プレゼンテーションを行う際の心構えと技術 2007/08/24 篠田太郎 プレゼンテーション プレゼンテーションとは、研究発表に特化してい るように思えるかもしれないが、相手に 「プレゼントする」 という意味では、研究発表に限らない。 「何を」、「どのように」 プレゼントするかを予め考 えておかなければならない。 今日のコンテンツは「どのように」の部分。 「何を」の部分については各自で作っていかなけ ればならない。 プレゼンテーションの機会 研究発表 研究室内セミナーでの発表 学会、Workshop での発表 修士論文、博士論文の発表 就職活動における面接試験 仕事における企画の説明や成果報告 結婚式などにおけるスピーチ プレゼンテーションの大切さ いくら良い仕事をしても、仕事の内容が相手に伝 わらなければ、その価値は半減してしまう。 プレゼンテーションとは、自分の仕事の成果を他 人に伝える手段である。 著作物(論文、レポート) 口頭発表(狭義のプレゼンテーション) コンテンツ(準備編) プレゼンテーションの基本設計 発表の目的 視聴者のレベルを設定する 発表のシナリオを作る プレゼンテーションの概要設計 イントロダクションの重要性 まとめの作り方 プレゼンテーションの詳細設計 細部シナリオ(図表)の表現方法 話のつなぎ方 コンテンツ(実践編) 実践 原稿を読んではならない 話し方のテクニック 質疑応答 質問対応について 他人の発表の聴き方 トレーニングの場になる 質問しようよ 自分自身のプレゼンテーションに生かす ポスター発表について おまけ プレゼンテーションの基本設計-1 発表の目的 自分の主張を視聴者に理解してもらう。 自分の主張・主張に至る思考過程を自分で理解してい なければならない。 自分の主張に至る思考過程を要約して話せる? 輪講などでは、「論文の著者」の主張を視聴 者に理解してもらう。 「論文の著者」の主張を発表者は理解していなければな らない。 自分の主張と「論文の著者」の主張は区別して発表する。 プレゼンテーションの基本設計-1 つまらない発表とは? つまらない(興味のもてない)発表とは、発表者 の思考過程を視聴者が追跡できなくなってしまう 発表である。 思考過程を追跡できなくなるとは? 何がおもしろいのかがわからない。 専門用語などが分からない。 論理の飛躍、すり替えが行われている。 つまらない発表の責任の大部分は発表者にあ る! プレゼンテーションの基本設計-1 おもしろい発表をするためには 視聴者に発表者の思考過程を理解してもらうために おもしろさを伝える。 研究の意義、将来への展望などを説明する。 同じ土俵の上に視聴者を上げる。 専門用語、研究分野の現状に関する説明はきちんと行う。 結論に至る過程をきちんと表現する。 主観的でない議論を進める。 聞き手が先読みできる発表をする。 先読みさせた上で、欲しい情報を与えるのが良い。 発表内容の練り込みが必要となる。 プレゼンテーションの基本設計-2 視聴者のレベルを設定する 視聴者に合わせて、研究の背景、目的、専門用語など の説明のレベルが変わる。 専門分野のシンポジウム、ワークショップなど 問題意識、専門用語が共通化されている場合には、省略 できる説明もある。 学会発表 研究室内の輪講 別分野の人を対象とした講演(例えば HyARC Seminar) 研究の背景、専門用語に対する丁寧な説明が必要となる。 視聴者の知識を過信しない(過度に期待しない)。 相手がたとえ大先生であっても… プレゼンテーションの基本設計-2 視聴者が神様 視聴者は発表者のことを考えて聴いてくれている 訳ではない。 発表者は視聴者の時間を使わせてもらっている、 発表する機会を与えてもらっているという意識が 必要。 その意味でも、与えられた発表時間はきちんと守 ること。 聴いて欲しいという情熱を表に出して、楽しそう に話そう。 プレゼンテーションの基本設計-3 発表のシナリオを作る シナリオの基本設計 研究の背景(動機) 研究の目的 研究手法 観測概要、実験条件、解析手法など 結果 考察とまとめ(主張) この構成はどのようなプレゼンテーションでもほ ぼ変わらない。 