アリストテレスを救え 16世紀のスコラ学とスカリゲルの改 革 坂本邦暢 ユリウス・[カエサル・]スカリゲルや他のアリストテ レス主義者…は、霊魂が自らの身体を作るのだと 信じている。これについて私は、「その説は私にとっ て必要でないしそれだけでは十分でもない」と言う ことができるのだと信じている。それは、予先形成 と無限の有機化の考え方とがあるからだ。(ライプ ニッツ、1705年) 霊魂が自分の身体を作る • 有機体の形成という問題の枠組み • スカリゲルの答えが持った意味 • なぜ「アリストテレスを救え」な のか アリストテレス 家のイメージ (形相) 建築家 材木 家 有機体のイメー ジ(形相) 種子 種子 有機体 生物の種子は技術によって作る者の するのと同様の仕方で、その生物を作 るからである。すなわち、種子もそれ から生まれる生物の形相を可能的に 持っているからである。 アリストテレス 家のイメージ (形相) 建築家 材木 家 有機体のイメー ジ(形相) 種子 種子 有機体 知性なき秩序 すべてのものの精液の中には、精液に生殖力を与 えるもの(いわゆる「熱いもの」)が内在している。こ のものは…精液や泡状のものの中に取り込められ た気息と、気息の中に含まれている、星界の元素 [エーテル]に相当するものである。 あらゆる〔空気〕には生命的〔霊魂的〕な熱がある。 そのためすべてのものはある意味で霊魂に満ちて いる。 天のエーテル 種子 有機体 ユリウス・カエサル スカリゲル • • • • • 1484–1558 パドヴァ大学 医師 アリストテレス主義者 代表作『演習』1557 年 スカリゲルの発生論 • 天の関与の否定 • フェルネル批判(霊魂の天界起源を否 定) アリストテレスの不朽の見解がある。種子の なかに霊魂があり、この霊魂が自らのために 身体をつくるのだ。彼が『形而上学』で言うよ うに、「種子というのは職人のようなもの」であ る。職人は自分がつくるものの形相を自らの 能力のうちに持っている。彼はその形相をそ とから受け取ったのではなくて、自分のものと して持っているのだ。 スカリゲルの発生論 • 天の関与の否定 • フェルネル批判(霊魂の天界起源を否 定) • 霊魂が身体を作る • 道具使用の否定(「霊魂は自分の家の 建築家」) • 霊魂は同種間で伝達 • 霊魂は自律的な建築家 霊魂は第五精髄[=天的]である。なぜなら霊魂が質料の 現実態であり、その質料というのが四元素にほかならない 以上、霊魂は第五精髄でなければならないから。[中略]あ らゆる事物は四元素とはまったく異なる第五精髄を持つ。 ここから霊魂が四元素からなるとみなす議論が否定される。 なぜなら霊魂はいかなる元素もなしとげられないようなこと をなしとげるから。 霊魂は四元素に還元不能 なぜか 複雑な活動を行うから (例:有機体の形成) 世俗的アリストテレス主義 • 神学部がないイタリアの大学 • 自然主義的アリストテレス解釈 • 霊魂の四元素への還元 アリストテレスはこの天に由来する熱があらゆるところに行 き渡っているという。この力は自然によって混合された物 体と適切に結合するとき霊魂と呼ばれる。ここからアリスト テレスは『動物発生論』第二巻での次のような言葉を用い てすべてのものは霊魂に満ちていると述べた。「あらゆる 〔空気〕には生命的〔霊魂的〕な熱がある。そのためすべて のものはある意味で霊魂に満ちている」。 ジロラモ・カ ルダーノ スカリゲルの反発 • 還元主義は宗教的に危険 • 1513年 公会議(霊魂の不死性の証 明を要請) • アリストテレスを救う 元素に還元できない自律的霊魂 霊魂は動物のかかと、歯、つのを形づくって 命を守る。霊魂はそれらの部位を意識的に理 解してはいないが、それらの使い方は知って いる。霊魂をつくった神は霊魂に一定の指示 を備えさせ、その指示によって霊魂と身体と の結合は保たれるようにした。その保持に霊 魂以外のいかなる作用者も必要ではない。 世俗的アリストテ レス主義 スカリゲル 反発 ・霊魂の物質への還元不 能性 ・「霊魂が自らの身体を作 る」 ・天の関与の否定 弾圧 教会 理解不能な霊魂 理解可能な世界 ・世俗的アリストテレス主義 ・「スキャンダラスな神の概念」
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