11/10のスライド

国際経済学
(3) 比較優位
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2014年11月10日
人を動かす

親から成績が上がったらお小遣いをあげると言わ
れたことないですか?

テストで良い点を取ったらディズニーランド

人々は皆利己的である.イチローは野球が好き

他の人々の行動を自分の利益に適うように変える
にはどうすればよいのか?

利己的な人々が活動する経済を円滑に動かすには
何に気をつければ良いか?
2014/11/10
国際経済学 3
2
インセンティブ

利己的な人々は利益や費用に反応する

インセンティブとは
報酬を与えて人々の行動を変化させる要因

人々に特定の行動を引き起こす原因

インセンティブを英語で incentive

インセンティブは日本語では誘因,動機付け

ディーラーのセールスマンは売り上げ報奨金を得
るために一生懸命働く
2014/11/10
国際経済学 3
3
一番大きな誘因は価格

目標売上げを達成した人へボーナス

タイ国政府観光庁インセンティブ・ツアー

自由社会では偉い人が命令しても人は動かない

行動を変える適切なインセンティブを与える必要

人々は価格によって経済行動を大いに変える

ガソリン価格の上昇 → 電車を使う

MP3プレイヤーの価格の下落 → CD購入を控える

大卒者の所得が高い → 大学へ進学
2014/11/10
国際経済学 3
4
競争は優れた者を発見する

運動会の徒競走のクラス代表を決めるには?

実際に駆けっこの競争で勝った者を選ぶ

ハイエク『市場・知識・自由』 効率企業が存在,
しかし,このような費用の節約の可能性が達成されると
想定できるのは,競争を通してだけである.

公正で自由な競争があるからこそ日本は豊かで人々
は健康で豊かな生活できる

競争は利己的企業が消費者を獲得するために品質が
良く低価格の財を供給させる
2014/11/10
国際経済学 3
5
アルバイト代は自分のモノ

みなさんのアルバイト代を親が取ったら?

雇い主がアルバイト代を支払わなかったら?

自分の正当な報酬は自分のモノは当たり前か

自分の物は自分の物とする維持努力が必要

司法制度,警察,軍隊は人々の所有権を保障

所有権 は所有者が自分の好きなように財産を使
う権利とそれを売る権利

所有権が利益を保証することによって安心して
活動できる.結果,経済全体の利益は増進する
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国際経済学 3
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所有権の重要性,経済のメカニズム

国民の所有権を保障することが政府の重要な役割

国防と治安維持のみを持った国家を夜警国家

自分の物だから大事にする

公園を綺麗にする人は珍しい
まとめると
市場経済において利己的な個人が価格情報のインセ
ンティブに反応して自発的に取引を行っている.競争に
よって優れた者が選ばれる.得られた利益は政府が維
持する所有権によって確保される.その結果,社会の希
少な資源が有効に活用される

2014/11/10
国際経済学 3
7
市場の効率性

様々な個人と企業は個々に経済的意志決定

個別に意志決定をすることを分権的と言う

利己心に導かれて他人の事は構わない

市場において相互に競争する

顧客のために尽くす

結果,市場では効率的な状態が生まれる

競争によって経済全体の福祉が増進される
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国際経済学 3
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市場の効率性と政府の役割

アダム・スミスの「市場は効率的に機能する」は
大体正しい

政府が行政サービスを行っている例
国防,警察,司法,上下水道,道路,灯台,福祉

所有権の維持以外の政府の役割は何だろうか?

市場がうまく働かない(市場の失敗と言う)が起こ
った時に政府の存在の理由がある

公共財の供給が政府の主要な役割

豊かになればなるほど失う物は大きい
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国際経済学 3
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まさかのために

リスクを避けるために貯蓄や貯金
1.
死 -生命保険
2.
病気 ー 医療保険
3.
事故 ー 自動車保険
4.
火事 - 火災保険

株はギャンブルと同じという意見あり

お父さんが生命保険に契約
保険会社がお父さんが長生きする方に,
お父さんは自分が早死にする方に賭ける
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公的保険

