07法とコンピュータ(第6回)法適用4_2

07法とコンピュータ(第5回)
法適用4
事例3bにおける原告のための
問題解決の法律構成文書
慶應義塾大学法学部
2007/5/22
吉野一
1
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
法律構成の論理構造
具体化の解釈ルール学生回答例の検討
法律構成文書の構造
法律構成文書学生回答例の検討
ルール群の論理構造
課題:事例問題3cの事実整理と問題解決の論理
構築
2
法的三段論法
(事例3bにおいて,依頼人=原告のための)



CISGの適用法ルール
大前提:法
原告のための適用法
小前提:事実

原告の立場の事実の整理

⇒

結論:法的判断

原告の要望
法
的
正
当
化
の
推
論
事例 3bの事実の記述
BはAに代金を支払う
義務がある
3
法的三段論法
(依頼人=原告のための)

大前提:法





法原則(体系化)
CISGの条文
CISGの判例・解釈(具体化1)
事例向けの解釈(具体化2)
小前提:事実

事件の出来事を記述する諸命題

⇒

結論:法的判断

目標文
CISGの適用法ルール
法
的
正
当
化
の
推
論
事例 3bの事実の記述
BはAに代金を支払う
義務がある
4
1 事例3bの事実の記述(超簡略版)


(1)3月28日ニューヨークの農業機械アンザイ社は日本商社バーナード
のハンブルク支店に対して手紙を発信した。その内容は、農業耕作機械
一式(トラクターとレーキからなる)の購入を検討しており、55,000より安
い特別価格を希望すると言うものであった。
(2) 4月1日、アンザイはバーナードのハンブルク手紙を発信した。手紙
の内容は、安西がバーナードに農業耕作機械一式をトラクターの代金は
5万ドルで提供し、アンザイはその機械をバーナードに5月10日までに
引き渡す、バーナードは代金をアンザイに5月20日までに支払う、機械
はアメリカの貨物船で運ぶ、というものであった。
(2)4月8日、その手紙はバーナードに届いた。
(3)4月9日、バーナードは安西に電話をし、申し込みは了承する、但し、
日本のコンテナ船でお願いする旨を伝えた。
(4)5月1日、安西は農業耕作機械をニューヨーク港において日本のコン
テナ船に引き渡した。
(5)その他:取引慣行はFOBである。日本コンテナ船の運賃は貨物船よ
り20パーセント高い。
5
法律構成メモの構造





目標
 [論証しようとする目標文を最初に挙げる。訴訟における請求趣旨に
当たる。]
事実
 [事実の要約を箇条書き簡明に述べる。資料番号を付す。]
適用法条
 [適用法条を挙げる。適用法決定に理由が必要な場合は理由も付
す。]
理由
 [目標文が事実への適用法条の当てはめにより導出されることを、そ
の論理が分かるように、示す。]
結論
 [最後に、目標文が証明されたことを述べる。目標文を結論として述
べる。]
6
理由の構造






目標を証明するための論証構造の大枠をトップルール
からサブルールへとルールを示しながら説明する。
②その際、ルールの要件部が証明されることを述べて
いく。
③サブルールの法律要件が事実の言明によって満たさ
れる場合はそのことを述べる。
④事実の表現と(サブ)ルールの要件部の表現との間に
間隔があり、直ちに事実によって満たされると言い難い
場合は、ルールの要件部の表現に関する具体化の解
釈を行う(サブルールのサブルールを定立する)。
⑤具体化された表現を事実が満たすことを述べる。
⑥証明された構造の大枠を述べる。
7
目標を論証するために適用される
トップ法ルールの発見1

目標:


「バーナードはアンザイに対して農業耕作機械の代金5万ドル
を支払わなければならない」
根拠:


法ルール (売買契約法原理(法的常識)、CISG53 )
買主は代金を支払わなければならない
←
売買契約が有効に成立する
要証明
売主アンザイ買主バーナード間の農業耕作機械の売買契約が有
効に成立した
8
目標を論証するために適用される
トップ法ルールの発見2