プレゼンテーションの基本設計-3 発表のシナリオを作る 自分の主張を理解してもらうためには、その思考 過程をきちんと表現するための「シナリオ」を作ら なければならない。 ここでの「シナリオ」とは、まとめで自分の主張を 展開するための戦略(布石をうつ)ことを指す。 プレゼンテーションの基本設計-3 具体的なシナリオとは? 主張すべき内容(主に「まとめ」で述べられる)は 「はじめに」に対応して決まる。 全ての図表は主張(まとめで言及する)のための 手がかりである。 うまい発表では図表からまとめに至るフロー チャートを描くことができる。 「まとめ」から発表で使った各図表がなぜ必要だった かをたどることができるだろうか? 専門用語などの解説をどこで行うかもよく考える。 プレゼンテーションの基本設計-3 参考になるお言葉 内田樹先生のブログ(http://blog.tatsuru.com/)より 「かゆいところに手が届くかどうか」という規準 学術論文というのは、要するに「問いを立て、作業仮説を示し、論証す る」というだけのものである。 「問いを立てる」というのは「かゆいところを示す」ということである。 「作業仮説」というのは「孫の手」である。 「論証する」というのは、「かゆいところを掻く」ということである。 よい論文というのは、「ほどよくかゆいところ」というものがたいへん実 感的に提示され、ついで「孫の手」の構造と機能について、簡潔にして 要を得た説明がある。しかるのちに、「ごりごり、さわさわ、くいくい」と 「かゆいところをかきまくる」論証作業が行われるわけである。 よい論文ではこのプロセスが過不足なく進行し、読み終えたときに身 体的な爽快感が残る。 プレゼンテーションの概要設計-1 「はじめに」の重要さ 視聴者の興味を惹くという意味で重要。 つかみ。 最低限、「研究の目的」については述べる。 本当は「研究の背景・意義」まで述べるべきである。 何がおもしろいのか? 何の役に立つのか? 何は分かっているのか? 何が分かっていなかったのか? プレゼンテーションの概要設計-2 まとめの作り方 まとめは結果を述べるところではなく、結果から 得られた自分の主張を述べるところ。 まとめで述べられていることを発表中の図を使ってき ちんと説明できているだろうか? まとめの内容は「はじめに」で述べられた「研究 の目的」に対応していなければならない。 プレゼンテーションの詳細設計-1 発表中の図表の位置付け 個々の図表はまとめに至る布石である。 シナリオに必要な図のみを発表時に使う。 必要なのは「きれいな図」ではなく、説明を行える図で ある。 小さすぎる図、細かすぎる図は出さない(作らな い)。 プレゼンテーションの詳細設計-1 図表の説明で気をつけること 図表の見方の説明 何を説明するための図か? 縦軸、横軸、単位系など。 図表から読み取れることに関する説明 グラフの傾向など。 描かれている内容を翻訳して、「この図から○○という ことが読み取れます」的に、図で説明する内容を簡単 に述べることができなければならない。 この図表の内容の説明が最終的なまとめにつながる。 プレゼンテーションの詳細設計-2 話のつなぎが重要 図表間の移動の時が、視聴者が最も迷子になり やすいとき。 なぜ、前の図表から次の図表につながるのかを きちんと述べる。 準備段階で繋ぎ方をきちんと考えておくべき。 プレゼンテーションの実践-1 原稿を読んではならない 原稿は作っても良いが、発表時に読んではいけ ない。 読む速度 > 理解する速度 各図表毎に言うべきことを箇条書きにまとめてお くと良い。 覚えるのは原稿の文章全体ではなく、言うべきこ とのリストで良い。 言うべき事の繋がりはアドリブで、忘れたらあきらめる。 プレゼンテーションの実践-2 話し方のテクニック スクリーンに向かって話さない。視聴者の顔を見 ながら話すと良い。 視聴者のうちの何人かに話し掛けるイメージで 話すと良い(アイコンタクト)。 