主題別リポジトリと機関リポジトリ ー海外の事例を中心にー 常磐大学人間科学部 栗山 正光 教育系サブジェクトリポジトリシンポジウム 2008年12月18日(木) @東京学芸大学 リポジトリとは? • re・pos・i・tor・y [名] 1 容器;集積所, 置き場, 貯蔵室, 収納庫;((主に 英))倉庫 ・a repository for merchandise 商品置き場. 2 ((形式またはおどけて))(天然資源・知識・情報 の)宝庫 ・a repository of knowledge 知識の宝庫. 3 埋葬所, 納骨堂. 4 (秘密などを)打ち明けられる人 『プログレッシブ英和中辞典』(Yahoo!辞書)より 主題別リポジトリ Subject Repository • 物理学などの分野では、以前から研究者間 でプレプリント交換の習慣があった • コンピュータ・ネットワークの発展に伴い電子 化へ • ArXiv:インターネット上の学術論文アーカイ ブの先駆け (1991年) • 以後、さまざまな分野のアーカイブが開設さ れる 機関リポジトリ Institutional Repository (IR) • 大学など学術機関が、自機関の研究成果を 収集・保存し、インターネット上で公開する アーカイブ • 主に大学図書館が設置・運用 • 主題別リポジトリと相補(?)/対立(?)関係 – 主題別リポジトリが存在しない分野の論文も収 録できる リポジトリ登録簿 • 世界中のリポジトリが検索できる • Registry of Open Access Repositories (ROAR) – 英サウサンプトン大学が運営 • Directory of Open Access Repositories (OpenDOAR) – 英ノッチンガム大学が運営 – 主題による検索が可能(完璧なものではない) • それぞれ約1,200のリポジトリが登録 オープン・アクセス Open Access (OA) • 学術論文(査読を経たもの)にインターネッ ト上で無料でアクセスできること • 発端(の一つ):1994年、 Stevan Harnad、 Paul Ginspargらが論文原稿をインターネッ ト上で無料公開すべきという議論を展開 – cf. Scholarly Journals at the Crossroads: A Subversive Proposal for Electronic Publishing • 三つの重要な会議を経て運動形成 – Budapest, Bethesda, Berlin なぜOAか? • Publish or perish – 研究者は研究成果の認知が評価につながる • 学術論文で原稿料や印税を得ることはない – なるべく多くの人に見てもらうことが重要 – 文学作品、教科書、解説書などは話が別 • 雑誌の価格高騰が多くの研究者のアクセス を阻害 • インターネットにより誰でも簡単に情報を受 発信できる状況 OAへの二つの道 • セルフ・アーカイビング(グリーンの道) – 著者が論文原稿最終版を機関リポジトリ等に登 録し、無料公開すること – 90%以上の学術雑誌がセルフ・アーカイビング に青(グリーン)信号を出している cf. http://romeo.eprints.org/stats.php • オープン・アクセス誌(ゴールドの道) – 読者から購読料を取らず、著者または助成団 体が費用を支払う – Directory of Open Access Journals OAとリポジトリ • Harnadは機関リポジトリへのセルフ・アーカイ ブ義務付けがOAへの近道と主張 – 主題別にすべての分野のリポジトリを構築するの は困難 – 一方、研究者は必ずどこかの研究機関に所属 – 主題別リポジトリは、機関リポジトリからデータを 収集することができる :→OAI-PMH – 研究者は自発的にはセルフ・アーカイブしない • 議論が続いている 主題別リポジトリの例 • • • • • • • • • arXiv.org(物理学など) Cogprints(認知科学) RePEc(経済学) SSRN eLibrary (社会科学) ERIC (教育学) ARRT Space (教育学) PubMed Central (医学、生命科学) Bioline International (生命科学) E-LIS (図書館情報学) arXiv.org • 1991年Paul Ginspargが創設 • 当初、ロスアラモス国立研究所にサーバを置 き、LANLプレプリント・アーカイブと称した (xxx.lanl.gov) • 最初は物理学のプレプリントをアーカイブ、後 に数学、コンピュータ・サイエンス、量的生物 学、統計学が加わる • 現在、コーネル大学図書館が運営し、日本に もミラーサーバ(京大基礎物理学研究所) Cogprints • 1997年、英サウサンプトン大学でStevan Harnadが創設 – cogprints.ecs.soton.ac.uk→cogprints.org • 認知科学にかかわる論文を集めた学問横断 的な電子アーカイブ • 心理学、神経科学、言語学、コンピュータ・サ イエンス(人工知能、ロボット工学など)、哲 学(心、言語、知識など)、生物学(動物行動 学、行動生態学など)、医学(精神医学、神 経学など)、人類学など RePEc • Research Papers in Economics • 1997年Thomas Krichelが創設 • 前身は1993年創設の Working Papers in Economics (WoPEc) • 63カ国のボランティアによる運営 • 諸機関にサーバを置く分散型アーカイブ • 商業出版社や米経済学会のデータベース EconLitとも協調 SSRN eLibrary • Social Science Research Network (SSRN) は1994年、Wayne Marr と Michael Jensen が創設 • 会計学、経済学、財政学などのサブネット ワークに分かれている • eLibraryは21万件の抄録データベースと17 万件の本文データベースから成り、契約出版 社の有料データベースとも接続 ERIC • Education Resources Information Center • 米教育省の教育科学研究所(IES)がスポン サー、Computer Sciences Corporation (CSC) が運営請負 • かつては抄録索引誌CIJE、RIEおよび原文 マイクロフィッシュで教育情報を提供 – 文献データベースはDialogなどの業者が介在 →インターネットで無料公開 • 2007年、マイクロフィッシュのデジタル化発表 ARRT Space • 教師のための研究情報資源へのアクセス・ スペース (Access to Research Resources for Teachers Space) • 北アイルランド教職協議会(General Teaching Council for Northern Ireland)が開設 • 教育政策や実践に関するデータベース構築 により、地域の教育研究コミュニティの交流 を促進 • 世界中の教師に北アイルランドの教育に関 する学術文献を提供 PubMed Central (PMC) • 米国立衛生研究所(NIH)の国立医学図書館 (NLM)の国立バイオテクノロジー情報セン ター(NCBI)が開発・管理 • 生物医学・生命科学の無料デジタル・アーカ イブ • 世界最大の医学文献データベースPubMed とリンク • NIHの補助金を受けた研究の成果はここに 搭載が要求されている Bioline International • 発展途上国の生命科学系雑誌をまとめて オープン・アクセスで提供 • 南北の知識の格差解消が目標 • Bioline Toronto とブラジル Reference Center on Environmental Information の共同プロジェクト – トロント大学スカボロ校がインフラ提供 • Open Society Institute, UNESCOなどが資 金提供 E-LIS • • • • • • • E-prints in Library and Information Science 図書館情報学分野の文献8,650件を収録 2003年創設 スペイン文化省が後援、サーバはイタリア ユーザー登録さえすれば誰でも投稿できる 公開前にスタッフが2日でメタデータをチェック 論文の言語は自由(英語のキーワードと抄録 は必須) まとめ • リポジトリとは学術研究成果をインターネット 上で公開するアーカイブで、コンテンツを主 題別に収集しているものと機関別に収集し ているものがある • オープン・アクセス運動と密接な関わりがあ り、その活用方法について議論がある • さまざまな主題別リポジトリが存在し、活動 を続けている
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