目標:


アンザイを売主バーナードを買主とする農業耕作機
械の売買契約が有効に成立した
根拠:

法ルール(CISG23)
契約が成立する
←
申込に対する承諾が効力を生じる

要証明
申込に対する承諾が効力を生じる
9
トップ法ルールの適用を成功させる
ための具体化の法ルールの発見1

目標:


申込に対する承諾が効力を生じる
根拠:

法ルール(CISG18(2))
申込に対する承諾が効力を生じる
←
同意の意思表示が申込者に到達した

要証明
同意の意思表示が申込者に到達した
10
トップ法ルールの適用を成功させる
ための具体化の法ルールの発見2

目標:


同意の意思表示が申込者に到達した
論点:
1.
2.
3.
4.

誰が申込者で誰が承諾者か、その前提として、
どの手紙、ファクスあるいは電話が申込であり、
どの手紙、ファクスあるいは電話が承諾であるか?
何時同意の意思表示が到達したと言えるか。
適用可能な法ルール:



申込であると判断するための法ルールは?
承諾であると判断するための法ルールは?
意思表示の到達を判断するための法ルールは?
11
具体化の法ルールの発見3
何が申込であるか判断するための法ルール

選択的目標:
1.
2.
3.
4.

バーナードのアンザイに対する3月28日付の手紙(資料4)が契約の申込である
アンザイのバーナードに対する4月1日付の手紙(資料5)が契約の申込である
バーナードのアンザイに対する4月9日付の電話(資料7)が契約の申込である
バーナードのアンザイに対する4月20日付のFAX(資料7)が契約の申込である
根拠:

法ルール(CISG14(1))
申込である
←
一又は複数の特定の者に向けられた契約締結の申入れである &
十分明確である &
承諾があった場合には拘束されるとの申込者の意思が示されている

要証明
一又は複数の特定の者に向けられた契約締結の申入れである
十分明確である
承諾があった場合には拘束されるとの申込者の意思が示されている

要考察

上記の選択的目標のどれが上記の法ルールの本件事実への適用を通じて証明
12
可能であるか?
課題1
CISG14(1)の適用を通じて本件のどの通知が申
込である証明可能であるか?
13
具体化の法ルールの発見4
「承諾効力発生」の例を考える

仮定


目標:


アンザイのバーナードに対する4月1日の手紙(資料5)が申込
である
バーナード同意の意思表示が申込者アンザイに到達した
論点:
1.
2.

何時同意の意思表示が到達したと言えるか。
どの手紙、ファクスあるいは電話あるいは行為が承諾であると
言えるか?
適用可能な法ルール:


承諾であると判断するための法ルールは?
意思表示の到達を判断するための法ルールは?
14
課題2
「承諾効力発生」の具体化ルールの発見


事例3bにおいて「4/9に承諾の効力が発生した」と
いう結論が出てくるためのルールを検討し発見せよ。
次図の赤線で囲まれた空欄を埋めなさい。(空欄を
埋めるべきルールは一つとは限らない。また18(2)の
適用以外を考えてもよい。その場合はその法ルー
ルも示すこと)。
提出方法:


授業中説明する。
締め切り

第5回講義末まで
15
発見されるべき具体化ルールは何か!
申込効力発生←申込到達15(1)
承諾効力発生←承諾到達18(2)
法
的
正
当
化
の
推
論
意思表示←承諾
創設
申込の通知が4/8に郵便受けに入る
4/9にBは電話で「承諾する」と言う
Case3b 出来事
4/9に承諾効力発生
16
課題3
事例3bにおける法律構成メモの作成

課題


用途


原告の代理人であると仮定して原告の要望を実現す
るための法律構成メモを作成する。
方針決定、意見書、訴状、準備書面等に役立つ。
効果

事例を客観的に整理し、その法的評価と、ある立場
からの目標の確定、その実現方法および論理を客観
的に示し、人を説得する能力の開発。
17
次回(以降)


法律構成メモの作成。
体系化の解釈。
18