そのためにも、説明時の言葉は短い文章が良い。 視聴者の反応を読み取れる分、緊張度は小さく なる。 友達と話す時には緊張しないでしょう。 質疑応答-1 質問対応について 質問の意図が分からなければ、分かるまで尋ねる のが良い。 質問者が自爆(勝手に納得or支離滅裂)してくれることも ある。 自分自身の答えを考える時間を稼げる。 中途半端に答えない。 質問の意図に外れた答えをすると、さらに突っ込まれる。 分からないことは恥ずかしいことではない。 自分が精一杯準備したと言える限りにおいては… 質疑応答-1 質問対応について 発表内容の一部をわざと不備にしておく その部分を質問してもらい、的確な答えを返すことが できると気持ちいい! 質疑応答時に予め用意しておいた図表を出すなどし て、自分の発表時間を拡大することができる。 発表時間が不足している時には、ある程度有効だが、 どの部分を不備にしておくかは慎重に考えるべき。 慣れてきてから実践したほうが良いでしょう。 質疑応答-1 質問対応について 質疑応答は「Defense」。 がっちり受け止める方法もあるが、かわす方法もある。 相手の質問を受け流すというのもDefenseの一つの技 術である。 相手にもよる。否定的なコメントなどをされた場合には、受け 流すのも良い。 ただし、ケースバイケース。いつも受け流していては、有効な 議論の芽を摘んでしまう可能性もあるので要注意。 プレゼンテーションの聴き方-1 他人の発表の聴き方 他人の発表を(ストーリー・シナリオを考えながら)き ちんと聴くことは、とても良い発表練習になる。 他人の発表時に、発表内容を先読みしながら聴く。 発表のシナリオを作る訓練ができる。 発表内容が先読みと合わない場合には、質問のチャン ス! プレゼンテーションの聴き方-2 質問しようよ! 発表者との議論を楽しめる。 ちゃんと発表を聴くことができる(眠くならないよ)。 発表者(他の視聴者)に自分を売り込む。 どんな質問をするかは大事。 緊張感をどのように克服するか? →慣れるしかない。 プレゼンテーションの聴き方-3 自分自身のプレゼンテーションに生かす 自分の発表内容を視聴者の視点から見直してみる。 普段から他人の発表に対して、先読みをする(質問をす る)癖を付けておく。 自分の発表内容を自分視点と視聴者視点で練る。 自分が発表する場合に、どのような質問が出てくるかを 予測することができる。 ポスター発表について いろいろな人と十分に議論できる。 ポスターの前で待ち、通りかかった人(興味を持ってくれそ うな人)に「説明しましょうか?」と声を掛ける。黙っていて はダメ! 新しい視聴者をうまく取り込む。既に説明を開始していて も、新しい視聴者の人に対してもアイコンタクトを行い、「あ なたに説明しています」という態度を示す。 一人の視聴者とだけ話さない。 いろいろな人に聴いてもらうためにも、説明は簡潔に。 おまけ 何よりも「聴いてくださいね」という姿勢が大事。 プレゼンテーションの際には誰でもあがってしまうもの。 あがってしまっても、頭の中が真っ白にならなければ良 しとする。 プレゼンテーションを成功させるためには、準備が8割。 決して「度胸、場数、アドリブ」でうまくなる訳ではない。 プレゼンテーションの直前になると、シナリオのチェック などは行えないので、準備の初期段階でやっておいた 方が良い。 お友達(質問をしてくれるサクラ)を作っておくと良い。 お友達に話しかけるイメージでプレゼンテーションを行うと、不 思議とあがらないもの。 へらへらと笑いながら発表しないこと。感じ悪い。 参考になるウェブページ 若手研究者のお経(東北大学・酒井先生のページ) http://hostgk3.biology.tohoku.ac.jp/sakai/ronbun/ronbun.html 竹中明夫さんのページ(学会発表の心得など) http://takenaka-akio.cool.ne.jp/index_01.html
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