7 生命とは何か

7 生命とは何か
7 生命とは何か
• 生命とは何か:生命の定義
• 生命の起原:生命は物質から生まれた
• 生命の歴史:ヒトへの進化は奇跡か
• 死とは何か:生命の人工合成
生命の定義
• “active maintenance of normal and
specific structure” 正常で特異的な構造
の積極的な維持 Haldane
• 生命は定義するより研究する方がやさしい
Pauling
生命とは何か
生命の特徴は
1 自己増殖
2 エネルギー代謝
•生化学・分子生物学の「定義」は
•増殖の主要部品は「核酸」
•代謝の主要部品は「タンパク質」
•生命は核酸をソフトウェア、タンパク質をハー
ドウェアとし、進化してきた化学機械
生命とは何か
生命は進化する情報機械である
ソフトウェア
役 割
ハードウェア
生命情報の 生命情報の
保存
処理
生 体 の 成 分 遺伝子
細胞・酵素
名
化学的な実体 核
酸 たんぱく質
(DNA/RNA)
生命の構成元素
細胞成分
遺伝子
膜、酵素
化学的実体
核酸
タンパク質
構成分
塩基、糖、リン アミノ酸
酸
C,H,O,N, C,H,O,N
P
構成元素
原始地球上の分
子
CH4、NH3、H2
CO2(CO)、N2、H2O
リン酸塩
生命の元素は宇宙に多い元素
• 元素はBig Bangのあと、30万年くらい経
過して温度が下がってから作られた
• 最初にできたのはほとんど水素だった
• 初期の星は水素だけで作られていた
• 星が一生を終わるとき爆発を起こし(超新
星爆発)炭素、酸素、窒素などが作られる
• 宇宙に多い元素は水素、(ヘリウム)、酸素、
炭素、窒素ーーーこの順は生命の元素の
順と同じ
宇宙・生体・海洋の元素
タンパク質を作る20アミノ酸は
どのようにして選ばれたのか?
これは未解決の謎
核酸の塩基はなぜ4種か?これ
も謎
生命の起原
これらの謎や生命の定義は生命が
どうのようにして始まったかを調べる
と分かるだろう
化学進化概念
化学進化を進めたエネルギー源
•
40Kなどの放射線
0.3 X1020cal/y
• 150nm以下の紫外線 0.08
• 火山などの熱
0.04
• 隕石衝突
0.05
• 雷
0.05
Millerの実験
下のフラスコは
海、上は大気
圏を表す。放
電は雷の代わ
り、冷却管で
冷えて水滴、
すなわち雨は
海へ戻る
生命の部品は簡単に作れる
• 化学進化実験ではアミノ酸、糖、核酸塩基,酢
酸等の有機酸、ポルフィリンなど生命の基本
部品となる有機物が原始地球や宇宙で合成
されることを証明した
• この実験の結果は、さらに隕石や彗星にもこ
れらの物質が存在することで裏付けられた
• 生命は物質から生まれた
生命の歴史
化石を辿る研究
ー原始生命はいつ誕生したかー
生命はどうのような進化を遂げて
きたか
放射性元素は時計である
14Cによる年代決定
他の時計
40K
87Rb
13.5億年
480億年
235U
7億年
138U
44.7億年
微化石;最古の化石?
• 化石の証拠は35億年前までたどること
が出来る?
