高圧ガス保安法における 保 安 検 査 制 度 ・ 定 期 自 主 検 査 制 度 の 概 要 (コンビナート・一般高圧ガス関係) 2010年9月6日 高圧ガス保安協会(KHK) 松木 稔久 説明予定 1.第一種製造者の規制の概要 *高圧ガスの製造の許可 *完成検査 *技術基準の遵守・維持義務 *保安検査 *定期自主検査 2.保安検査 3.定期自主検査 4.認定保安検査実施者 *要件等 *検査業務等 2 図1 高圧ガスの製造者のうち 第一種製造者に対する規制 概要 法5条、11条、20条、21条、 26条、27条、27条の2、の3、 35条、35条の2、 60条 製造の許可 完成検査合格 *技術上の基準の遵守・維持 *危害予防規程の遵守 危害予防規程届出 製造保安責任者選任届出 *保安教育計画の作成 *保安教育計画に従って従業者 に教育の実施 *保安検査の受検 製造開始届出 *定期自主検査の実施・記録 *帳簿の記載・保存 廃止の届出 3 表1 第一種製造者数(概数) 第一種製造者数 一般則① 液石則② ①②適用 5,500 4,000 660 コンビ則 合 計 360 10,500 (参考 冷凍則 : 8,200) 4 高圧ガスの製造の許可(法5条1項) *都道府県知事の許可 *許可の基準(法8条) 省令(コンビナート等保安規則・一般高圧ガス保安規則) で定める技術基準 ①:製造施設の基準 ②:製造方法(作業方法)の基準 *書類、図面等で基準適合状況を審査 → 適合なら許可 5 完成検査(法20条) *製造施設が許可の基準(コンビナート等保安規則・ 一般高圧ガス保安規則で定める技術基準)に、 現に適合しているかどうかの検査 *都道府県知事等が実施 ただし、変更工事の完成検査については、大臣 認定完成検査実施者は自社検査で実施可能 6 図2 製造施設設置(新規)の完成検査の手続等 第一種製造者 製造施設 法20条1項、 2項 ①完成検査申請 ②完成検査実施 都道府県知事 ③完成検査証交付 (5)完成検査受検の届出 (1)完成検査申請 (2)完成検査実施 (3)完成検査証交付 (4)完成検査 結果の報告 高圧ガス保安協会 指定完成検査機関 7 図3 特定変更工事の完成検査の手続等 法第20条3項 第一種製造者 【認定完成検査実施者】 完成検査記録の届出 製造施設 第一種製造者 製造施設 ①完成検査申請 ②完成検査実施 ③完成検査証交付 都道府県知事 (5)完成検査受検の届出 (1)完成検査申請 (2)完成検査実施 (3)完成検査証交付 (4)完成検査 結果の報告 高圧ガス保安協会 指定完成検査機関 8 技術基準の遵守・維持義務(法11条) 第一種製造者は、 * 製造施設が許可の基準(コンビナート等保安規則・ 一般高圧ガス保安規則で定める技術基準)に 適合するように維持しなければならない。 * 許可の基準(コンビナート等保安規則・一般高圧 ガス保安規則で定める技術基準)に従って高圧ガ スの製造をしなければならない。 9 保安検査(法35条) * 製造施設(一部対象外)が許可の基準(コンビナー ト等保安規則・一般高圧ガス保安規則で定める技 術基準)に適合しているかどうか、定期に(原則、1年 ※に1回)行う検査 * 都道府県知事等が実施 ただし、大臣認定保安検査実施者は自社検査で 実施可能 ※ 例えば、付属冷凍設備:冷媒ガスの区分により2年又は3年 コールドエバポレータ:3年 圧力計・温度計:2年 10 図4 法第35条 保安検査の手続等 第一種製造者 【認定保安検査実施者★ 】 製造施設 第一種製造者 製造施設 保安検査記録の届出 ★ 92者 ①保安検査申請 ②保安検査実施 ③保安検査証交付 都道府県知事 (5)保安検査受検の届出 (1)保安検査申請 (2)保安検査実施 (3)保安検査証交付 (4)保安検査 結果の報告 高圧ガス保安協会 指定保安検査機関☆ ☆ 約60機関 11 保安検査の方法(1/3) コンビ則37条1項、一般則82条1項 ① 開放、 分解、 各部の損傷・変形・異常の発生状況を確認するため、十分な 方法 ② 作動検査、 機能・作動の状況を確認するため、十分な方法 12 保安検査の方法(2/3) コンビ則37条2項、一般則82条2項 前ページのスライドの①②の方法は、 「保安検査の方法を定める告示」で定める。 