論文紹介 ポップス系ドラム演奏の打点時刻および音量と グルーヴ感の関連について 2009-06-03 (改訂 2010-09-16) 高木 翔平 1 目次 1.概要 2.製作者 3.グルーヴとは 4.実験の方法 5.打点(タイトとルーズ) 6.ゴーストノート 7.結論 8.参考 2 概要 もっとも身近な音楽ジャンルの1つであるポップス系音 楽における、リズムのグルーヴ感(groove)に注目。 グルーヴ感は何に起因するか。 グルーヴ感を分析し、これらをモデル化することで、ドラ ム演奏の奏法からジャンルを振り分けることが可能にな るのではないか。 著名なドラム奏者のグルーヴ感を模倣するための指標 に。 3 製作者 • 奥平啓太(関西学院大学大学院理工学研究科) • 平田圭二(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) • 片寄晴弘(関西学院大学理工学部) 4 グルーヴとは リズムに感じる生き生きとした表情のこと。 「ノリ」ともよばれる、人間的なリズム感。 音量や打点時刻を、故意的に変化させることで生ま れる。 「ズレ」が大きな要因になってくるので、機械では表 現が難しい。 5 実験の方法 プロのドラム奏者にクリック音を聞いてもらいながら、 それに合わせて8ビート(ロック)と16ビート(フュージ ョン)を演奏してもらう。 その際に使用するのはベースドラム、ハイハットシン バル、スネアドラムの3種類のみ。 打点時刻を調べる際には「タイト」、「ルーズ」を意識 してもらう。 音量との関連調査では「フォルテ」を意識してもらう。 6 打点時刻 「タイト」を意識した場合 クリック音に対するズレは、前後16分音符に対して5%程 度。 「ルーズ」を意識した場合 クリック音に対するズレは、前後16分音符に対して20% 以上にも(ハイハット)。ベースドラムはほとんどズレがな い。 聴覚的にも、「タイト」な場合には全体的にまとまって感じ、 「ルーズ」な場合は揺らいでいるように感じる。 7 音量 すべて「フォルテ」で演奏してもらう。 8ビートの場合、1拍目が常に全体の最大音量の 70%以上になる。 2拍目は60%以下になる傾向。 16ビートの場合、1拍目が50%前後で、2~4拍 目は20%程度に。 しかし、この調査ではグルーヴ感の違いは 感じられなかった。 8 ゴーストノート 「おばけの音」と言うとおり、聞こえるか聞こえないか 程度の大きさでスネアドラムを叩く音。 リズムに躍動感を与える役割を持ち、「ドラムっぽく」 聞こえるようになる。 基本 ゴーストノート (音は高木翔平作 2009) 9 結論 「タイト」と「ルーズ」を使い分けることによって、ドラム 奏者は楽曲の印象を変えている。 ベースドラムでドラムはリズムを作っている。 グルーヴ感はリズムのズレに起因する。 音量自体はグルーヴ感にあまり関連性はないが、ゴ ーストノートによって生まれる音量の「差異」はグルー ヴ感を生成する上で重要。 10 参考 奥平啓太,平田圭二,片寄晴弘 「ポップス系ドラム演奏の打点 時刻及び音量とグルーヴ感の関連について」 情報処理学会 研究報告,2004-MUS-56 (4), 2004-08-02. 奥平啓太,平田圭二,片寄晴弘 「ポップス系ドラム演奏の打点 時刻及び音量とグルーヴ感の関連について(第2版)」 情報処 理学会研究報告,2005-MUS-59 (5), 2005-02-18. 渡辺哲朗,近山隆 「ドラム演奏のグルーヴ感の解析」 情報処 理学会,2006 -MUS-67 (6), 2006-10-27. 11
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