産科医と助産師の役割 についての 基本的な考え方 -より良い妊産婦管理をめざして- 東京大学大学院 生殖発達加齢医学専攻産婦人科学講座 上 妻 志 郎 背 景 • 産科医の不足に対する対策としての助産所・ 院内助産所の整備 • いわゆる産科学的な周産期予後には表れな い問題に対する対応 • 産科医・助産師の役割を認識し、合理的な将 来構想を示す必要性 近年の妊産婦の傾向 初産婦の高年齢化 従来も高年齢出産はあったが、経産婦であることが多かった。 初産と経産の分娩ストレスの違い 異常妊娠・合併症妊娠の増加 合併症管理の進歩・不妊治療の発達・安全志向の上昇に伴う帝切増加 家族形態・役割の変化 母親・家族による教育・伝承の不在 過保護 妊産婦の医療依存性 自己発展・変革の欠如 情報氾濫 自己決定の尊重 無痛分娩 フリースタイル・水中出産 産後うつ、育児困難・虐待 古来より、“普通” に行われてきた ことが、実現でき にくくなっている。 人間に備わった 力の自然な発揮 が難しくなってい る。 母子関係とその周囲 周囲の関心 母体 母体 胎児 児 妊娠 出産 産科医 小児科医 助産師 授乳・育児 産科医・助産師の役割の基本 医師 看護師 産科医 助産師 診断・治療・予 防 産科医 周産期予後 健康の支援 (増進・維持・ 回復) Reproduction 助産師 母子の健康 妊娠・出産・育児における助産師ケアの重要性 基本的立場の違いによる分娩管理の違い 産科学 診断・治療・ 予防 助産学 健康の支援 (増進・維持・ 回復) 理想型分娩への追求 自然の生命力への信頼 異常予防のための医 学的介入 異常予防のためのケア 異常の確実な回避 産婦の医療依存 異常発生時の対応の限界 産婦の達成感 医療提供側の最近の傾向と危惧 (1)役割の不明確化 産科医の助産師化 – アンバランスなサービスの提供 – 仕事量増大 助産師の産科医化 – 安全性については未知 – 仕事量の問題(助産師ケア崩壊の可能性) (2)妊産婦の区別(リスク、希望)による分担 担当外妊婦に対するケア欠乏の可能性 時代の変化に応じた妊産婦管理の必要性 産科学 助産学 妊娠・出産・育児の生物学的意義の再検討 自己の役割の再認識 共通言語による相互理解(サイエンス) サイエンスに基づく妊産婦管理の統一的理解 日本におけるリプロダクションに関する 基本理念とそれに基づいた将来構想
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