政府は個人が負えない様々なリスクを負担
1.
年金
2.
医療保険
3.
介護保険
4.
失業保険

日本人の寿命の長さ世界一,長生きリスク

財政支出の中で社会保障費が一番大きい

日本人の一生と社会保障はどうなっている?
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国際経済学 3
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社会保障給付のイメージ
金額 (万円)
我々は様々な形で社会か
らのサポートを受けている
出産
関係,
児童
手当,
育児
休業
幼稚園,
小学校,
中学校,
高校,大
学補助金
誕生 子供
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老年
年金
介護
雇用保険
青年
医療
壮年
国際経済学 3
老年
年齢
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市場の失敗

市場取引に任せると上手くいかない時もある
市場の失敗 → 政府介入の理由
 政府の意思決定も重要な経済を混合経済
 政府の失敗
1. どんなときに市場がうまく働くか
2. どんなときに機能しないか
3. その時に適切な政府の施策は何か
 社会保障、国家としての一体感

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国際経済学 3
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交換の利益

国際間の交換を貿易
trade

何と何を交換すればよいのか?

単純な例で貿易は利益を生むことを示す

生産力が低くても交換の利益は必ず存在
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国際経済学 3
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交換が社会を豊かにする

交換が上手く行くことを例で考えよう

イチローと石川遼の二人しかいない経済

イチローはゴルフボールを持っている

石川遼は野球ボールを持っている

両者は互いのボールを交換するだろう

生産活動がなくても交換する事により両者の満
足度がアップする
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国際経済学 3
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交換が社会を豊かにする/2

各人は自分のボールに百円の満足を持っている

経済全体の満足度
100+100=200 (円)

しかし,各自のボールを交換することによって利
益が生まれる

イチローは野球がしたい石川遼はゴルフをしたい
ゴルフボール
野球ボール
イチローの価値
100 (円)
10000 (円)
石川遼の価値
10000 (円)
100(円)
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国際経済学 3
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交換が社会を豊かにする/3

イチローは野球のボールに一万円の満足

石川遼はゴルフボールに一万円の満足

両者は互いのボールを交換するだろう

そうすると,社会全体の満足度
10000+10000=20000 (円)

生産や努力がなくても交換するだけで社会全体
の満足は二百円から二万円に増加

多様性(ボールに対する満足度)が鍵

この状態はパレート効率的であると言う
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国際経済学 3
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パレート改善

これは効率的ではない
 イチローはゴルフボールを持っている
 石川遼は野球のボールを持っている

ボールを交換して両者の状態は改善した

これをパレート改善という

他の人に不利益を及ぼすことなしにある人の利
益を上げられるならば,その変化はパレート改
善と呼ぶ
2014/11/10
国際経済学 3
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パレート改善
遼の満足 (円)
点Aから点Bの移動は
パレート改善
B
イチローは野球のボール,
遼はゴルフボール
10000
点Aが非効率で
あることを意味
する
イチローはゴルフのボール,
遼は野球ボール
A
100
100
2014/11/10
10000
国際経済学 3
イチローの満足(円)
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重商主義

重商主義とは
一国が裕福になるには輸入より輸出を多くす
ることである

16世紀から18世紀欧米先進国で支配的な考え

輸出入の差額は主に金によって決済される

一国に金が増えれば増えるほど豊かになる

他国の犠牲で国を富ます考え方
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国際経済学 3
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絶対優位

アダム・スミスは重商主義に異を唱えた

貿易の制限は良くない

絶対優位に基づいて貿易することにより両国は豊
かになれる

ある国が他の国に比べてある財の生産を効率的に
行える時に,その国はその財の生産に絶対優位を
持つという
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国際経済学 3
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絶対優位の例

日本とアメリカは小麦と衣料のみを作っている

下の表はそれぞれの国で労働時間一単位あた
りの各財の生産量を表す
小麦(W)
衣料(C)
2014/11/10
アメリカ
6
1
国際経済学 3
日本
1
2
22
絶対優位の例2








日本は衣料(cloth)に優位性をもっている
アメリカは小麦(wheat)の生産が得意
そこで、日本は衣料を輸出して,アメリカから小
麦を輸入する
両国が利益を得る
例えば,6単位の小麦=6Wと6C(衣料)を交換
双方の利益を衣料の量で表すと
アメリカの利益:6C-1C=5C
日本の利益:12C(=6×2)-6C=6C
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国際経済学 3
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絶対優位の例3








