第十八課 条件を表す従属節 ねらい:条件とその帰結を表す形式のト、 バ、タラ、ナラの条件節の異同。 キーワード: 条件節、条件文、前件、後件、論理式、 因果関係、譲歩条件節、契機関係。 1 第十八課 条件を表す従属節 ト、バ、タラ、ナラ [述語との接続] 1.条件を表すト、バ、タラ、ナラ 2. 譲歩条件を表すテモ 3.過去の出来事を表すトとタラ 2 タラ、バ、ト、ナラ [述語との接続] [~たら]:すべてタラ形 会ったら 会わなかったら 高かったら 高くなかったら 暇/彼 だったら 暇/彼 ではなかったら [~ば]:すべてバ形 会えば 会わなければ 高ければ 高くなければ 暇/彼 なら(ば) 暇/彼 でなければ 3 タラ、バ、ト、ナラ [述語との接続] [~と]:基本形/ナイ形- 会うと 高いと 会わないと 高くないと 暇/彼 だと 暇/彼 でないと [~なら]:普通形- 会う/会わない/会った/会わなかった なら 高い/高くない/高かった/高くなかった なら 暇/彼 なら 暇/彼 でない/だった/ではなかった なら 4 1.条件を表すト、バ、タラ、ナラ 条件節:ト、バ、タラ、ナラのついた従属節 条件文:条件節をもつ複文。PならばQ:P→Q 前件(P):条件節が表す出来事や事態 後件(Q):主節が表す出来事や事態 5 ト、バ、タラ、ナラの条件文を比べる ①春に{なると/なれば/なったら}、暖かくなる/桜が咲く。 (季節による自然変化) ②100と5を{足すと/足せば/足したら}105になる。 (恒常的な因果関係) ③このボタンを{押すと/押せば/押したら}おつりが出る。 (恒常的な因果関係) ④試験に{受かると/受かれば/受かったら}通知が来る。 (常識的な因果関係) ⑤窓を{開けると/開ければ/開けたら}風が入ってくる。 (常識的な因果関係) ⑥{安いと/安ければ/安かったら}よく売れる。 (常識的な因果関係) 6 条件文の構造 P→Q:ト、バ、タラのどれも可能。 時間的前後関係 ①から⑥の後件はすべて超時的なル形、 条件節は典型的な条件。 7 ト、バ、タラ、ナラの条件文を比べる ⑦その角を{曲がると/ *曲がれば/?曲がったら}銀行がある。 ⑧この道を{行くと/ *行けば/?行ったら}公園がある。 P:主体の移動。 何かの存在を確認します。 話し手の視点も移動しています。 8 ト、バ、タラ、ナラの条件文を比べる ⑨{ *寒いと/寒ければ/寒かったら}窓を閉めてください。 ⑩{ *読みたいと/読みたければ/読みたかったら}どうぞ。 ⑪{ *寒くなると/ *寒くなければ/寒くなったら}窓を閉め てください。 ⑫{ *読みたくなると/ *読みたくなれば/読みたくなったら }どうぞ。 ⑬太郎が{*来ると/ *来れば/来たら}出かけよう。 9 条件文の構造 Qが聞き手への依頼、助言、意思の場合、トは使 えない。 バは、Pが状態を表す場合には可。 変化、動きを表す場合には使えない。 タラは以上のどの場合にも可。 10 条件文の構造(ト、バ、タラ) ①ト:因果関係P→Q。 移動による視点の変化はあります。ex:地図の説明。 →Pという条件があれば、いつも/必ず/当然Qが起きます。 ②バ:因果関係P→Q。 移動による視点の変化はありません。 Pが状態を表していれば、Qは話し手の意図、聞き手への働きかけ。 (意志や感情はあまり含まれない) →Pという条件がなければ、Qは起こりません。 ③タラ:制約が少ないです。 時間的前後関係:PはQより前に起こきます。「タ」ラのタは原因。 →すべてに起こったこと、または必ず起こると分かっています。11 ト、バ、タラと、ナラの条件文を比べる ⑭{練習すると/練習すれば/練習したら/*練習するなら} 上達する。(時間的な前後関係) ⑮雨が{やむと/やめば/やんだら/*やむなら}試合が始ま る。