第4回「人と環境にやさしい交通を めざす全国大会」in 東京 高速道路無料化と暫定税率廃止の 不合理性と代替案 (株)ライトレール 代表取締役社長 阿 部 等 http://www.LRT.co.jp 平成21年12月5日 はじめに • 民主党はマニフェストに記載された両施策 実施に向け検討 • 「人と環境にやさしい交通」の実現に対して 逆行 • 両施策の不合理性と代替案を整理 1 1.民主党のマニフェスト 2 (1) 高速道路無料化 • 原則無料化で地域経済を活性化 • 政策目的 – 流通コストを引下げて生活コストを引下げ – 消費地へ商品を運びやすくし地域経済活性化 – 高速道路の出入口を増設して渋滞などを軽減 • 具体策 – 割引率の順次拡大などの社会実験を実施して 影響を確認しながら高速道路を無料化 • 所要額1.3兆円程度 3 (2) 暫定税率廃止 • 目的を失った道路諸税の暫定税率廃止 • 政策目的 – 課税根拠を失った税を廃止し税制の信頼回復 – 2.5兆円減税で国民生活を守る、移動を車に依 存する地方の負担軽減 • 具体策 – ガソリン税等の暫定税率廃止して2.5兆円減税 – 将来、地球温暖化対策税(仮称)を創設、自動 車取得税は廃止し消費税との二重課税回避 • 所要額2.5兆円程度 4 2.高速道路1000円施策の結果 5 (1) 激しい道路渋滞 • 高速道路の渋滞 – GWは前年の216回から420回 – お盆期間は307回から482回 – 渋滞長も伸び、時間損失は計り知れない • インターチェンジ周辺一般道の渋滞 – 生活破壊も 6 (2) 環境負荷の増大 • 環境負荷の軽い鉄道・高速バス・航路から 自動車へ大量にシフト – 土休日の高速料金引下げに伴うCO2排出増 は204万t/年 – 貨物を含まず、高速道路の渋滞による排出増 も加味しておらず現実より低めの試算 – それですら、旅客・貨物合せた鉄道全体CO2 排出826万t/年の4分の1 7 (3) 公共交通機関の経営への影響 • 鉄道・高速バス・航路 – 利用者・売上げとも大幅に減り経営へ大打撃 • JR四国 – H19年度の260億円に対し21年度は▲32億円 – 18億円が景気悪化・新型インフルエンザ等 – 14億円が高速道路1000円施策 • フェリー会社 – 瀬戸内海を中心に大きな影響を受け倒産も 8 (4) 地域の足の衰退と財政負担 • バス会社の多く – 高速バスでの収益を地域の路線バスへ – 高速バスの経営悪化は地域の足の切捨て • それを避けるために自治体は財政支援 – 財政支援して航路を維持している自治体も 9 3.高速道路無料化 10 (1) マニフェストに盛込まれた経緯 • H15年のマニフェストから盛込み • 高速道路無料化の発案者 – 経済評論家の山崎養世氏 – 「日本列島快走論」と称して多数の著作・論文 – 高速道路無料化は行き詰った日本経済・社会 を再生へ導く 11 (2) 高速道路無料化で予測されること • 1000円施策の4項目がより激しく起きよう • 地域が活性化するとは言っても、 – 高速道路沿いが主体 – 自動車アクセスに向かない旧市街地や駅周辺 はむしろ寂れ公平性を欠く • 物流コストが下がるとは言っても、 – コストではなく自動車利用のコスト負担が減る – 自動車の非利用者から利用者へ所得移転 – 自動車利用を奨励することを意味 12 4.ガソリン税の暫定税率廃止 13 (1) 過去50年間の道路投資資金の流れ • S33~H19年度の高速等を除く道路投資 – 270兆円=国165兆円+地方105兆円 – 旧道路特定財源は155兆円、総投資の60%弱 – 残りは一般財源を投入 – 一般財源の投入比率は地方が高い • 自動車ユーザー – 便益の60%弱のみ費用負担 • “暫定的に”税率を高く=事実に反する – 50年間、自動車関係諸税を不合理に低く抑え、 国を挙げて自動車利用を奨励 14 (2) 暫定税率廃止で予測されること • 高速道路無料化と同様の弊害を助長 – 長距離ばかりでなく短距離の移動にまで影響 – 地域の公共交通を疲弊さす • 山崎氏は、高速道路無料化を賄う財源とし て道路特定財源の充当を提案 – 両施策を同時に実施することは自己矛盾 15 5.両施策に代わる代替案 16 (1) 道路利用の受益者負担 • 社会の効率的資源配分の実現には、 – 受益と負担を一致させ需要と供給を適正化 • 道路特定財源制度 – ムダな道路作りの諸悪の根源? – 入りと出を適切に司れば、本来は有効な制度 • 両施策は実施せず – 一般財源の投入をやめて受益と負担を一致 – 税金と高速料金で集められる金額(=市場の サイン)を道路投資の上限に – ムダな道路作りを止める 17 (2) 交通機関間の役割分担の調整 • 道路財源の一般財源化と高速道路無料化 – 道路投資の判断と交通機関間の役割分担を 政治・行政に任せる – 政治家と官僚は全知全能でなく理想実現せず • 自動車ユーザーは受益に応じた費用負担 – 異交通機関に公平に競わせ望ましい分担 • 市場機構のみでなく政府の出番も – 都市から所得移転し地方の重い負担を軽減 – 費用負担を適正化すれば自動車利用は減り 大きな影響を受ける関連産業をケア 18 (3) 社会秩序維持と高速道路有効活用 • 税金による民業圧迫 – フェリー会社が破綻し多くの労働者が失職 – 自由主義競争社会の根幹を揺るがす事態 • 公平な競争環境で敗れたなら、 – 市場から退場してもらうのが社会の発展 • 高速道路1000円施策での敗者は犠牲者 • 両施策は実施せず、 – 犠牲者の増大、社会秩序の崩壊、高速道路の 機能喪失、環境負荷の増大、地域交通の衰退 を防ぐべき 19 おわりに • 多くの国民 – 自民党と民主党のバラマキ合戦に辟易 – 過剰サービスや見かけの低負担でなく、持続 可能な仕組みを求めている • 本稿は民主党政権へのエール – 高速道路1000円施策は、市場機構の活用放 棄が社会へ弊害をもたらすことを充分に証明 • これを機に、 – 道路利用の費用負担と交通機関間の役割分 担の調整に関する合理的な施策実施を切望 20
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