アメリカはCを輸入してWを輸出
アメリカの輸入:6C
アメリカの輸出:6W=1C
アメリカの利益:6C-1C=5C
日本はWを輸出してCを輸入
日本の輸入:6W=12C
日本の輸出:6C
日本の利益:12C(=6×2)-6C=6C
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国際経済学 3
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絶対優位の問題点

この例より日本は衣料にだけを作り,米国は小
麦だけを作り貿易すればお互いに利益を得る

各国に絶対優位にある財があるとは限らない

絶対優位にない劣位にある財しかない国はどの
ように貿易をすればよいか

それを解き明かすのが比較優位

アダム・スミスの考えを受けてリカードが提唱
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国際経済学 3
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比較優位

ある財が他国と比べ相対的な費用が低い場合に
その国はその財に比較優位があるという

相対的な費用が低い財を輸出し,それが高い財を
輸入すればよい

貿易の利益は相対的な費用の大小で決まる

この相対的な費用は機会費用の概念に基づく
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国際経済学 3
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比較優位の例

日本と中国は今川焼きと杏仁豆腐のみを作ってい
るとします

その国でのその財の生産量一単位あたりの生産
費を表します
今川焼き
杏仁豆腐
2014/11/10
中国
10
10
国際経済学 3
日本
20
30
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比較優位の例/2

今川焼きも杏仁豆腐も中国の方が安く生産できます

つまり中国はすべての財に絶対優位にある

絶対優位を持っていない日本はどのように貿易を行
えば成功を収めることができるでしょうか?

その答えを提供する概念が比較優位です
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国際経済学 3
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比較優位の例/3

ここで杏仁豆腐の相対費用を比較してみましょう.

杏仁豆腐の費用は今川焼の費用の何倍か?

中国の杏仁豆腐の相対的な費用=10/10=1

中国の杏仁豆腐の生産費は今川焼きの生産費の1倍

日本の杏仁豆腐の相対的な費用=30/20=1.5

日本の杏仁豆腐の生産費は今川焼きの1.5倍
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国際経済学 3
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比較優位の例/4

中国の相対費用の方が低い
1<1.5

中国は杏仁豆腐の生産に比較優位を持つ

ある国のある財が他国と比べて相対的に安く作れる
場合,その国はその財に比較優位を持っていると言
います.

各々の国が比較優位にある財に特化して貿易するこ
とによって両国は利益を得る
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国際経済学 3
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比較優位の例/5

特化とはその財のみを作ることをさします

生産に必要な費用を負担できる金額の存在量
は各国で次のようになっている
金額
2014/11/10
中国
600
国際経済学 3
日本
1200
31
比較優位の例/6

各国で半分ずつのお金で今川焼きと杏仁豆腐
を作ったとします
今川焼き
杏仁豆腐
中国
30
30
日本
30
20
世界全体
60
50
600÷2=300 の金を中国は今川焼きに使える
300÷10=30単位の今川焼きを生産
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国際経済学 3
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比較優位の例/7

それぞれが比較優位にある財に特化したとしましょ
う
今川焼き
杏仁豆腐
2014/11/10
中国
0
60
国際経済学 3
日本
60
0
世界全体
60
60
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比較優位の例/8

このとき今川焼きの量は同じです

しかし,杏仁豆腐の量は10単位分増加

これが比較優位による特化の利益です

ここで両国が貿易を行います

日本が今川焼きを輸出し,中国から杏仁豆腐を輸
入することによって両国が利益を得ます

日本は工業製品を輸出し石油・鉱物燃料を輸入は,
比較優位で説明可能
2014/11/10
国際経済学 3
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復習

絶対優位とは他の国々に比べてほとんどの財を
より効率的に生産できることを意味

各国に絶対優位にある財があるとは限らない

ある財が他国と比べ相対的な費用が低い場合に
その国はその財に比較優位があると言う

各々の国が比較優位にある財に特化して貿易す
ることによって両国は利益を得る
2014/11/10
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