• 生体分子の化石=化学化石は40億年
前に生命が生まれていた可能性を示し
ている
地球生命史
• 物質から生
命までの化
学進化の
時間は、原
始細胞から
ヒトへの進
化の時間
の1/12にも
当たらない
酸素の発生と生物進化
• 原始地球には酸素がほとんどなかった
• 30-35億年前からシアノバクテリアが光合
成を始め酸素が放出された
• 酸素は毒物で、当時多くの生物が絶滅し
た
• 一部の細菌は酸素のないところへ逃げ込
んだ:嫌気性生物
• 一部は酸素毒性を解除する酵素を身につ
け(カタラーゼなど)
• 逆に酸素を利用し始めた:酸素呼吸、好気
性生物
酸素の発生は生物を上陸させた
オゾン層の成立により陸上が安全なすみか
となった
3O2→2O3
恐竜の絶滅
中生代は恐竜の時代、2億年前から6500万
年前
10km径の大隕石:メキシコのユカタン半島
に落下
その後に哺乳類、被子植物の時代がきた
全球凍結=Snowball Earth
• 2回あった 27億年前 と 13億年前
• 地球全体が凍ったー海も凍り、陸の上は
1000メートルもの氷があった
• 大気中の二酸化炭素、メタンの量の変動が
引き起こした
全球凍結後に進化が爆発して
いる
• 最初の全球凍結後に大気中に酸素がたまり
始め、真核生物が誕生した
• 2回目の全球凍結の後で大型の生命=多細
胞生命が生まれた
• なぞー生命はどのようにして生き残ったのか
生命史は宇宙が作った
• 過去にも何回もの絶滅があった
• 2億3千万年前の絶滅では、当時の生物の9
0%までが消えた
• 地球上では「幸運」が続いたのかも知れない
死とは何か:死生学
• 哲学、倫理学、宗教学、社会学などの人文科
学と法学、教育学など社会科学と医学・看護
学、生命科学など自然科学にまたがる学際
領域
• 「死」について、「生」について、そして「死」と
「生」との関わりに関する学問
• 具体的には、医療意思決定、精神医療と刑
事責任の問題、優生思想、葬送文化、看取り
をめぐる生命倫理、多様な宗教における死生
観の意義、動物の倫理などが課題
生物の寿命
• 細菌には基本的に寿命はない→生命は(環境条件
さえよければ)永続する
• 屋久杉に寿命はあるか?
• 哺乳類ではおおよそからだの大きさに相関している
• 多細胞生物では、細胞が分業し、生殖細胞は永続
している。死は生殖細胞を支えるための「装置」だけ
の問題である
• 生命のとって、死はないのでは?
生と死の境界は何か
• 一見、死は誰にも判定できるように思えるが、
難しい。細胞も組織も培養できる
• たとえば哺乳類の死体は死後すぐなら生殖
能は残っている、体もほとんど同じ状態で
残っている、代謝能は次第に停止に向かう
• もし代謝能の停止が「死」であれば、物理化
学的には状態の変化であり、これは人工的
に戻せる
下等生物では生と死の間は自
由に行き来できる
ウィルスは物質として保存した後再
生できる
微生物は凍結乾燥して保存し、生き
返らせることが出来る(スルメはイカ
に戻せる)
ウィルスは合成も出来る
最近、細菌の人工合成にも成功して
いる
自然界では生と死の間を行き来している?
• 自然界に存在する細菌の99%は「難培養
性」
• 一部は条件次第で「蘇生」できる状態である
らしい
• 研究室では、土壌細菌の蘇生技術も出来つ
つある
再生医学は死をなくせるのではな
いか
哺乳類のような高等生物でも脳を含めすべての
臓器組織は間もなく「再生」出来る技術が完成
する→死はなくなるのでないか(技術として使用
するかどうか、テクノロジーアセスメントの問題
は別である)
生命の合成:人工生命
1935 W.M.Stanley タバコモザイクウィルス
の結晶化に成功
• 1955 H.Frankel-Conrat ウィルスの再校
正に成功 物質から生きたウィルスを作っ
た
生命合成ーゲノムの化学合成
• 2002 人工ウィルスの合成に成功(ポリオ)
• 2010 J.Craig Venter 細菌の人工合成に成功
細菌Aのゲノムを化学合成し、これを細菌Bの細
胞内に導入し、細菌Aに変換する
合成したゲノムには名前や格言を書き込んで
あったという
What I cannot build, I cannot understand