同告示で、高圧ガス保安協会規格(KHKS)を指定 コンビ則は、KHKS 0850-3(2009)に、 一般則は、KHKS 0850-1(2009)による。 ただし、大臣認定保安検査実施者は、認定にあたり大臣が認めた 方法によることができる(KHKSと異なる検査方法が可能)。 13 保安検査の方法(3/3) KHKSと異なる検査方法の例 * 高温・低温機器の肉厚測定: 運転中保安検査では測定困難(又は誤差発生) → 過去の腐食・減肉傾向を分析評価し、 次回停止時までの健全性維持を確認し、 停止中保安検査時に測定 * 内部・外部からの目視検査・非破壊検査が行えない設備 (例:二重管式熱交換器、蛇管式熱交換器等): → 同一腐食系の機器(上・下流配管等)の 検査結果から、腐食状況を類推 14 定期自主検査(法35条の2) * ガス設備が許可の基準(コンビナート等保安規則・ 一般高圧ガス保安規則で定める技術基準。耐圧 性能は除く。)に適合しているかどうか、1年に1回 行う検査 * 第一種製造者自らの責任で実施。記録の作成・保存。 選任した保安係員が検査の実施について監督 * 定期自主検査の検査方法は、法令では定められて いない。 →高圧ガス保安協会規格(KHKS)を制定 コンビ則は、 K H KS 1 8 5 0 -3 (2 0 0 9) に、 一般則は、KHKS 1850-1(2009)による。 定期自主検査の実施記録が保安検査で利用できるように、KHKS 定期自主検査指針は、検査項目を保安検査の項目に合わせている。 15 図5 製造施設・製造設備・ガス設備・高圧ガス設備・特定設備の各々の関係 ①製造施設 ②製造設備 ③ガス設備 ④高圧ガス設備 ① ② ③ ④ ⑤ : : : : : ⑤特定設備 ②製造設備+防消火設備、警戒標その他 ③ガス設備+計測器、動力設備その他 ②製造設備のうち、製造する高圧ガスのガスの通る部分 ③ガス設備のうち、高圧ガスの通る部分 塔槽類(圧力容器) 16 認定保安検査実施者とは(1/2) (1)自らの施設の保安検査を自ら行うことができる者 として、経済産業大臣の認定を受けた者 (2)認定基準に合致するか否か大臣調査を受験。 ただし、KHKの事前調査で大臣調査は不要 (3)欠格条項→ 申請不可 ①高圧ガス製造開始後2年を経過していない ②高圧ガスによる重大災害事故発生の日から 2年を経過していない ③認定取り消し後2年を経過していない (4)認定は事業所毎(対象施設を特定して申請) 17 認定保安検査実施者とは(2/2) (5)認定期間:5年間 *認定更新を受けなければ失効 *有効期間中でも取消し条件に該当→取消し *取消し条件(主なもの) ①高圧ガスによる災害発生時 ②製造又は施設の使用停止命令発令時 ③検査記録の虚偽の届出時 18 大臣認定検査実施者数と地域分布 図6 日本全国の認定事業者:(2010年6月現在) コンビナート地区 認定事業者数 1.鹿島地区 4 2.京葉地区 14 3.京浜地区 15 4.四日市地区 7 5.堺・高石地区 5 2 10 6.水島地区 7.岩国・大竹地区 3 8.周南地区 6 9.新居浜地区 2 1 5 10.大分地区 1 1 10 6 1 2 5 3 5 2 3 3 1 1 15 14 4 7 2 全92事業者 3 :コンビナート地区 (71事業者) :コンビナート地区以外 (21事業者) 19 大臣認定検査実施者の種類 表2 完成検査 停止中保安検査 運転中保安検査 (2年) 運転中保安検査 (4年) 78 92 80 38 完成検査 停止中保安 検査 運転中保安 検査(2年) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (2010年6月現在) 運転中保安 検査(4年) 事業者数 ○ ○ 40 28 9 ○ 1 12 1 ○ 1 (現在、全て、コンビ則適用事業所) 20 