消費関数3

フリードマンも消費の平準化に注目して、
恒常所得仮説を提唱した。
消費の平準化を行う各個人は、消費が現在
の所得よりもむしろ、好調な年と不調な年を
平均した生涯の全所得(恒常所得と呼ばれる)
に強く依存する。したがって、フリードマンは
人々は一時所得と恒常所得を区別できると主
張した。
好調な年と不調な年の間で、消費を平準化させ
る点で貯蓄の役割を重要である。
ライフサイクル仮説どう違うのか。
貯蓄の役割を強調する点はライフサイクル
仮説と同じであるが、ライフサイクル仮説で
は、所得のパーンが一生涯では規則的な
パターンに従うことを強調しているが、恒常
所得仮説では、人々が年々、所得の不規
則的で一時的な変化を経験する点を強調
した点で異なる。
Y  Y Y
P
T
恒常所得仮説
M.フリードマンは、所得を
「恒常所得(permanent income)」と
「変動所得(transitory income)」の2つの部
分に分けた。
Y  Y Y
P
T
恒常所得とは、自己の学歴・資産・所得獲得
能力からして、将来予想しうる平均所得。
昇進やより所得の高い職をえると、消費は増
加する。このように消費を増加させるのは恒
常所得。
変動所得とは、景気の良し悪しによって左右
される所得。宝くじやギャンブルでの臨時収
入(=変動所得)は、その分だけ消費を増や
そうとはせず、貯蓄に回す。
フリードマンは、消費は主に恒常所得に依存
しているという恒常所得仮説を提唱した。
C  cY
P
c : MPC
平均消費性向は
P
C cY
c


T
P
Y
Y
1 Y Y


C
Y 0 
Y
:好調時
C
Y 0 
Y
:不調時
T
T
Y 0c
T
経済成長により賃金等が増加する
生涯賃金が増加すると予想して、生涯所得の
現在価値の増加、すなわち恒常所得の増加
する。
消費が原点からの直線に沿って増加する。
=短期消費関数の上方シフト
所得の一時的変動に対する消費変化はゼロ
短期と長期の消費関数
C  cY
C
短期消費関数
c
YP
変動所得 恒常所得
Y1
Y2
変動所得
Y
P
統計的事実の説明
長期的には、変動所得は差し引きゼロとみな
しうる。よって、長期的には、可処分所得は
P
恒常所得(Y )に一致する。
短期的には、恒常所得は変化しないのに対
して、変動所得は大きく変化する。
このため、消費はあまり変化しないが、
平均消費性向は上下に変動する。
恒常所得とは何か?
消費者個人の「人的資本」(彼の全将来所
得の現在価値)を含めて、彼が持っている
全資産の現在価値から得られる所得。
T
PV0  
t 0
wt
1  r 
t
 W0
 y  PV0
P
 :人的資本の収益 W0:財産
wt:賃金
3期間の所得の割引現在価値
Y3
Y2
Y1 

W
2
1  r 1  r 
3期間にわたり所得が同一とすれば(ならし所得)

1
1 

Y 1 

2 
 1  r 1  r  
Y3
Y2
 Y1 

W
2
1  r 1  r 
P
これを整理すると、
3
Yt
W

t 1
t 1 1  r 
P
Y 
3
1

t 1
t 1 1  r 
現在所得の一時的変動は、生涯にわたる
平均所得(=恒常所得)を少し変動させる。
よって、消費も少し変化する。
恒常所得仮説の数値例
APC
現在の所 恒常所得 一時所得 消費
得
1期 370万円 300万円 70万円
240万円 0.65
2期 230万円
300万円
-70万円 240万円 1.04
3期 300万円
300万円
0万円
240万円 0.8
利子率はゼロ 物価は一定
恒常所得
370  230  300
 300
3
しかし、実際には将来所得の予想は困難であ
る。家計が恒常所得を予想する場合、現在所
得から完全に独立には決まらない。フリードマ
ンは過去の所得系列から、恒常所得を予想す
ると考えた。
Yt   0Yt  1Yt 1    17Yt 17
P
=
0.33
=
0.22
17
ただし、

