
か。②スムーズに移動できるか
• ①は日本人・外国人両方に分かりやすいガイドを作るなど
• ②は渋滞の問題。他県からの車を規制する訳にもいかない。
→観光客だけでも車から他の交通機関へと誘導するシステム
を。
→鉄道・航空など輸送業界との連携
• 拝観料
→全ての人に同じ料金でよいのか?