認定保安検査実施者の特別な扱い (インセンティブ) (1)保安検査を自社検査として実施可能 (2)運転中保安検査認定者では、 保安検査を運転状態で実施可能 (年数に上限はないが、現在、最長4年連続運転) (3)機器の開放検査周期(原則3年)の延長が可能 →寿命管理に基づき次回開放検査時期を設定 (年数に上限はないが、現在、長いもので12年後) 21 認定保安検査実施者の保安検査体制 *保安検査の区分 ①停止中保安検査 ②運転中保安検査(運転中認定事業者のみ) *認定保安検査実施者の保安検査体制 事業所 監査 保安検査組織 本社 監査 保安検査管理組織 監査 22 検査組織 検査管理組織 検査計画提出 検査計画の立案 計画改正指示 検査の実 施 検 査 結 果 記 録 活 用 検査の評価・判定 立 会 検 査 記 録 提 出 検査記録の作成 改善報告書の作成 検査組織の長 図7 ・検査計画、検査方法及び 検査結果の適合状況の確認 ・検査立会 不適合 改善報告書 適 合 検査管理結果報告書 勧告 報告 社長、工場長、関係部署 認定検査実施・検査管理フロー(概略) 23 認定検査体制(保安検査・完成検査) ○検査組織、検査管理組織の役割 ・検査組織 : 自社検査として行う保安検査、完成検査の実施に関して 、 計画・実行・評価・判定等に対する責任を有する組織 ・検査管理組織 : 検査組織が行う検査及び評価・判定について、その手法 ・体制についての的確性を判定する組織 ・三管理部門 : 高圧ガスの保安管理部門、設備管理部門、運転管理部門* ○注意点 ・検査組織の役割に対する解釈 (設備管理部門の業務と混同しない) ・検査管理組織の第三者性の解釈 (ラインからの独立) ・検査管理組織の役割に対する解釈 (検査組織、保安管理部門の業務と混 同しない) → 検査管理組織の役割は、監査すること *例えば、各々、工場組織としての環境保安部、工務部、製造部 24 事業所体制(寿命管理) 各種文献、保安検査(開放検査を含む。)、定期検査及び 日常検査の記録、保全記録並びに運転記録等の解析・評価 機器毎の劣化要因、摩耗傾向等を確実に把握した寿命管理 活 用 ①連続運転期間に応じた適切な設備改善に関する事項 (特に、改善箇所、改善内容及び改善理由が明確なこと) ②補修の要否に関する事項 25 事業所体制(寿命管理) ○網羅性 ・検討対象機器・部位の抽出 ・腐食、劣化損傷要因の抽出 ・検査の実行面の検討 (機器台帳、DB等) (検討対象、評価ロジック、等) (抜取り検査、点/面測定、連続測定、等) ○予見性 ・余寿命予測可否、方法、損傷防止対策の明確化 → 余寿命予測方法 : 具体的な余寿命予測方法、測定データ 余寿命予測値の誤差の扱い → 損傷防止対策 : 構造、材料、熱処理、環境遮断、運転管理 等 の対策効果の評価 ○管理性 ・情報の一元管理 ・ PDCAによる改善 (設備管理シート 等、DBの活用) (検討・評価結果の活用) 26 事業所体制(開放検査体制) ○余寿命予測と損傷防止 ・現時点で余寿命予測が可能なもの (腐食等) ・現時点で余寿命予測が不可能なもの (応力腐食割れ等) → 損傷の種類に応じた損傷防止対策の有効期間が開放検査周期 ・腐食率は「短期」と「中・長期」を比較し、大きい方の値を選定 ○設備の管理単位 (機器 ― 部位 ― 小部位) ・機器の各部位毎に余寿命・開放検査周期を算出し、最短の値を設定 例) → 熱交換器の胴と管の余寿命予測 ○補修の要否・更新時期の決定 ・補修、更新の基準値と時期の明確化 → 必要最小板厚を下回らない 27 劣化要因と寿命予測の考え方(例) 図8 劣化要因の特定 寿命予測が可能な 劣化要因 腐 食 腐食率による 余寿命管理 寿命予測が困難な 劣化要因 水素侵食 応力腐食割れ 定期的な 確認検査*1 損傷防止対策*2 *1 進行度合いの定量的評価困難 →外面からの非破壊検査 *2 材質グレードアップ, 運転条件管理 28 終 了 29
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