i 1
i
順次逓減
 1 を用いた。
恒常所得仮説は、本来、将来の所得あるいは
その予想に基づく理論であるが、過去の所得
によって推計せざる点は、大きな問題である。
消費の習慣化仮説との区別ができない。
恒常所得の最も簡単な例
Y  Y  1   Y1
P
Y :今期の所得
0  1
Y1:前期の所得
C  cY  cY  c1   Y1
P
短期の消費関数
C
Y1
 c  c1   
Y
Y
C  cY
C
E”
上経
方済
シ成
フ長
トに
よ
る
E
Y1
E’
Y0
Y
前期までの所得
Y1
今期の所得は
Y0
その後も
に増加
Y0 が継続
短期消費関数は上方へシフト
もし、2期間にわたり同じ所得が実現
すると、その一定の所得が恒常所得
として認識される。
Y  Y1  Y
C  cY
P
C

c
P
Y
P
割引現在価値
将来受け取る金額が、現在ではどれだけの価
値があるかを示す。
今日受け取る1万円は、1年後に受け取る
1万円より価値が大きい
例えば
今日受け取った1万円を銀行に預金すると、
利子率5%の時、1万500円になる。
1年後受け取る1万500円は、今日受け取ると
1万円の価値である。
=1年後の1万500円の現在割り引き価値は
1万円である。
1年後の1万円の現在割り引き価値
=
1万円
1+利子率
1年後に受け取る
受領時
1年後
2年後
3年後
N年後
割引現在価値
1
1+r
× 1万円=
1万円
1+r
1万円
1万円
=
×
1+r
(1+r)²
1+r
1万円
1万円
1
=
×
1+r (1+r)² (1+r)³
1万円
=
(1+r)ⁿ
1
家計のクロスセクション・データに
対する説明
平均所得に等しい所得階層
P
平均所得はゼロ Y  Y
平均所得より高い所得階層
T
Y  0 の結果その所得階層に入っている人
T
の方が、Y  0 の結果その所得階層に
入ってくる人数よりも多い(図を見よ)。
∵ 母集団が正規分布しているため。
Yi  0
T
Yi  0
T
低所得
平均所得
高所得
母集団の人数分布
平均所得より高い所得階層において、
T
T
Yi  0 の人数の方が、 Yi  0 の人数より多い。
平均所得より低い所得階層
Yi  0 の結果その所得階層に入っている
T
人数は、Yi  0 の結果その所得階層に
入っている人数より多い。
T
母集団の平均所得より
高い階層では、 Yi T  0
低い階層では、 Yi T  0
クロスセクションの消費関数
Ci
 C Pi
Ci
 C Pi
Yi
YPi
負の変動所得
YPi
Yi
正の変動所得
階層別
所得
消費は常に、どの所得階層においても、
恒常所得に依存する。
有配偶継続世帯
固定効果法および変動効果法においても、
月々の世帯収入は消費に有意義に影響を
与えていない。
一時的な所得の低下は消費支出を減らさ
ないが、これが恒常化すると消費支出は減少
する。
他に、子供の就学および住宅ローン残高が、
消費支出に対して有意な説明変数。
未婚女性の消費支出
その月の収入が有意であるが、過去3年間の
移動平均収入は有意な係数ではない。
恒常所得仮説は不成立
親の年間収入、親同居ダミー、無職ダミー、
専門・管理職ダミー、技能職ダミーは有意。
(マイナス)
預貯金残高が多い時、親と同居している時、
消費支出は少なくなる。
t検定
回帰分析において、回帰係数の優位性を検
定すること。次の手順を踏む。
(1) 回帰係数の t値を求める。
t値=回帰係数/標準偏差
(2) この t値と t表の値を比較する。
(3) |t値|の方が高ければ、その係数の信頼性
が高いことを意味する。逆の場合は、信頼
性が低い。(およそ2以上)
恒常所得仮説の問題点
① 消費者が将来所得を正確に予測できるの
か?
② 実証結果によれば、恒常所得仮説が予測
するほど、現在消費に対して将来所得は
影響を持たない。
借り入れ制約の存在
③ 消費の平準化仮説は正しいのか?
短期の消費関数
今
年
の
消
費
ケインズ型
現実の消費
関数
ライフ・サイクル型
Y0
Y1
今年の可処分所得