日本語版MS-PowerPoint

資源の空間的不均一性がプランクトン
群集の共存に与える影響:
格子モデルシミュレーションによる予測
○加藤聡史
河田雅圭
(東北大院・生命科
学)
栄養塩をめぐって競争する植物プ
ランクトンのモデルにおいて、
(1) 動物プランクトンの移動性は、
植物プランクトンの共存に影響を
与えるか?
(2) 湖における流路の違いは、植
物プランクトンの共存に影響を与え
るか?
0
1: 植物プランクトンの共存条件
2種の植物プランクトンの共存には、窒素(N)
とリン(P)をめぐる競争で、両方に強い種が存
在しないことが重要である。 (Tilman 1982)
共存可能
A種
Nに強い
B種
勝ち
Nに弱い
Pに弱い
勝ち
Pに強い
1
2: 植物プランクトンの共存条件
• 植物プランクトンの共存には、
湖の栄養塩供給バランスが
重要である
– 左図の例では、相対的なリン
供給量が増加したことでリンを
めぐる競争がなくなり、窒素の
競争に強いA種が系で優占的
になる
• 栄養塩の供給バランスが
偏っていると、植物プランクト
ンの共存は困難になる
絶滅
A種
勝
Nに強い ち
B種
Nに弱い
リンの競争
が無くなる
P供給大
2
3: 動物プランクトンは湖の栄養塩比率を
偏らせる
• エサに含まれる窒素/リン比率と捕食
者の成長に必要な窒素/リン比率が
異なる
• 動物プランクトンは成長に利用しな
い栄養塩を植物プランクトンが直接
利用できる形で排出する
↓
• 動物プランクトンは使わなかった方
の栄養塩を植物プランクトンに再供
給する(=窒素/リンのバランスが偏
る)
動
物
プ
ラ
ン
ク
ト
ン
の
窒
素
が
余
る
窒
素
を
排
出
環
境
中
の
窒
素
比
率
が
増
え
る
植
物
プ
ラ
ン
ク
ト
ン
の
窒
素
比
率
が
増
え
る
3
4: 従来の研究による予測と実際
• [2、3]の理由から、動物プランクトンの存在下では、植物プラン
クトンの共存が非常に困難になる (Andersen 1997)
→ しかし実際の湖では、動物プランクトン存在下で複数の植物プ
ランクトンが存在する
• このことは、湖の構成要素が空間的に不均一であることが原因
となっているのではないか?
– 系の空間的な構造は生物の群集動態に強い影響を与える(Tilman &
Kareiva 1997、他)
→ 湖のモデルでは、栄養塩とプランクトンの空間構造について考
慮する必要があるのではないか?
4
5: 研究目的
• 湖の空間構造について水平方向二次元のモデルを考え,
以下の2種類の仮定が植物プランクトンの共存にどのような
影響を与えるかについて調べた
• (モデル①) 生物の空間分布について考えたモデル
– 動物プランクトンがランダムに移動する
• (モデル②) 栄養塩の供給分布について考えたモデル
– 流れによって供給量に空間勾配ができる
– 窒素とリンで供給形態が異なる
5
6: モデル①
• [目的] 動物プランクトンの移動は
植物プランクトンの共存にどのような
影響を与えるだろうか?
• [モデル] 生物の空間分布が不均一
なモデルを考えた
• [モデルの仮定]
– 窒素とリンは空間的に均一に供
給される
– 栄養塩と植物プランクトンは濃度
に従って均等に拡散する(右図①)
– 動物プランクトンはランダムに移
動する(右図②)
①均等に拡散
②ランダムに移動
6
7: モデル①の結果
①生物のバイオマス時間変化
• 空間構造があると植物プランクト
ンは共存できる。
– 右図の例では空間構造を考えないとき
共存できなかった植物プランクトンが、
空間構造を考えることで共存できるよう
になった。
→ 空間なし:図①左/空間あり:図①右
• 窒素/リン比率が空間的に不均
一になった(160日目の例:図③)
→ 動物プランクトンのリサイクルの効果が
空間的に違うため
空間なし
バ
イ
オ
マ
ス
空間あり
赤緑:植物
青 :動物
バ
イ
オ
マ
ス
②バイオマス分布
③N/P比分布
• 優占する植物プランクトンが局所
的に異なった(160日目の例:図②)
→ 溶存窒素/リン比率が空間的に異なる
ため
縦軸バイオマス
赤青は植物
縦軸は窒素/リン比率
8: モデル②
• [目的] 栄養塩の供給形態の違いは植
物プランクトンの共存にどのような影響
を与えるだろうか?
• [モデル] 栄養塩の供給形態が異なる
モデルを考えた
• [モデルの仮定]
– 窒素は外部から流入で供給される
– リンは土壌から再分解で供給される
– 栄養塩と動物・植物プランクトンは
濃度拡散の他に一定の移流によっ
て輸送される
– 動物プランクトンの能動的な移動は
考えない
窒素の流入
リンの還元
流出
8
9: モデル②の結果
• 流路の違いによる植物プランクトンの共存条件の違いは見ら
れなかった
– ただし、流路の違いによって植物プランクトンの動態は異なった。
→ 左上から窒素が流入、右下に流出(下図左)、上に流出(下図右)
赤緑:植物
青 :動物
バ
イ
オ
マ
ス
赤緑:植物
青 :動物
バ
イ
オ
マ
ス
9
10: まとめ
• (モデル①) 動物プランクトンの移動を考えると、栄養塩
リサイクルの空間的な違いによって植物プランクトンは
空間構造を考えないときよりも共存しやすくなる。
• (モデル②) 水の流れの植物プランクトンの共存条件へ
の影響は確認できなかった。
問題点
• モデル②はより多くの条件についての比較が必要。
– 流量(流速)、供給点の濃度、空間スケール(単純拡散)など
→今回の結果は移流より拡散が強く働いた結果と考えられる
10: 今後の課題と発展
• 動物プランクトンの移動性と水の流れの関係
– 水の流れと比較して、動物プランクトンの移動性が大きく影
響するかもしれない
• 動物プランクトンの走性についても考慮する必要があ
るかもしれない
• 垂直方向の空間構造についての考慮(光減衰、水温
躍層,etc)
– 今回のモデルでは水の鉛直運動(混合流や熱対流など)に
ついて考えていないが、水の鉛直運動が植物プランクトンの
共存にどのような影響を与えるかについては考慮する必要
があるかもしれない。
11
付録:空間のないモデルとして用いた式
• 生物の成長は、窒素とリンのうち不足している方で制限されるとした
• 動物プランクトンは選択的な捕食はしないものと仮定した。
植物プランクトンバイオマス