(時間的な前後関係) ⑯雨が{*降ると/*降れば/*降ったら/降るなら}傘を持っ ていく。(発話時の決意) ⑰太郎が{*来ると/*来れば/*来たら/来るなら}私は行か ない。(発話時の決意) ⑱明日{*来ると/*来れば/*来たら/来るなら}、その前に 電話をしてください。(期待している時点) 12 条件文の構造 ⑯⑰のQは話し手の発話時の決意。 ⑯では、Pの未定の時点で、Qの可能性をとりたて決断します。 ⑰では、決意を表明します。 PとQの主語が異なります。 Qには話し手の意志、命令、薦めが現れます。 ⑱は、電話連絡はPの事態が実現していなくてはなり ません。 「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」 →「乗るなら、その前に飲んではいけない」 13 条件文の構造 ナラ:提題の機能があります。 「花見なら上野公園がいい」 「花見をするなら上野公園がいい」 「太郎なら図書館にいるよ」 「太郎に会いたいなら図書館にいるよ」 話し手は、何らかの事態をとりたて、仮に実現されます。 →もしPが起こると仮定すれば、Qが起こるでしょう。 判断、意志をQで述べます。 Pを前提として話し手の意思を表明します。 ※タラ条件文が学びやすいです。(制約が少ない) 14 2. 譲歩条件を表すテモ 譲歩文:条件文には逆接的なもの。 「PなのにQ」→P&~Q。「~」は否定。 譲歩:仮定上の逆接 その条件は譲歩条件。 15 テモの条件文 ⑲たとえみんなに反対されても留学したい。 テモ節は譲歩条件。 テ形に添加型のとりたて助詞のモがついた形式。 常識的な因果と矛盾する関係。 →Pが起こっても、Qも起こりません。 矛盾を強調する「たとえ、万が一」と共起します。 16 条件文の構造 「疑問詞+~テモ」 「花子は、だれに会っても挨拶しない」 「何をやってもうまくいかない」 「いつ行っても太郎は留守だ」 「花子は、だれに会っても挨拶しない」 花子が会った人の集合の中に、花子が挨拶をした人が存在しません。 →テモのモが添加型とりたて助詞のモであることに よります。 (誇張表現) 17 3.過去の出来事を表すトとタラ 実際に起こった過去の事実関係。 ≒「~タトキ」 Pが実現したことがきっかけになってQが実現し ました。 「契機関係」 18 ト、タラの条件文の構造 20.{帰宅すると/帰宅したら}、友達が来ていた。 21.トンネルを{抜けると/抜けたら}、そこは雪国だった。 22.私語を{注意すると/注意したら}、その学生は教室を出て行 った。 主語が異なる場合、ト、タラは可。 P:出来事が完了した段階で発見したこと。 Q:気づいたことの内容。(発見に伴う驚き、意外性) 主語が同じ場合は、タラは容認度が下がります。 19 ト、タラの条件文の構造 23.田中は、{出社すると/??出社したら}予定をチェックした。 24.太郎は、{昼食を済ませると/??済ませたら}オフィスに戻っ た。 きっかけとは解釈しにくいため、タラが使いにく いです。 同一主体の連続した活動を表現できます。 自動化された慣習的動作の描写の解釈が自然。 20 ト、タラ、バの条件文の構造 トとタラ: 条件文の場合、過去の出来事の連鎖、契機関係。 バ節は日本語の典型的な条件節。 21 参考文献 近藤安月子、『日本語学入門』、第18課(P.101 ~105.) 現代日本語文法概説 (第3部 複文 の49.条件) http://www.geocities.jp/niwasaburoo/49jouken.html 星亨、『日本語文法(副助詞、形式名詞整理整 頓)』、第13課(P.14~18.) 22 第十八課 条件を表す従属節 終り M96E0213 高逸芸 23
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