d


C



D


Fi Z
 i 
i
i Ci  
dt



被食量
成長 希釈と沈降 

動物プランクトンバイオマス
d
dt




Ci    i  D   i Ci
 



成長
死亡と希釈 


栄養塩濃度(窒素,リン)
d
dt
C R  DS R  C R , ( R  N , P )

希釈
12
付録:モデル(1)で用いた式
• 栄養塩の供給は空間的に一様であるとした
• 各格子の植物プランクトン, 各栄養塩濃度は移流を考えず拡散のみで計算
した
• 各格子の動物プランクトンはランダムな方向にランダムなバイオマスが能動
移動すると仮定した
植物プランクトンバイオマス
d
dt




 2Ci
Ci   i  D   i Ci  Fi Z   k 2 , (k  x, y )
 








被食量
成長 希釈と沈降 
拡散項
 
動物プランクトンバイオマス
d
dt




Ci    i  D   i Ci  ak Ci , ( k  x, y )
 





成長
能動移動
死亡と希釈 

栄養塩濃度(窒素,リン)
d
dt


C R  DS R  C R    k 2 , ( k  x, y; R  N , P)
 
 2C R
希釈
拡散項
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付録:モデル(2)で用いた式
• 栄養塩の供給形態を窒素とリンで別に扱った
• 各格子の植物プランクトン,動物プランクトン,各栄養塩濃度は流体モデルを
用いて移流と拡散の両方を考えて計算した
植物プランクトンバイオマス
d
dt
移流項
動物プランクトンバイオマス
d
dt
 
Ci  uk Ci   k 2   i   i Ci  Fi Z , (k  x, y )
 
 

 
 2 Ci
被食量
 
Ci  uk Ci   k 2   i   i Ci , (k  x, y )
 


 
 2 Ci
移流項
成長と死亡
拡散項
窒素濃度 :土壌からの還元を考えた
d
dt
成長と死亡
拡散項


C N  uk C P   k 2  uk S N  C N , (k  x, y )
  
 2C N
移流項
拡散項
移流による流入出
リン濃度 :土壌からの還元を考えた
d
dt
 
C P  uk C P   k 2  
RP  DC
P , ( k  x, y )

 
 2C P
移流項
拡散項
還元量
吸着量
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